二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- セントウ-vier- 前書き ( No.103 )
- 日時: 2016/01/27 18:43
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FgvmxuFA)
前書き de 注意事項
???
「のっけから前書きなんだね。」
私
—私の逃走中もいよいよ本番。核心部分に入ってくるからね。
???
「だね。ここから先は戦闘シーン満載だし、それに、この回からしばらくは“死者続出”だからね。」
私
—えー、まず、確実に“諸注意(>>1)”を閲覧してから読んでください。大事なことなのでもう一度。“諸注意”を読んでから読んでください。
???
「大切なことが書かれてるから確実に読んでね? めんどくさくてかっ飛ばして読んでなくて、知らなかったから助けに向かうとかやめてね?」
私
—あまりにも多い人数に救援とかやられたら、キレて打ち切る可能性だってあるしね。忘れがちだと思うけど、これはもう終わった話。過去回想だからね。過去にどうやって助けを送れと?
???
「…第一、間に合ってないしね。今来られても。少しのネタバレするけど、これからの更新で第一の犠牲者出たわけだし。」
私
—次に、仮にそちらが過去に干渉できるような人材がいても、そちらの都合に合わせるつもりはないです。これは諸注意の項目に該当するけどね。
???
「作者である彼女の都合をねじ曲げてお話を作って、彼女の逆鱗に触れて、楽しみにしている読者のみんなをがっかりさせる。そうして打ちきりに踏み切らせてもいいなら、僕は構わないけどね。」
私
—それと、感想を送る時は見てから一度水かなんか飲んでから感想を送ってください。そのままの感情で暴力的な表現を送られてきても困ります。いくら自分の嫁が死んだからといって恨まれても困る。私だって辛いけど、ちゃんと展開は考えてるからね。
???
「…まぁ、胸くそ悪い展開にしてるのは申し訳ないけど。」
私
—ねじ曲げるわけにはいかないからね。以上のことを踏まえ、次レスからの本編、どうぞ。
- セントウ-vier- ( No.104 )
- 日時: 2016/01/27 18:48
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FgvmxuFA)
エイゼン・火のクリスタルが安置されている場所…。
「たぁっ!」
烈は剣を一閃、薙ぎ払う。だが、チャウグナルには掠った程度しか当たらなかった。
「ちぃっ! 掠っただけか!」
「お兄ちゃん、上!」
「!」
着地した瞬間、リリィに告げられた注意にすぐさま反応した烈は、その場から飛び退く。直後、いくつもの刃が烈のいた場所に突き刺さった。
「危なっ…! サンキューな、リリィ。」
「でも、油断したら、死ぬ。確か、あいつの弱点…。」
「確か雷だが、先輩じゃねえし、無理だ。地道に攻撃当てて削っていくしかねぇ。」
チャウグナルの弱点属性を思い出した烈は、苦々しげに顔を歪めた。
ここには、雷属性を扱う存在はいない。唯一いるとすれば、源泉洞で見かけたあのピカチュウ達だが、異変に気づいてここまで来るとは思えない。
「でも、あの扉、開かないと、逃げられない。」
「それもあるんだよなぁ…。」
ピカチュウ達を呼ぶ前に、この結界に守られている扉を何とかしなければ、呼ぶことも、自分達が逃げることもできない。
「せめて、ゼルダさんやピーチさんが気づいてくれりゃあ…!」
「烈君!」
わずかな希望を思わず口にしたら、外からピーチの声がする。そして足音が四つほど。
「ピーチさん!?」
「い、今、物凄い音がこっちからして…! いったい何が起こっているの!?」
「説明してる時間がないんだ! ゼルダさん、いるか!?」
「はい、ここに。この魔法結界を破壊すればいいのですね。」
目の前にあった結界が何かわかったのか、ゼルダは烈の言葉にすぐにやることを見いだし、行動を開始した。
「よし、後は、何とか耐えるだけ…!」
応援が来るとわかり、烈は少しだけ安堵した。
ふと、チャウグナルが黄色い体から紫色に変わり、周りに薄くバリアが張られる。
「【トランスフォーム】。あれじゃ、攻撃、できない。」
「大丈夫。今は、耐える戦いだからな。ジャッカルさんみたく、防御貫通なんて技はないから、ガードして耐えるしかねぇか。」
紫色に変わったチャウグナルは、そのバリアのせいで攻撃が効かないのを知っていた烈は、少しぼやきながらも剣を前に出し、守りに徹した。
- セントウ-vier- ( No.105 )
- 日時: 2016/01/27 18:54
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FgvmxuFA)
烈達が奮闘している頃、ユルヤナ地方・祈祷衣の洞窟前…。
「…。」
七海は、一人でここにいた。
どうやら誰かを待っているようだ。
(…さっき、私に届けられたこのメールがホントなら、ここに、あるんだよね。その、時空のナントカバンは。)
どうやら、誰かが七海に対し、秘密裏にメールを送ったようだ。
『時空の羅針盤はユルヤナ地方の祈祷衣の洞窟最奥に封印されている。裏切り者と二人でここに来れば、入り口の結界を解除する。ただし、これを口外しないでほしい。』
七海が今見ているメールには、そう書かれていた。
(罠な気がしなくもないけど、でも、行かないとミッションクリアできないし、それに…裏切り者があの子なら、一緒にいくべきなのは、私だろうし。)
そんなことを考えながら佇んでいると、ガサリ、と葉の擦れる音がした。
「やっほー。来たね、理乃。」
「いきなり何の用なの? あのディアマンテが現れたのだから、早くミッションのアイテムである時空の羅針盤を見つけないと…!」
急に呼び出された理乃は、七海に対して軽く怒りを向ける。
ゲーマーである理乃は、ディアマンテの恐ろしさをよくわかっていた。あれが自分の知る本物であるなら、早急に対策しないといけないと理解していた。その矢先に、七海に電話でここまで呼び出されたのだ。
「まーまー、とにかく、一緒に来てよ!」
「えっ、あ、ちょっと!」
メールのことは説明しない方がいいと感じた七海は、有無を言わさず理乃を祈祷衣の洞窟に引きずり込んだ。
(…あら? でもここって、立ち入り禁止エリアで結界が張られてたはず…。)
すんなりと入れたこの場所に、理乃は僅かばかりの疑問を抱かずにはいられなかった。
- セントウ-vier- ( No.106 )
- 日時: 2016/01/27 18:59
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FgvmxuFA)
不死の塔・運営支部。
「っ、とりゃっ!」
影は慣れない体術を駆使し、プリム達を弾き飛ばす。
数が多い上に、風花を庇いながらの戦いだ。無駄に魔法を使うよりこちらの方が効率がいいと考えたのだろう。
「影君、大丈夫!?」
「ボクは放っておいていいから、風花はハッキングを、うわぁっ!」
「影君!」
風花に答えている間の隙を突かれ、影の体は大きく吹き飛ばされる。
(まずい、風花と離れた!)
急いで合流しようとするも、プリム達が沢山雪崩れ込み、近付くのが困難になってしまった。
風花は何とかパソコンだけは死守しようと、ハッキングを中断してパソコンを抱える。
(ど、どうしたらいいの!? どうすればいいの!?)
影は、パニックになって頭を真っ白にさせてしまった。
このままでは二人ともやられる。そう思った時、
「【高貴な鷹】!」
誰かの声が響いた直後、ワイヤーが擦れるような音がし、プリム達が影虫を散らせ、消失した。
「あ…!」
影の前に現れた、赤い宝石。そして今の声。それは、風花にも影にも、安堵をもたらした。
「ありがとね、デニー兄さん。お陰で手早く仕留められたわ。いやー、皇帝のジョブっていい技多いねー。」
「諸刃の剣と言えるような補助技が多いが、な。」
赤い宝石が、先端にあったワイヤーのようなものに引きずられ、戻っていく。その姿を見て、自分達は助かったのだと、影達が感じるのに時間はいらなかった。
「スバル!」
「ふぐぉっ! だ、大丈夫そうね、影君…。いたた…。」
影は嬉しさからか、宝石のついた片手杖を持った女性—スバルに抱きついた。
ただ、少しばかり勢いがありすぎたようで、腹部を押さえて踞っている。
「デニー陛下…!」
「無事なようで安心したぞ、風花。」
「はい、ありがとうございます。…ところで、スバルさんが何故こちらに…?」
「そんなの決まっているだろう。この異常事態に自ら干渉してきたのだ。で、たまたま近くを警備していた私と共に来たわけだ。まったく、自らが決めた“事情を知る者以外との接触はしない”取り決めを破るつもりか?」
「すみません、必死でした。降りた場所にいたのが陛下でよかったですはい。」
どうやら、ここに来るまで必死で何も考えておらず、辿り着いた場所に誰がいたかわからない状態であったようだ。今回はたまたま真実を知る者であるデニーがいたのでよかったが、これが別の誰かなら昴から大目玉を食らっていただろう。
「ねぇ、スバルもプランを考えていたんでしょ? これ…本当に二人が考えたやつなの?」
「一部は、ね。」
スバルはプリム達がやってこないよう壊れたドアを修復してから頑丈な結界を張る。
そして自分のパソコンを取り出し、あるファイルを開いた。
「ミッション1はそのまま考えていたプラン通りだった。ただ一つ、その前に出された裏切り者の通達を除いてね。あぁ、カルディス地方の消失も違う。二人には多分MZDから伝えられたろうけど、MZDの力と昴の権限で隠しているだけ…のはずだった。」
「じゃあ、ロストさせる気は…。」
「まったくなかった。それと、ロストしたカルディス地方の居場所だけど、視点が呼び出せないの。…でも、異世界にいる訳じゃない。」
「え、でも、異世界での干渉ができないんだったら、異世界に飛ばされてるんじゃないの?」
影の言う通り、スバルのノートが干渉できるのはこの世界のみで、異世界へ飛ばされた者の視点は呼び出しても一切描かれない。だが、スバルはこの世界にいるといっていた。
「異世界には行ってない。だけど、干渉できないような場所には、いる。この可能性は初めてだけど、これも駄目か…。」
「この世界にいながらにして干渉できない場所って、神様の関わる場所とかぐらいしか想像できないけど…。」
「…このノートが、私達が今いる“現代”と、この世界ができてから今までの“過去”しか、関与できないとしたら?」
「!」
スバルの言葉に、はっと息を飲む影と風花。その可能性を考えたのだろう。
「じ、じゃあ、まさか、昴達は…!」
「裏切り者に通報され、捕まった人達と一緒に…この世界の、どこか別の時間軸…それも、“未来”に飛ばされた。カルディス地方ごとね。」
まさか、未来に飛ばされていると思わなかった影達は、驚きに目を見張った。
「じゃあ、裏切り者の役割って…!」
「その話は後。風花ちゃんは一刻も早く権限の奪還を!」
「は、はい!」
風花は慌ててパソコンを開き、再びハッキングを開始した。
「影君、フロウエル地方には誰がいる? 主に、魔導師系の人。」
「地図系統には手を出されてないからわかるよ。ここにいる魔導師系は、今はアヤメと赤いおじさんだね。それと、オミノスもいるみたい。」
「アヤメには今、アニエスのペンダントの欠片を持たせてある。私から助力を仰ごう。プレア、隠れていろ。」
(あんたもプレア呼びかい。)
何かを思うスバルだが、風花の作業する机の下に隠れた。
- セントウ-vier- ( No.107 )
- 日時: 2016/01/27 19:04
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FgvmxuFA)
不死の塔・土のクリスタルが安置されている場所。
「えぇーいっ!」
鈴花は、高く跳躍してからの踵落としを、ギガースリッチの脳天に決める。
「グオォォッ!!」
効いたのか、ギガースリッチは一瞬よろめくも、すぐに鈴花を睨み付けた。
「効いてるけど、何かダメージ受けてる気がしないよ! ねぇ、メフィリアさん、弱点ないの!?」
「ちょ、ちょっと待って! 確か、アナゼ…いや、リングアベルに見せてもらった手記には…。」
リングアベルがつけていたモンスター図鑑を以前見せてもらったのか、メフィリアは必死で重要な記述を思い出そうとしていた。
「光…! そうだわ、光よ!」
「そんなの出来ないよ! 理乃センパイじゃあるまいし!」
「私の方でも光属性の召喚獣はいないから力になれそうにないわね。」
「ボクも、多分これはまだ喚ばない方がいい奴だろうから…。」
どうやら、弱点属性である光を放てるような存在はいないようである。
「地道に蹴ってくしかないか…!」
「ヴオォォッ!」
鈴花が覚悟を決め、身構えたその直後、ギガースリッチは大きく嘶き、ぶるりと身を震わせた。
直後、鈴花めがけてその拳を繰り出す。それに気づいた鈴花は、ローズを抱えて跳躍した。
「ひっ…!」
その時に見た地面は、かなり抉れていた。先程、最初の一撃を食らわせた時以上の威力であるのは、鈴花にもわかった。
「な、何であんな抉れて…!?」
「鈴花、ローズ、注意して! そいつは【負の力】でパワーアップするわ! しかもその【負の力】は増幅して行くから、早期決着で終わらせなさい!」
「じ、地道に蹴ってる場合じゃない!?」
流石の鈴花もそう気づいたのか、すぐに再び跳躍し、ギガースリッチ目掛けて重い一撃を食らわせる。
「駄目かっ、やっぱり効きづらい…!」
「鈴花! ボクも戦う!」
「駄目! ローズはまだ疲れてるんだから無理しないで!」
ポケットからローズが飛び出し、鈴花に訴えるも、すぐにポケットに戻される。
「大丈夫。こんな奴、お姉ちゃん一人で何とかなるよ!」
「…。」
ポケットから見た鈴花の笑顔を、ローズは信じる事にしたのか、それ以降は何も言わなかった。
- セントウ-vier- ( No.108 )
- 日時: 2016/01/27 19:10
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FgvmxuFA)
エイゼン・火のクリスタル前。
(くそっ、ゼルダさん、まだか…!?)
しばらくガードに徹していたが、チャウグナルの様子がおかしいことに気がついた烈は、扉を見る。
必死に魔法を当てているのか、凄い音が聞こえるが、まだ扉を開くには至ってないようだ。
「くっ、この結界、思ったより、強い…!」
「姫、俺も手伝います!」
「マリオ、ファイアフラワーは沢山あるわ! ゼルダ達の手助けを!」
「お任せください、ピーチ姫!」
今では四人で破壊作業に徹しているようだが、烈は感じ取っていた。
(恐らくもうすぐ、また【トランスフォーム】をする…! そうなったら、多分耐えられない…!)
烈の体は、かなり深手の傷を負っていた。チャウグナルが何度も噛みつき、その血を啜ってきていたのだ。
(【血をすする】は話通り、やばいな…。何発食らったっけ…。せめて…せめてリリィを逃がさねぇと…!)
自分の限界を感じていた烈は、せめて義妹だけでも逃がせないか、何度も思案していた。
だが、そんなことはさせないとでもいうかのように、チャウグナルの色が紫から黄色に変わる。
「【トランスフォーム】のオフ…! 烈君!」
「…。」
リリィが声をかけるが、烈はぼんやりと前を見ていた。血を奪われ過ぎて、脳にまであまり行き届いていないのだろうか。
「(【エナジーバースト】が来るのに…! あ…何度も、すすられた…! もう、駄目なの…!?)だめ…!」
チャウグナルの周りに、高密度のエネルギーのようなものが集まる。それを見たリリィは、烈のポケットから飛び出した。
「だめ、だめ! だめなの!」
リリィは必死で宝石を纏わせ、兄を庇う。受けたダメージを反射するこれならば、大丈夫と踏んだのだろう。
リリィの準備ができたと同時に、衝撃波が襲いかかった。
「あっ…!」
だが、ここで予想外のことが起こる。わずかに衝撃を食らっただけで、宝石にヒビが入ったのだ。
(何で…!? 私の体力が戻ってないから…!?)
考えられるのは、それしかなかった。体力が万全の状態でなかったから、早くもヒビ割れてしまったのだ。
烈との交戦で、割れるのは確認していたが、こんなにも早いとは思わなかったリリィは、烈の方を向いた。
(ごめん、お兄ちゃん…。ここで、終わり、みたい。)
第二の衝撃波が、烈達に迫る。リリィは死を覚悟し、でもせめて、兄を生かすために、小さな体で兄を守るよう、立ち塞がった。
(ジョーカー様、ごめんなさい。…お兄ちゃん、さよなら…。)
目を閉じ、その瞬間を待つ。
不意に、暖かい何かが、自分を覆った、気がした。
そして、衝撃波が過ぎていく。
(…? 死んで、ない。)
静かになった、その時。リリィはゆっくりと目を開けた。
あの一撃で死んだと思っていた自分がまだこうして生きている。何故だろうと思案しつつも、前を見た。
暖かい何かが、自分を包んでいる。まるで、抱き締めるように。守るように。
(何か、私を抱き締めてる。これは、何?)
何かから這い出し、ゆっくりと浮き、見る。
「あ…! あぁ…!」
信じたくない、とでも言うかのような、怯えを見せるリリィ。
思えば、抱き締めている存在で悟れば、早い時点でわかってしまった。この部屋には、味方は自分と…もう一人の、二人だけ。
必然的に、もう一人が庇ったと考えればよかったのだ。
「いや、いや…! いや、やだ、やだ! 死んじゃ、やだ! 目を開けてよ! また、またなでなでしてよ!」
リリィは、何かに寄り添い、涙する。既に事切れてるという事実は、頭ではわかっていた。だが、理解したくなかった。認めたくなかった。
「やだよ…! 何で…何で私を庇ったの…! 答えてよ…! 答えてよ、お兄ちゃん! お兄ちゃん!」
絶えず涙を流すリリィ。その瞳に映るは、傷だらけの体でも、優しい笑顔を向けて眠るように死んでいた、烈の亡骸だった…。
43.17
赤羽烈 強制失格
残り8人
- セントウ-vier- ( No.109 )
- 日時: 2016/01/27 19:17
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FgvmxuFA)
烈の訃報から、少し前。
エタルニア・土のクリスタル前。
「わぁっ!」
鈴花は、ギガースリッチの一撃を素早く避ける。何度も【負の力】を使われ、かなりの破壊力を有してしまった。これでは迂闊に飛び込めないので、大分前から防戦一方だ。メフィリアの方もまだ成果は出ておらず、扉は開かない。
(長期戦を見込んだのが間違いだった! うぅ、【デカジャ】みたいなのがあれば…!)
「鈴花、右!」
「! きゃあっ!」
ローズの注意で鈴花は辛くも避けるが、体勢を崩してしまった。
「鈴花、大丈夫!?」
「だ、大丈夫…。(やばい、足挫いた…!)」
どうやら体勢を崩した際、無理な体勢で着地していたのか、足を痛めてしまったようだ。
(これじゃ、もう避けるのは無理そう…! 体も、もう動かない…。避けすぎた、かな…。)
痛む足、動かぬ体。鈴花はもう、これ以上避けるのは無理だろうと悟っていた。
それを好機と見たのか、ギガースリッチは詠唱を始める。
「あ、あれ、また【クエイガ】が来るよ! 鈴花!」
(…。いくら地属性に耐性がある私でも、あれくらい強くなった状態であれがこられちゃ、私だってひとたまりもないよね…。)
ローズは鈴花に避けるよう急かすも、鈴花自身はここで、自らの死を覚悟した。
(私は、ここまでだね。ごめんね、お兄ちゃん、にゃぐわちゃん。…完二、ローズ。)
まるで死の間際に見る走馬灯のように、様々な顔が脳裏によぎる。
最後に出たのは、自分がもっとも大切な存在であった、ローズと完二だ。
(ローズ。せめて、ローズだけでも、生きて。折角お姉ちゃんって呼んでくれたのに、お姉ちゃんらしいこと、してこれないでごめんね。折角、私のために花を育ててるのに、その前に死んじゃって、ごめんね。)
大地が揺れる。時間が来たのを感じた鈴花は、ポケットからローズを出した。
「りんっ…!」
「ローズ、ごめんね。…さよなら。」
鈴花は、ローズに笑みを見せ、そして、投げた。
「り、んか…!?」
何故、投げられたのかわからないローズは、頭を真っ白にさせた。
同時に、大地から隆起した突起物が、鈴花を貫く。ローズはそれを、見てしまった。
「や、だ…! やだよ、鈴花…!」
次々に現れる突起物。それに貫かれる鈴花の体。
そして、こうして何もできない自分に、ローズは、目頭に熱いものが込み上げるのを感じた。
「お、ねえちゃ…! やだ…! 嫌だよ! 鈴花お姉ちゃん! 嫌だあぁぁぁぁっ!!」
ローズの目の前で、鈴花は最期に、言葉を発する。
「ローズ…いき、て…。」
最期の言葉が、痛いくらいにローズに突き刺さった。
“生きて”。そう、呟いた鈴花の顔は、優しい、姉のような笑顔だった…。
43.05
黄木鈴花 強制失格
残り7人
- セントウ-vier- ( No.110 )
- 日時: 2016/01/31 22:47
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 6701oeAw)
牢獄…。
「だあぁっ、チクショウ! 全く壊れねぇじゃねぇかこれ!」
完二は悪態をつきながら、盾を放り投げる。ガンッ、と虚しく響いて、落ちた。
(嫌な予感がしやがる…! 早く鈴花のとこにいかねぇといけねぇのに…! チクショウ!)
先程からずっと、胸騒ぎがする。完二は何かを感じたのか、早くこの結界を壊したかった。
「…!」
そんな時に鳴り響いた、メールが届けられた通知。
「確保情報か!?」
「いえ、そんなはずはありません! 今はハンターが消えています! じゃあ、これは…!」
直斗は、エインフェリアに答えながら、メールを開く。
「…う、嘘だ…! こんなっ、こんなのっ…!」
その文面に、直斗は思わず、端末を落とした。そして、膝を折り、泣き崩れる。
「な、直斗…? あ…!」
開かれたままのメールを見て、エインフェリアはすぐに完二を見る。
「駄目だ、完二! お前は、お前は見るな!」
内容を理解した時、エインフェリアはすぐに完二に促す。
「…おせぇよ、エインフェリアさん。」
「!」
「…もう…見ちまったよ。」
後ろ姿の完二だが、端末を手に持っているのが、エインフェリアにも見てとれた。
「『赤羽烈、黄木鈴花。死亡による強制失格。』か…。」
「そ、そんな…! 烈君と、鈴花ちゃんが…!?」
メールの内容を読み上げた完二は、端末を握りつぶした。他の一同にも、動揺が走る。
「嘘、だよ…! そ、そうだよ! もし黒幕に乗っ取られてるなら、あたし達の同様を誘おうとして」
「ホントだろうよ。」
千枝の願うような考えに、完二は一刀両断して否定した。
「杉山センパイとレヴよぉ。アンタは、さっきからオレじゃねぇ方を見てる。何でだ?」
「…。」
「そこに、いんだろ? …鈴花が。」
「…。」
葉月とレヴナントは、顔を見合わせる。そして完二の方を向き、頷いた。
そう、霊感の強い葉月と、死霊のレヴナントには見えていたのだ。
完二の側で悲しそうな顔を浮かべて佇む、半透明な鈴花の姿が。
「どんな顔してんだ? まさか、なさけねーツラじゃねぇだろうな?」
「…泣いてる。完二君に申し訳ない、のかな。…泣いてるよ。」
「ボクも、同じ…。」
「…そっか。」
完二はただそれだけを言って、その場を離れた。
誰も、後を追おうとはしなかった…。