二次創作小説(映像)※倉庫ログ

ぼくとおれ ( No.271 )
日時: 2015/12/31 20:22
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: qwR26uHc)
参照:

「……戻れ、ニャスパー」
「ふん、相性が悪かったな!」

 ニャスパーをモンスターボールの中に戻すカルム。顔を上げた時に見えた彼の表情は、諦観もない、眼差しだった。

「昔の俺はすぐに諦めたりしてたけど……もう、すぐには希望を捨てたりはしない」
「! カルム……」
「さっさと倒して、テールナーを取り返すよ。ピカチュウ、GO!」

 カルムのモンスターボールの中からは、僕もよく見るハート型の尻尾が特徴的なピカチュウ。その姿は僕が知っている悪戯好きの面影は全く見られなかった。

「ハリボーグ、デルビルにころがる!」
「デルビル、ひのこだ!」

 ハリボーグは身体を丸めて車のタイヤの如くに転がり出す。デルビルはひのこを繰り出すが、ハリボーグはそれを躱しながらデルビルとの距離を縮め、そしてデルビルを突き飛ばした。デルビルはその場に倒れ込んだ。

「ズルッグ、ピカチュウにとびひざげり!」
「でんこうせっかだ!」

 ピカチュウはでんこうせっかでズルッグのとびひざげりを翻す。勢い余って、ズルッグは地面に衝突したおかげで膝を痛め、悶絶している。

「「ミサイルばり!/10まんボルト!」」

 その隙に僕とカルムは顔を見合わせ、頷く。そして、互いにポケモンの指示を送る。ハリボーグのミサイルばりと、ピカチュウの10まんボルトが混じり合う。ボルトミサイルだ。
 ズルッグはミサイルばりと10まんボルトを受け、その場で倒れた。戦闘不能である。
 亡骸のように倒れているズルッグとデルビルを見て、フレア団は悔しそうに二匹をモンスターボールの中に戻した後、恐らくセレナのテールナーであろう、モンスターボールを投げて来た。それに気付いたセレナはモンスターボールをキャッチした。

「くっ……別世界のお前もこんなに強いとは……。仕方ない、この別世界でポケモンを奪うのはやめだ!」
「その悪巧みもどうにかならない訳?」
「う、煩い! 覚えてろ〜!」

 フレア団はケースを抱えてその場を去っていく。途中、石に躓き、転んだフレア団を見て、吹いてしまった。「笑うなッ!」と恥ずかしそうに叫ぶフレア団の声が洞窟の中に木霊していった。





 その後僕たちは洞窟の鏡探しを再開した。しかし、どれも僕の知っている元の世界ではなく、if世界だったりパラレルワールドだったりしている。
 探すのに何時間もかかっていて、気がつけばオレンジ色に焼けた空、夕方だ。カルムによれば、日没までに戻らなければ永遠に別世界を彷徨うことになるらしい。確かに、この別世界も楽しいけれど、やっぱり元の世界の方が良いんだ! だけど、こんなに探してもないなんて、やっぱり……カルムの言う通りなのかな……。
 僕が項垂れていると、肩にカルムの手が伸びてきて、ポンと叩いた。諦めるな、君らしくないじゃない。……僕が僕に励まされるなんて、何とも不思議な気分だ。もしかしたらカルムも、そんな気持ちでいたのかな。

「……うん、ありがとう」

 だけど、カルムの言う通りだ。僕は此処で諦めたくない、何としても、元の世界に帰るんだ!
 セレナが、此処じゃないかな? そう僕たちに呼び掛けた。僕はセレナが見つけた鏡の中に入り、辺りを見回す。間違いない、此処が僕がいた元の世界だ。
 此処だよ、と答えようとした瞬間、鏡の反射された光がみるみると消えていく。日没が迫っている、とカルムが叫んだ。
 早く、とカルムとセレナが僕の背中を押し、鏡の中に入り込ませた。鏡の中に入った僕は鏡越しから二人を眺めた。

「カルム……セレナ……!」
「さよなら、もう一人の俺。俺と君は、別の世界の住人だけど、またいつか会えることを願ってるよ」
「別世界のアタシにも、よろしく言っておいてね!」
「うん……本当にありがとう!」

 短い時間だったけれど、それはとても有意義な時間だった。もう一人の僕や別世界のセレナ、ポケモンたちに会えたのも勿論。映し身の洞窟に来て、鏡に触って良かった。別世界は驚きばかりで色々戸惑っていたけど、それでも楽しかった。
 鏡の光が消えていく。ああ、そろそろ時間だ。最後に、─カルム─もう一人の僕に言いたいことがあるんだ。

「じゃあ、またいつか……」
「その時まで、さようなら」

「「僕/俺」」





 日没となり、映し身の洞窟の全ての鏡の光は証明し、ただの鏡となった。鏡に触れても、そこは俺とお隣さんしか映っていない。
 別世界の俺は、何とも変わった奴で、第二のお隣さんと言っても過言ではない。お隣さんが二人もいるなんて冗談じゃない。お隣さんは一人だけで良い。
 だけど……カルムは真っ直ぐだった。すぐ諦観する俺とは違って希望を捨てず、貫いていた。その光が眩しくて、もしかしたらその光に当てられたのかもしれない。

「二人とも、こんなところにいたのか! 早くポケモンセンターに行こうぜ!」

 威厳としたやる気のある声……アイニスだ。俺たちはアイニスとはぐれていたんだ。
 今行くよーとお隣さんの声が飛んだ。その後セレナは俺を見て、行こっかと微笑んだ。それに対し、俺も微笑み返す。


 さようなら、もう一人の僕。またいつか、会えることを願って。
 さようなら、もう一人の俺。またいつか、会えることを願って。




やっと終わりました!とはいえ、後半から適当ですが……orz
もう少し原作カルムとマルガリータのカルムの描写を掘り下げても良かったかも
次は今年のメッセージを書きます