二次創作小説(映像)※倉庫ログ

再会を目指して ( No.230 )
日時: 2015/12/15 21:59
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: CjSVzq4t)
参照:

「パンプジン、タネばくだん!」

 トレーナーに指示を下され、そのポケモンであるパンプジンはタネばくだんを使って、相手のポケモンを攻撃する。相手のポケモンはタネばくだんを食らって、その場に倒れ込む。

「いやぁ、君強いねぇ。それに可愛いし。よければお食事に──」
「早く金渡しなグズ」

 ナイフよりも鋭利な言葉を浴びせられ、男は泣きながら賞金を渡して、その場を去っていく。背後からは小さな拍手喝采が飛んで来た。

「ロザリーはとても強いのですね! 感激しました!」

 小さなプリンセス、ディアンシーだ。ディアンシーは子供のように桃色の瞳を爛々とさせながらこちらにやって来る。しかし、ロザリーは唇を綻ばすこともなく、照れることもなく、ふんっとそっぽを向いた。
 アイニスはロザリーの性格について把握は出来ていたので何となくわかってはいたが、ディアンシーの場合、出会って間もないのでロザリーについてはまだ理解出来ておらず、ロザリーのツンとした態度にただ首を傾げていた。

「ロザリー、どうしたのでしょうか……?」
「ああいうのはツンデレって言ってな、きっと心の中では嬉しいと思ってんじゃない?」
「ツン……デレ? 何でしょうかそれは」
「お前はまだ何も知らないのか……可哀想に……。いいか、ツンデレって言うのは──」
「アンタたち、行くわよ!」

 アイニスの言葉を遮るかのようにロザリーの声が飛ぶ。それに気付いたアイニスとディアンシーはロザリーの元に駆け寄っていく。





 最近カロスで建てられたショッピングモール。ミアレシティの何倍も広く、マップがない限り迷子になってしまうだろう。
 ディアンシーはそのショッピングモールを、何処かの城かと勘違いをしていたようで、やはり世間知らずの箱入りポケモンのようだ。
 その中央にある大きな噴水にて、ロザリー、アイニスとディアンシーはケバブを食べていた。アイニスとロザリーはポケモンバトルで沢山賞金を稼いだので食事が出来る位のお小遣いに貯まっていた。
 ディアンシーは美味しそうにケバブを頬張っており、ディアンシーの口元からはケチャップがついている。 

「なんと美味しい食べ物なんでしょう! こんな美味しいものを食べるのは生まれて初めてです!」
「これはケバブって言うんだぞ、オイラも初めて食ったけど美味いなー。びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛ぃ゛」
「何変な声出してんのよ。……ま、ママの作ってくれたご飯の方が美味しいけど」

 ロザリーのポツリとした静かな呟きは、アイニスとディアンシーの耳にしっかりと入る。気になったディアンシーはロザリーに訊ねた。

「あなたのお母様は、このけばぶよりも美味しいものが作れるんですか? わたくし、ロザリーのお母様に会ってみたいですわ!」
「そ、そんなの無理に決まってるじゃない! だ、だって……」
「「?」」

 ロザリーの態度と口調が突然変わり、アイニスとディアンシーはきょとんとした。今のロザリーは頬を赤く染め、俯いている。一体何が合ったというのだろうか。
 2、3秒すると、ロザリーは顔を上げて、ヤケを起こしたがのように叫び出した、

「そうだ、聞きなさいよ! うちのママったら──」

 ロザリーはどうやら、母の口の煩さに耐え切れず家出をしてしまったようで、そのままカロスの旅に出ているらしい。所謂反抗期というものだ。アイニスもよく両親と喧嘩をしたことがあるので大体共感は出来ていた。
 ロザリーの口からは母親への文句ばかりを愚痴っているが──。

「それで、料理が美味しくて栄養のバランスも良いんだから! この店よりももっと一番美味しいものも作れるのよ! あ……」

 いつの間にか、母親の長所を述べて自慢げに話すことに気付き、我に返るロザリー。心の何処かでは、母親に謝罪をしたいという気持ちが残っているのだろう。
 アイニスとディアンシーが目を見開きながら見つめていた。
 ロザリーは赤面しながら俯いている。

「ロザちゃん、もしかしてお母さんに謝りたいんじゃないの〜?」
「正直に話して下さい!」
「……ええ、そうよ! 本当は家に帰ってママに謝りたいわ! ママの美味しいご飯が食べたい! ごめんなさいって言いたいわ!」

 やはり心の其処では、母親に謝罪をしたいという気持ちが残っていたようだ。

「そうかそうか〜だったら今すぐでも遅くないんじゃないかな〜? 正直に謝っちまえYO!」
「そんなすぐに言える訳ないでしょ! アンタと違ってお気楽じゃないんだから」
「その気持ちはわたくしにもわかります。大臣や家来があまりにも煩さすぎて、喧嘩したことがありましたわ。でも……やっぱり、喧嘩をするのは辛いです。勇気を持って謝りました。そしたら、心の靄がスッキリしました。喧嘩したままより……謝った方が、気持ちが軽くなりますよ。だから……此処は頑張って謝りましょう!」

 姫として生活していたディアンシーにもロザリーの気持ちに共感をしていたようだ。
 暫く黙り込んでいたロザリー。しかし、その沈黙はそれ程長いものではなかった。

「そうね、嫌だけど、アンタたちの言う通りだわ。……ママに謝ってくる」
「「!」」
「喧嘩したまま、ママの料理が食べれないなんて嫌だもの。此処は頑張ってママに謝ってみるわ」
「さっすがロザちゃん!」
「感激しましたわ!」
「ちょっと、こっちに来んじゃないわよグズども!」

 飛び付くアイニスとしてディアンシーを追い払うロザリー。しかし満更でもなさそうだ。
 ロザリーたちの楽しそうな光景を、刃物のような赤いポケモンと片耳の長いポケモンが眺めていたことに、彼等はまだ気付いていなかった。