二次創作小説(映像)※倉庫ログ

キコウ-liberty and freedom- ( No.52 )
日時: 2016/01/13 15:10
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0zbVOBmK)

【牢獄 de トーク】


千枝はハンターに捕まってユルヤナの森の仕立て屋に転送されてきた。

「ウーッス、お疲れッス、里中センパイ。」
「おつかれっすー! 千枝!」
「お疲れー、完二君、レヴ君。」

先に転送されてきて牢獄に入っているレヴナントと完二に挨拶をするも、そこでふと何かが足りないと気づく。

「あれ? 葉月ちゃんは?」

そう、この逃走中が始まって真っ先に捕まった葉月だ。彼女は今牢獄内にいない。どこ行ったかと探していると、完二とレヴナントはすぐに家屋の方を指さした。

「あっち。」
「あっちッス。まぁ、センパイも予想通りの事が起こってるッスよ。」
「へ?」

千枝は嫌な予感がしつつも、家屋の方へと首を向ける。

「ふーむ、プリンプリンでぽよよーんじゃないが、これはこれでいいのぉ。」
「殴っていい?」

そこにいたのは、確かに葉月だ。ただし、背中がパックリと開いた薄着を着ているが。前にはユルヤナも一緒にいる。

「あ、今度は祈祷衣だー。葉月も髪長いから、アニエスそっくりだね!」
「杉山センパイ、さっきっから着せ替え人形にされてるんッスよ。さっきはブラボービキニだったかな?」
「うわー。葉月ちゃん、ご愁傷さま…。」

千枝は南無南無と拝むように葉月を見ていた。

「ん? おぉー、千枝ちゃんじゃないかの!」

そんな姿に気付いたユルヤナが、不満そうな葉月と共に牢獄近くまでやってきた。

「ユルヤナのおじいちゃん、人が嫌がる事はやっちゃ駄目だよ。流石に背中パックリは」
「ふむ、千枝ちゃんもあんまりプリンプリンでぽよよーんじゃないが、葉月ちゃんよりはプリンプリンじゃから、このブラボービキニなんて似合うんじゃ」
「おじいちゃん、ちょっとこっちに来ようか。」

その後、ユルヤナは千枝と葉月にサンドバックにされたのは言うまでもありませんでした。と。
あ、こうなる前にレヴナントは完二と一緒にカプカプメーカーで遊んでいます。お子様に見せるものではありません。

キコウ-liberty and freedom- ( No.53 )
日時: 2016/01/13 15:16
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0zbVOBmK)

残り逃走時間96分を過ぎた頃、鈴花とユウはローズと一緒に殺風景な村に来ていた。
小さな小屋と、その奥にある噴煙を上げる何かと、崖下に見える木組み以外は何もない、小さな村だった。

「わ、何もない…。ねぇ、ユウ君、ここはどこなの?」
「ここは、墓標の村と呼ばれるところです。」

少しだけ悲しそうな表情で呟くユウに鈴花は首を傾げるも、特に言及する事はなかった。

「ここは、オレとマグノリアが出会った場所なんです。」
「へー、ユウ君とマグノリアちゃんの思い出の場所なんだー。」
「はい。懐かしいです。」

ユウはそう言って目の前にある無数の墓らしき木組みに目を向ける。鈴花もローズも、一緒に目を向けた。

「ユウが思いつめる事ではない。」

そんなユウの背後から声をかける人物を見た。それは、ブレイブだった。

「ブレイブさん、あの、あのお墓…ですか? あれはいったい…。」
「…鈴花の言う通りあれは墓だ。」

ブレイブは少し悲しそうに、木組みに目を向けた。

「この村は、私とヲカエが生まれ育った村であり、ある疫病が流行って…壊滅した村だ。」
「えっ…!」
「その病は世界疫病と呼ばれてな、ある一人の男が感染源たる一人の幼子を連れまわしたせいで、ここエタルニア近域で流行ってしまった病だ。この病で、レヴナントも死んでいる。」
「え、ええっ!? レヴナント君が本当は死んでるってことは聞いたけど、病気で…!?」

全員、レヴナントの素性はある程度聞いたが、病気が原因で死んだことは聞かされていないようだった。

「私と、当時イデアを身ごもっていたヲカエは何とかユルヤナの森へと逃げ込んで、一命はとりとめ、イデアも無事生まれたが、この時のクリスタル正教の対応が、な…。」
「じゃあ、その、前に聞いたブレイブがアニエスの信じるものに挙兵したって話は、それがきっかけなの?」

ローズが首を傾げながら聞くと、ブレイブは頷いた。

「イデアが生まれた後、私はユルヤナ老とレスター卿と共に、何度もここエタルニアを奪還させるための策を練った。そして挙兵し、当時の土の巫女を殺害し、不死の塔を制圧した。そして、エタルニア公国が生まれたのだ。当時は一介の司祭に過ぎなかった私に、ここまでできたのは素直に驚いたものだ。」
「…同様に、この世界疫病やその後の事件がきっかけで、正教を恨む人が増えて、その人達が集まってできたのが、この世界の革命を望む、デニー兄さんを皇帝とする、グランツ帝国なんです。」

鈴花もローズも、突然打ち明けられたこの国、いや、この世界の歴史に、口を開けて聞くしかできなかった。

「さて、歴史を振り返っている時間はないだろう。」
「あ、そうだ! お豆屋さん!」

現実に引き戻すようにブレイブが言うと、鈴花が慌ててマメ屋を探しに行った。その際、ユウの手を取り、引っ張った。

「ほら、ユウ君、行こう!」
「あ、あわわ、待ってくださいよ鈴花さん!」

鈴花はユウと共に、謎の噴煙が上がる場所までかけていった。
一人残されたローズは、ブレイブの肩にそっと止まった。

「ねぇ、ブレイブ。ボクにもっとその疫病の事、教えて?」
「構わないが、どうした?」
「何だかね、知りたいんだ。ユウ達がどんな世界で生きて、その歴史はどうだったのか。」
「知的好奇心と言う物か。いいだろう。私の知る範囲での歴史ならば、話すとしよう。」
「ありがと、ブレイブ!」

ローズは笑顔で答えると、ブレイブの顔にも、わずかに笑みが浮かんだ。

キコウ-liberty and freedom- ( No.54 )
日時: 2016/01/13 15:21
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: IkrWl/TY)

さて、噴煙の所まで行った鈴花はと言うと、これまた謎のロケットのような代物を見て、口をあんぐりさせていた。

「な、なにこれ…。」
「これが、マグノリアが乗ってきたロケットです。ここで倒れていたマグノリアを、マグノリアの花で起こして…。」
「マグノリアの花と、マグノリアって偶然だね。」
「いえ、多分花の名前を聞いてとっさに偽名として使ったのでしょう。」

偽名、という言葉に鈴花は首を傾げた。

「皆さんに伝わっているマグノリア・アーチという名前は、偽名なんです。何でもマグノリアの故郷である月には、将来夫となる者にしか本名を教えないみたいで…。」
「へー、不思議な風習だね。ということは、ユウ君はその本名を知ってるの?」
「!」

鈴花の言葉を聞いて、ユウの顔が一気に赤く火照った。それを好機と見た鈴花は、にやりと笑った。

「ほほぅ、その反応は…。」
「あ、えと、あの、あのっ、ち、ちがっ、違いますっ! お、オレはマグノリアに本名なんて教えてもらってませんからっ! 耳元で囁かれたりしてませんからっ!!」

わたわたと返すユウに、鈴花は察した。ああ、これ知ってるな。と。

「ふーん、へー、ほー。」
「う、うぅぅぅ〜…! も、もぅっ! さっさと中に入ってマメ屋のおじさんがいないか確認しましょうよ!」

そう言って、ユウはさっさと中に入ってしまった。

「あ、待ってユウ君!」

鈴花もその後を追うように、中に入っていった。
中はとても不思議な構造をしており、どう考えても浮く気がしない何か岩のようなものが浮遊しており、どうやって座るかわからない高い椅子がぽんと鎮座している。

「ふわー、凄いテクノロジー…。」
「月は、ルクセンダルクに比べてかなり文化が発展しているのでかなり高度な文明があってもおかしくはないと思います。」

改めて文化の違いを認識させられた鈴花は、もう驚くことはせずに納得することにした。
と、そこに、椅子の先端でポリポリと何かをむさぼっている誰かを発見した。

「あ、マニ屋さん発見!」
「マメ屋ですって。怪しい物流をしてはダメですよ、鈴花さん。」
「そうそうマメ屋さんマメ屋さん。おーい、マニ屋さーん!」
「だからマメ屋ですって!」

ユウはそう言いながらも、先行く鈴花についていった。マメ屋の男も鈴花達に気付いたのか、ポリポリとマメを食べながら鈴花達を見た。

「…魔法のマメ、あるよ。地域ごとに、先にここに来た逃走者へ豆を三つ、タダであげるよう頼まれてるから…持ってって。」
「とりあえず、ポリポリしながら喋るのはやめようよ。」

ポリポリとマメをむさぼりながら話すマメ屋のおじさんに、鈴花はそっと注意をしたが、多分聞き入れてもらえないだろう。

「でも、タダでいいの?」
「…リンクから、料金、貰った。だから、持ってって。」
「ありがとう! リンクさんって太っ腹−!」
「まぁ、その辺の草を刈り取ればルピーが大量に出てきますからね。小銭を貯めて貯めて貯めまくって、料金を支払ったのでしょう。塵も積もれば山となる、です!」

ユウ、それを言ってはいけないお約束である。とまぁ、何はともあれ、マメを三つ手に入れたユウ達は、早速今度はその苗床を探しに行った。

キコウ-liberty and freedom- ( No.55 )
日時: 2016/01/14 22:42
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: g8eYpaXV)

所変わって、ナダラケス・イスタンタール…。

「…うん、うめぇな。再現率たけぇよ、ジャッカル。」
「レシピ通りに作っただけだからな。ほら、まだまだあるから食え。」

ここでは今、オアシスにいたジャッカルが屋台風の店でイスタンタールで名物のイスタン坦々タン麺をこの近辺を警備していたジャンとニコライにふるまっていた。

「少し辛いですが、中々味わい深いですね。ゴマの風味がいい具合に効いていておいしいです。」
「だろ? 俺もここの学生だった時にすげー世話になったな、このラーメン。」

ジャンはニコライに思い出話を語る。

「レシピ貰って作ってみたはいいが、アレンジのし甲斐があるな、これ。なぁ、ジャン。これからも味見頼んでいいか? 色々と改良するのも面白そうだ。」
「お、いいなそれ。勿論いいぜ! お前の料理ってハズレがないし、量も多くてちょうどいいんだこれが。」

そんな会話をしている間に、誰かが街に入ってきたようだ。

「や、やっと到着しましたー!」
「あれ? アニエス様だ。」
「あれ? おっかしーな。あいつ、ラクリーカに行こうとしていたような…。」

どうやら、散々道に迷っていたアニエスのようだ。ジャッカルの言う通り、アニエスはこのナダラケス地方にあるもう一つの街、ラクリーカを目指していたはずだが…。

「あぁ、懐かしいこの風景! 大きな絡繰り時計が見えます! そして大きな水飲み場も」
「アニエス様?」
「…そして、絡繰り時計を動かすための歯車がある道が」
「アニエス様、現実を見てくれ。絡繰り時計もないし、水飲み場もないぞ。はい、ここはどこだ?」
「イスタンタールです…。」

どうやら現実を認めたくなくて、ここがラクリーカであると思い込もうとしたのだが、ジャンの一言でしゅんと項垂れてしまった。

「散々迷いに迷いまくって別の街に到達ってお前な…。」
「う、うぅぅ…。さっきは風の神殿の奥地にあるナダラケス海蝕洞に辿り着きました…。」
「あそこは侵入不可だからな。諦めて帰ってきたのか。」
「はい…。何とか建物を見つけたと思ったら、ここでした…。」
「方向音痴にも程があんだろーがよ、アニエス。」

ジャッカルに言われ、アニエスはもう顔があげられなくなりました。

「まぁまぁ、ジャッカル殿。アニエス様の方向音痴はもう仕方がありません。なんたって箱入り娘なわけですし。」
「確かに巫女として神殿に缶詰で、出かける時も修道女と一緒にいるからと言って、ここまでの方向音痴はひどすぎんだろ。ティズ達と旅をした経験もあるんじゃねぇのか?」
「多分、その時もティズ達に頼っていたか、あるいは…周りからうろちょろするなと言われたか。」
「後者です…。ティズとイデアに、迷子になるからと余計な出歩きは禁止されました…。」

ニコライとジャンの微妙なフォローにも関わらず、アニエスの表情は俯いたままだ。
だが急に、ぱっと顔を上げた。

「あら? 何だかいい香りがします。」
「ああ、ジャッカルに頼んで作ってもらった、ここの名物食ってたんだよ。アニエス様も食うか? ちっと辛いけど。」
「あ、イスタン坦々タン麺ですね! 食べます! 道に迷っていたらお腹が空いてきてしまって…。」

アニエスは先程の表情はどこへやら、ごちそうを前にした子供のように嬉しそうに屋台の席に着いた。

「アニエス様…。」
「ジャン、何も言わないでおきましょう。」
「うん、もう何も言わない事にするよ。」

そんな感じで二人も席に着いた。ジャッカルもすぐに作り始める。

「ほらよ。」

程なくして、美味しそうな香りを放つ担々麺が出てきた。

「わぁ、いい匂いです…! いただきます!」

上品に食べ進めるアニエス。余程お腹が減っていたのだろう、食べるスピードは速かった。

「俺らも食うか…。」
「ですね。」

あまりにも美味しそうに食べるアニエスにつられたのか、ジャンもニコライもお代わりを要求した。

『…。』

そんな彼らの背後に、ハンターが迫っていた。だが、アニエスはおろか、ジャッカル達も気付かない。

「あー、うめー。落ち着くなぁ…。って、アニエス様、ハンター来てるって!」

ふと、何かに気付いたジャンが振り向くと、そこにはハンターがアニエスに気付き、接近している姿があった。

「!」

アニエスもジャンに言われて気付いたが、時既に遅し。このままでは捕まって転送されてしまう。そう思ったアニエスは…。

「ま、待ってください!」
『!』
「ブフゥッ!!」

なんと、ハンターを制止したのだ! 突然の奇行にジャンもジャッカルも吹き出してしまった。そして止まるハンターもハンターである。

「せ、せめて、この担々麺が食べ終わるまで待ってください…!」
『おいこらアニエスー! ラーメンが食べたいからってハンター止めちゃ駄目だよー! と言うか何で止まったの!?』
『ちょ、ちょっと待ってね。…あー、NAGIの忍プログラムが少し残ってたから、少しなら逃走者の言う事を聞くようになっちゃってるみたいだね。』

どうやらハンターが止まったのは、風花達によるプログラムのミスのようだ。

「つかアニエス様もアニエス様で止めるなし。」
「だ、だって食べたかったんですもん…。」
『…アニエスちゃん、転送は私がするから、もうちょっと食べてても大丈夫だよ…。』

どうしてもラーメンが食べたいアニエスの目に涙が浮かんでいたが、風花の言葉でぱっと表情を明るくさせた。

「い、いいんですか! じゃあ、お願いします!」

そして、アニエスの肩にハンターの手が触れた。


95.41
アニエス・オブリージュ 確保
残り22人


「では、続きをいただきまーす。」
『…うん、食べ終わったら声かけてね。』

風花の呆れたような声が聞こえた気がしたが、アニエスはそれを気にせず担々麺を食べ進めた。
その後ろでは、ジャンが微妙な視線をアニエスに送っているとは知らずに…。











確保者の言葉


五人目:アニエス

アニエス
「ふぅ、満足です。逃走中ってこんなに楽しいイベントなんですね!」

レヴナント
「ボクもそう楽しみたかったなー。」

完二&葉月&千枝
「いや、アニエスさん、何か違うから。あとレヴ君は見習わなくてよろしい。」

ユルヤナ
「そういう楽しみ方をするのはアニエスちゃんが初めてじゃと思うぞ。」