二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 希望 ( No.292 )
- 日時: 2016/01/27 23:35
- 名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: 8R/poQo9)
- 参照: あと、二、三話ぐらいで終わらせます
洞窟の中には、彼等の歓迎が待ち構えていた。あいにく、こちらは手ぶらだが、彼等に返すお礼ぐらいは持っていたので、それをしといてやった。お礼を与えてやると、彼等はこちらを見ては怯え、道を開けてくれた。
最深部に辿り着く為には、彼等のおもてなしに礼をしなければならないという、システムになっている。何とも面倒くさく、挫折しそうだ。ただでさえ緊急事態だというのに。
しかし、アイニスは大儀そうな顔を現しながらも、彼等の礼をきちんと返してあげた。手抜きではなく、気持ちを込めて、彼等に贈り返してあげた。
やるじゃない、とロザリーが言うと、アイニスは八重歯を見せて、ニカリと微笑んだ。
そうやって二人で協力して彼等に贈り物を与えて、奥に進んでいく。
さて、これらを繰り返してだいぶ時間がかかってしまった。キズぐすりも少なくなってきたし、ポケモンの体力も限界を向かえてしまうので、そろそろ最深部に入りたい。ディアンシーもソワソワし始めている。
見えた、光が。恐らく、最深部だ。
アイニスとロザリー、そして、ディアンシーは、その光目掛けて、駆け出した──
◆
ダイヤモンドの光で溢れている。そのダイヤモンドは、人工で造られたものなのか、それとも、自然に造られたものなのかは解らない。ただ一つ言えることは、綺麗。それしか当てはまらない。
中央には、ビルのように大きな高さを誇る、桃色のダイヤモンドが、儚げに光を帯びている。ディアンシーによると、あれが王国の生命を維持しているらしい。あれをディアンシーが造り出さない限り、王国は滅亡してしまうのだ。
王国……そういえば、国民は今、何処にいるのだろう。最深部は、無人であり、人気すら感じられない。此処にいる、アイニス、ロザリー、ディアンシーのみだ。恐らく、彼等は既にフレア団に捕えられている筈だ。急いで助けてあげなければ。
急ぎましょう、とディアンシーが動いた瞬間、ザクりと足音が響いた。
「お帰りなさい、ディアンシー。どう? 故郷へ帰って来た気分は」
「! 貴方は……。……っ、国民のみんなは何処ですか? 今すぐ彼等を解放しなさい!」
「良いですとも、お姫様。その代わり、条件がある。それは──」
ディアンシー、我等、フレア団のポケモンとなって頂きたい。
即効でノーと答えたくなる条件だ。ディアンシーも勿論、彼等のポケモンになんてなりたくない。
しかし、もう迷わないと決心したディアンシーの答えは、既に決まっていた。
「……残念ながら、その条件は受け付けできません。しかし、だからといって、国民を見捨てる訳でもありませんわ。わたくしは、姫としての義務を果たし、王国を救います!」
胸を張り、そう主張するディアンシー。その表情は、あどけなさを残しつつも、凛としている。
以前までは、無邪気に笑い、か弱い女の子のように振舞っていたあのディアンシーとは、まるで別個体のようだ。最も、此処にいるディアンシーと二人が知っているディアンシーは同個体ではあるが。
エカルラートはブチ切れる訳でもなく、平然としているが、何処か物足りなさそうな表情を表して、呟いた。
「ふぅん、そうなんだ。……だったら、力尽くで、君を奪ってみせるよ。ファンス、セト」
「ハッ」
「こんなにも借りが早く返せるなんて、思いもしなかったぜ。お前らの相手は、この俺たちしたっぱ兄弟だ!」
エカルラートの呼び掛けに反応し、突如アイニスとロザリーの前に現れる。
ファンスはコマタナ、セトはニューラを繰り出した。
「此処はオイラたちが引き受けるから、ディア(ディアンシー)はあのエナメルラート(エカルラート)を!」
「ボコボコにしてきなさいよね!」
「ご協力、感謝します!」
ディアンシーはペコリと会釈をし、そのまま進んで行った。
待て! とファンスがディアンシーの足止めをしようとするも、パンプジンとヤンチャムが阻止した。
「何余所見してんのよ」
「お前らの相手はオイラたちだぞ〜!」
◆
エカルラートは、ダイヤモンドの前で待ち構えていた。恐らく、又、卑怯な手段を使って、ダイヤモンドを破壊させるつもりなのだろうか。しかし、そんなことはさせない。わたくしが、守ってみせる。
エカルラートはディアンシーがこちらにやって来たのを見て、嗤った。
「……このダイヤモンドは綺麗だね。こんなに美しいダイヤが、この王国の寿命だなんて、それ程、このダイヤには不思議な力が備わっているのか」
「貴方たちは、わたくしと、このダイヤモンドを狙っている……。ですが、わたくしは此処で貴方たちを倒して、ダイヤモンドの寿命、そして……この王国を救います!! わたくしが、この王国の希望となる!」
どんなに窮地を堕ちたとしても、ディアンシーは諦めなかった。何故なら、希望を持っているから。どんな状況でも、希望を捨てたりしないという、強い気持ちを抱いているからだ。
希望。その言葉は、エカルラートにとっては
「きらい、きらいだよ、その言葉は。希望なんて、ありやしない」
「いいえ、希望はあります。此処に、この中に」
「そんな甘ったるい言葉が、どんなに愚かなのか、今から教えてあげるよ。──さぁ、目覚めの時間だ」
エカルラートの背後にあるダイヤモンドが、禍々しく妖しげな光を帯び始めた。ロザリーたち一行も、それに目を向ける。
ズ……ズズッ……ズズズズッ!
ダイヤモンドの中から、黒い何かが蠢いた。とても大きく、ダイヤモンドの中にすっぽり入るサイズだ。
黒い何かは、紫色に色を変えた。否、正確には、姿を表した、といったところだろう。黒い何かは翼で、あの状態は眠りから覚めていたのだ。
巨大な身体に、大きな翼と尾羽。瞳は紫色に光っており、そこに正気はない。
グオオオオオオオオッ!!
ソイツは、周囲に挨拶という名の雄叫びを放つ。
エカルラートはにっこり、微笑んだ。
「おはよう──破壊神・イベルタル」