二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 【メガシンカ】 ( No.38 )
- 日時: 2016/08/22 23:33
- 名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: 9/mZECQN)
- 参照:
急いで、ポケモンたちのいる場所へ向かうと、ポケモンたちは顔を上げていたり、慌てていたりしている。
顔を上げているポケモンたちに釣られるように上を向くと、天井にある窓ガラスが割れている。どうやら事件の発生地は此処から来ているようだ。
プラターヌたちはポケモンを確認する。カルムのハリマロン、ピカチュウ、セレナのフォッコ、アイニスのケロマツ、サナのエネコ、ティエルノのヘイガニ、トロバのフラベベ……。カルムたち6人のポケモンは残っているが、プラターヌ博士のポケモンたちがいない。ということは──。
「まさか……!」
「はい、フシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメ──メガシンカの可能性のあるポケモンたちが、ポケモンによって、誘拐されました」
「どんなポケモンだった!?」
「確か……朱色の鳥ポケモン、ファイアローです」
『No.16 ファイアロー 烈火ポケモン
獲物を襲いかかる時には、時速500キロのスピードを出す。興奮すると羽毛の隙間から火の粉を噴き出す』
「ファイアローだって!?でも、ミアレにはファイアローを持つトレーナーもいないし、ファイアローがポケモンを誘拐するなんて、聞いていない──」
「博士、TVをご覧下さい!」
助手がモニター画面を取り出し、ニュース番組に切り換える。
映像は、ヘリに乗った女性とそのカメラマンが映る。
『今、ミアレシティでポケモンを誘拐する鳥ポケモン、ファイアローがプリズムタワーのてっぺんにいます!』
場所はプリズムタワーへと変わり、屋上にはポケモンを拐った犯人ファイアローと、鷲掴みにされているフシギダネたちが映る。
フシギダネとヒトカゲは抵抗しているが、彼等はまだ幼いポケモンなので、最終進化系であるファイアローにとっては、それは痛くも痒くもないのだろう。無力と言うのは、とても残酷だ。
一方、嘴に挟まれているゼニガメは泣き出している。人見知りかつ臆病であるゼニガメの心は、恐怖心で支配されているのだろう。
フシギダネたちを見て、カルムの瞳は1ミリも視線を外さなかった。
そして、何かを決心したかのような表情をして、部屋を出ていく。
「ハリマロン、ピカチュウ、行くぞ!」
ハリマロンは強く頷き、ピカチュウは仕方無いわね、と言わんばかりにカルムの後についていく。
その行動に、プラターヌたちは驚愕した。
「ちょっ、お隣さん!?」
「カルボナーラ、何処行くんだー?」
◆
外に出た時にはもう、渋滞の嵐だった。老若男女やそのポケモンたちがプリズムタワーに視線を送り、多くのトレーナーたちは携帯で撮ったり、大丈夫かしら……と心配を呟く人たちばかりだ。
工事をしている作業員も、仕事をしている場合ではないことをわかっているのか、通せんぼをしている人はいない。
その人並みをカルムたちは掻き分け、プリズムタワーが建設されてあるメディオプラザへと辿り着く。よくよく見ると、プリズムタワーの高さを改めて知る。だが、此処で立ち止まる訳にはいかない。しかし、マスコミや警察がプリズムタワー前を遮っている。
「何とかいけないかな……」
それを聞いて隣にいる少年と幼女は声を上げた。
「ええっ、まさかおにいちゃん、あそこにいこうとしてるの!?」
「危ないですよ!?」
金髪に眼鏡を掛けた、カルムよりも背の低い少年で、背中には重そうなリュックを背負っている。
幼女も金髪であることから、二人は兄妹なのだろう。
少年の言う通り、確かにプリズムタワーの屋上に上ることは危険だ。下手をすれば、自分を殺めることになる。
だが、カルムの気持ちは変わらなかった。それに──
「一番危ないのは、フシギダネたちの方だよ。特に、あいつ──ゼニガメは、人見知りで臆病なんだ。だから今、あいつの心は怖い思いでいっぱいだと思う。だから、僕はあいつを安心させたい。助けたいんだ!!」
カルムの瞳には、嘘偽りのない、強い意思が込められた黒をしている。そして、軽い気持ちではない、真剣な表情である。普段のカルムとは違う、姿勢だ。
それを見て少年と幼女は目を見開く。そして、
「それなら、ぼくたちに任せて下さい!」
◆
プリズムタワーの正面にファイアローたちが、周りの人たちの注目を浴びせている為、プリズムタワーの後ろには、誰一人もいない。その隙に、カルムたちは誰にも気付かれないように行き、非常階段の元へ行く。どうやらロックされてある。
「此処から、警察やマスコミに気付かれずに行けますよ」
「でも、ロックされてあるけど……」
カルムがそう言うと、少年がふっふっふ、と不敵な笑みを浮かべると、眼鏡がキラリと光り、少年の顔立ちを隠す。
「サイエンスが未来を切り開く時!シトロニックギア、オン!」
少年はリュックに付いてあるボタンを押す。すると、3本の指が入った腕が少年のリュックから現れ、ロックを解除させる。
「これで入りますよ!」
「よ、よくわからないけど、科学の力ってすごい!」
「あたしのおにいちゃんのはつめいなんだ!さ、おにいちゃん、はやくはやく!」
「サンキュー、二人とも!」
兄妹に礼を述べ、カルムたちはプリズムタワーの中を駆け抜ける。
その様子を、兄妹は心配そうな、信頼しているような複雑な顔で見送っていた。