二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 手のかかる隣人 ( No.216 )
- 日時: 2015/11/08 21:36
- 名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: tWnn3O3I)
- 参照:
『天気予報では晴れと申し上げましたが、正しくは雨でした。皆様に混乱を与えてしまい、申し上げありません』
しっかりしろや、天気予報。しかし、そう言ったところで何も起こらないのだ。
しぶしぶとスマートフォン型のホロキャスターを切った後、カルムは急いで走り出す。地面を叩く足から水溜まりが飛び散り、カルムの服に貼りつく。
先程トレーナーとポケモンバトルで勝利を飾った後、突如黒い雲が青空を覆い、雨を呼んだのだ。今朝観たホロキャスターでは晴天となっていたのだが、悪天候発生後、それが誤報だということに気づき、初めて天気予報に恨みを感じた。
何処か雨宿りが出来る場所がないかと、走りながら辺りを見回すと、多くの施設が建設されてある街がカルムの視界に移る。
カルムは街に入り、急いで建物の屋根で雨宿りをする。
屋根から落ちる雫石がメロディを作っているが、それはあまり心地良いメロディではなかった。
くしゅっとくしゃみを落とし、身体を震わせながら自らの肩を抱き締めた。
早く止んで欲しいという一心で空を眺めていると、
「あら、お隣さん」
聞き覚えのある女声がカルムの耳に届いた。
目を丸くし、声の方角に振り向く。
セレナと目が合った。オーク色の長髪をポニーテールに束ねており、赤いコートを羽織い、左手には赤の傘を抱えている。
「セレナ! 偶然だね」
「そうね、どうも雲行きが怪しかったから、コートと傘を用意して正解だったわ」
セレナは傘を畳み込んで、建物の屋根に入り、カルムの隣に寄る。
「セレナって、本当にしっかりしてるんだね。コートや傘まで用意してるなんて」
「目に見えているもの、聞かされていることだけが真実だとは限らないわ。お隣さんもそのことを忘れないで頂戴、それはポケモントレーナーとしても大切なことよ」
「うん、覚えておくよ。ありがとう、セレナ」
会話が切れる。雨がコンクリートを叩き付ける音と、雫石が屋根に落ちる音だけが聞こえる世界になる。
カルムとセレナは暫く空を眺めていると、セレナの隣からくしゅっと可愛らしい声が聞こえた。カルムがくしゃみをしたのだ。
よく見ると、カルムはセレナがショウヨウシティでチョイスした青の半袖Tとショートカーゴパンツのままでいる。天気予報では晴れと誤報をしていたので、カルムの性格上、天気予報をそのまま飲み込んでしまったのだろう。
溜め息を吐いたセレナはトートバッグから青い上着を取り出し、カルムに渡す。
それに気付いたカルムは肩を両腕で抱き締めながら、流し目でこちらを見る。
「いいの?」
「見ているこっちまで風邪を引きそうだわ」
「……サンキュー、セレナ!」
カルムはセレナから渡された青い上着を羽織る。セレナと同い年であり、男であるカルムだが、セレナよりも背丈が低い。しかし、カルムはまだティーンエイジャー前半なので、いつかはセレナの身長を超えてしまうだろう。
袖を引っ張り、腕を通すと、カルムはセレナの方角に身体を向けて、上着を見せる。
「どう、似合ってる?」
「悪くないわ」
「そう? セレナに言われると何だか嬉しいや、ありがとう!」
ニカニカと笑みを見せるカルム。こうやって見れば、落ち着きのある美少年なのに、中身は何処にでもいそうな男の子という容姿とは真逆の性格である。彼に関わった女性はカルムにギャップを感じてしまうだろう。
その上着はセレナのサイズに合わせて購入したものなので、袖が合わない等不便を起こしてしまうだろう。だが、カルムをあの薄着のままにもさせる訳にはいかない。
喜んでいるカルムを見て、セレナは呟く。
「……この街に用事はないんだけれど、出来ちゃったわね」
「? それって?」
「貴方の洋服を買うことよ。貴方、服装に関しては本当に疎いんだから。ポケモンバトルはともかく、服装はアタシがいなきゃ駄目なのね」
カルムはファッションに関しては気にしておらず、汚れたとしても叩けば何とかなるという軽い考えでいる。ブティックはカロスの街のあちこちにもあるから、見かけたら購入することを推奨していたのだが、カルムはファッションに関しては疎いので、ほとんどセレナに行かされるのがワンパターンとなっている。
空を見上げると、雨は小雨となっている。もう少ししたら止むだろう。
セレナは傘を差し、カルムから離れる。
「アタシは行くけれど……貴方は? 行く? 行かない?」
瞬間、カルムは駆け出し、セレナが傘を掴む手の甲と、自らの手の甲を勢いよく重ねて、
「勿論!!」
幼さの残る美形の顔立ちで笑う彼は、とても眩しいと感じた。
セレナが見つめていると、カルムはまたくしゃみをして、自らの両手を擦り始めた。
「うう〜まだ寒い……」
身体を震わせながら両手を擦るカルムを見て、愛しさを感じたセレナはふっと笑みを漏らし、傘を掴んでいない右手をカルムに差し伸べる。
「手を繋げば、少しでも暖かくなるわ」
あまり見せることのないセレナの笑顔に少しきょとんとしているカルムだが、それはすぐに笑顔に変わり、セレナの右手を掴む。
「やっぱり君は、僕のお母さんだ、いつもありがとう、セレナ!」
「……貴方を産んだ覚えはないでのだけれど」
本当に貴方は、アタシがいなきゃ駄目なのね
◆
今日は悪天候の中、外出していたら、短編が思いついたので気がつけば書いてしまいました← ユリーカ×アイの短編も書いてみたいですねー
アイと言えば、イメージ画をORASに載せているんですが、近頃こちらにも載せようと思っています
これってもしかしたらベン10のベン君とグウェンちゃんでもいけるような、いけないような……