二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 【その男、大富豪であり、プレイボーイ】 ( No.79 )
- 日時: 2015/08/22 17:24
- 名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: wyieLVt/)
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突如、襲いかかるポケモンの攻撃。あまりにも唐突すぎたのでポケモンを繰り出す時間すらくれなかった。
もう駄目だ、と感じて瞼を閉じるセレナとアイニス。
どれ程時間が経ったのだろうか。衝撃音は聞こえたものの、痛みは感じられない。
恐る恐る目を開けると、砂ぼこりと白いマントが視界に入る。人型に近いが……あれは、ポケモン?
斬りつけるように腕を上げると同時に、白い腕のプレートから赤い発光を起こし、砂ぼこりを沈ませる。
赤い発光は残像となり、消える。
セレナたちは確信した。ポケモンだ。
緑色の頭部に刃のように鋭い肘、二つに分けられた白いマント。その姿は正に、純白の騎士と言っても過言ではない。
何処かで見たポケモンによく似ている。確か──
「エルレイド……?」
シュトゥルムの執事のエルレイドによく似ている。肘の色やマントはしていないものの、緑色の頭部や体型、そして、刃のような肘。何処をとってもエルレイドだ。
ポケモンは赤眼を光らせ、男とフーディンを見据えている。
「あーあ、邪魔が入ったか。……!こいつ、もしかしたら『あいつ』のポケモンか?邪魔にならないようにしたっていうのに、有名になった挙げ句『あれ』も使えるようになるなんて。……まぁ、良いや」
ぶつぶつと呟く男。その言葉をセレナとアイニスには理解は出来なかった。
「こいつをヤッてしまえば、目的が果たせられるし、最近人間いじめばっかりしていて物足りないと思ってたんだよね……。お前なら、相手になるかな?」
男が嗤うと同時に、フーディンの額に付けてある石が光りを帯びる。メガストーンだ。
セレナとアイニスもメガストーンを所持しているが、こんなに強い光を放つとは知らなかったし、聞いたこともない。
フーディンの体全体を殻が包み込み、フーディンの姿はなくなる。それでも光は帯びたままだ。
殻を突き破るかのようにポケモンが現れると同時に、頭上に七色のシンボルが浮かび上がった。
「──メガシンカ、完了」
二人は目を疑った。フーディンが違う姿に変わっている。
口元から長い白髭が生えていて、額にあったメガストーンはなくなり、代わりに赤い石を嵌めている。座禅を組んでいて体は宙に浮かび上がり、頭上から五つのスプーンが浮いている。
これが進化を越えた進化、メガシンカだというのか。今のセレナたちには驚愕と興奮が隠せられない。
「いきな、『メガフーディン』」
メガフーディンとポケモンのバトルが繰り広げられる。
メガフーディンが遠隔攻撃で攻めてくるのに対し、ポケモンは接近攻撃で対抗をしている。実力は互角といったところだろうか。
セレナとアイニスはそのバトルに視線が外せないでいた。
そして、メガフーディンとポケモンが同じタイミングで攻撃を繰り出そうとしたその時──。
『スティーブ、何をしている。『ディアンシー』の捜索はどうした?』
「リーダー、そんな堅苦しく言わないでヨー。『ディアンシー』の捜索なんて、リーダーたちがやれば良いじゃん。それにボク、『ディアンシー』になんて興味無いし」
『あの人の命令に背けば、一体どうなるかわかっているだろう?』
「……はいはい、わかったよ、今から戻るから」
男の通信機から聞こえた謎の声により、バトルは中断される。
メガフーディンの姿が変わり、フーディンに戻る。
「ということで、バトルはお預け。次回をお楽しみにって感じかな。それにしても、リーダーは本当に真面目だなぁ」
男とフーディンは踵を返そうとする瞬間、何かを思い出したかのようにセレナたちを捉える。
「あ、そうそう。君たち、今日は運が良いね。こいつに守られたり、リーダーの通信機でバトルは中断されたり……。だけど、今度会った時は容赦しないからね?」
黒笑を浮かべた男──スティーブはフーディンのエスパー技により、跡形もなく姿を消した。
スティーブのフーディンがメガシンカしたところを目撃した驚愕と興奮は未だに残っている。あれがメガシンカ……。姿だけではなく、能力まで開花される不思議な進化。実際に見てみると、こうなるなんて……。
「おーい、君たち」
背後から聞こえる男声により、驚愕と興奮は冷めていき、現実に引き戻される。
振り向くと、シュトゥルムがこちらに向かって走ってくる。
「シュトゥルムさん」
「大丈夫だったかい?」
「ええ、でもトリミアンが……」
「『アルフレッド』のことなら、心配ないよ」
「アルフレッド?」
ワンワン!
先程までスティーブによって洗脳されていたトリミアンがシュトゥルムを押し倒し、シュトゥルムを舐める。
あはは、くすぐったいよ。シュトゥルムは笑う。
トリミアンは無事のよりだが、何故洗脳が解けていたのだろうか。
「もしかして、このトリミアンはシュトゥルムさんのですか?」
「ああ。名前はアルフレッド、番犬なんだ。中庭に何かが起きないように見張ってもらっているんだ。だけど、まさかこうなるなんて思いもしなかったよ」
「だけど、さっきまで変な奴に洗脳されてた」
それを聞いたシュトゥルムは悲しそうな顔を浮かべ、アルフレッドの頭を撫でる。
「そうか……アルフレッド、辛かっただろう。気付かなくてごめんな。そして、君たちにもお詫びをしないとね。これは僕の責任だ」
「気にしないで。シュークリームさん、エルレイドにそっくりなポケモンがその犯人を追い払ってくれたし。ほら、あそこ──」
謎のポケモンが現れた方に振り向くと、何もなかったかのように無人だった。
「エルレイドにそっくりなポケモンか……。別個体のエルレイドのことかな?僕にも執事のエルレイドがいるけど、彼は戦闘向きではないからね。さ、宮殿の中へ戻ろう」
シュトゥルムが促すと、アイニスはあることに気付く。エルレイドがいないのだ。
「エルレイドは?」
「みんなを避難しているよ。エルレイドにも、このことを教えないとね」
怪しいと感じた。エルレイドらしきポケモンが現れたのと同時に、シュトゥルムのエルレイドがいない。
セレナはシュトゥルムの言葉をそのまま受け止めているようだが、何かが引っ掛かる。
アイニスはシュトゥルムを睨みながら、宮殿に戻る。