二次創作小説(映像)※倉庫ログ

【メガシンカ】 ( No.44 )
日時: 2015/12/13 19:58
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: CjSVzq4t)
参照:

 カルムのポケモンにゼニガメが加わり、更に旅に楽しみを覚えてきたカルム。腰に付いてある3匹のモンスターボールを見ると、思わずにやけてしまう程だ。
 そして、メガシンカ……。まだキーストーンは持っていないものの、いつかゼニガメと深い絆を築いて、立派なメガシンカをさせたい。
 そんな思いを胸に、1階に降りると、一人の男性がソファーに腰かけていた。薄紫色の髪に、白のスーツを着た男性だ。20代ぐらいだろうか。
 ネクタイを巻いておらず、ボタンを留めていないせいか、鎖骨が見える。
 男性と目が合うと、男性はソファーから立ち上がり、こちらに歩み寄る。
 近くで見ると、当然だがカルムの身長を軽く越えていて、整った顔立ちをしている。
 男性は微笑みながらカルムに声を掛ける。

「ねぇ、君。プラターヌ博士は此処にいるかな?」
「え?あ……。さ、3階にいますよ……」

 声を掛けられ、思わず間抜けな声が出てしまった。
 しかし、それを気にせず、男性はありがとう、と礼を述べ、カルムと擦れ違った。
 そして、エレベーターに乗って姿を消した。
 カルムはそれをずっと見詰めていた。

「お隣さん」
「ひゃっ!?」

 背後から声を掛けられ、やや甲高い声を上げてしまった。元々……と言うより、まだティーンエイジャーの前半であるカルムの声は少し高めなので、あまり変わりはない。
 振り返ると、オーク色の髪をポニーテールに纏めた少女がいた。服装はの水色とピンクを基準としたキャップの上に赤のサングラスを乗せていて、ピンクのタンクトップに白いショートパンツに黒レギンス、スニーカーを履いたカジュアルな服装をしている。
 見たことのない少女だが、髪色と顔、そして、トートバッグを手に持つ姿には見覚えがあった。

「そんなに驚かなくても良いじゃない。お隣さん、アタシよ、セレナ」
「えっ、セレナ!?君どうしたんだよ?イメチェンなんかして」
「この先、道が険しくなって来るらしいから、服装を変えたの。あの服装で行くと色々不便になりそうだし」
「へぇー服には色々な役割があるんだな」
「この服でミアレになると、ちょっと浮いてるけどね。……お隣さん、話したいことがあるの。『カフェ・ソレイユ』で待っているわ」
「話したいこと……?此処じゃ駄目なの?」
「ええ、アタシと貴方だけの話よ。じゃ、アタシ先に行くから、『カフェ・ソレイユ』で会いましょう」

 オーク色のポニーテールを揺らしながら、セレナは研究所を出た。
 カルムは暫く立ち尽くしていた。
 セレナの服装と髪型を見て、カルムは思った。服は着るだけではなく、動きやすくしたり、温かくさせたり、場所の雰囲気を変えてしまう不思議な力があるんだな、と。
 セレナはオシャレにも気を遣う性格であることを改めて確信した。
 ……それにしても、話とは一体何だろうか。場所を変えて話をするということは、それほど秘密の話なのだろうか。『アタシと貴方だけ』と言っていた位だし……。
 ま、いっかとカルムは研究所を後にした。

 ◆

 マップによると、カフェ・ソレイユはポケモン研究所を出て左側にある。
 ミアレシティはストリートだけでも広いし、カフェも沢山建てられているので、マップは本当に役に立つ。
 マップをしまい、顔をあげると、大きなTVを見つけた。幾つものの、映像が流れている。
 今流れている映像は、女性トレーナーとポケモンが楽しそうにパフォーマンスをしている大会を生中継で映した番組をやっている。

「すごい……人とポケモンの絆を照らしているみたいだ」

 ふと、現実に引き戻される。
 セレナと約束をしていたんだった。
 カルムは急いでカフェ・ソレイユに向かった。

 ◆

 扉を勢いよく開けると、カランカラン、と扉のベルが激しく鳴り響いた。

「ごめん、セレ──」

 セレナは立ち尽くしていた。否、見ていたのだ。二人組の男と女を会話をセレナは聞いていた。
 男は朱色の松葉のような特徴的な髪型をしていて、先程の青年とは対照的の黒いスーツを着ている。とても凶悪そうな雰囲気と眼差しで、ゼニガメが見たらきっと泣き出すだろう。
 女は灰色の髪に、白い服を着ている。後ろに羽らしきものがあるが、ショートパンツを履いていることから、全体的に動きにくいという訳ではなさそうだ。ピンク色のトートバッグを抱えている。凶悪そうな男とは対照的に、麗しき雰囲気が漂っている。

「あの人たちは……」
「あの男の人はフラダリさん。彼はホロキャスターって映像データの受信装置を開発したフラダリラボのトップで、カルネさんは知ってるでしょ。世界的にすごい人気の大物女優さんだもの。知らない人なんかいないわ。でも、どういう組み合わせかしら?」

 セレナが説明を終えると、男──フラダリは女──カルネに言い出す。

「貴女のデビュー作での少女の演技は素晴らしかった。いつまでも、若い役を演じたいと思いませんか?」
「おかしな質問ね。若さ=美しさとは限らないし、何でも変わるのよ。おばあちゃんになったら、それを楽しみつつ演技したいわ」
「いつまでも美しくあるのが、女性として選ばれた貴女の責任なのでは?私なら世界を永遠のものとして、全ての美しさをいつまでも保つかもしれない。世界が醜く変わっていくのは堪えられません」

 フラダリの質問は意味深であった。まだ子供である二人にはわからなかったが、若さや美しさに拘りを持っているようだ。
 老化に負けず、見た目を若く、美しくすることは出来る。しかし、若さと美しさはやがて散るもので、いずれなくなってしまうことだ。若い人はやがて老化してゆき、生命を終える。美しさはやがて醜くなり、その面影はなくなる。
 カルネはフラダリに負けずはっきりとした眼差しと主張をしている。大物女優と呼ばれることだけはある。
 子供である二人には、二人の会話に首を突っ込んではいけない。
 二人がその様子を見ていると、フラダリと目が合った。こちらを睨んでいるようで、恐怖を感じた。
 カルネもフラダリの視線に釣られ、こちらを見る。

「おや、君たちはプラターヌ博士に選ばれた子供たち。私はフラダリ。プラターヌ博士の元でポケモンについて研究所をしています。こちら、カロスが誇る大女優のカルネさんだ。その演技で多くの人を感動させている……。つまり、自分以外の人を誰かを幸せにする為に生きている。ああ!みんなそのように生きれば世界は美しいのに!では、失礼します」

 また意味深な発言をして、カフェ・ソレイユを出ていくフラダリ。
 彼には怪しさと恐怖の漂う、他の人とは違うオーラを放っていた。