二次創作小説(映像)※倉庫ログ

ヒショウ-fear of brave- ( No.193 )
日時: 2017/04/13 06:55
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: qyjkJIJL)

スバルの決断を聞いた冒険家は、ひとつ頷いた。

「…君の答えは確かに聞き届けた。じゃあ、ノートを」
「あ、ごめん、それはまだ待って。」

創世ノートを預かろうとした冒険家を、スバルは止める。

「どうして?」
「…いやー、無駄だってわかってはいるよ? でもね…。」

スバルは目を閉じ、ノートを握った。

「ただやられっぱなしは性に合わないの。だから、無駄だとわかってるけど…。」
「…最期まで戦うんだね。最期まで、この世界と命運を共にするんだね。」

冒険家が訊ねると、スバルは頷いた。横では、その決断を聞いたジャン、影、クロムが笑みを浮かべている。
最期まで、この世界と共に、この世界の物語を、その命の終幕まで見届けたい。その思いが伝わり、笑みを隠せなかったのだろう。

「俺達も、最期まで抗おう。」
「ああ。無駄かも知れねぇけど、やられっぱなしは性に合わねぇのは、俺も同じだ。」
「うん! スバル、こうなったら最期まで突っ走ろう!」

この先に待ち受けるのは、終焉のみ。だが、このまま黙って終演を迎えるより、最期まで、不様かも知れないが、自分の役割を演じきって、戦い抜いて死んだ方がましだ、とここにいる全員、そう考えたようだ。
皆の決意を聞いたスバルは、冒険家を見た。

「…本心はさっさとその人の許に行きたいのはわかる。だけど、貴方には見ていてほしいの。不様でカッコ悪いけど…私達の、最期の演技を。この世界の終幕を。」
「わかった。君達の決意に免じて、僕も最後の一仕事をするよ。」
「一仕事?」
「今は相棒にもやらせてるけど…これに、君達の魂を…想いを、集めたいんだ。」

そう言って取り出したのは、青い砂が入った、砂時計だった。

「この想いは、きっと何かの役に立つ。そう思ったんだ。」
「…うん。きっと、そう思う。お願いね、冒険家さん。」

冒険家が頷いたのを確認すると、スバルは昴達の遺体に向き直った。

「…この世界の幕引き、迎えちゃったね、昴。」

昴から答えはない。だが、スバルは続ける。

「だけど、ただ黙って舞台を降りるつもりは更々ないんだよね。だから私は、最期まで戦う。」
「ああ。ただ黙って終わりなんざ迎えたかねぇ。最期の最期まで、戦って、戦って、戦い抜いて、悔いの残らぬよう死ぬさ。」
「まぁ、君達には怒鳴られそうな気がするけど、ただ黙ってるなんて性分じゃないからねー。」
「見せてやるさ。俺達の想いを。絆を。」

ジャンも、影も、かつて運命を変える為に戦ったクロムでさえも、決意を語る。
最期まで、華々しく舞台で躍り、散る決意を。

ヒショウ-fear of brave- ( No.194 )
日時: 2017/04/13 07:33
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: qXcl.o9e)

そして、クッパの願い通り、鏡達と昴を玉座に並べてから、戦いの音が響く場所を四人で見る。

「ねぇ、ジャン君。今さ、ふと…貴方の親友の口癖みたいなあの言葉が出てきたんだけど。」
「あれか。奇遇だな、プレア。俺も今浮かんだ。」
「どんな言葉だ?」

知らないクロムが聞くと、スバルとジャンは互いを見てから、笑った。

「“がんばリベンジ”。」

ユウの口癖、がんばリベンジ。スバルとジャンは、何故かこの時、この言葉が出てきた。その言葉を聞いたクロムは、意味がわからないなりにも、何故か心が納得した。まるで、すとん、と、その言葉が心に当てはまったみたいに。

「…意味はわからないが、不思議だ。何故かとてつもなく共感できる。」
「あはは、ボクも。」

遠くで嘶きが聞こえる。剣戟の音は数少ない。大半の人間がやられたのだろうか。
だがそれでも、残された存在は諦めていない。必死で最期まで、ディアマンテに抗おうとしている。

「確かに、私達じゃディアマンテには敵わない。」

スバルは、昴がくれたメイス…ディ・エールデを取り出し、遠くを見る。

「だけど、ボクらだって意地がある。」

影は、その手に魔力を込め、遠くを見る。

「全てを亡くしても、“絶望”で終わらせるなんざ、絶対嫌だ。」

ジャンも、ヴェンデッタを抜き、遠くを見る。

「例え不様と言われようと、俺達は俺達の意思で、後悔のない最期を迎える。」

クロムも、神剣ファルシオンを抜き、遠くを見る。

「これが私達の…!」
「ボク達の…!」
「俺達の…!」

そして、四人は走り出す。

「“がんばリベンジ”だっ!」

全てを奪った存在へ、最期の勇姿を見せに…。

ヒショウ-fear of brave- ( No.195 )
日時: 2017/04/13 10:06
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FpNTyiBw)

遺された者は、死力を尽くし、戦った。

「…。」

だが、不死の力を持つ存在には敵わず、世界から、音が消えた。

(静かな世界…。)

一人遺されたスバルは、炎によりくすんでしまった青空を見上げた。
その腹部からは、夥しい血が流れている。自分が死ぬのも、時間の問題だろう。と悟っていた。

(思念体で来たはいいけど…多分、これだと現実の私にも、何らかの影響が出そうだなー…。)

現実の体をそのまま持って来てはいないので、厳密には“死”はないはずだが、現実にも何か影響が起こってもおかしくはないと、考えてしまう。
だがそれでも、悔いはなかった。

(…自分が創った世界で、最期を迎えるのも…悪くないかも。)

遠くで、ディアマンテが暴れているのか、静かな世界に、嘶きと、悲鳴が響く。
何もできない自分に、少しだけ後悔の念が芽生えた時、ザリッ、と地面を踏む音が聞こえたスバルは、少しだけ、笑みを見せた。

「…あ、はは…。世界って、こんな…呆気なく、壊れるん、だね…。」

まるで、自嘲気味に吐き出された言葉に、思わずスバルは自分自身の言葉だと言うのに、呆れる。
だが、目の前にいるであろう人物は、黙って話を聞いていた。
スバルはそこでようやく、その、目の前にいた人物の顔を見た。

(あぁ、やっぱり貴方だったのね…。)

赤い旅装束に、長く美しい銀髪が揺らめくその存在に、スバルは安堵を覚える。
銀髪の存在の足元にいた狐が、心配そうにスバルを見てきた。ふと、狐がくわえていた何かを見て、スバルは安堵を覚えた。

(こんなに沢山…みんなの魂を集めたんだね…。じゃあ、次は…私の、番か。)

スバルは再び、銀髪の存在を見る。

「…ね、ぇ…。お願い、聞いて、貰って…いい…?」
「うん、いいよ。僕でよければ。」

返答の後、スバルは血にまみれた創世ノートを差し出した。

「これを…さっき、お願いした、人に…託して、ほしいんだ…。貴方なら、簡単、でしょ…?」
「…うん。」

銀髪の存在は、ノートを受けとると、きつく胸に抱き締めた。

「…あり、がとう…。じゃあ…“またね”。」

スバルは何故、ここで“またね”と言ったか、わからなかった。普通ここでは“さよなら”であるが、この言葉は似合わない。そう考えたのだろう。

(あぁ…眠くなってきた…。お願い、冒険家さん…。ノートを…この世界に残された希望を…。)

視界が、黒く染まる。急に睡魔が襲ってきて、彼女の意識は、深いところへと落ちていった…。

ヒショウ-fear of brave- ( No.196 )
日時: 2017/04/13 10:08
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FpNTyiBw)

全てを語り終えた僕は、君を見る。
最後まで、取り乱すこともせずに聞いてくれた君を、じっと見る。

「…これは、全て起こってしまった物語。さぁ、君はどう受け止め、どう感じたかい?」

僕は最後に、君に問いかける。
終末を語り終えた時に出した、君の答えを聞く為に…。

「答えを、聞いていいかい?」