二次創作小説(映像)※倉庫ログ

ゲンソウ-forced termination- ( No.164 )
日時: 2016/02/11 05:54
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: IkrWl/TY)

僕はそこまで語り終えると、ノートを閉じた。

「やめよう。」

そして、僕は静かにそう告げる。

「ここから先を話すのは、やめておくよ。」

何で? と聞かれたけど、僕はやめたほうがいいと思った。
これから先の事を知ると、ショックも大きいだろうし、折角一緒になって落ち着けたんだ。飛び出されると困る。
だって、僕個人としては、やっと会えた者同士、仲睦まじく安らかに眠ってほしいし。

「それに、彼女も心配するだろうからって、話されたくないと思うんだ。」

滅びを迎えてしまったあの世界の住人達を、ゆっくりと眠らせてあげたい。心配事があると、きっと眠れないだろうから。
僕は、懐から砂時計を取り出す。青い砂が儚く輝いては、消えていく。

「砂時計からも、声がする気がするんだ。そっと眠らせてほしいって。」

砂が消える、この砂の意味を知っていた僕は、この世界の意思を悟った。
眠らせてほしいんだ。みんな一緒に。

「僕の力なら、想いを繋げることはできた。だけど、彼女は望まなかった。そして想いはノートに溶けて消えていく。彼らの意思は、こう言ってるよ。」

納得できないように唸ってるけど、すぐに納得してくれたみたいだ。…まぁ、納得できない理由はわかるけど。
でも、これが、この世界の住人達の意思だ。二人もいい大人なんだし、わかるでしょ?

「…さぁ、二人とも。最期に、みんなの冥福を祈ってあげて。この世界の最期を、見届けてあげて。」

僕はそっと、血にまみれたノートを置く。
そして…そっと、火をつけた。

「閉じ籠った悪意を放たぬよう、最後にこのノートを燃やすよう、頼まれた。悪意と共に、浄化の炎で焼き尽くすよう、頼まれたんだ。…この世界と、心中するつもりだったんだね。」

炎は勢いを増し、やがて半分くらい燃えたところで、青い砂が天高く昇る。

—ありがとう。

儚い声で、こう聞こえた気がした。

「どういたしまして。」

燃えカスとなったノートを見てから、僕は歩きだした。
新たな友人達の、冥福を祈りながら。