二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 【メガシンカ】 ( No.41 )
- 日時: 2015/08/18 00:30
- 名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: ai5/g0Y4)
- 参照:
誰かが身体を揺さぶる。眩しい光が閉ざされている瞳孔の中でもよくわかる。
それでもまだ、眠っていたくて、瞳を閉じる。
しかし、揺さぶりは徐々に激しくなっていき、眠れなくなってしまう。
まだ重い瞼をゆっくりと開けると、三匹のポケモンが顔を覗き込んでいるのがよくわかる。しかし、今はそれどころではなかった。
カルムは毛布に顔を覆い、また一眠りしようとする。
「……あと、ちょっとだけ……」
昨日はプリズムタワーで奮闘してきたので、大分疲れが溜まっている。ゼニガメたちを助ける為、高い塔を登ったこと、ファイアローを説得するのに必死だったこと、そして──ゼニガメを助ける為に自ら塔に飛び降りたこと。
ファイアローによってカルムとハリマロンたちはダメージを受けたものの、運が良く軽症で済んだらしく、その後研究所にいる多分ね……否、タブンネによって治療をしてもらい、宿泊もさせてもらい、今に至る。
主人が中々起きてくれないので、ハリマロンたちはぶーぶー叫び始める。
「もう少し……」
それでもカルムはまだ起きてくれそうにない。
苛立ちを覚えたピカチュウだが、何かが閃いたかのようにニヒヒ、と笑い、カルムが寝ているベッドの上に行く。
寝息を立てているカルムを見てほくそ笑んで、
▼ピカチュウは でんきショック を繰り出した!▼
「あああ$§☆▽@£%★●↑▼★◎⊆¬∠∀∋∈¬⊃*仝‖〕!!??」
▼効果は 抜群だ! カルムは倒れた!▼
「わかった!わかったから、もうでんきショックはやめろ!!」
ベッドから飛び上がり、あたふたと叫びだすカルム。
ピカチュウはよろしい、と言わんばかりに頷いて、カルムのベッドから降りた。
ヤヤコマのつつく攻撃よりもとても痛い。もう二度と、痛い目にポケモンの攻撃を食らって起床することはない……そう思っていたが、それは間違いだった。
カルムはしぶしぶとパジャマを脱ぎ、青いジャージに着替え始める。
その様子をゼニガメはくすくすと見ていた。
◆
寝室を後にして、プラターヌのいる3階へ向かうカルム。帽子の上にはピカチュウ、左肩にはゼニガメが乗っている。ハリマロンはカルムの足元にいて、徒歩している。
ゼニガメはプラターヌのポケモンなのだが、今朝から、カルムのいる寝室にいたり、カルムの肩に乗ろうとしたり、カルムにくっついている。こうして肩に乗っていると、まるで自分のポケモンのようだ。
ゼニガメは人見知りですぐに人やポケモンと打ち解けることには困難らしいが、昨日出会ったばかりのカルムに懐いている。プリズムタワーで助けたことが、影響しているのだろうか。ともあれ、ゼニガメと仲良くなれて嬉しい。
暫く廊下を歩いていると、プラターヌがやって来た。
「カルム、ちょうど良かった!話があるんだ」
◆
エレベーターの扉が機械音混じりに開き、フロアに入る。プラターヌの部屋だ。
よく見ると、フシギダネとヒトカゲがいない。
「フシギダネとヒトカゲなら、彼等に託したよ。フシギダネはセレナ、ヒトカゲはアイニスに」
カルムの脳内を聞いていたかのように発言をするプラターヌに、思わず心臓が脈を打った。
セレナとアイニス──カルムと同じく御三家ポケモンをもらった二人組は、カルムを差し置いてカントーの御三家をもらったらしい。
彼等なら、フシギダネたちと楽しい旅、そして、いつかはメガシンカ出来るような深い絆を築いていくだろう。アイニスの方は心配だが。
「カルム。君は昨日、自らの危険を顧みず、ファイアローからフシギダネたちを助けてくれたね、ミアレを代表して言おう、本当にありがとう!」
「いやぁ、そんな……。その時はただ、無我夢中だったから……」
照れくさそうに後頭部をかくカルム。実感はなかったものの、そう言われると何だかくすぐったい。
「そこで本題だ。カルム、このゼニガメと一緒に旅をする気はないかい?」
……え?
カルムの思考は止まった。
「聞いている通り、このゼニガメは人見知りでちょっと臆病なところがあるんだ。だけど、君とゼニガメは昨日出会ったばかりだというのに、ゼニガメは君のことが大好きなんだ。恐らく、君がプリズムタワーで命を掛けて助けてくれたことが、彼の心を動かせ、ファイアローに立ち向かったんだ。君が此処を去れば、ゼニガメは悲しむだろう。無理にとは言わない。だけど……もし、その気があるなら、ゼニガメと旅をしてみないか?」
カルムは左肩にいるゼニガメは見詰める。
ゼニガメはきょとんと大きな赤眼を丸くし、首を傾げてこちらを視ている。それを視てカルムは可愛いと思ってしまった。
始めて出会った時、泣き出しているゼニガメを何とかしてあげたいという気持ちが強かったので、捕まえようとは思っていなかった。それはプリズムタワーの時でも一緒だった。しかし、こうして一緒にいるうちに、旅を通してゼニガメともっと仲良くなりたいという感情が芽生えていた。メガシンカが出来るからという訳ではなく、真っ直ぐに、向き合いたいと思った。
だから、カルムの応えは決まっている。
カルムはゼニガメを抱き抱え、目と目を合わせるようにする。
そして、恐る恐る口を開く。
「ゼニガメ……。僕と一緒に来るか?」
ゼニゼェーニ!!
迷い一つない、応えと笑顔。
それを見たプラターヌはうんうん、と頷き、ゼニガメのモンスターボールを差し出した。
「これが、ゼニガメのモンスターボールだよ」
「……!ありがとうございます!」
「ゼニガメが首輪に付けている石──カメックスナイトも君に託そう。君なら、ゼニガメとマーベラスな絆が築けると信じてね。君とゼニガメ……一体どんな旅が出来るか、楽しみだ!」
「よろしくな、ゼニガメ!」
ゼニゼニ!
新たなパートナーは笑顔で応えた。