二次創作小説(映像)※倉庫ログ

シュウリョウ-continue?- ( No.183 )
日時: 2017/04/12 18:54
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: EM5V5iBd)

エタルニア・不死の塔。

「…。」

運営支部にいたスバル達は、風花のサーチ結果に暫し呆然としていた。

「…やっぱり、こう、なっちゃったんだね…。」

嫌な予感が当たり、スバルはポツリと呟く。
どうやら彼女は、起こりうる最悪の事態を想定していたようだ。
しばらく、沈黙が続く。それは、痛いほど長く感じた。

「…なぁ、辛いかもしんねぇけどよ…。」

その静寂を破ったのは、ジャンだった。

「行かねぇか? …カルディス地方に。正直、昴やユウが死んだなんて未だに信じらんねぇんだ。…直接、この目で確かめるまで、多分、俺は納得できねぇと思う。それに…この現実から逃げていても、前には進めないと思う。」
「そうだな…。辛いが、現実を見てこよう。幸い、あの腐れ妖精も今はディアマンテをけしかけてくるつもりはないようだ。」
「お別れの時間を与えるって奴? ほんと、やな感じ。」

やや、イライラしたような、侮蔑混じりの言葉を放つと、風花に向き直った。

「風花ちゃん、あの葉っぱの行き先を全てカルディスラに変更して。それから、通信も。」
「…わかり、ました。」

ショックが大きいのか、スバルの言葉に少し遅れて反応し、機器類を操作してから、ペルソナを用いてカルディス地方に葉っぱの到着場所を変えたことと、全員向かってほしい旨の通信をした。

「…まずは、向かわせる前に火を消さないとね。」

スバルは、ノートに記述を書いて、カルディスラから立ち上る炎を消す。

「…行こう、みんな。」

ショックを拭えぬ風花の肩を叩きながら、スバルは全員に促した。
そして、一同は運営支部を後にした。

シュウリョウ-continue?- ( No.184 )
日時: 2017/04/12 21:02
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: EM5V5iBd)

※ここから死描写多発注意


カルディス地方・首都カルディスラ。
心優しい国王と、それを守護する兵士達。
その国王が治める、活気づいた街。

「…こ、これが…これが、あのカルディスラだと言うのですか…!?」

だが、今はそれも見る影はなく、この場には、大勢の倒れ付した存在がいた。
そして、命あるものを食いつくす炎の名残たる不快な臭いが充満し、それが更に一同の心を抉る。
入り口付近にいるだけでも、かなりの遺体の数が確認できた。

「これは…惨すぎる…。」
「任務で僕が燃やした以上に酷い…。」
「あんな綺麗な街だったのによぉ〜…。」

この付近に任務で配属されたことのある元・エタルニア公国軍空挺騎士団のハインケル、オミノス、ベアリングはあまりの凄惨な状態に変わり果てたこの街を見て、呟く。

「…! 見て!」

雪子が指さした方角には、鎧を着た兵士達が積み上がっていた。それらは黒く焼け焦げており、人かどうかの認識も危うい。だが、これだけはわかった。既に、息絶えている事が。

「アニエスさん、あの鎧は…!」
「ひ、酷い…! あの鎧は、このカルディスラの兵士達です…!」
「酷い…。酷すぎるよ…! って、あれ?」

アニエスの言葉にイデアが反応した後、ふと、その積み上がった兵士達の中に、他とは形が異なる鎧がある事に気が付いた。

「アニエス、何か一つだけ違う鎧があるよ?」
「え? あ、本当…ですね。あの鎧は一体…。」

言い切る前に、傍を赤い何かが横切った。赤い何かはその鎧の側まで来ると、しゃがみこんで見た。

「…ああ、そうだね。これは、この鎧は、間違いなくあの子の…。」
「あの子?」

会話のようなものを聞いていた千枝が首を傾げるも、赤い何か—赤い髪の女性はただ独り言のように呟くだけだ。

「…うん、最期まで皆を護る為に勇敢に戦った。そう、騎士として…。」
「あのー…。」
「…解っているさ。けど…やっぱり自分の子供に先立たれるのは辛いな…。はは、これじゃあ騎士失格だな。デジェルに叱られるよ…。」
「あ、あのー…。」
「…ありがとう。」

本当に、まるで独り言のようだが会話が成立しているのを見て、千枝は声をかけ続けるが、赤い髪の女性は気づかない。

「あのー!」
「わっ! ご、ごめんよ…。」

大きい声を出すと、女性はようやく気が付いたようだ。
そんな驚く女性の側に、クロムが寄っていった。

「ソワレ、その鎧はまさか…!」
「あ、クロム。…うん、間違いない。ボクが見間違えるはずもないよ。この鎧は、間違いなくデジェルのものだ。デジェルはボク達とはぐれた後、恐らくこの島が飛ばされた場所に着いたんだ。」

赤髪の女性—ソワレはクロムの問いに、少し悲しそうに答えた。
苦悶に満ちた表情を浮かべるクロムの側に、フルーレが近づいて、彼を見る。

「…お前も、そう思ったか。」
「クロム、フルーレは何て?」
「…今、合流できていない他の子供達も…ルキナやシンシア達も、ここに来ているかもしれないと。」
「えっ…!」

その言葉に驚いたのは、スミアだった。
探していた我が子がここにいる。つまり、ここで一緒に事切れているかもしれないという事だ。
だが、動揺をしているのはスミアだけではない。イーリス軍ほぼ全員、表情を変えていた。

「とにかく、この街を調べる必要がある。お主らも一緒についてきてくれんか?」

ユルヤナがクロムにそう言うと、クロムはフルーレと共に頷いた。この目で遺体を確認しない事には、信じられないのだ。
方針が決まった後、クロムはソワレの方を向いた。

「…ソワレ、辛いならここにいるといい。」
「いや、ボクは…?」
「…? どうした?」
「いや、お言葉に甘えさせてもらうよ。」

ソワレはそう言って、クロムから背を向け、鎧の積み上がった場所を、じっと見つめた。そこにある、娘の愛用していた鎧を、じっと見ていた。
クロムはこれ以上邪魔しない方がいいと思い、先に行った一団を追いかけるように走っていった。

シュウリョウ-continue?- ( No.185 )
日時: 2017/04/12 21:03
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: EM5V5iBd)

少し先に進むと、レヴナントがピクリと反応した。

「…! あ…!」
「そ、そんな…! ガイストまで!?」

そこにいたのは、レヴナントの父であるガイストと、それに折り重なって倒れる三つ編みの少女と、三角帽を被った青年がいた。
それを見た一団の中から、四人の存在が飛び出す。ノノとグレゴ、ミリエルとドニだ。

「ンン! グレゴ、ンンが…ンンが!」
「あぁ…わぁってる…!」
「…ロランさん…。」
「やっぱり、ここにいたんだべな…。」

遺体の損傷は、入り口の方よりも激しくはなかったせいで、すぐに判別できた。
三つ編みの少女はノノとグレゴの娘、ンンであり、三角帽の青年はミリエルとドニの息子、ロランのようだ。
大切な子供の変わり果てた姿を見て、ノノは動揺してンンに飛び付き泣き出し、グレゴは悔しそうに顔をしかめ、ミリエルとドニは悲しそうな表情でロランの側に寄った。

「パパ! 起きてよパパ!」

一方、レヴナントは壁にもたれて倒れ掛かるガイストに、素早く駆け寄って揺さぶった。そして、すぐに顔を上げた。

「! そうだ! 体! パパに体をあげなきゃ! ボクの体もパパがくれたから…。」
「! そ、そんなことできるのか!?」

レヴナントの言葉に、驚いたクロムが反応する。
だが、それを否定したのは、葉月だった。

「レヴ君、残念だけど、それができるのは貴方のパパだけ…。ガイストさんの能力がなせる業だから…。本来ならば、成仏する魂を物に定着させるなんて事は、あっちゃいけないの。」
「そ、そんな…!」

葉月の言葉に、レヴナントはガチャリと膝を折る。

「パパ…パパ…。」

鎧の身体に涙はない。あるのは、悲しみに満ちた声だけだ。

「…レヴ、しばらく、親父さんと一緒にいろ。」

そっと肩を取り、泣き崩れるレヴナントに声をかけたのは、完二だった。

「完二…?」
「大事な人が死んで、ショックじゃないわけないだろ。だから、しばらく親父さんと一緒に、ここで待ってろ。」

大切な存在を亡くしたばかりの完二は、今のレヴナントの気持ちが、痛いほどわかっていた。
だからしばらく、悲しみに暮れる時間を与えようという、彼なりの配慮だった。

「…。」

レヴナントはそんな完二の気持ちを、子供心に察したのか、小さく頷いて、ガイストの前に座った。

「…グレゴ、しばらく、ここを頼む。」

クロムは四人の中でもまだ平静を保てているグレゴに、そう声をかけた。グレゴは一つ頷いて、クロムの願いに答えた。

「ああ…。ノノもしばらくこのままだろう。…しばらく、こうさせてくれや。」
「…。」

悲しみに震えるグレゴの後姿を見て、クロムはそっと先へと進んだ。

シュウリョウ-continue?- ( No.186 )
日時: 2017/04/12 21:05
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: EM5V5iBd)

坂を登り切り、曲がり角に辿り着くと、墓が見えた。

「お、お墓…!?」

千枝は何か出るんじゃないかと思い、思わず雪子に飛びついた。

「あの場所は、カルディスラの墓地です。あの場所には、ノルエンデ村の慰霊碑があったはずで…!」
「あ、アニエス!」

何かに気が付いたのか、アニエスが突然走り出した。
全員、その方角へ駆けだそうとしたが、千枝が突然止まった。

「…え…。」

ふと、何かが気になって墓地とは反対側の道を、カルディスラの城へと続く道を、見る。
雪子も、千枝が止まった事に気が付き、視線の先を見た。

「あ…!」

その、見えてしまったものを見て、雪子は呆然と立ち尽くす千枝を抱きしめた。

「千枝、駄目…! 見ちゃ、駄目…!」
「…。」

千枝は支えを失ったかのようにがっくりと膝を落とし、震える手で雪子の服を握りしめた。

「あ、はは…。覚悟、してたはずなんだけどな…。やっぱり、見ちゃうと…こう、ショックっていうか、なんていうか…。こう、叫びたくなる、っていうの…?」
「…無理もない事だよ、千枝。私だって、こうやって平静を保ってるの、不思議なくらいだもん。…千枝にとって彼は特別だから、無理もないよ。」

雪子は、ポンポン、と千枝の背を叩いた。

「…私、少しの間ならこうしてるから…思いっきり、泣いちゃっていいよ、千枝。」
「…普段みたいに騒ぐ雪子なら、蹴り飛ばしてるのに…なんで、こういう時だけ、凄く、頼もしいんだか…。」
「…こういう時くらい、空気、読むよ。」

そう言って、雪子は笑った。いつもの爆笑ではなく、そっと、微笑むだけの。
千枝はそれに甘え、雪子の服をきつく握りしめ、涙を零した。

(許さない…。あの腐れ妖精…! あんな残虐非道な事をするなんて、妖精の皮を被った悪魔にしか思えない…!)

自分の考える妖精と言う存在がガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。
目の前で声を押し殺して泣きじゃくる千枝を見て、雪子はグッと拳を握った。

(…花村君、クマさん…。貴方達の仇、私達が必ず取るから。だから…今は、ゆっくり…おやすみなさい。)

そして、そっと後ろを振り返り、ある物を見てから目を伏せた。
そこにあった、クマを庇うように倒れ伏している、陽介の…亡骸を。

シュウリョウ-continue?- ( No.187 )
日時: 2017/04/12 21:24
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: qyjkJIJL)

少し戻り、アニエスは一人、ノルエンデ村の慰霊碑までやってきた。

「あ、アニエス、いきなり走ってどうし…!?」

後を追いかけてきたイデアが、立ち尽くすアニエスの側にあったものを見て、息を呑んだ。他の一同もそれに気づき、息を呑むしかできなかった。

「…覚悟を、していたつもりでしたが…やはり、実際に見てしまうと、取り乱しそうで…怖いです。…今、だんだん冷たくなっていくオリビアを思い出しました。何故でしょうね、イデア。」
「…。」

アニエスの問いに、イデアは答えられなかった。どう答えていいか、わからなかった。

「…すみません、イデア、皆さん。先に、行っていてください。」
「…大丈夫?」
「ええ、大丈夫です。…しばらく、ここで一人にしてほしいのです。」
「…。」

イデアは少し考えた後、一つ頷いてから、一同と共に奥へと消えた。
アニエスはイデア達がいなくなった後、慰霊碑の前で倒れている二つの存在のうち、小さな方の側に寄った。

「貴方も、ティズの応援に来ていたのですね。ティズは貴方にとって兄のような存在ですから、実際に見たい、その場で応援したいと思った気持ちはわかります。」

クスクスと笑うアニエス。そして、抱き合うように倒れている二つの存在のうち、一つの存在の頭を撫でる。

「…最期に、お兄さんと一緒にいられて、嬉しかったでしょうね。でも、できる事なら、生きてほしかった。…カールさんにどう説明すればいいのですか? エギル。」

そう呟いてから、アニエスは場所を移動し、もう一つの存在の側に座る。

「…貴方が、二年前に倒れたのも、この辺りでしたよね。この慰霊碑に寄りかかるように、眠っていた貴方を見て、私、本当に血の気が引いたのですよ?」

乾いた風が、アニエスの髪を撫でる。風が運んだ死臭に、彼女の目から、ようやく涙が零れた。

「…貴方は、また…! また、私にあの思いをさせるつもりですか! また…また、貴方とこうしてお話することができたのに、また貴方は私の手を離れて、遠い所へ行ってしまうのですか!?」

折角、帰ってきたのに、またこうして…いや、今度は、永遠に手の届かない所へと渡ってしまった彼。
アニエスは、そんな彼を、強く握りしめた。

「答えて…! 答えてください! ティズ! ティズーーーーーッ!!」

彼女の、張り裂けんばかりの悲鳴が、再現されたカルディスラの空を響き渡った…。

シュウリョウ-continue?- ( No.188 )
日時: 2017/04/12 21:25
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: qyjkJIJL)

曲がり角を曲がり、更に坂を上る。
だがそこから先は、さらに悲惨な光景が広がっていた。

「セレナ!? セレナ! お願い、目を開けて!」
「…ノワール…! っ…!」
「…貴方にしては勇敢に戦ったと思うわ、シャンブレー…。」

自分の子の亡骸を見つけたのか、亡骸を前に俯く者達。ある者は泣き、ある者は無念に口を閉ざし、ある者はその勇敢な死を褒める。
だが、総じて…その目から涙が零れ落ちていた。

「ひでぇ…!」
「恐らく、カルディスラ城を守るように、ここに重点的に配置したのだろう。だからここに…。」

ジャンとデニーは、先へと進む一同に混じり、その中を進んでいた。
この辺りから、遺体の数は急激に増え、ここを重点的に守りを固めたことを伺えた。

「酷すぎる…。戦争に巻き込まれたみたい…。」
「それを、あの化け物が一匹でやったんだ。」

悲しむリズに、ジャンはそう、それだけを言った。

「さっきも話したが、あんな強さを持っていて、かつ奴自身は不死の能力持ちだ。」
「やっぱり、どう考えたって勝てっこないよ!」
「だからこそ、私が奴と一緒に、時の果てへと飛んだ。だが、あの創造神に連れられてこの世界に来た後に、アンネが利用するために呼び戻したのだろうな。」

デニーがそう語ると、リズは更に悲しそうでいて、納得できないような表情を浮かべる。

「…奴の狙いは、この世界なのか?」

ふと、ジャンがデニーにしか聞こえないような声色で話す。デニーは難しい顔をして、

「…恐らく、そうだろうな。この世界を手中に収め、自分達の世界に染め上げること。そして、アンネの背後にいる奴の糧となる“絶望”を集めること。これもあるだろう。だが、目的はそれだけじゃないはずだ。」
「と言うと?」
「…アンネは、いや、奴等は、ユウ達のことを強く恨んでいるとしたら、恐らく“復讐”も兼ねているだろう。ユウ達への復讐を遂げるために、皆を巻き込んだのかもしれない。」
「あの腐れ妖精もそうだし、奴の背後にいるあの邪神の事だ。ありうる話だな。」

二人は先行く一同から少し離れながら、小声で話す。
ふと、マグノリアとニコライが止まった。見ると、他の一同に先へと促している。

「…? おっさん、マグノリア、何か見つけ…!?」

ジャンは、マグノリア達の見つけたものを見て、表情を凍り付かせた。
ニコライがしゃがみ込み、その存在の首にそっと手を当てる。そして、首を横に振った。どうやら、脈を確かめていたようだが、ないとわかり、首を振ったようだ。

「そうか…。やはり、逝ってしまったのだな、ユウ…。」

デニーは、少し寂しそうに呟いた。彼とユウは異母兄弟。半分は違う血が流れているとはいえ、半分は同じ血が流れている弟なのだ。兄が血を分けた弟の死を嘆かないわけがない。

「…。」
「アンネ…テメェだけは絶対許さねぇ…!」

ニコライはただ黙って祈りを捧げ、ジャンはユウを見ながら、アンネへの怒りを込め、静かに拳を震わせた。

「…。」

マグノリアは黙って立ち尽くしていた。

「マグノリア殿…?」
「…? 何だよ、マグノリア。こっちに来ないのか?」
「…そんな権利、私にはないわ。」

彼女がこちらに来ないことに気がついて不審に思ったニコライとジャンの呼びかけに、ただ静かにそう告げるだけだった。

「どういう意味だよ。」
「…私は、ユウが…みんながこうなった原因を作った元凶よ? そんな私には、彼に触れる権利なんか、ないわ…。」

マグノリアの呟かれた言葉に、ジャンはハッと息を呑む。
確かに、ここカルディスラにいた全員がこうなった原因は、ディアマンテを飛ばしたマグノリアにもある。だが、こうせざるを得なかった原因を作った元凶は、別にいる。

「お前は悪くねぇよ! 悪いのはお前をハメたアンネだ!」
「引き金はどうあれ、私は、私の意思で、ディアマンテを送ったのよ。」

マグノリアはその手に愛用している薙刀を携えた。その目は、復讐の炎に燃えているかのように、力強く揺れていた。

「だから、私は…奴と戦いに行くわ。それに、私は元々、魔王バスターだしね。」
「マグノリア、お前、一人で死にに行く気か!?」

単身、ディアマンテに戦いに挑もうとしているマグノリアを、デニーが止める。遥か時の彼方で対峙した彼はよく知っていた。ディアマンテの強さを、恐ろしさを。

「…自分で蒔いた種は、自分で刈り取らないとね。」

そう、優しい笑みで言った後、マグノリアは振り返る。

「ジャン、もし、昴の所に行くなら、昴に伝えて。…貴方を疑って、ごめんなさいって。」

そしてそれだけを言い残し、マグノリアは坂を下って行った。

「おい、マグノリア! くそっ!」
「ジャン、お前は彼女にこのことを伝えてくれ。恐らく今は一人で、運営の本部へと向かっているはずだ。…私はしばらくしてから、マグノリアの加勢に向かう。ニコライ、お前もマグノリアの加勢に来てくれ。」
「分かりました。」
「ああ、わかった。頼んだぞ、皇帝陛下!」

デニーの言う彼女、というのはスバルの事であると直感で悟ったジャンは、頷いた。
そして、悲しみに明け暮れているデニーとニコライを残し、悲しみを押し殺して坂道を駆け上がっていった。

シュウリョウ-continue?- ( No.189 )
日時: 2017/04/12 21:27
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: qyjkJIJL)

「あ、あぁ…! そ、そんな、リングアベル!」
「ルキナ! シンシア!」
「ウード! マーク! 目を開けて! お願い…!!」
(くそっ、どこもかしこも死体だらけかよっ…! 風花の言う通り、生存者はいないのか!?)

数々の遺体と、嘆く声を抜け、ジャンは城までやってきた。

「! …ここも、かよ…!」

中に入って一目散に飛び込んできた光景。それは、ここに来るまでに何度も見た光景だった。

「雪花…牡丹…凪…ジョーカーまでも…!?」

そこにいたのは、昴の家族とも言える存在。恐らく母たる昴を守る為、こうして集まって…そこで、殺されたのだろう。
そんな彼らの傍らには、共に戦った乱闘世界の戦士達がいた。

「ピッカ! ピ…カ、チューッ!!」

ピカチュウは、雪花の前に座り込み、何故か雪花に電撃を浴びせる。
だが、彼女の衣類が少し焦げただけで、変化はなかった。

「チューッ! チューッ!」
「ピカチュウ、やめろ! 一体何をして…!」

何度も何度も、電撃を放つピカチュウ。サムスが止めに入っても、絶えず雪花へと電撃を放つ。

「ピ…カ…。」
「ピカチュウ…!(雪花を電気ショックで生き返らそうとしたんだな…。だが、彼女は、もう…!)」

やがて、ピカチュウのエネルギーが切れたのか、唇を噛み締め泣くのを堪えるサムスの腕の中でぐったりと倒れこんだ。
同じ頃、カービィは牡丹の口に、マキシムトマトをぐいぐいと押し込んでいた。

「ぽよ。ぽよぽよ。」
「か、カービィ、お前、何をしてるんだ!」
「ぽよ!」

カービィを止めたリンクは、彼の言葉はわからない。だが、彼のやろうとしている事は、理解できた。
同時に、彼の行動は無駄な行為だという事も、ここにいたマリオ、リンク、ヨッシー、ピット、ゼルダ、ピーチは理解していた。恐らく、カービィも無駄だと頭では理解しているだろう。だが、心がその耐え難い喪失を認めたくなくて、必死でトマトを詰め込んでいる。目を覚まさせようと試みているのだろう。

「…カービィ。」

そんなカービィの側に、メタナイトが近づいた。
カービィはメタナイトを見ずに、トマトを牡丹の口に押し込んでいる。二度と自分の名を呼ぶことのない、声の源に。

「…お前にだって、わかっているだろう? …牡丹は、もう…死んでいるんだ。」
「! ぽよっ!!」

メタナイトの、直球すぎる言葉に、カービィはトマトを投げつけた。
静寂とすすり泣きの中に、トマトの落ちる音が跳ねる。再びの沈黙を合図に、カービィはがっくりと崩れ落ち、ポロポロと涙を零した。

「…ぽよ…。ぽよ、ぽよ…!」
「…何故、牡丹は死ななければならなかったのか、か…。その問いの答えを、私は持ち合わせてはいない。だが…牡丹は、いや、牡丹だけじゃない。ここにいる皆は、理不尽に殺された。あのアンネとかいう輩のもたらした災厄で、な。」
「…。」

カービィはしばらく、牡丹の側から離れなかった。

「…カービィ君の気持ち、僕には痛いほどよくわかります。」

そんなカービィの横から、そう寂しそうな声が聞こえた。
凪の頭を膝に乗せたままの、直斗からだった。

「何で、凪君が死ななければならなかったのか。何で、あのアンネとかいう妖精は僕らから“日常”を奪っていったのか。…色々とグルグルして、どうしていいか分からない。ただ、凪君が死んだ事実を…認めたくはない。」

大切な“日常”を創る存在の喪失に耐えられないのは、直斗も同じだった。
朝、他愛のない話をして、この逃走中が終わったら遊びにいこうねと約束していたのに、再び出会えた彼は冷たくなっていた。直斗はそれを、凪の死を、認めたくはなかった。だが、認めなければならなかった。

「でも、色々と人の死に触れたからかな。…認めなきゃいけないのも、わかるんだ。」
「直斗…。」

涙を堪える直斗の頭を、デデデはそっと撫でる。そんな彼らの横では、凪の遺体に寄り添うネスを宥める、ルイージがいた。

「…何で、凪兄ちゃんが死ななきゃならなかったの…? 何で、こうなっちゃったの…?」
「ネス…。」
「さっき聞いた、あの妖精のせいなの? あの大きなお馬さんのせいなの? ねぇ、ルイージ兄ちゃん、何で? 何で!?」
「…今は、何も考えないで、ネス。今は…何も…。」

ネスはポロポロと大粒の涙をこぼし、ルイージに泣きついた。そんなネスを、ルイージはただ、何も言わずに頭を撫でてあげていた。

「…ジョーカー…。」

クッパは、ボロボロな姿で倒れるジョーカーに、そっと触れた。まだ、ほんのりと暖かい、そんな気がした。

「…彼ラハ、勇敢ニ戦イマシタ…。コノ世界ヲ、皆サンヲ、守ルタメニ…。ソシテ…。」
「ああ、わかっているさ、ロボット。みんなは守るために戦った。戦い抜いた。だが、奴には…敵わなかった。」
「何故デショウネ…。アノ島デノ出来事ヲ、思イ出シマシタ…。仲間達ヲ失ッタ、アノ日ヲ…。」

暫し、目を伏せるロボット。無機物の機械ゆえに表情は読めないが、悲しんでいることは十分伝わってくる。
ロボットも、昔、昴達と出会った頃に、大きな喪失をしている。あの悲劇とこの喪失が重なり、思い出してしまったのだろう。

「…そういえば、鏡はどこだ?」

クッパが辺りを見回しながら、誰ともなく訊ねる。
そう、ここには鏡がいないのだ。理由はわからないが、この場にいないのは確かだ。

「鏡君は、最期に昴さんに会いに行こうとしたんじゃないかな?」

クッパの問いに答えるかのように声をあげたのは、葉月だった。そして葉月は、玉座の横にあった、恐らく王の寝室へと通じる扉を指差す。

「昴さんは、特殊な錠前をそこにつけたみたい。多分、限られた人だけが入れる、特殊な扉。下では見かけなかった由梨やりせちゃんも、昴さん達も、その奥にいるはずだよ。」
「(由梨、りせ、それに、鏡…。まさか!)葉月、鍵はこれか!?」

ジャンは、葉月の言いたいことを察し、懐から創世手帳を取り出した。
そう、葉月が言った三人は全員、手帳所持者である。

「多分、そう。」

葉月はジャンの手から創世手帳を借り受け、扉にかざした。
すると、カチャリと鍵の開く音がした。

「…。」

ジャンは、葉月やクッパ達と頷き合うと、中へと踏み込んでいった。

シュウリョウ-continue?- ( No.190 )
日時: 2017/04/12 21:28
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: qyjkJIJL)

扉を潜ってすぐ、一人が、もう一人を庇うように倒れていた遺体が目に入った。

「り、りせちゃん…! りせちゃん!」
「…やっぱり、ここにいたんだね。由梨…。最期にりせちゃんを庇うなんて、由梨らしいと言うかなんと言うか…。」

風花は庇われていたりせに駆け寄り、葉月は静かにりせを庇って事切れていた由梨の側に寄り添った。

「…ねぇ、聞いて、由梨。さっきね、理乃が死んだの。一緒に七海も死んだ。」

葉月は、虚空に向かいポツリポツリと話す。恐らく、そこにいるのだろう。由梨の、魂が。

「その上さ、貴方にまで先立たれてさ…。私がどんな思いで今の由梨見てるか、わかる?」

一筋の涙が、葉月の頬を濡らす。それは止めどなく溢れ、大地を濡らした。

「私…! ひとりぼっちだよ…!? 由梨も、理乃も、七海もいなくなって…! ひとりぼっちになっちゃったんだよ!? …ひとりは、やだよ…! 寂しいよ…!」
『…。』

由梨の魂は、葉月に向かい、悲しそうな、それでいて申し訳なさそうな顔を見せる。

(…あれは、しばらくそっとしといた方がいいな。)

ジャンは空気を読み、悲しみに明け暮れる風花と葉月を置いて、クッパやロボットと共に、彼女達の遺体脇にあった階段を上っていった。
しばらく進むと、すぐに、踊り場付近に倒れていた小さな赤い鳥と、少年の姿が見える。

「鏡!」
「紅サン!」

今まで見つかっていなかった最後の一人、鏡とその相棒たる紅だった。だが、彼らは既に事切れていると、駆け寄っていかなかったジャンは察した。

「…。」

既に手遅れの状態でいる鏡達に、クッパはわなわなと拳を震わせた。

「…鏡は…まだ、子供なのだぞ…! まだ、美味しいものを食べたり、楽しいことをしたり、誰かを好きになったりと…未来がある、子供なのだぞ!」

まだ未来ある子供の命を、いとも容易く奪っていったディアマンテ。それを呼び出したアンネ。
クッパは、沸き立つ怒りを抑えられず、叫ぶ。

「それを…それを奴等は…奴等は!」
「クッパサン、落チ着イテ下サイ!」
「クッパのおっさん、落ち着け! ここでディアマンテに突っ込んでいったら、アンネの思う壺だぞ!?」
「止めるな! それに…外では既に、我輩と同じ思いの奴等が、戦っているようだが?」
「なっ!?」

絡み付いて止めてくるロボットとジャンを振りほどきながら、クッパは言い放つ。ジャンはそこでようやく耳を澄ませ、戦いの音が鳴り響いていることに気がついた。言わずもがな、ディアマンテに大切な存在を殺された人々が、マグノリアを援護しに行ったのだろう。

「我が子、家族、恋人…。大切な存在が殺され、黙っている方がおかしいだろう。我輩はもう行くぞ。ジャン、と言ったか。もし昴を上で見たら…あの玉座に、鏡達と一緒に下ろしてやれ。最期くらい、一緒にいさせてやってほしい。」

クッパはそう言うと、ロボットと共に下へと降りていった。

「くそっ…!」
「ま、まずいよジャン! 早く彼女を見つけないと…!」
「わかってる! 影、さっさと上に…ん?」

早くスバルになんとかしてもらわないとまずい。このままでは無駄死にさせるだけだと踏んでいたジャンは、影の言葉に答えてから上へと行こうとしたが、下から上がってくる影を見つけ、立ち止まった。

「あぁ、なんとか間に合ったか。」
「クロム!?」

上がってきたのは、城入り口で娘達の遺体を見て立ち尽くしていたはずの、クロムだった。

「だ、大丈夫なの? 娘さん…ルキナやシンシアの側にいなくて。」
「ああ、あっちはスミアが付き添ってくれている。…俺に、マスターハンドの安否を確認してきてくれと、マリオから頼まれてな。」
「…。」

上には、恐らく先に向かったスバルがいるだろう。どうしたものかと考えるジャンだが、すぐに答えを出した。

「影、プレアもわかってくれるさ。…クロム、着いてきてくれ。それから、後で事情を話すから、何を見ても、聞いても…驚かないでやってほしい。」
「ああ、わかった。何があるかはわからんが、そうしよう。」

そして、クロムを加えたジャンと影は、更に上へと上がっていった。

「ジャン、いいの?」
「仕方ねぇだろ。プレアだってわかってくれるって。」

今は、そう思うしかないと思っていたジャンは、影にそう言って黙らせた。

シュウリョウ-continue?- ( No.191 )
日時: 2017/04/12 21:30
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: qyjkJIJL)

最上階へと上がってきた三人は、廊下で誰かが倒れていることに気がついた。

「あれは…! プレア!?」

スバルであることに気がついたジャンは、二人を置いて走り、彼女を抱き上げた。

「う…。」
(よかった、気を失ってるだけみてぇだな。)
「ジャン、スバルは!?」
「安心しろ。気ぃ失ってるだけだ。」

ジャンがそう言うと、影はほっと胸を撫で下ろした。
クロムは一瞬、スバルのことを問い詰めたくなったが、それをせずにまずはスバルが気絶した原因を探る。
それは、すぐに見つかった。

「…彼女は、この光景を見てしまったんだろう。」

開け放たれた本部のメインコントロール室。そこに広がっていた、惨劇。
血塗れになって絶命しているMZDとマスターハンド、そして、深々とレイピアの様なものが腹部に刺さったまま絶命していた、昴がいた…。
だが、ここでおかしいことに気がついた。

「あ、あぁ…! え、MZD! MZD! 何で…どうして!?」
「マスターハンドまで…! だが、何故だ? 彼は不老不死だったはずだ…!」
「MZDもそうだったはずなのに、何で、こんな…!」
(そうだ。昴は俺達同様人間であるから、ここで絶命していてもおかしくはない。だが、あの二人は神だ。何でここで死んでんだ!?)

不老不死の存在であるはずのMZDとマスターハンドまでもが、こうして昴と一緒に絶命しているのは、おかしい話だ。

「簡単に言うと、その不老不死の力を消されたから、だよ。」

突然、ここにいる誰のものでもない、誰かの声が響いた。
驚いた三人は声がした後ろを振り向くと、そこには、赤い旅装束に身を包んだ存在がいた。その赤い三角帽子から覗く瞳は、悲しみに揺らめいていた。

「う、ん…。」

丁度その時、スバルが意識を取り戻した。

「あ、スバル、大丈夫…?」
「…大丈夫。かなりショッキングな映像見て、気を失っただけだから…。」

やはりスバルは、あの惨劇を目の当たりにして気を失ったようであった。
スバルは、目の前にいた何者かを捉える。

「やぁ、お目覚めのようだね。」
「…貴方は…冒険家さん、と呼べばいいかな。」
「今はその呼び名で構わないよ。」

何者か…冒険家は、目を細めて笑った。

「この世界の本当の神様である君に訊ねるよ。」
「なっ…!? 神様は昴じゃないのか!?」

衝撃の事実を知り、驚くクロムにスバルはひとつ頷いた。

「あぁ、クロムさんはあの子と会っていたのね。確かに、あの子がこの世界の神様…と、されている。けど、本当のあの子の役割は、この世界を中から見守る、管理者なの。」
「管理者…!?」
「あの子は、私の記憶と姿を元にして生み出した、私の分身。そして、私が…この創世ノートを使って、この世界や、貴方達を生み出した、神様…だよ。厳密に言うと、ただの人間だけどね。」
「…。」

唐突に知らされたこの世界の仕組みに、クロムは口を開けて驚くしかできなかった。

「…細かい事情とかは、後で話すよ。それで、冒険家さん。私に何を訊ねたいの?」
「うん。この世界はもう、滅びるしかないのは、悟っているよね?」
「なっ!?」

冒険家が口にした言葉に、ジャンとクロムは驚きを隠せない。だが、スバルと影は逆に冷静だった。

「…私には、あのディアマンテをどうにかする力は、残念だけど…ないの。神たる存在のMZDやマスターさんが絶命した以上、奴を止められるのは、もういない。だから、この世界に残されてしまった時間は、もうあと僅かなの…。」
「そ、そんな…! プレアでもダメなのかよ…!」

スバルから放たれた言葉は、この場にいた全員を“絶望”に染めるのは簡単だった。

「…この世界は、滅びまでの時間が定まってしまった。どう足掻こうとも、泣き叫んでも、あのディアマンテによって滅ぼされる。…だけど。」

冒険家は、スバルを正面に見た。

「僕ならば、別の可能性を示すことができる。残念ながら、“この世界”を救うことはできないけど…。」
「…ある人物に干渉し、新たなる可能性を生み出すつもりなのね。」
「なっ!? ど、どうやって!?」

何も知らないクロムは、スバルに問いかける。だが、ジャンは何かに気づき、ハッと息を呑んだ。

「そ、そうか! お前の持っている剣と盾を使えば…!」

ジャンの言葉に、冒険家は頷く。

「…だけど、君にその気がないのなら、僕はこれを、僕の友人達に話すよ。きっと二人とも、ティズ君達のピンチに寝ていられないだろうからね。その上で、この世界たるそのノートを燃やすつもり。」
「…。」
「さぁ、答えを聞く時間だ。新たな可能性に賭け、僕をある人物に干渉させるか。または、この世界と共に心中し、全ての未来を断ち切るか。」

ある人物へと僅かな望みを託すか、この世界と共に、未来を閉ざすか。
選択は、二つに一つ。だが、悩んでいる時間はなかった。

「悪いけど、悩んでいる暇はない。こうしている間にも、次々と命は失われていっている。」

こうしている間にも、ディアマンテにより、誰かが殺されている。スバルに与えられた選択の時間は、僅かしかなかった。

「…私の、答えは…。」

シュウリョウ-continue?- ( No.192 )
日時: 2017/04/12 21:34
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: qyjkJIJL)

「こうして、惨劇の逃走劇は終わり、彼女達に最期の別れがやって来た。」

この逃走劇は、終わってからが全ての本番だった。
逃走劇中の悲劇よりも、後に待ち受けていた惨劇の方が、酷かった。

「そして、僕は彼女の前に立ちはだかった。彼女に、ある問いかけをするために。」

正直、あんな別れをした後にこうして問いかけるのも、しかも時間がない中で問いかけるのも申し訳なかったけど、早く答えを聞かなきゃ、僕が死ぬところだし。
それに、僕の相棒にやらせていたあることをした後のアレを、受け取らなきゃいけなかったし。

「…さて、僕は答えを聞いた。その後の話を、これからしていこうと思う。」

この物語を語り終える時が、ついに来た。
絶望的な終幕だけれど、これはもう、終わってしまった事。何度も言うけど、何人たりとも干渉できない。

「長かった惨劇の逃走劇が幕を閉じ、この物語はエピローグ…終章を迎えた。」

君に話す、最後の物語。
このノートに記された、最後のお話。僕はこれを語り終える事を、少しだけ寂しく思う。

「さぁ、最後の章を語り始めよう。そして、絶望に満ち溢れたこの物語を…終わらせてあげよう。」

僕は口上を述べると、ノートを開いた。
パンドラの箱が開け放たれたせいで絶望に満ち溢れた世界が広がった。だけど、そこに残った、僅かな希望…。僕は、その僅かな希望を信じて、君に話を続けた…。







今日はここまで。明日、ラスト。