二次創作小説(映像)※倉庫ログ

再会を目指して ( No.220 )
日時: 2015/11/22 14:52
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: XpbUQDzA)

 場所は変わってポケモンセンター。アイニスとロザリーの目の前にいるダイヤモンドのようなポケモンは微笑んでいる。

「助けて下さりありがとうございます! あなたたちは強いトレーナーさんなのね、感激です!」
「私とあんなグズ野郎共と一緒にして欲しくないわ」
「ん? お前……喋った?」

 ポケモンが言葉を話すなど聞いたことがない。本来なら、己の感情を鳴き声で訴えるのだが……。このポケモンは言葉を話せる、否、脳内に直接語り掛けているようなので、テレパシーを使ってアイニスとロザリーに言葉を伝えているようだ。
 ポケモンと言えば、二人の目の前にいるポケモンも見たことのないポケモンだ。上半身は白いドレスのようなもので、下半身はごてごてとした岩となっており、足がない。その為なのか、浮いている。左側には桃色の宝石が埋め込まれている。宝石のように赤い瞳を爛々と輝かせており、瞳のように輝く胸元のクリスタル型の宝石、そして一番目に入るのが……頭部にあるティアラのような桃色のダイヤモンドだ。

「そういえば、前にもこういうことがありましたわね。以前出会った人間も、わたくしのテレパシーに驚いていました。他のポケモンたちは、わたくしみたいにテレパシーを使わないんでしょうか?」
「アンタが珍しいだけよ、他のポケモンはテレパシーも人語も使えないわ」
「まぁ、ということは、やはりわたくしは特別なのですね!」

 両手を口に添えて笑うポケモン。容姿といい、口調といい、お姫様のようなポケモンである。

「そういえば、あの赤い奴等は何なの? アンタを狙ってたみたいだけど」
「それはわたくしにもわかりません……。奴等と出会う前、緋色の人間がわたくしと大臣を襲って来たのですが、気が付けば森の中にいて……。わたくしは王国を目指して旅をしていたところ、あいつらが急にわたくしを襲って来たのです」
「赤い奴等と緋色の人間って何だろ? オイラ聞いたこともないや」
「私も知らないわ」

 赤い服を来た怪しい奴等なんて知らないし、緋色の人間も知らない。というか、緋色と赤の人間という表現がおかしい。

「そこをあなたたちが助けてくれて、今に至る訳です」
「私たちがいなかったらアンタは危ないところだったことには変わりないか。まぁ、次からは気をつけなさいよ。行くわよ、グズ」
「え、ちょっと待ってよーロザちゃん〜」

 ロザリーは立ち上がるとすたすたと歩いてポケモンセンターを出ていく。大抵の人間はこのポケモンに質問の追求などをするだろう。しかし、ロザリーはこのポケモンに興味を持たないみたいだ。
 そのままポケモンセンターの扉が開き、そのまま消えて行こうとした瞬間、

「お待ち下さいませ!」

 ピョコピョコと岩で出来た下半身を一生懸命動かしながらやって来るポケモン。浮遊しているものの、飛べる訳ではなさそうだ。
 ポケモンセンターの扉の前にポケモンは立ち塞がり、そして微笑む。

「わたくしも、あなたたちの旅に連れて行って下さい!」





 エカルラートは自らの力に満足感が満たされているのを感じた。今までにはなかったものが、今は手に入ることが出来たのだから。権力、実力、居場所、財も全て。あの時自分を救ってくれた"女王"に感謝をしなければならない。だからこそ、ディアンシーを必ず見つけなければならない。彼女の命令は、エカルラートの命。
 全ては"母さん"の為に。

「エカルラート様」

 振り返ると、赤の忍者が立っている。

「どうしたんだい、キリ」
「あの後、何故ディアンシーを捕まえなかったのですか? ディアンシーを探し、捕まえること──それが"女王"の命令です。なのに──」

 馬鹿だなぁ、とエカルラートは軽く笑う。そして、キリの元に歩み寄る。
 キリは後退りもせず、ただ立ち尽くしている。
 エカルラートがキリに近付くと、影で遮られたキリの金色の瞳と火傷で刻まれた素顔が露にされる。
 エカルラートは背伸びをして、両手でキリの頬に触れ、掴んだ。ティーンエイジャーとは遠く離れた妖艶の笑みを浮かべると、彼の緋色の瞳がギラギラと光る。

「ただ捕まえるだけじゃ駄目、ディアンシーには"負の感情"を与えなければいけない。ディアンシーの精神を追い詰め、そして、ディアンシーの発する"負の感情"が昂らなければ──"あいつ"の目覚めは遠くなる。君はとても真面目で誰よりも僕や"母さん"に忠実性が高い。だけど、足りないのはそれだ。"母さん"の任務に集中しすぎて、大事なことを忘れている」
「人間やポケモンに"負の感情"を与える……でしょうか?」
「わかっているじゃないか。良いか、ただ捕まえるんじゃなくて、"負の感情"を最大限に与える──そのことだけは忘れるな」

 エカルラートはキリの顎から両手を離し、キリとの距離を置かせた。
 キリはそのまま頭を下げて、再び暗闇の中に溶け込んで消えていく。
 エカルラートがそのまま立ち尽くしていると、グオォ……と獣の唸り声が響く。それを聞いたエカルラートは赤のジャケットから木の実を取り出した。

「お腹が空いたのかい? ほら」

 エカルラートは暗闇に向けて木の実を放り投げる。すると暗闇から木の実を頬張る音が響いた。エカルラートは満足気に頷き、暗闇の向こうに歩み寄り、暗闇に向こうにいるポケモンを撫でる。
 そこには、"右腕に青い石が埋め込まれた腕時計を嵌めた"翼の生えた恐竜のようなポケモンがいた。

「美味しいか?」
「グオォッ!」