二次創作小説(映像)※倉庫ログ

4-1は ( No.686 )
日時: 2015/09/26 16:41
名前: 涼月@いちにいですな ◆VUQvTq9Vpk (ID: RCPVhHnh)

番外、>>526の別視点。

ーーーとある首吊り審神者のお話。

自分の部屋で、折れてしまったそれを眺めた。
赤い血が、手にべったりとつく。
彼は、どこにもいない。
あの嬉しそうな笑顔も、儚い横顔も、透き通るような白も…
もう、もう。見ることはない。
ああ、なんで彼はあんなに優しかったんだろう。
涙が溢れてきたところで、戸を叩く音がした。
「…はい」
「あるじさまー!あそびましょー!」
「大将!紙とぺん持ってきたぜ!」
「あ、僕も主君の絵みたーい!」
…ああ。
そっか。
皆、優しいなあ。
「うん、遊ぼっか」
今作れる笑顔で微笑むと、画用紙とペンで絵を描いていた。

その時も変わらずに折れたものを眺めた。
赤い血が、手にべったりとつく。
ふと、窓が目に入った。
高いなあ、こっから落ちたら彼のところに行けるのかなあ。
そう考えて窓を開けたところで、また戸を叩く音がした。
「主、ご飯持ってきたよ」
「あ、みっちゃん…」
「ごめんね、特に何もできなくて」
…ああ。
そっか。
みっちゃん、考えてくれてるんだ。
「ううん、こっちこそ」
苦笑いをすると、箸を割った。
…邪魔されちゃったなぁ…

その時も変わらずに折れたものを眺めた。
赤い血が、手にべったりとつく。
ふと、マッチと油が目に入った。
これで部屋を燃やせば、いけるかなぁ。
そう考えて、また戸を叩く音がした。
「ルイ、茶が入った」
「鶯丸」
「最近寝れていないようだが、大丈夫か?」
…ああ。
そっか。
鶯丸、観察力が鋭いなぁ。
「ありがとう」
苦手な茶を手にとり、すすってみた。
…また邪魔されちゃった…

その時も変わらずに折れたものを眺めた。
少し乾いた血が、手にべったりとつく。
ふと、包丁が目に入った。
これで腹かどこか切れば…
すると、また戸を叩く音がした。
「ルイ殿、お邪魔させていただきます」
「いちにい」
「…その、私が聞けることならなんでも聞きます。話したくなければよいのですが…」
…ああ。
そっか。
いちにい、心配してくれてるんだ。
「…うん…」
彼の隣で、ぼろぼろ泣いた。
…今日も、ダメだ…

その時も変わらずに折れたものを眺めた。
少し乾いた血が、手にべったりとつく。
ふと、縄が目に入った。
これなら。これなら。
やっぱり、また戸を叩く音がした。
「主、お邪魔させてもらってもよろしいでしょうか」
「長谷部」
「……俺が、ついていながら申し訳ございません」
…ああ。
そっか。
長谷部、責任背負っちゃったんだ。
「……」
その質問には、答えなかった。
…どうして皆、じゃまするの…

その時も変わらずに折れたものを眺めた。
乾きかけの血が、手につく。
もう、死に方を考えることも嫌だった。
窓の外で、雪が降った。
「……」
「御手杵」
扉の向こうにいるんだ。
…ああ。
そっか。
御手杵、黙っててくれるんだ。
「きれい…」
泣きながら、雪を見た。
…ありがとう…

その時も変わらずに折れたものを眺めた。
乾きかけの血が、手につく。
また、戸を叩く音がした。
「「「ルイ」」」
「…三人とも」
「ゲームやろうぜ」
「神体これくしょん!」
「入るぞ」
…ああ。
そっか。
三人とも、優しいなぁ。
「だね」
笑顔はつくらなかった。
…その日まで…

その日、折れたものを手から放した。
血は乾き、手につかない。
戸を叩く音も聞こえない。
「…ごめんね、みんな。あたし、もう嫌だ…」
夜中の部屋、ぼそりと呟いた。
「ああ、鶴丸。もうそっちにいくから」
最後の手紙を折り畳む。
『短い、楽しい人生でした。皆、今日までありがとう』
あのとき見つけた縄が天井から下がってる。
その輪を首に通す。
これで、終わりだーーー
日が昇るとき、私が最後に聞いたのは。
「…主、主?ご飯だよ…って…鍵があいて……」