二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 【メガシンカ】 ( No.39 )
- 日時: 2016/08/22 23:38
- 名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: 9/mZECQN)
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気が付けば空は茜色の夕焼けとなっていて、もうすぐ夜になる。
カルムとカルムのポケモンたちの後を追い、メディオプラザに辿り着いたセレナたち。しかし、前は人混みばかりだ。
何とか人混みを掻き分け、プリズムタワーの正面に着く。
「カルタロは何処なの?」
「まだ来ていないのでしょうか……」
そんな話をする中、セレナが声を上げ、指を指す。
「見て!お隣さんよ!!」
プリズムタワーを駆け抜けるカルム。そして、ハリマロンとピカチュウが、周りの視線を集中させる。
そんなことを気に留めず、あるいは無我夢中なのか、カルムたちはプリズムタワーの屋上目掛けて走っている。
『ご覧下さい!子供とハリマロンたちが走っています!囚われたポケモンたちを助けようとしているのでしょうか!』
叫ぶマスコミの声も気に留めず、屋上へ辿り着いた。
茜色の夕焼けがカルムの背中を照らし、より勇まさしく感じさせる。
それに気付いたファイアローはこちらを睨んでいるが、カルムはゆっくりと歩み寄る。
「なぁ、ファイアロー。ゼニガメたちを放してくれないかな?このままじゃゼニガメたちが危ないし、君だって本当はこんなことをしたくなかったんだろ?」
いきなり刺激を与えたら、ゼニガメたちが怪我をしてしまうので、優しい口調で宥める。
「大丈夫、攻撃はしないから」
何とか微笑みを保ったまま、カルムはファイアローとの距離を縮める。
しかし、ファイアローは羽を羽ばかせ始め、フシギダネたちを地上に振り落とした。
「……!フシギダネ、ヒトカゲ!!」
しかし、警察が繰り出した鳥ポケモンにより、フシギダネたちは落下せずに済んだ。
今残っているのは、ゼニガメだけだ。
ゼニガメはまだ泣き続けている。
「ゼニガメ、僕の声が聞こえるか?」
ゼニガメを落ち着かせる為にカルムは呼び掛ける。
カルムの少し高めの声を聞いて、ゼニガメは泣き止んだ。そして、こちらを見る。
「今行くから、待ってろよ」
待ちわびていたかのように、溢れる歪んだ緋眼でゼニガメは強く頷いた。
それを見てカルム、ハリマロンとピカチュウはファイアローに近付く。
しかし、ファイアローは羽ばたき始め、翼でカルムたち目掛けて攻撃する。
「……!」
ファイアローの攻撃を食らうカルムたち。しかし、ファイアローは休む間も与えず、カルムとハリマロンたちに攻撃を仕掛ける。
「……痛いッ……!」
途絶え苦しむカルムたち。それでも尚立ち上がる。
それをただただ眺めるゼニガメは思った。この人たちは自分を助けようと、体を張って戦っているんだ。本当は怖いのに。なのに、その想いを封印して自分を助けようとしているんだ。
だったら──!
決心するゼニガメ。
ゼニガメはファイアローに挟まれた嘴に噛みついた。まだ鋭い歯ではなかったが、ファイアローにはとても効いたようで、ファイアローはゼニガメを放した。
しかし、
「!ゼニガメ!!」
そこは空中だった為、ゼニガメは落下した。何もない、空っぽな、高いタワーから。
ゼニガメの流した涙が空中を舞う。
それを見たカルムは何も考えずに、ゼニガメの後を追ってプリズムタワーから飛び降りた。
飛び降りた。
飛び降りた。
飛び降りた。
「「「「「「お隣さん/カルタロ/カルヤン/カルPさん/カルシウム/カルム!!」」」」」」
「おにいちゃん!!」
「そんなッ……」
セレナ、アイニス、サナ、ティエルノ、トロバ、プラターヌ、兄妹、マスコミ、そして、目撃者までもがそう驚愕せざるを得ない。
それはそうだろう。高いタワーから自ら飛び降りるなんて出来る訳がない。自殺行為である。しかし、カルム──彼はそれが出来るのだ。ゼニガメを助ける為とはいえ、こんな行動が出来るとは大胆である。
カルムはゼニガメを抱き抱える。
「ほーらもう大丈夫……って、えぇ!?」
本人も気付いておらず、無我夢中だったらしい。
それを見たハリマロンはつるのムチでカルムの足を掴む。危機一髪である。
ピカチュウはハリマロンの背後に周り、ハリマロンが落ちないように掴む。
しかし、ハリマロンはまだ小さく、カルムとゼニガメを助けるような力は備わっていない。
ハリマロンとピカチュウも落下する。
下を見ると、鼠色のアスファルト。落ちたら死亡確率は高い。命はないだろう。
夕焼けは沈み、月明かりを翳す夜になる。
誰もがもう駄目だ、と思った──