二次創作小説(映像)※倉庫ログ

【メガシンカ】 ( No.40 )
日時: 2015/12/13 19:50
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: CjSVzq4t)
参照:

 ……。
 …………。
 ………………。
 堕ちた衝撃音がない……。
 もしかして僕、死んだのか?
 そりゃあそうだよな、だって、あんな高い塔から飛び降りたんだ。そう考えるのは同然だ。
 だけど、その時の僕はゼニガメを助けるのに必死だったから、つい思わず飛び降りちゃったからな……。
 そういえば、ゼニガメたちは大丈夫だったかな?生きているかな?僕がちゃんと抱き抱えたから、大丈夫だよな?
 当たりが真っ暗で何も見えない……。
 じゃあ、此処は天国──

「いいえ、貴方は生きておられます」

 そこでカルムの瞳孔は開いた。
 視界はミアレシティの夜を映す。まだ、空中にいる感覚はあるが、死んでいないようだ。
 胸元にいるゼニガメ、ハリマロン、ピカチュウは嬉しそうに声を上げた。
 
「ハリマロン、ピカチュウ、ゼニガメ……」

 顔を上げる。
 ポケモンと目が合った。
 夜なのでよく見えなかったが、月明かりがポケモンの姿を照らしているので、大体は見えた。
 緑色の頭部に、白い身体、大きな緋眼のポケモンだ。体型は人型に近く、カルムよりも背丈が高い。
 腕の肘は鋭い刃となっており、どんなものでも切れるだろう。
 ヒラリ、と靡く白いマントは、まるで純白の騎士ホワイトナイトだ。
 そのポケモンを見て漸く気付く。自分はこのポケモンに抱えられている。助けられているのだと。

 ポケモンは地上に着地して、カルムをゆっくりと降ろした。
 ハリマロン、ピカチュウも降りる。
 ゼニガメはカルムに抱えられたままで、ぐしゃりと顔を歪め、泣き出した。

「よーし、もう大丈夫だぞ」

 カルムがゼニガメをあやすと、セレナたちがやって来た。

「「「「「「お隣さん/カルタ/カルタロ/カルやん/カルPさん/カルム」」」」」」
「みんな……」
「カルタロ、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!ファイアローとは和解出来なかったけど、どうってこと──」

 カルムの言葉を遮り、セレナはカルムの肩を掴み、揺さぶる。

「本当に!?大丈夫なの!?」
「え?あ……大丈夫だよ」

 それを聞いたセレナは涙を流し、安堵したかのように呟く。

「心配したんだから……」
「それに、あのポケモンが助けてくれたから──」

 カルムはポケモンがいる方に振り返る。が、そこには誰もいない。無人だ。

「あれ?さっきのポケモンは……」
「とにかく、結果オーライだ!ゼニガメを助けてくれてありがとう!カルム、君はポケモンと軽症を負っているから、ボクの研究所に来てくれ。もう遅いから、君たちも研究所で泊まっていきなさい」
「「「「「「はい/ラジャー」」」」」」

 カルムたちは歩き出す。しかし、ハリマロンはポケモンがいた場所をずっと眺めている。
 それに気付いたカルムはハリマロンに声をかける。

「どうした?ハリマロン、行くぞー」

 カルムの声に反応し、ハリマロンは急いでカルムたちの後を追う。

 ◆

 プリズムタワーの事件は幕を閉じ、人混みやマスコミたちがいなくなっても尚、兄妹は残っていた。ずっとプリズムタワーの屋上を眺めたままだ。
 あの少年は……なんという大胆な行動力があるのだろう。ポケモンを助ける為とはいえ、まさか飛び降りるなんて思いもしなかった。その行動が先程まであったこととは思えない。
 幼女はキラキラと瞳を輝かせながら、兄に声をかける。

「ねぇねぇ、おにいちゃん!さっきのおにいちゃん、すごかったね!ポケモンをたすけるために、プリズムタワーからとびおりたんだよ!」
「うん……。ぼくには出来ないことだよ。あの人、勇気があるんだね」
「あーあ、アイおにいちゃんにもみせてあげたかったなー」
「仕方無いよ、アイだって暇じゃないんだ。それに、明日帰ってくるって言ってたから、明日そのことについて聞かせてあげれば良いじゃないか」

 幼女は兄の発明仲間である青年が大好きだった。皮肉屋で、少しぶっきらぼうで、人付き合いを好まない人物ではあるが、それでも軽くあしらうだけで、追い払ったりはしない。何より、時々彼が見せる不敵な笑みが幼女は大好きなのだ。

「うん、そうする!はやくあしたにならないかなー。ねープラスル!」

 赤色の兎のようなポケモンが幼女の肩に乗り、顔を合わせて笑う。
 彼がくれた、幼女の始めてのポケモンである。
 幼女とポケモンの笑顔に釣られて、兄も微笑んだ。