二次創作小説(映像)※倉庫ログ

希望 ( No.294 )
日時: 2016/07/04 21:55
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: jJ9F5GeG)
参照: 気持ちは解るけど、だからって小説に病み発言されてもなぁ……

『マウンテンカロスNo.149 イベルタル 破壊ポケモン
寿命の限界を感じると、あらゆる生き物の命を吸い取り、繭の姿に戻るという、伝説のポケモン』

 破壊神・イベルタル。妖しく輝く紫色の身体に、漆黒の翼と、翼とよく似た爪にも近い尾羽を持つ、巨大なポケモン。紫色に光る虚ろな瞳は、周囲の視線を奪っていく。
 まさか、ダイヤモンドの中に、こんな巨大なポケモンが眠っていたことは、誰が予想していたことか。しかも、フレア団が、伝説のポケモンを所有していたとは。
 しかし、アイニスのポケモン図鑑のイベルタルの画像と、眼前にいるイベルタルの姿が、違っていた。色だ、色が違うのだ。図鑑に掲載されているイベルタルの身体は、緋色であり、今いるイベルタルは紫色を宿している。これは一体、何なのか?
 イベルタルについて知っていたであろう兄弟でさえも、その姿に唖然としていた。その中で微笑を浮かべているのは、ただ一人。そして、その中で、絶句するのは、ただ一匹。

「この聖なるダイヤモンドを使って、イベルタルの力を蓄えた。どのみち無くなるんだしね。これで証明されたろ? 希望なんて、何処にもない。どんなに強い気持ちを持ったって、結局は、絶望するだけしかない」
「ち、違います……希望はある、絶対、あるッ……。希望を信じて、前を向けば、きっと……!!」
「その割には身体が震えているよ? 本当は、怖いんでしょ? 苦しいんでしょ? 逃げたいんでしょ? ──それを今、解放させてあげる」

 エカルラートが右腕を挙げると同時に、イベルタルがバサリ、と羽音を立てて、ディアンシー目掛けて突進してきた。酷く動揺しているのか、ディアンシーの動きが見られない。
 ロザリーが叫び出す。

「ディアンシー!!」

 気付いた時にはもう、遅かった。ディアンシーはイベルタルに突き飛ばされ、絶叫を上げて衝突された。ディアンシーが衝突された場所には、穴が開き、ディアンシーはその中に埋め込まれる。
 呻き声を上げつつも、ディアンシーは自らの身体に鞭を打ち、体制を立て直す。
 ディアンシーは両方の掌を翳して、その隙間に桃色に光るダイヤモンドを造りあげる。攻撃を繰り出そうとしているのだ。しかし、そのダイヤモンドは弱弱しく、儚い光を帯びている。
 そのダイヤモンドをイベルタルに向けて放つも、ダイヤモンドは消えてしまった。
 イベルタルは鋼鉄のように硬い翼を広げ、それをディアンシーにぶつけると、ディアンシーはボールのようにポーンと投げ出され、落下した。
 それでも、ディアンシーは立ち上がり、イベルタルに立ち向かう。
 またダイヤモンドを造ろうとするも、ダイヤモンドは完成せず、イベルタルに攻撃されての一点張りとなっている。
 したっぱ兄弟のファンスが呟く。その声は、悲しさをたたえていた。

「何だよ……これ……見てるだけで、何だか悲しくなってきたぜ」

 伝説のポケモンの前に、立ち向かって戦うディアンシー。どれだけ攻撃されようと、それでも立ち上がる姿勢が、したっぱ兄弟の心を変化させていく。イベルタルを応援する気持ちより、諦めないディアンシーの姿勢を見て、何かが芽生える感情の方が上回っていた。
 ディアンシーが何故、イベルタルに攻撃されても立ち上がるのか。それは、希望を持っているからである。王国を取り戻す気持ちと、前を向く強い意志が、ディアンシーをそうさせているのだ。
 しかし、その気持ちも、次第に弱み始めていく。
 ドサッと崩れる音が響く中、ディアンシーはうつ伏せになって倒れ込む。
 どんなに頑張っても、イベルタルに攻撃一つ当たらない。それどころか、己に傷が増えていく一方ではないか。これでは王国も、国民も救えないじゃないか。やはり、エカルラートの言う通り、希望なんて瞞しに過ぎなかったの……?
 絶望がディアンシーを支配する。それと同時に、イベルタルの周囲に黒いオーラが放たれ、更に禍々しくなっていく。

「……う……ううっ……どんなに立ち向かっても、やはり、駄目なのでしょうか。わたくしは、国民を救えず、ただの出来損ないとして、このまま、もう……!」

 負の感情が、ディアンシーの心を覆い尽くしていく。
 ディアンシーの紅玉のように、赤い瞳から、涙が溢れ出る。涙はディアンシーの頬を伝い、下に垂れ込んでいく。それがポタリと、地面に落ちた、その時。

「「諦めるなッ!!」」

 ハッと、ディアンシーの瞳孔が開かれる。
 横を向くと、見覚えのある二人と目が合った。二人がこちらを見ている。

「此処で諦めたら、この国は誰が収めるのよ! アンタ以外、誰もいないでしょ!!」
「ディアの仲間たちだって、ディアの帰りを、強くなったディアの帰りを待ってんだぞ! 仲間たちを裏切るなんて、卑怯だぞ!!」
「ロザリー、アイニス……」

 二人の言う通りだ。此処で諦めたら終わりだ。今までの努力が、水の泡だ。支えてくれた二人の為にも、わたくしは負けていられないのだ。
 ディアンシーは微笑んで、頷いた。迷いは、もうない。もう、諦めない。
 その時だった。ディアンシーの身体に変化が起き始めた。光だ。進化だろうか。周囲はその光に視界を奪われていた。今まで嗤っていた、エカルラートの表情が消えた。
 桃色の光は、ディアンシーを変化させていく。

「こ、これは……」
「メガシンカ……!」


-Mega Evolution-


 光が止み始め、視界が元に戻った時、そこにいたディアンシーの容姿が、一変していた。腕を露出させた白いドレス、下半身は桃色に輝くシャンデリアとなっており、ヒラヒラと揺れるベール、そして、頭部にある、ハート型のダイヤモンド。今のディアンシーは、何も出来なかったあのディアンシーと見間違える程、麗しく輝く、ダイヤモンドのプリンセス。
 ディアンシーはルビー色の瞳を輝かせ、両手を翳して、その隙間から、聖なるダイヤモンドを造り出す。

「わたくしは……諦めない!!」

 ディアンシー、否、『メガディアンシー』の桃色のダイヤモンドは、先程とは見間違える程の輝きを放っていた。
 ディアンシーはダイヤモンドの流星群を、イベルタルに向けて放つ。エカルラートが指示を送るが、イベルタルの様子がどうもおかしい。今まで禍々しいオーラを放っていたというのに、今では、弱弱しくなっている。メガシンカしたディアンシーに怖じ気ついたのか否か、不明ではあるが、攻撃を避ける素振りも見せない。
 イベルタルはそのまま、ディアンシーの『ダイヤストーム』を受けた。壁に衝突されて、粒子となり、姿を消していった。

「"レプリカ"が──」
「「消えたッ!?」」

 エカルラートの言葉からして、先程のイベルタルは本物ではなく、コピーだったようだ。道理で、身体の色も違っていた訳だと納得をした。
 今までエカルラートが浮かべていた余裕綽々の笑みは消え、驚愕しており、目を見開いている。
 ディアンシーは、エカルラートたちの前に立ち、睨みつける。

「さぁ、わたくし……いえ、『わたくしたち』の勝ちです。みんなを……解放しなさい!」
「そ、そんな、あ、あああ、怒られる、怒られる、怒られる……。『母さん』に怒られるぅ……!」

 今までの態度とは異なり、酷く狼狽えているエカルラート。ディアンシーの言葉に耳を傾ける様子も見られない。本来は彼は、下っ端と比べ物にはならない位の小物のようだ。
 それを見兼ねて一人の男が現れる。

「エカルラート様、我々の負けです。大人しく『女王』の元へ戻りましょう」
「で、でも、怒られ」
「負けは負けです。さぁ」

 部下を呼び出した後、部下たちは怯えるエカルラートを連れて消えていった。彼の叫び声が、洞窟中に木霊していく。
 やがてそれが消えた後、男はこちらを睨み付ける。

「やるな、貴様ら。見くびっていたぞ。だがしかし、これは序の口に過ぎない。いつしか大いなる絶望が貴様らが呑み込み、支配するであろう。今回の勝利は貴様らにやる。だが覚えておけ、最後に笑うのは──俺たち『フレア団』だ」