二次創作小説(映像)※倉庫ログ

ヒショウ-fly to next chance- ( No.197 )
日時: 2017/04/13 11:58
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 9yNBfouf)

「答えを、聞いていいかい?」

目の前にいたその人は、私にそう聞いてきた。
突然やって来て、突然みんなを集めて話し始めたその人は、私に真剣な目で、そう聞いてくる。

「…創造者・スバル。」

赤い軽装をした彼…いや、彼女に見つめられ、私はどうしていいかわからなかった。
だけど、納得していた。今の話は全て、本当のことだと。

「…話が話だから驚いたけど…“滅びた世界の私”は、未来を繋げることを選択したんだね。」

今、話されたことは、これから…“近い将来、起こること”だと。
彼女は、“未来で全てを見てきた”のだと。
今までされてきた話は全部…“未来で起こってしまった悲劇”だと言うこと。
そして“逃走中を始める前の私達に干渉し、運命の分岐点を作ってほしい”という願いを込め、未来の…“滅びた世界の私”は、彼女にこのノートを託したのだということ。
だけど話が話だから、このコピー聖域に集められた昴、MZD、影君、マスターさんは驚きに目を見張っていた。いや無理もないけどね。冷静に聞けたことに、私自身、未だに信じられない。

「お、おい…! これ、本当の話なのか!?」
「僕はこの目で見てきたよ。信じられないなら、君も見てくると良いよ、音楽世界の創造神。あ、乱闘世界の創造神も時を越えられたよね。」
「…信じるしかないでしょ、これは。」

狼狽えるMZDに、彼女の言葉が終わってから、私は静かにそう言う。
そう、信じるしかない。だってあのノートは、紛れもなく本物の創世ノート。本物の所持者だからわかる。

「…正直、さっきも言ったように話された内容が内容だから、かなり驚いたけど…信じるよ、貴方の話。貴方の持つ剣と盾の性能も、貴方が彼に起こした奇跡も、私は知ってるからね。」
「ちょ、ちょっと待てよ俺! じゃあ、今の話は本当に“これから起こること”で、俺達が何の対策もしないままだったら…!」

昴もまた動揺を隠しきれず、私にそう尋ねた。

「…私も貴方も、みんなディアマンテに殺される。ううん、私達が殺されるだけじゃない。この世界が完全に滅亡する。」

私は彼女からノートを受け取り、静かに目を閉じた。

「…昴。」
「…話せ、ってんだろ。今、聞いた話を、あいつらにも。」
「察しが早くて助かる。流石私の娘ね!」
「誰がお前の娘だ。お前の腹から生まれた覚えはねぇよ。俺らは分身と本体の関係だろうがよ。」
「正論返さないでよ! お母さん泣くよ!?」

私の手からノートをひったくりながら真面目に返す娘に、私は軽く泣いた。だけど彼女は総スルー決め込みやがった。

「だが、事が事だ。あいつらがショックを受けるのは覚悟しとけよ? お前の方にも色々と質問とか行くかも知れねぇけど。」
「話聞いて!? …まぁ、いいわ。それは覚悟の上よ。今はその話をしないと対策は練られない。ショック受けるだけならまだマシよ。“絶望”の上で死なれるよりはね。」

昴は私と同時に、彼女へと向き直った。

「…正直、お前がいてくれて助かった。」
「貴方が私からこのノートを託されてなかったら、私達はまた同じ過ちを繰り返すところだったわ。」

私達は、心からの礼を、彼女に言う。

ヒショウ-fly to next chance- ( No.198 )
日時: 2017/04/13 13:41
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: Kot0lCt/)

「ありがとう、冒険家さん。…ううん、デネブさん。」

彼女…デネブさんは目を細めて笑ってくれた。今は帽子を外してるから、その笑顔がよくわかった。

「僕はただ、語り部として君達に“未来”を語ったまでだよ。これからどう動くかは、君達次第だ。僕ができることは、ここまでだよ。」
「十分すぎるって。何も知らないより、少しでも情報がある方が対策がとりやすい。」

あの時は、何も知らないままだったから後手後手に回っていたけど、今は違う。
今の私達には、未来の私から託された、創世ノートが…未来の情報がある。

「…あの世界は、パンドラの箱がアンネとかいう妖精により、開け放たれた。」
「…マスター?」

急に、マスターさんが口を開いて、何かを言ったから私達は注目をした。

「そして箱から現れた、ディアマンテという“絶望”により、滅ぼされた。」
「だけど、そんな“絶望”の中にも、僅かな“希望”が残されていた。…創世ノートに刻まれた、未来の物語…。未来の、情報が。」
「ああ。それを、彼女は運んできてくれたのだ。お陰でこれから、後手後手に回らずに済む。全てが手遅れになる前に、全てを救うことができるかもしれない。」

パンドラの箱の話を私が続けると、マスターさんはデネブさんに深々と頭を下げた。というかデネブさんが女だって気付いてたの? マスターさん。

「さぁて、次はみんなにそれを話すんでしょ? 僕も同行させて? …渡したいものもあるし。」
「ああ、構わない。むしろ見てきたお前がいるなら、心強い。」

そう、情報の信憑性を疑われたら、デネブさんが補完すればいい。

「…しかし…。ショックを与えるのは覚悟の上だが、やっぱり世界は滅びます、なんて言うのは気が引けるな…。」
「…嫌な役割押し付けてる自覚はあるわよ。でも…。」
「わかってる。これは話さないとならない。…その上で、あいつらに聞かないとならないな。」

聞かなければならないこと。それは、私にも容易に察することができた。

(この決断…何だかまるで…。)

まるで、かつて彼女がある組織にかかわっていた時に経験した決断みたいで、少しだけ、彼女達の気持ちが察せた。

ヒショウ-fly to next chance- ( No.199 )
日時: 2017/04/13 14:48
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FpNTyiBw)

スバルと別れ、コピー聖域を出た昴は、背後にいたマスターハンドとMZDに向き直った。

「悪い、二人も見てきてくれないか? 未来を。」
「今オレもそうしようとしたとこだ。」
「私もだ。」

デネブを信じていないわけではないが、何も対策していない未来が、本当に滅びへと向かうのか、それを確認してくるように願ったが、二人は元よりそのつもりだったらしい。

「そうだね。君達自身の目でも、確かめてみるといいよ。見てきた人が多いほど、情報は信憑性を増すだろうからね。」

疑われているわけではないとわかっていたのか、デネブはただそれだけを言う。
二人は頷き合うと、すぐに姿を消した。

「…影、みんなを神殿に集めたい。協力してくれるか?」
「いや、正直、神殿じゃない方がいい。もしかしたら、あのアンネがどこからか聞いてるかもしれない。」

影の言う事はごもっともで、こうして逃走中をやる事をどこからか入手してきたアンネだ。未来を知っていると知られたら、今度は何をされるかわからない。折角届いた決死の情報が無駄になる。

「…じゃあ、このコピー聖域に集めよう。外界との接触がないここなら、話が漏れることはないだろう。事情を知らない奴には、機密性が高い情報をここで話すために作ったと言っとけばいいさ。」
「そうだね。じゃあ、パパッとメールを送って、と。」
「デネブは先に中にいてくれ。」
「うん、わかった。」

デネブをコピー聖域の中に入れた昴と影は、手分けしてメールを送った。
程なくして、かなりの人数が聖域の長老樹の前に集まった。

「なぁ、昴さん。話って何だよ。しかもこんなところに呼び出して。」
「中に入ってから全部話すさ。」

そして、昴は長老樹から扉を出した。初めて見る人々は驚きに目を見張るが、事情を知っている人々は平静を保ちつつも、首を傾げている。

「…なぁ、昴。」

ほぼ全員が中に入った時、ジャンは一人残って昴に訊ねた。

「何でコピー聖域で話を? プレアの事はバレちゃまずいんじゃねぇか?」
「あいつはいないから大丈夫だって。…誰かに聞かれちゃまずい話があるんだよ。」
「…まぁ、いい。全部、中に入ったら話してくれんだろ?」
「ああ。…色々とショックを受けるかもしれないが、聞いてくれ。」

昴の真剣な目に、ジャンは一つ頷いた。
話の内容はわからない。だが、昴のこの目は聞かないとまずいと、ジャンの中で判断したからだ。

ヒショウ-fly to next chance- ( No.200 )
日時: 2017/04/13 15:56
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FpNTyiBw)

そして、コピー聖域には大勢の仲間達が詰めかけた。

「あ、あれ? デネブさん?」

知り合いの姿を見つけたユウが、デネブに声をかける。

「やあ、ユウ君。みんなも。久しぶりだね。アルタイルの件ではお世話になりました。」
「いえいえ、ティズの件は本当に感謝してもし足りないくらいです。こちらこそ、ありがとうございました。」

世間話をするデネブとアニエスに、昴は何だか拍子抜けしてしまう。

「…さて、全員集まったな。」

昴が話し始めようとしたその時、マスターハンドとMZDが帰ってきたのか、昴達の前に現れる。
その表情は、真っ青だった。何か悪いモノでも見たかのように。

「おお、いいタイミングで帰って来やがったな。」
「ああ…。」
「…その顔だと、どうやら本当らしいな。」

昴の問いに、MZDとマスターハンドは頷いた。
何の話をしているのかわからない一同は、昴とMZDのやり取りに首を傾げた。
MZD達との話を終えた昴は、一同に向き直る。

「…これから、お前達にする話は、これから起こる事の話だ。だが、その事が事だから、ショックを受けるかもしれない。…それでも、聞いてほしいんだ。」

昴は、赤く染められた創世ノートを取り出す。その取り出された物に、場は騒然となった。

「す、昴さん、それは!?」
「未来の俺が、俺に託した…未来の物語が記述されているノートだ。」

正確には本体であるスバルへ、未来のスバルに託した物だろうと事情を知る一同は思ったが、そこは口に出さないでおいた。

「このノートを見てわかる通り、未来の俺達は…絶望を経験した。それこそ、この世界が崩壊するほどの、な。」

そして、昴はノートに記述された内容を話していく。
プランになかった、ミッション1前の裏切り者募集の通達と、その裏切り者に名乗りを上げた理乃の役割。
ミッション2で烈達が閉じ込められ、そのままミッション3で絶命したこと。
ミッション3でディアマンテが現れ、未来へと飛ばすために必要な時空の羅針盤を入手する最中に、理乃と七海が絶命したこと。
そのディアマンテはマグノリアが未来に飛ばしたこと。
そして…全てが終わった時に現れた黒幕、アンネのこと。
最後に起こった絶望…マグノリアが飛ばした、ディアマンテの行為のこと。
昴は余す事無く、全て。スバルが関わっていること以外は全て、話した。

「…ちょ、ちょっと待ってよ昴さん!」

全てを話し終えた時、千枝が震える手を上げ、昴を呼んだ。

「そ、そんな話、到底信じらんないよ!」
「悪いけど、アタシも流石にこれは信じられない。流石にスケールがデカすぎる。」

千枝の言葉に、由梨が続く。事が大きすぎて、信じようとしても信じられないのだろう。かと言って、嘘を言っている確証もないのでそれ以上言及できないのだろうが。

「悪いけど、その未来は本当だ。今、オレとマスターが見てきた。」
「ああ…。辺り一面炎に焼かれ、音が響かない、真っ白な、廃墟のように思えた。名付けるなら、シロノセカイとでも言うべきか…。」
「話を聞く限りだと、まるで月が壊されてエンドレイヤーを迎えた後の世界だね…。」

マスターハンドの語った言葉に、ティズが呟いた。と同時に、ティズはデネブを見る。

「…ねぇ、デネブ。その砂時計の中身は…。」
「うん、さっき話した世界…滅びた世界にいた、君達の想いさ。」
「え、ティ、ティズ、何か閃いたのですか?」

心配そうに訊ねてくるアニエスに、ティズは頷いた。

「…あの砂時計は、結末を迎えてしまった世界の僕らの想いを、デニーと対峙した時の僕らへと送り届けててくれた。多分、僕達が使っていたマグノリアの砂時計とは別物だろうけど、性能が同じなら…アレを起こせばきっと、今、聞いた話が嘘か本当かわかると思う。あの砂時計に込められた、魂…想いを解き放てば。」
「アレ…? あっ! まさか、ブレイブリーセカンドですか!?」

ブレイブリーセカンド、と言ったユウの言葉に、この言葉の意味を知っている人々がどよめく。

「…ブレイブリーセカンド。それは、“やり直す勇気”。」

デネブがその手に砂時計を持ち、語り始めると、どよめきが治まる。

「僕は、未来の君達から託された想いを、ここに持ってきた。君達にこの逃走中を“やり直す勇気”があるのなら、僕はこの砂時計を使って、君達へこの想いを託そうと思う。恐らく、この当時の記憶が君達に流れると思う。その覚悟ができたら、僕はブレイブリーセカンドを起こすよ。」
「…。」

誰も、デネブの言葉に答える者はいなかった。話が急すぎて、どうしていいか分からないのだろう。

「…三日だ。」
「え?」

唐突に昴から放たれた言葉に、全員戸惑った。

「三日、お前達に考える猶予を与える。ブレイブリーセカンドを起こして未来からの想いを保持して逃走中を行い、アンネやディアマンテと言った絶望に抗うか。または、ここでブレイブリーセカンドを起こさずに、更に逃走中も起こさないでいつ襲ってくるかわからないアンネやディアマンテに怯えながら余生を過ごすか。…逃走中をまた…は、おかしいか。逃走中をやるか、やらないか。三日以内に結論を出せ。」
「みっ、三日って、無茶苦茶だよ!」

かなり短い期限に、風雅は思わずそう言うが、昴は肩を竦めて溜息をついた。

「これでも与えた方だ。様々な対策を練ったりしなきゃいけないこの状況で、三日も与えるのは十分すぎる。…無茶苦茶言ってるのは俺だってわかってる。だが、時間がないんだ。三日以内に逃走中をやるかやらないかの結論を出せ。デネブ、それまでその砂時計の管理はお前に任せる。」
「わかった。」
「…色々と言いたい事はあると思う。だが、これは本当に近い将来起こる話だ。…全てを決めるのは、お前達だ。じゃあ、解散。」

昴がそう宣言すると、一同はコピー聖域を後にした…。