二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドウヨウ-a betrayer- ( No.41 )
- 日時: 2016/01/05 21:59
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: PMN5zCv8)
【牢獄 de とーく】
ユルヤナの森の仕立て屋前にある牢獄…。
「うおっと!」
完二はその少し手前に落とされ、痛む尻を撫でながら立ち上がった。
「いてて…。ケツ打った…。」
「あ、完二君。お疲れ様ー。」
そんな完二に声をかけてきたのは、先に捕まっていた葉月だった。
「あー、お疲れッス、センパ…イ…。」
完二は声をかけてきた葉月を労おうと、自分も労いの言葉を返す…はずだったが、その言葉は足下に転がっていた何かのせいですっと消え去った。
「えーっと、センパイ、なんッスかこれは?」
「ん? 針山。ユルヤナのおじいちゃんね、針山になりたいって言ったから喜んで矢を刺してあげたの。」
「」
そこにあったのは、いや、いたのは、ここユルヤナの森の仕立て屋の本来の主であるユルヤナの変わり果てた姿だった。見事に針山になっている。ええ、裁縫道具の針山もしくは針刺しの方です。
「センパイ、針と言う名の矢をブッ刺し過ぎッス。何言われたかは何となく想像ついたんでこれ以上オレの口からは言わねッスけど。」
「大丈夫大丈夫。このおじいちゃん不死身だし。」
「確かに不老不死ッスけど、これその内ガチで死ぬんじゃないッスか? 血ィ出し過ぎので。とりあえず誰かー。回復魔法使える人いないッスかー?」
流石にこのまま放置もまずいので、幸いにも近くを見回っていたヴィクターによりユルヤナは手当てを受けたとさ。
- ドウヨウ-a betrayer- ( No.42 )
- 日時: 2016/01/05 22:43
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: PMN5zCv8)
『通達:裏切り者募集
これから111分までの間、裏切り者を募る。逃走者の位置を通報し、ハンターが確保すれば一人当たり賞金10万円をボーナスで獲得。ただし、ハンターに捕まれば賞金は0となる。』
突然の通達に、各地にいる逃走者達はどよめいた。
「う、嘘!? 裏切り者を募集するって…! 昴さん、MZD、どうして…!」
まさかの通達に、氷海は驚きを隠せなかった。
「裏切り者、とはいったい何だ? 氷海。言葉からして不穏な気しかしないが。」
一緒に行動していたエインフェリアが氷海に訊ねる。テレビなどほとんど見ないエインフェリアにとっては、初めて聞く言葉だったのだろう。
「裏切り者は、逃走中にあるシステムの一つです。逃走者と言う立場ですが、ハンターと内通する存在になり、賞金を多く獲得する為に私達の位置を通報し、ハンターに向かわせます。」
「成程。内通者となり、同胞を裏切るから、裏切り者か。金の為に動くとは、中々に下種い奴だ。」
裏切り者システムの事について氷海から簡単な説明を受けたエインフェリアは、嫌悪感丸出しの表情をした。
「幸い、今回は募集型なので、111分までの間に誰も名乗り出なければ、裏切り者は生まれません。それに…。」
「裏切り者をやるような下種は、私達の中にはいない。だろう? 氷海。」
そう、エインフェリアの言う通り、今回の逃走者の中では金の亡者的な存在はいない。唯一怪しい葉月でさえ、そんな仲間を売って得るような汚れた金は要らないと答えるだろう。第一、葉月は既に捕まっているので、対象外だ。
「ええ。そんな人はいないはずです。」
「ならば、信じればいい。お前の信じる仲間を。私も、私の信じる仲間を、家族を信じるさ。」
そんなこんなで、刻一刻と裏切り者募集時間は過ぎていく。
- ドウヨウ-a betrayer- ( No.43 )
- 日時: 2016/01/05 22:44
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: PMN5zCv8)
とある地方。裏切り者締め切りまで、あと30秒程。
「…。」
一つの影は、端末を手に取った。
「——です。」
そして、どこかに電話をかけた。
次に紡がれた言の葉は、逃走者を絶望へと引き落とすに十分だった…。
「裏切ります。」
- ドウヨウ-a betrayer- ( No.44 )
- 日時: 2016/01/05 22:50
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: PMN5zCv8)
—ピリリ、ピリリ!
「! メール…!」
エタルニアの病院内で隠れていたホーリーは、突然端末が鳴り響いて驚いたが、すぐに何かを悟って端末を手に持って確認した。
「『裏切り者が君達の中から誕生した。裏切り者はこれ以降、ハンターに逃走者の位置を通報するようになる。』チィッ! 誰かが金に目がくらんで裏切ったのかい!」
最悪な通知を受け取ったホーリーは、悪態をつきつつも病院の外に出た。
勿論、その衝撃が大きかったのはホーリーだけではない。
「裏切り者が、私達の中にいる…!?」
エイゼン地方・エイゼン大橋。ガイストはここに隠れながら裏切り者の通達を受け取った。
この通知を受け取った瞬間、ガイストの顔が凄く険しくなった。
「ガイスト。」
ひょこん、とガイストの前に顔を覗かせたのは、ティズだった。
「ティズか。お前が裏切り者をやるとは思えんが、一応聞いておく。裏切り者は…。」
「信じていいよ。僕は裏切り者じゃない。ガイストもそうでしょ? 僕、近くにいたからガイストが電話をかけてないって証人になるよ。なんか、真っ先に疑われそうだし。」
「一言余計だが、ありがたい。近くにいたのならば、私もティズの声が聞こえていてもおかしくはないだろうな。信じよう。」
どうやらこの二人は互いに以外にも近くにいたので、裏切り者ではないと互いに断定できたようだ。
「でも、本当に厄介だね。僕達の中では誰もこんな通達を真に受けて裏切るはずがないと思っていたけど…。」
「金に目がくらんで仲間を売るような下種な奴はいないと思っていたが、腹の底ではそう思っていなかった、と言ったところだろう。」
ガイストとティズが冷静に分析するも、裏切り者が誰か、見当もつかない。
「実在するルールである以上、従うことに何も問題はない。それは解ってるけど、やっぱり嫌だな、裏切りなんて…。」
「ああ、その通りだな。」
過去を振り返り、ティズもガイストも溜息を吐いた。
「とにかく、これからはハンターだけでなく、裏切り者にも気を付けよう。」
「そうだな。通報されたらあのハンターがすぐにやってくる。確実に振り切れぬだろう。レヴとの合流を急ぎたいが、一通り歩いてみても、他の地方に行く手立てが見つからん。」
「うーん、カミイズミさんのボロ舟があればなー…。」
地方間を移動する手立てが見つからない以上、どうしようか悩むティズとガイストだった。
- ドウヨウ-a betrayer- ( No.45 )
- 日時: 2016/01/05 22:56
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: PMN5zCv8)
「…。」
ユノハナにて、直斗は頭をひねっていた。
勿論、裏切り者についてだ。
(今回のメールには、大まかな確保場所は載っていませんから、どこで誰が捕まったかはわかりませんね。それに、裏切り者はどの地方にいるのか、皆目見当もつきません。最初に誰がどの島に渡ったかも不明ですから、この逃走範囲が限られていても絞り込みづらいですし…。)
唯一分かっているのは、自分と同じ地方からのスタート者だけ。裏切り者の特定をするのは苦戦を強いられそうだ、と直斗は溜息をついた。
(さて、怪しい人物がいない以上、何故裏切りをしたかのも見当もつきませんから、どうしようもないですね。この端末で連絡は可能ですが、一人一人に当たっていてもきりがありませんし、それに…。)
直斗は、端末を握って苦々しい表情を浮かべた。
(仲間は、疑いたくないですし。)
そう、ここにいるのは、長い時間一緒に過ごした仲間。だから、疑いたくない。
だが、疑わなければならない。それが、探偵である自分の仕事だ。
「直斗君。」
「あ、天城先輩。」
思案する彼に近づいたのは、雪子だった。
「仲間を疑わなきゃいけないのって、辛いね。」
「ええ、容疑者は身内っていうのが一番辛いですよ…。天城先輩、裏切り者…では、ないですよね。」
「萌えはほしいけどこんな方法で萌えを手に入れるくらいなら、自分から奇跡使って作り出した方がましだよ。」
「今は拾ってあげられませんよ。」
何かを呟いた雪子の言葉を一部スルーし、直斗は話を続けようとしたところで、再び端末がけたたましい音を鳴らした。
「まさか、確保が!?」
「ううん、違う。これは…『ミッション1』来た、ミッション!」
「『逃走エリアを拡大せよ』…。やはり、この系統のミッションでしたか。」
『ミッション1:逃走エリアを拡大せよ
君達のいる島にマメ屋の商人が現れた。その商人から魔法のマメを譲り受け、所定の場所に植えると地方間の行き来ができるようになる。
しかし、このミッション成功と同時に、ユルヤナ地方のハンターボックスからハンターが一体追加される。
マメ屋の商人は、残り80分になるとどこかへと去ってしまう。』
「エリア拡大をする代わりに、ハンター一体追加ですか…。」
「このまま誰もこのミッションをしなかったら、ハンターは四体…事実上一体のままだけど、この狭いエリアで逃げ切るのは至難の業だよね。」
「ええ。それにここエイゼン地方はかなり広い荒野が広がっています。街から街の間を移動している間にハンターに見つかってしまえば、捕まるのは必須でしょう…。」
このエイゼンだけで二時間を逃げ切るのはかなり辛いものがある。裏切り者に対しての抑制効果もあるだろうが、自分達が捕まってはおしまいだ。
「直斗君、ミッションやろう! 私の同人誌代(萌え)の為に!」
「欲望がダダ漏れですよ。とはいえ、ミッションに参加するのは同意します。真意を知らなければならない気がするので。」
性か、つい拾ってしまった直斗。
「そうだね。裏切り者が何故裏切ったか、何故私達を売るような真似をしたか、それを知らなきゃいけない、そんな気がするのは私も同意。ついでにその辺りをネタにした本を書きたいのも」
スパーン、と乾いた音が鳴り響いた。
「馬鹿言っていないで行きますよ、ミッション。」
「はい…。」
直斗からどこから出したかわからないハリセンを頭に叩きつけられた雪子は、涙目で直斗の後ろをついていった。
ミッションに動き出すものは、彼女らだけではなかった。
「よーやく来たよ! 拡大系ミッション!」
「ハンターが来るのが怖いけど、狭いまま逃げるよりはマシよね!」
フロウエル地方・フロウエルにいた千枝とマグノリアも、ミッションに行くようだ。
「来ましたね、ミッション…。」
「これはやっとくべきだよな。勿論行くんだろ? 理乃ちゃん。」
「ええ、勿論です。リングアベルさんも一緒に行きますか?」
「美しいレディの頼みとあらば、断る理由がないさ。」
「リングアベルさん、イデアちゃんに殺されるぞ。」
ナダラケス地方・オアシス前にいた理乃、陽介、リングアベルもミッションに向かう。
だが…。
(流石にハンターが怖いから、このまま隠れていようかしら。)
(パパとは早く合流したいけど、捕まっちゃったらやだなぁ…。)
(敵、いない。戦わない。つまらない。)
ナダラケス地方・イスタンタールにあった物陰に隠れていたメフィリア、エタルニア地方・墓標の村近くにいたレヴナントも、エイゼン地方・グラープ砦にいたアルテミアも、ミッションに行かないようだ。
ミッションに向かうのは、ハンターに見つかるリスクが高い。動かないものがいてもおかしくないだろう。…アルテミアは別の理由のようだが。
- ドウヨウ-a betrayer- ( No.46 )
- 日時: 2016/01/12 22:10
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: Nf/7T0hn)
僕は、ここまで話し終えてから、呆れる君の表情を見てつい、笑ってしまった。
「フフフッ、警備を頼んだ人達がここまで何もしなかった事に驚いてるでしょ?」
君は頷いて答える。それはそうだよ。だって、ここまで本当にお祭り気分でいる警備員なんてそうそういないし。
でも、この時は本当に何も起こらなかったんだ。この通達は確かに地獄の始まりであるけれど、まだ、ここでは何も起こらなかったんだ。
「さぁ、心の準備ができたら、次のミッションに移ろうか。まだ、この辺りまでは平和だったんだ。と、特に…。」
ある人物の行動を思い出して、僕は堪え切れずに笑い出してしまった。
だって、あの行動は僕も予想外だったんだから。多分、これを聞いた君も「前代未聞だ。」と笑うだろうね。「方向音痴にも程がある」って。実際、箱庭娘同然に育てられていたから、仕方ないね。
「じゃあ、続きを話していくね。」
僕は、再びノートのページを開き、語りだした…。