二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- トウソウ-prelude- ( No.17 )
- 日時: 2016/01/06 22:34
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: PEx0ZAEq)
僕はいきなり話を始めようとしたけど、そもそもどうしてこの逃走劇が始まったのかを話していない事に気がついた。
いきなり話をやめる僕を、君は首を傾げながら見つめてきた。
「あぁ、ごめん。いや、何から話したものか少し迷ってね。」
まぁ、恐らく君は知っている事だから、話さなくていいかも知れないけど、この物語を見ている人達は知らないよね。
「…これは、逃走劇が始まる一月前くらいかな。そのぐらいまで遡るよ。」
僕は、血にまみれたノートを見ながら、笑みを見せる。
まだ、平和だった頃に起こった、終わりの始まりが告げられた出来事を思いながら…。
■
それは、ある日の昼下がり。
「昴! 今度は逃走中やろうぜ!」
「マスター、帰ろうぜ。あ、ジェダイト、お茶ごちそうさま。」
「って、即座に帰ろうとするんじゃねぇよ!!」
神の部屋にて、その神に呼び出された昴は隣にいたマスターハンド、もとい、マスターに即座に帰るよう促しつつ、帰ろうとしていた。
「あ? お前、また会場も何も用意せずにノープランで提案したんだろ? そんなの誰がやるか。」
「何でばれた!?」
「ミミニャミの苦労は数多く聞いたからな。」
MZDの突然の思いつきにつき合わされるミミとニャミは、持ち前の順応さで快く引き受ける影で、多くの苦労を経験しているのだとか。
「それにお前、戦闘中の時もノープランだったろうが。」
「なんだかんだあって無事終わったんだからいいじゃねえか。」
「よかねぇよ! つかそろそろお前の思い付きで誰かが振り回されてるってことを知りやがれ! つーわけで、会場はお前が用意しろ。後、逃走中のミッションやらのプランもな。」
「酷くね!? 全部オレに丸投げかよ!」
「普段仕事してねぇんだからいいだろうが。」
「おいおい…ジェダイトもなんか言ってくれよー。」
昴達に出していたお茶の容器を片付けながら、ジェダイトはぼそりと呟いた。
「計画を立てるのは良いが、中身は我々に丸投げだったな…。」
「うぐっ…。」
「望み通り、何かを言ってやったぞ。」
「あーらら、ジェダイトにも言われちゃったね、MZD。」
ケタケタ笑うジェイドと、黙々と食器を洗うジェダイトに、MZDは負けを認めた。
「わーったわーった。オレが考えてやるよ。」
「考えてやるもなにも、お前の思いつきだろうが。」
昴はそう、ぴしゃりと告げた。
そしてその場は解散となったとさ。
- トウソウ-prelude- ( No.18 )
- 日時: 2016/01/06 22:35
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: PEx0ZAEq)
その夜…。
「なーなースバルー。逃走中のプランを考え」
「死ね。」
「ふぐぉっ!!」
私はいつものようにベッドに寝っ転がっていたMZDの股間を躊躇いなく蹴った。
「アンタさぁ、人を振り回すのもいい加減にしてくれない? 毎度毎度振り回されてる影君達の身にもなりなさいよこのスットコドッコイ。」
「スットコドッコイって、なんか語彙に乏しい感じじゃね?」
「無数の言葉から、アンタに相応しい言葉を選んだだけよ。ならもっと言ってあげましょうか? このウスノロ。パー。ハゲ。豚野郎。」
「分かった! 分かったから言葉の暴力はやめろ!」
あー、メフィリアちゃんに手帳持たせとけばよかったわー。あの子ならもっと罵り言葉知ってるだろうしー。
「で? 今んとこどこまでプラン練ってるのよ。」
「全然!」
こののち、MZDはすぐにベッドに沈んだのは言うまでもない。理由? 私が蹴ったから。え? どこを? KO☆KA☆Nを。
「はぁ…。聞いた私が馬鹿だったか。」
「お前なら考えてくれるって思って訪ねたオレが馬鹿でした。」
「あらよくお分かりで。」
当然でしょうが。昴は私で、私は昴なんだし、あの子が考えないんだったら、私だって考えるわけないでしょうがこのスットコドッコイの豚野郎。
「はい、すみません、養豚場に帰ります…。」
「そこで帰ってどうすんのよ。そんな暇があるなら、真面目にプランを立てなさいよ。」
私ははぁ、と溜息をついた。あーあーもー、この神様って何か放っておけないタイプなんだよね。それに、実を言うと私もちょっと楽しみなんだよね、この逃走中。
「もーこうなったら渡りに船よ。明日は私も仕事休みだし、少しくらい夜遅くなってもいいから、一緒に考えてあげるわ。」
「やっぱ本体の方が話が早」
「ただし基本は貴方が考えなさいよね。」
揚げてから落としたら、MZDは「デスヨネー。」と多分サングラスの下はかなり死んだ目を浮かべていると思う。
「…あ、そうだ、私からお願いなんだけど…。まぁ、これは私からマスターやブレイブさん、デニー陛下に直接話すべきだろうけど…。」
「…聞いてるぜ。各地で起こった、逃走中での事件。」
そう、私が交流するようになった人々の世界で起こった、逃走中での悲劇。起こるはずもない、そう思っていたけど、流石に念には念を入れないとね。
「まぁ、ないとは思うけど、お願いしたいのは、警備の強化。スマブラのみんなや、ブレイブリー組のみんなが警備をしてくれるなら、安心できると思うの。」
「…実際にあいつもその危険な目に遭ったしな。多分あいつの方も同じことを思ってるよ。それに…。」
おっとそこまで。
「辛気臭い話は抜き抜き。さて、考えちゃいましょうか、軽く。」
「サンキューな。んじゃ、どうする。まずは舞台だけど…。」
まぁ、何か乗せられるがまま、私とMZDはプランを考えていった。
だけど、この時は全く予想だにしなかった。
楽しいはずの逃走中が、まるで歯車が崩れ、壊れていくように…。
あんな、あんな悲劇を起こすだなんて…。
この時の私は、全然予想していなかった…。
- トウソウ-prelude- ( No.19 )
- 日時: 2016/01/06 22:36
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: PEx0ZAEq)
「神様は彼女と一緒に、本当に、純粋に楽しそうにプランを考えていたんだ。」
僕はノートを一度閉じ、クスクスと笑った。
当時彼女がどんな気持ちだったか、なんとなく手に取るようにわかったからね。
「…この時は、本当に誰も予想なんてしていなかった。本当に始めは、純粋に、みんなが楽しめるようにと作っていた。そして、始まったんだ。」
始めは、楽しい逃走中…だった。
そう、本当に始めは楽しい逃走劇だったんだ。みんながミッションをやって、ハンターに捕まって悔しがって、牢獄では楽しいお話が響いていた。
…あの、通達が出るまでは。
「…さぁ、ここから先は地獄と化した逃走劇の始まりだ。準備はいいかい?」
僕が問いかけると、君は小さくうなずいた。
「月日が流れ、彼女達は神様の作った島、創世島に集められたんだ…。」
そして僕は語り始める。まだ平和だった頃の、楽しい逃走劇を…。