二次創作小説(映像)※倉庫ログ

シュウリョウ-acta est fabula- ( No.177 )
日時: 2017/04/12 07:37
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 9RGzBqtH)

何とか、フロウエルのダスク遺跡近くまで逃げてこられたメフィリアは、隠れ場所を探していた。
幸い、まだハンターはここまで湧いてきてないようだった。

(このままじゃ、捕まって全滅確定…! あの人達は、何でこんなことを…!)

運営は何故、ここまで酷いミッションを課したのか、思案していた。

(人が死ぬようなミッションを考え付くような人達には見えなかったけど、私の見込み違いだったの!?)

仮にそのつもりがなくとも、実際にこうして死者が出てしまい、そして、どう考えてもクリアできぬミッションまで発令された。
これではまるで、自分達は無駄な犠牲を払うだけ払い、用が済んだら捨てられるような捨て駒だ、とメフィリアは心の中で呟いてから、ふと、何かがおかしいと思い始めた。

(…本当に、あの人達に、こんな非道な仕打ちが考えつけるの? 長い付き合いのローズ達や鈴花達を殺せるような人じゃないわ。なら、これは…。)

うまくはまとまらないが、何かが変だと頭の中で誰かが警鐘を鳴らす。付き合いの長い鈴花達を殺せるような人じゃないのは、わずかな時間しか付き合っていない自分達でもわかった。
この逃走劇を操っているのは運営という刷り込みがあったが、実際はどうなのだろうか。

(この逃走中を操作しているのは、昴さん達。まぁ、これが常識だと思っていたわ。でも今もそう考えるのは間違いじゃないのかしら。誰かが彼女達の名を騙って、彼女達の権利を使い、私達を使って遊んでいるとしたら…。)

確証はない。だが、メフィリアはこれが正しいと納得できた。願望かもしれない。だが、運営を操る誰かが背後にいると確信が持てた。

(誰が…! 誰がこの逃走劇を滅茶滅茶にしたの!? 誰が、ローズを殺したの!)

強い恨みを、黒幕にぶつけるメフィリア。だが、黒幕の存在もその行方もわからない、そして、そんな場合ではないとでもいうように…。

「…あっ!」

彼女の前に、一体のハンターが転送されてきた。
かなりの至近距離に現れたので、どう考えても、逃げられない。

「そ、そんな…!」

目の前に現れたハンターは無慈悲にも、メフィリアの肩に手を置いた。


28.27
メフィリア・ヴィーナス 確保
残り2人


「っ、くっ!」

メフィリアが悔しがる暇もなく、彼女は思考ごと転送された。

シュウリョウ-acta est fabula- ( No.178 )
日時: 2017/04/12 09:25
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: KG6j5ysh)

ベアリングは、何とかエタルニアから逃げ出し、エイゼンの海岸の廃屋へと来ていた。

「うへ〜…。ハンターいっぱいだぁ〜…。」

どこもかしこもハンターだらけで、いくら体力馬鹿の自分でもすぐに捕まるのが目に見えた。

「すげぇ〜なぁ〜…。どっこもかしこも真っ黒だぜぇ〜…。」

今は何とか隠れ場所を見つけ、ハンターが気付いていないので捕まる事はないが、この状態でずっと隠れるなんて自分の性分には合わない。

「よぉ〜っし! オレ様とハンターの根競べだぁ〜っ! ハンター、どっからでもかかってこぉ〜いっ!」

このままずっと隠れていても、いずれ見つかる…と、考えているわけもなく、ただハンターと根競べをしたいがために廃屋の中で叫んだ。
当然、こんなことをすればハンターは気付くわけで…。

『!』

ベアリングの声を聞き付けた大勢のハンターが廃屋へと駆け込んだ。
廃屋内は完全に袋小路なので…。

「うぉ〜っ、逃げ道ねぇ〜!」

当然のことながら、即、御用となってしまいました。


27.31
ベアリング・アウト 確保
残り1人


「まっ、いっか〜。楽しめたしなぁ〜。」

最後まで楽しんだベアリングは、嬉しそうな顔をしたまま牢獄へと転送されていった。

シュウリョウ-acta est fabula- ( No.179 )
日時: 2017/04/12 10:00
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: KG6j5ysh)

メフィリア・ベアリングが確保された頃。エタルニア・不死の塔…。

「プレア!」

そこに踏み込んできたのは、ジャンだった。彼の姿を見るなり、スバルは彼に訊ねる。

「ジャン君! い、今ミッション見たけど、何、あのふざけたミッション!」
「それは俺が聞きたい! 何なんだよあの全滅確定のふざけたミッション!」
「ジャン、それは黒幕に聞け。」

スバルとジャンが互いに訊ねあっていると、横からデニーがまともな事を言い出した。ジャンは一瞬、(普段もまともでいろよ。)とか思うも、口に出すのをぐっと堪えた。

「おい、今すぐこの逃走中を中止しろ! 黒幕に好き勝手させとく気か!?」
「ジャン、それができてたらもうミッション1が終わった段階でやってる。」

声を荒げるジャンに、影がぴしゃりと言う。それでジャンはようやく落ち着いたのか、頭をポリポリと掻いてバツが悪そうな顔を浮かべた。

「悪ぃ、権限奪われてたんだっけな…。風花の力でもまだ取り戻せてなかったのか…。」
「うん…。相手も相当手ごわくて…。何とかハッキングには成功しても、すぐに追い出されちゃって…。」

技術…とりわけコンピューター関連の知識が高い風花でも、ここまで手を焼いているという事は、相手も相当手練れなのだろう。

「もう少し、頑張ってみま…あれ?」

風花が再びパソコンに向かうと、メールが彼女のパソコンに届いた。
不審に思いながらも、風花はその差出人不明のメールを開く。


『愚かなサルどもめ。しょせん、人間様の知恵には叶わないか。この問題すら解けない無能はグルグル回ってろ。』


かなり挑発的な内容に、それを横で見ていたジャンと影が、盛大な舌打ちをかましてから…。

「なんっ、だよこのメールはぁっ!!」

机をバンッ! と大きく叩き、怒りの色を見せた。

「…気持ちはわかるけど落ち着こうよ…。風花ちゃん、その問題の部分は?」
「えっと…。」

スバルがなだめている間に、風花は挑発的な内容の下にあった問題文をスクロールした。
四角いマスが並び、マスの中に文字が書かれていたり、大きな絵が書かれているものもある。それが、いくつかあった。

「どうやら、クロスワード…アロークロスと呼ばれるものみたいですね。マスの問題を解いて、指定のマスに入った文字を抜き出していくアレですね。」
「クロスワードなら、私でも解けるかな。アローなら解きやすいかも。」
「プレア、今は挑発に乗ってそんな問題を解いてる暇はない。風花、まずは権限を何とか取り戻してくれ。何とかして、黒幕の暴走を止めなければ…!」
「そうですね。では、これは後でプリントアウトしてユウ君や直斗君にも渡しておきますね。」

デニーがそう言うと、風花は頷き、再びハッキングを試みた。

(…でも、何でこのタイミングでそんな問題を送り付けてくるのかな?)

スバルはふと、そう思うも、今は何とか権限の奪取が先と思い至り、風花の様子を祈るように見つめていた。

シュウリョウ-acta est fabula- ( No.180 )
日時: 2017/04/12 15:23
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /48JlrDe)

マグノリアは、一人ユルヤナ地方に渡っていた。

(どこもかしこもハンターだらけ…! 逃げる場所なんてどこにもないじゃない!)

彼女が身を潜める密林を、縦横無尽に動き回るハンター。何とか隠れられたはいいが、これでは身動きが取れない。

(昴…。本当に、私達の事をなめてるの? こんなゲームと呼べないゲームをさせて、何がしたいの? あのプロビデンスのように、絶望を集めたいの? この世界を滅ぼせるような神様になりたいの? ああ、そんなことしなくても、貴方にはこの世界を滅ぼすのは容易いわよね。)

昴への恨みを、つらづらと並べていくマグノリア。未だに黒幕の存在に気づきもせず、ずっと昴を疑ったままだ。

(貴方は殺すだけじゃ飽き足らない。その体も残さず、塵としてくれるわ。)

一度疑いをかけると、止まらない。マグノリアの中で、昴達は既に悪と…“黒”と決めつけられていた。今更弁解しても、今の彼女には聞く耳は持たないだろう。

(でもまずは、何としても逃げ切って、あいつらの鼻っ柱を折ってあげないとね。)

マグノリアはそう決意し、今の隠れ場所から外へと出ようとした。
が、その際にガサリと、葉っぱが鳴る。

『!』

その、移動した音を聞き付けたハンターが、一直線にマグノリア目掛けて走ってきた。

「! しまった!」

ハンターに気づかれたと悟ったマグノリアは、一目散に逃げ出す。
いくら森で視界が悪いとはいえ、多勢に無勢。一人対複数人では、勝ち目がない。

「っ、もう、ダメ…!」

マグノリアは、ハンターに囲まれ、その肩に手を置かれた。


21.50
マグノリア・アーチ 確保
残り0人


「そ、そんな…!」

マグノリアは悔しさを露にした後、転送された。


GAME OVER

シュウリョウ-acta est fabula- ( No.181 )
日時: 2017/04/12 16:22
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: xV3zxjLd)

ユルヤナ地方・ユルヤナの森の仕立て屋内にある牢獄。

「…。」
「マグノリア!」

最後の一人、マグノリアが転送されてきたのを見た一同は、彼女に駆け寄った。

「イデア、みんな…。ごめん、昴の鼻っ柱を折れなかったわ…。」
「あ…! ま、マグノリア、違います! この逃走中は昴さん達が仕組んだものじゃありません! 運営は既に誰かに乗っ取られているんです!」

マグノリアのその言葉だけで、アニエスは彼女が運営は昴達だと、こんな下らない非道なゲームを考えたのは昴達だと疑っているのを察し、そう弁解した。

「アニエスまでジャンと同じことを言うの!? 違うはずないでしょ!? だったら、黒幕って誰なの!? このゲームを影で操った奴は誰なの!?」
「そ、それは…。」

黒幕の正体はわからずじまい。説明しようにも、説明できない。
ふと、ここで口を挟んだのは、直斗だった。

「マグノリアさん、落ち着いてください。僕達は先程まで、ここに張ってあった結界のせいで身動きがとれなかったんです。牢獄付近の出入りを特別制限していない昴さん達が、こんなことをすると思いますか?」
「結界? まぁ、確かにそんな結界を張るなんてするはずはなさそうだけど。」
「ええ、これこそ、昴さん達が既に何かがあったと考えてもよろしいかと思います。」

昴達がするはずがないのに、確かにここには結界があった。
マグノリアは結界があったと言う場所まで歩き、触れる。だが、マグノリアの体は弾かれることなくすり抜けた。

「結界なんてないじゃない!」
「えっ!? あ、あたしとレヴ君の力でも壊れなかったのに、何で…!?」
「恐らく、マグノリアちゃんが捕まったと同時に解除したのじゃろう。既に足止めをする必要はなくなったからの。」

どうやら千枝とレヴナントの合わせた力でも壊れなかった結界を、黒幕は既に解除していたらしい。マグノリアは自分にはわからない結界に、更に不信感を強める。

「みんなして昴を庇いたいから、嘘をついているんじゃないの?」
「う、嘘じゃないよマグノリア! 確かに結界はあったの! 昴達に関しては完全に“白”だよ! 信じて!」
「無理ね。信じてほしいなら、イデアも知っての通り、デニーにより未来に飛ばされたディアマンテがこうしてここに来た理由を説明してちょうだい。納得のいく理由でね。」
「む、むぐぐ〜…!」

いつになく冷たいマグノリアに、イデアは二の句が継げず、唸るだけしかできなかった。

「…マグノリアちゃん。」

その様を見ていた葉月は、静かに彼女に話しかけた。

「一旦、冷静になろうよ。仇であるディアマンテが現れて冷静になれてないんじゃないの?」
「葉月、私は冷静よ。」
「…残念だけど、そうは思えないよ。大分興奮してるね。ディアマンテへの恨みの感情?」
「何を言ってるの?」

葉月の言いたいことがわからなくて、マグノリアは首を傾げる。

「…昴さん達を疑うなら、疑っててもいいよ。好きに疑えば?」
「え、は、葉月さ…!?」

突然、葉月が放った言葉にアニエスは驚きを隠せず彼女を見る。だが、まだ続きを話そうとしている様子の彼女に、アニエスは黙った。

「だけどもし、それが本当に間違いで、濡れ衣だったのが後に判明して、自分が疑ったことを後悔しないのなら、疑い続けていなよ。まぁ、何が真実で何が偽りか、すぐわかりそうなことだけど。」

そう、冷たく言い放ってから、葉月は弓に矢をつがえ、虚空へと一気に放とうとしたが…。

「【アギダイン】!」

突然、炎が舞い踊った。全員…いや、葉月以外は、声をあげた本人である、雪子を見た。
彼女は今、扇子を持ってアマテラスを召喚している。どうやらペルソナに命じ、虚空に向けて炎を放ったようだ。

「え、ゆ、雪子!? 何でいきなりアマテラスを!?」
「…コソコソ隠れてないで出てきたらどうかな? 黒幕さん。」
「えっ!?」
「フフフ…! まさか、そっちの小娘並みに勘の鋭い奴がいたなんて、予想外でしたわ。お陰で油断して少し羽が燃えてしまいましたわ。」
「その声は!」

聞き覚えのあった声に、アニエス、イデア、マグノリアが反応する。
空間が揺らぎ、小さな存在が現れる。
黒耀の羽が揺らめきながら、一同の前に降りてきたのは、小さな…妖精だった。

シュウリョウ-acta est fabula- ( No.182 )
日時: 2017/04/12 17:22
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: EM5V5iBd)

その妖精を見るなり、顔見知りのアニエス達と、妖精の醜悪さを見破っていた葉月と雪子とユルヤナは武器を構えたが、同じく顔見知りのレヴナントと、初見の残りの一同は狼狽えていた。

「この一件は…貴方の仕業だったのですか!?」
「ええ。わたくしの思い通りに事が運ぶ様は、本当に愉快でしたわ!」

妖精はアニエスにそう言ってから、ドス黒い笑みを、イデアとマグノリアに向ける。

「イデア、貴方の恋人は未来へと送られた人々を救うために、裏切り者と一緒に奔走したのに、その恋人の貴方は裏切り者を強く恨み、挙げ句の果てには裏切り者を“黒”と罵るしかできなかったのですわね!」
「あっ、ちっ、違っ…!」
「違う? 何が違うのですの? 現に貴方は何度も言っていましたわね。『裏切り者は絶対に許さない』と。」
「あ…!」

イデアは返す言葉が見つからなくて、妖精の言葉に黙り込む。
これ以上追及できないと悟った妖精は、マグノリアに狙いを定めた。

「マグノリア、貴方はディアマンテを呼び出してからは、何度も運営はあの愚かな神達だと信じ、最終的には殺してやろうと思ったのですわよね?」
「それが何?」
「いいえ、残念ですがそんな手間は省けましてよ。そう、“貴方のお陰”で!」
「えっ…!?」

マグノリアは、クスクスと笑いながら語られる妖精の言葉に、驚愕の表情を浮かべた。それは、他の一同も同じだった。

「ど、どう言う事よ! 答えなさい! アンネ!」
「どうと言われても、そのままの意味ですわ! ミッション3—即ち、あのディアマンテを未来へ送るミッションをクリアした貴方のお陰で、容易にあの神を殺せたのですわ! …そちらの小娘ならば、想像ついているのではありませんか?」
「…。」

妖精—アンネの言葉に、全員、葉月に注目する。

「語ってあげてもよろしくてよ。貴方が想定した、このミッション3の意味を!」
「やっぱり…そうだったんだね。ミッション3は…クリアしても失敗しても“貴方達にとってどっちでもよかった”んだ!」

葉月は怒りを隠すことなく、叫ぶ。その様に、アンネは表情が更に醜く、歪んだ。

「ど、どう言う事ッスか、センパイ!」
「“未来”に飛ばされた昴さん達。彼女たちを救うために、理乃は逃走者達を通報し、“未来”へと飛ばす。そして…ディアマンテが飛んで行ったのは、“未来”…!」
「! あ…! あ、あ…!」

マグノリアが何かに思い至ったのか、葉月の言葉が終わる前に、狼狽え始めた。

「この三つの“未来”が、同じ場所…同じ時間軸だったら…! 飛ばされた昴さん達の所に、理乃が送った通報された人達がやってきて、そしてそこに…ミッションと称して、マグノリアちゃんにディアマンテを飛ばさせた!」
「ま、待ってよ葉月…! じゃあ、裏切り者に通報されたリングアベル達は…!」
「…。」

葉月は、イデアの問いに何も答えられなかった。代わりに、アンネが息を吐くように答えた。

「ご名答! 未来を守る為に送った仲間は、浅慮な義憤に任せ未来へ送ったディアマンテにより、皆殺しですわ!」
「!」

そう、葉月の考えた嫌な予感…。すべての未来が、同じ時間軸にあった可能性だ。
最悪の未来を回避するために、理乃は裏切り、その未来へと送った。だが、そこに、その最悪の未来を呼び寄せる元凶である、ディアマンテが送られてきてしまった。
あろうことか、それを送ったのが…ディアマンテを仇とする、マグノリアである。

「い…! いや…! そ、そんな…! わ、私が…! 私が、昴達を…! ゆ、ユウも、私が…! 私のせいで、みんなが…!?」
「ええ、“貴方の意思”で、みーんな殺したのですわ。貴方の愛しい愛しいユウも、ですわ。」
「い、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

自分のせいで、自分が憤怒のまま動いたせいで、疑っていた昴達はおろか、最愛のユウの命をも奪ってしまった事に気付いたマグノリアは、頭を抱え、叫んだ。

「…でも、マグノリアちゃんがミッションをクリアしなかったら私達が死んでいた。そして、恐らくその様を見て絶望していたのは、未来から何事もなく帰ってきた昴さん達だった。つまり、このミッション3は…“クリアしても失敗しても、黒幕にとっては嬉しい展開になっていた”んだよ。」
「そこまで読んでいるとは、中々見込みがありますわね。」
「ふざけやがって…! オレ達をなんだと思ってやがる!」

完二が吼えると、アンネは再びその表情を醜く歪めた。

「では、貴方たちは仲間をなんだと思っていますの?」
「えっ…!?」

突然アンネに問いかけられた事に、全員面食らう。
何が言いたいか、何を問いたいか、どう答えていいかわからず困り果てている様子の一同に、アンネは続ける。

「折角、貴方がたが罵ったお仲間は皆、空っぽの裏切り者になって貴方たちを救おうと行動していたというのに、感情だけで全てを否定して疑心を抱き、憎みさえするなんて、とても人間らしいこと。お陰で、いい見世物を愉しめましたわ。」
「黙りなさい、この忌々しい羽虫!」

その言葉と共に、炎がアンネ目掛けて飛んできた。アンネは慌てて避ける。

「あ、アニエス…!?」
「アニエスちゃん…!?」

炎を放ったのは、アニエスだった。が、イデアが驚いた点はそこじゃない。アニエスが、アニエスらしからぬ暴言を吐いてアンネを攻撃したからだ。彼女を幼い頃から知っているユルヤナも目が点になっている。

「本当に、ティズが言っていたあの言葉を言いたくなるくらい忌々しいですね。妖精と言うのは、みんなこうなのですか? この、“腐れ妖精”。」
「お熱いこと。それで同族を焼き続けていたのですわね。」
「焼いたのは、貴方の妹くらいですよ。」
「よく言いますわね。元の世界でも、表面だけで悪と決めつけ沢山殺したのではないですの。結局、その殆どが“実は生きていました”ということにされたのですけれど。そうそう、この世界でも不都合な存在を抹殺したと聞きますわ。“魔女狩り”に“絵踏み”。人間は想像力が豊かですわね。」
「言いたいことはそれだけですか?」

直斗が拳銃のトリガーに指を当て、今にも引き金で引きそうな勢いでアンネに背後から詰め寄り、その頭に銃口を当てた。他の一同も、既に臨戦態勢を取っている。

『直斗、殺るのは後だ。…そろそろ、テメェが飛ばしたカルディス地方をこっちに呼んでもらおうか。アンネ。』

一体のハロボットが飛んできてジャンの声でそう告げる。どうやら、通信権限も回復したようだ。

「あら、貴方は誰だったかしら?」
『ウダウダ言ってねぇでさっさと戻せ。腐れ妖精。』
「レディの扱いがなってませんわね。まあ、望み通り、カルディス地方を戻してあげますわ。そして、その眼でしかと見るがいいですわ。貴方がたの意思で選んだ行動の結果—絶望をね。では、生きていたらまた会いましょう?」

アンネが消え去ると同時に、大きな地震が起こった。それは、立ってもいられないくらいの揺れで、全員、地についてしまった。

「わ、わわ、じ、地震!?」

しばらく揺れていたと思ったら、唐突に止んだ。
あまりの大きさに驚いたが、全員、ゆっくりと立ち上がって森林のない、広い場所に出た。

「あ…あ、あぁ…!」

そこから見えた島は、赤い炎が揺らめいていた。突如中央に現れた島こそ、今、赤い炎が揺らめいている島こそ、ティズの故郷である、カルディス地方だ。

「ふ、風花さん! 早くサーチを! 生存者の情報は…!」

直斗が聞くも、風花は答えない。

『…島が、現れると同時に…サーチ、したよ…。』

何とか絞り出すように告げられた言葉に、全員察してしまった。
次の言葉を、聞きたくないとさえ思った。

『…落ち着いて、聞いて。あの島に生体反応は…一つだけ。』
「だ、誰か生きてるの!? 風花、一体誰が生きてるの!」

イデアが急かすように聞く。だが、次に告げられた風花の言葉を聞くのが怖いと思うのは、同じだった。

『…とても強い反応。ディアマンテの…反応、だけ、だよ…。』

そして、風花は告げる。一同を絶望へと引き落とす言葉を。

『あの島に、ディアマンテ以外の生存者は、ゼロ…。運営にいたみんなも、未来に送られたみんなも…もう、手遅れだよ…。』