二次創作小説(映像)※倉庫ログ

【メガシンカ】 ( No.33 )
日時: 2015/12/13 19:34
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: CjSVzq4t)
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 全てを飲み込む漆黒の夜を、紅蓮の炎が照らした。
 うねる火の音と、老若男女やポケモンたちの叫び声や悲鳴が、静かな世界に騒ぎを起こす。
 少年にはそんなことはどうでも良かった。ただ、紅蓮の炎の中に飲み込まれた愛する両親の安否が知りたいのだ。
 救助隊のポケモンたちや救助隊が必死に両親を探してはいるのだが、未だに両親の安否状態が不明なのだ。
 炎に飾られた屋敷に向けて、右手を伸ばす。そして、石のように硬くなっていた体を動かす。

「いけません、mari」

 両親に長年と仕えられている執事であるポケモンに背後から抱き締められ、身動きが取れなくなってしまった。
 必死に抵抗するものの、人間とポケモンの力の差は程遠い。少年は自分の無力さを感じ、唇を強く噛み締める。1滴の赤い液体が少年の顎を伝う。
 視界が歪んでいく。それは、屋敷から放たれた炎の揺らめきなのか、それとも自分が流した涙なのかは、少年にもよくわからなかった。

「お父さん……お母さん……っ」

 もう二度と、優しい手つきで撫でてくれない。もう二度と、自分の名前を呼んでくれない。もう二度と、優しい唇でキスをしてもらえない。

 もう二度と、宝石のように煌めく日常は戻らないのだ。

 ◆

 色とりどりに咲き乱れた美しい花。調和を目指して造りあげられたポケモンの噴水。まるで、荘厳な屋敷にある園庭のような美しい道。それが4番道路だ。
 完全なる調和を目指して造られた園庭としても有名でもあり、中央にあるポケモンの彫刻で出来た噴水が有名スポットであり、噴水の前にして写真を撮るトレーナーも少なくはいない。
 園庭の中に咲き誇る花の中には、花とよく似た小さなポケモン、フラべべが紛れていることもあるので気を付けよう。

「……だってさ」

 母からもらったタウンマップを広げ、その説明を一通り読み終えるカルム。
 初めてのジム戦から一日が経つ。明日に備えてポケモンセンターで宿泊をしたものの、ミアレシティまで同行することになったアイニスを起こすことには苦労をしたものだ。今は何とかなって起床をしているが、本当、彼には頭が上がらない。

「此処を越えたら、次はミアレシティだ。ミアレシティには確か、プラターヌ博士がいるんだよね?せっかくだから、僕も行ってみようと思ってるんだ」
「おお、心強き我がパートナーよ!お前も一緒に行ってくれるのか!これは嬉しい!もしオイラが働かされることになったら、お前がオイラの代わりに働いてくれ!」
「それはないから」

 瞳を輝かせてカルムの肩をがっしり掴むアイニス。
 初対面やハクダンシティでは眠い眠い言っていてあまり話すことはなかったが、徐々に打ち解けている。そんな気がした。

「よし!じゃあ次のステージにまっがー……」


 ゼェニィィィィィィィ!!!


 何処からともなく響き渡る鳴き声に二人は思わず目を見開いた。
 二人は顔を合わせる。

「今の……何だ?」
「あれだ……。怪獣メガ・バンギラスがカロス地方を滅ぼそうと4番道路に現れたんだ!」
「とにかく、行くぞ!」
「ああっ、待ってぇーカルシウムゥー!」

 ◆ 

 色とりどりに咲き誇る花に包まれて泣き出している水色の亀のようなポケモン。このポケモンがきっと先程の鳴き声を出したポケモンなのだろう。
 カルムは図鑑を取り出す。

『No.86 ゼニガメ 亀の子ポケモン
甲羅は身を守るだけではなく、丸い形と表面の溝が水の抵抗を減らす役割を持つ。相手の隙を見逃ず水を吹き出す』

「ゼニガメっていうのか……こいつ」
「何かカワバンガ!って叫ぶあのピザ好きの忍者亀みたいだな。鉢巻き付けてないけど。……ん?」

 アイニスの様子が変わった。
 それを見たカルムはゼニガメの首元に視線を落とす。
 よく見ると、透き通った透明の綺麗な色をした石が嵌められた首輪をしている。石の中には青色のシンボルがあり、とても神秘的だ。

「変わった石の付いた首輪をしているな……飼いポケなのかな?」
「これはきっと……特別な石なんだぞきっと。魔法か何か……」
「取り敢えず、このゼニガメの飼い主を探さないとな。……よし!」

 カルムは泣いているゼニガメを抱き上げ、立ち上がる。
 それと同時にゼニガメは泣き止んだ。

「安心しろ、必ずお前のトレーナーを見つけるからな!」

 そう言って微笑むカルム。
 直後、何かを思い出したかのようにバッグから木の実を取り出した。オレンの実だ。

「腹減っただろ?これを食べなよ」

 首を傾げ、差し出されたオレンの実を口に入れるゼニガメ。
 ムシャムシャと頬張り、美味しい!と言いたげにゼニガメは笑い声を上げた。

「可愛いなぁ、こいつ!よし、アイニス、行くぞ」
「オイラも行くのぉー?しょーがないなぁ、パーティーに参加しますよぉ」