二次創作小説(映像)※倉庫ログ

希望 ( No.288 )
日時: 2016/01/19 23:03
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: ix3k25.E)
参照:

 カロス地方の何処かにある、ほぼごく一部しか知らない、秘密の洞窟。潜ってみると、一見ただの洞窟にしか見えないが、天井や壁際からは眩く光るダイヤモンドが飛び出しており、薄暗い暗闇を照らしている。懐中電灯の用意すらいらない位の輝きを放つ。
 歩き続けていると、洞窟の範囲は広くなり、ダイヤモンドの数も増えていく。動きやすくなるのは良いが、この先には、人やポケモンを迷わす、幾つものの道が分かれてある。このどれか一つを辿れば、幾多に輝くダイヤモンドの発掘、あるいはこの洞窟を彷徨うことになる。まぁ、この洞窟の住処であるポケモンたちは良心を持っているので、永久に彷徨い続けることもないが。
 その道を辿っていくと、光が見えてきた。もう少しだ。
 光を目指して歩いて行く。視界は、眩い光に包まれた──

 やがて光は消えてゆき、漸く景色が見えてきた。視界からは、数え切れない程の光り輝くダイヤモンドがある。どのダイヤモンドも目移りしてしまうが、中心部にある、一際輝きを齎す、ビルと同じ高さをした、桃色のダイヤモンドが印象的だ。
 ダイヤモンドと同じ姿をした、ポケモンたちがいる。彼等はこの洞窟の主に仕える家来であり、どの個体も同じ容姿をしている為、区別が付かない。
 家来たちはせっせと働き、今日も、明日も、その次も、仕事に励んでいくのだ。新たに変わった"主"の為に。その行動は、例え自らが望んでいない、破滅の道だとしても。
 エカルラートは中心のダイヤモンドに触れる。そのダイヤモンドは、今にも消えてしまいそうな、小さな輝きを帯びている。このダイヤモンドは、この洞窟の心臓といっても過言ではない。壊れてしまえば、この洞窟も消えてなくなるのだ。王国の心臓部であるダイヤモンドを維持させる方法は、ただ一つ。主の力だ。主の力で、心臓部のダイヤモンドを造り出すことを出来れば、王国の存亡は維持出来る。
 だが主無き今、この洞窟のポケモンたちは、彼等の傀儡となっている。刃向かう者は権力と力で掻き毟り、葬ってやった。だから叛逆なんて、出来やしない。させやしない。逆らえば、王国なんてお陀仏逝きだ。
 背後から足音が聞こえる。音からして二人だ。エカルラートは振り向かず、ただダイヤモンドを見詰めていた。
 同じ容姿をした、男たちはエカルラートの前で立ち止まり、跪く。

「ディアンシーを誘き寄せておきました。数分したら、此処に向かって来ることでしょう」
「ご苦労、ファンス、セト」

 下っ端から見たエカルラートは、後ろ姿でしか見えない。声も、いつもと変わらない。
 エカルラートは掴みどころのない。表情も、声も、何を考えているのか、フレア・サイエンティストでさえも読み取ることが出来ない、謎めいた人物だ。恐らく彼のことをよく理解している人といえば、恐らく『女王』ただ一人だけだろう。何せ、『女王』は彼、否、彼等の『母親』なのだから。
 男二人を下がらせると、二人は暗闇と共に、消えていった。ついでに、給料サービスを言い残してやると、よっしゃーとガッツをした声が響いた。人間なんて、所詮はこんなもの。
 エカルラートは儚げに光るダイヤモンドを見て、微笑んだ。ダイヤモンドからは、嗤っている自分が映る──のではなく、

 紅く光る破壊神。