二次創作小説(映像)※倉庫ログ

コウドウ-black suspicion- ( No.65 )
日時: 2016/01/15 23:02
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0LEStScZ)

逃走終了まで、残り90分を切った頃…。

『黄木鈴花、エインフェリア・ヴィーナス、天城雪子、桜坂理乃の活躍で、ミッションクリア。以降、ユルヤナ地方の解放と同時にハンター一体が追加される。それに加え、それぞれの地方間を行き来できるようになった。ユルヤナ地方はどの地方からでも真ん中の葉っぱに乗れば行ける。各地方間は、

エタルニア←→フロウエル
  ↑      ↑
  ↓      ↓
 エイゼン←→ナダラケス

図のような双方向ならば移動可能。対角線の移動は不可。また、豆の葉に乗れるのは片道三人まで。』

豆の葉前にいた人々は目の前に青々と育った三枚の豆の葉と一斉送信されたこのメールを見ながら、微妙な顔を浮かべていた。











ナダラケス・桟橋…。

「…ミッションクリアしたが、何だこの、何とも言えない何かは。」

目の前で青々と茂る葉っぱを眺めつつ、リングアベルはボソリと呟いた。

「俺に聞かないでくれ。」
「私に聞かないでください。」
「つか、多分それみんな思ってんじゃね?」

ジャッカルがそう答えると、全員納得したように頷いた。

「と、とにかく、ミッションは成功して、道は開けました。早速別の地方に移動してみましょう。」
「だな。」

そう言って理乃はユルヤナ地方行きの葉っぱに、リングアベルはエイゼン行きの葉っぱに、陽介はフロウエル行きの葉っぱに乗った。

「では、皆さん、ご武運を。」
「ああ、また後で会えたらな、理乃ちゃん、リングアベルさん!」
「また後でな、二人共!」

三人は、互いの武運を祈りながら、散っていった。
また、別の場所でも…。

「俺、しばらくはこのエイゼンで逃げるよ。」
「じゃあ、僕もエイゼンにいるね。」
「私もエイゼンに残ろう。」

エイゼン地方・海岸の廃屋。烈、ティズ、ガイストがここエイゼンに残るようだ。

「じゃあ、僕はナダラケスの方に行ってみます。」
「私、エタルニアに行くね。」

そして直斗はナダラケスに、雪子はエタルニアに行くようだ。

「じゃあ、またね、烈君達!」
「皆さんの逃げ切り、祈っています。」
「おう! お互い頑張ろうな!」

互いに逃げ切りを誓いながら、一同はそれぞれ散っていった。

コウドウ-black suspicion- ( No.66 )
日時: 2016/01/15 23:08
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0LEStScZ)

各自それぞれ互いの武運を、逃走成功を祈り、誓いながら、様々な場所に散っていった。

(そろそろ裏切り者が動き出すかもしれない。注意しないと…。)

直斗は海の上を滑る葉っぱの上で、風にあおられる帽子を押さえながら思案していた。
島と島の行き来ができるようになったこの状態では、いつ裏切り者が動き出してもおかしくない。

(一体、裏切り者は誰なんだ…!)

仲間を疑いたくはない。だが、疑わなければ、裏切り者を見つけなければ、逃走成功は程遠い。












エイゼンに辿り着いたリングアベルは、すぐに誰かいないかと探していた。

(せっかくここまで辿り着いたんだ。できればイデアに会っておきたいな。まぁ、ここにいるかはわからんが。)

しばらく、ハンターに警戒しながらプラプラと歩く。

(うーん、やはりこの広いエイゼンでいきなり第一村人ならぬ第一逃走者の発見はならない…ん?)

ふと、見覚えのある姿を見た気がしたリングアベルは、その方向に走った。

「あ、やはりそうか。おーい、ティズー! ガイストー!」
「…ん? あ、リングアベル。」
「む、リングアベルか。」

姿—ティズとガイストは、いつもの調子でリングアベルの方に向き直った。

「二人もまだ逃げ切れてたんだな。」
「まぁ、裏切り者が怖いけど割と楽しんで逃げてるよ。」
「そういや、アニエスが捕まったが…。」
「うん、ちょっと残念だったね、アニエスの確保は。」

大切に思っているアニエスが確保されたと知り、ちょっとだけ悲しそうな表情を浮かべるも、すぐにいつもの調子に戻った。

「まぁ、アニエスの事だし、結構楽しんで逃げられたんじゃないのかな? あるいは散々迷って辿り着いた街でご飯食べてる最中に確保でもされて」
「ティズ、残念ながらその通りらしい。ジャンの証言によるとだが。」

的確に言い当てるティズに、リングアベルは(お前はエスパーか。)と言おうとしたが、何か言ってもいつもの調子で返されそうだったのでやめた。

「そういえば、リングアベルは裏切り者なんかじゃないよね?」
「期待させて何だが、俺は違う。」

どうやらリングアベルは裏切り者ではないようだ。ティズはまっすぐ彼を見て、頷いた。

「別に期待していたわけじゃないんだけど…。でも、嘘を言ってる目じゃなさそうだね。まぁ、リングアベルは僕同様酷い裏切りにあったし、裏切り者になんかならないか。」
「まぁ、そんなところだ。」

リングアベルはそう言って信じてくれたティズに頷いた。ガイストもティズの言葉を信じるようだ。

「…そうだ、ティズ、ガイスト。その…。」











とある地方。

「…。」

物陰に隠れた影は、そっと端末を手に持つ。

「リングアベル、ティズ・オーリア、ガイスト・グレイス、エイゼン地方のエイゼン大橋にいます。」

そして、静かに語りかけた…。











「…。」

リングアベルの話が終わったと同時に、ティズとガイストは頷いた。

「どうなるか分からないけど、改めて気を引き締めないとね。」
「様々な可能性があるが、いずれにせよ、一筋縄では行かぬな。」

先程、リングアベルが話した何かについて、ティズもガイストも考え込んでいた。

「ああ、油断しないようにしないと、なっ!」

リングアベルが視界の端に何かをとらえた。
それは、ハンターだった。一目散にこちら目掛けて走ってきていた。

「だぁっ、クソッ! ティズ、ガイスト、走れ!」

リングアベルの一喝と同時に、ティズとガイストは走り出した。

コウドウ-black suspicion- ( No.67 )
日時: 2016/01/15 23:14
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0LEStScZ)

エタルニア・ガテラティオ…。

「ふんふふーん♪」

イデアは上機嫌で今、エイゼン経由でナダラケスに行こうとしていた。

「美味しいものあるかなー♪」

どうやら、逃走中であることを完全に忘れているわけではないにしろ、部分的にすっぽ抜けているようだ。もう観光目的で楽しんでいる。まぁ、ここまで大きな動きは出ていないので無理もないだろう。
その時、イデアの端末がけたたましい音を鳴らした。

「わわっ、見つかっちゃうって! え、確保情報…『裏切り者の通報により、リングアベル、ティズ・オーリア確保。残り20人。』え、ええっ!? リングアベルとティズが!?」

イデアの元に届いたそれは、かつての仲間が裏切り者により捕まってしまった事を知らせるメールだった。
これを見たイデアは、憤慨した。仲間と、恋人を捕まえた要因になった、裏切り者に。

「むぐぐ〜! 裏切り者、絶っ対に許さないんだから!」

イデアはすぐにエイゼン行きの葉っぱに乗り、エイゼンへと渡った。

「見つけたら全力でぶん殴ってやるんだから!」

その怒りに満ちた決意を、心に抱いて。










裏切り者による確保者の通達は、イデアだけでなく他の者達にも動揺が走った。

「ついに動き出したみたいね、裏切り者…。」

フロウエル・サジッタにいた氷海は、物陰に隠れながら端末を強く握りしめた。
仲間に怒りを抱きたくないが、こうして誰かを通報して、確保者がいるという事に腹立たしさを覚える。

「氷海、顔が怖いですわ。」
「あ、ご、ごめ、って、セシル!?」

怒りをあらわにさせた顔の氷海に声をかけたのは、同居人で姉のように慕うセシルだった。セシルは氷海の側によると、そっと後ろから端末を覗いた。

「裏切りだなんて、酷いですわね…。」
「ええ、金の為に誰かを通報するなんて、許せないわ。」
「そもそも、何故、裏切りなんてルールが存在するのかしら。必然的に仲間を疑心暗鬼に陥らせるような、嫌なルールを。これは主催者に訊く必要がありますわね。」
「その主催者、昴さんとMZDなのだけれど…。」

氷海はそこまで言ってから、冷静になって考えた。

「そもそも、何であの二人が“裏切り者”のシステムを採用したのかしら。」
「うーん、そこが謎ですよね…。昴さんはもとより、不真面目で面白さ至上主義のMZDすら、こんなシステムを拒否すると思うのですけど…。」

そう、昴の性格も、MZDの性格も、自分達はよく知っている。だからこそ、この“裏切り者”システムを採用したのが何故か、わからないのだ。面白そうだから採用した、というのでは辻褄が合わない。それに仮に面白そうで採用したとしても、どちらか片方が止めるだろう。

「仮に“裏切り者”システムを採用したとしても、悪名を背負うリスクを負ってまで金に執着するような方に、心当たりはありませんわ。」

ルール上は何も問題はないが、従えば感情が屁理屈を並べ責め立てるシステム。それは時にルール違反への罰則よりも重い罰を課されることになる。仲間をよく知る彼女らには、裏切りの理由は単純ではないと考えた。

「この逃走中、本当に全てが“主催者の意”に沿っているのかしら。」
「…それは分からないわ。でも…。」

氷海は、端末を握りしめた。

「この逃走中…一筋縄じゃ行かないかもしれないわね。」
「…“逃走中の悲劇”…もしかしたら、わたくし達の知らない所で既に起こっているのかも知れませんわね。ともかく、油断なさらない方がいいですわ、氷海。」
「ええ、警戒は常に最大限にしておかないとね。」

この逃走中に渦巻く何かを、氷海とセシルはおぼろげながら感じていた…。

コウドウ-black suspicion- ( No.68 )
日時: 2016/01/15 23:19
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0LEStScZ)

ナダラケス・桟橋…。

(ついに裏切り者が動き出したみたいですね。)

先程届いたリングアベルとティズの確保情報を見て、直斗は考え込んでいた。

(確かティズさんはエイゼンに残ったはず…。ならば、裏切り者は今、エイゼンにいるのでしょうね。)

ティズの居所がわかっていた直斗は、ひとまずこの場にいれば安全だろうと考えていた。

(それに、そもそも何で昴さん達はこんなシステムを採用したのでしょうか。僕らの中に所謂ヒール役と呼ばれる存在はいないのに…。)

誰も進んで裏切り者の汚名など被る存在がいない中で募集した、裏切り者。
結果的に裏切り者は誕生してしまったが、何故、こんな誰も名乗りを上げないような状況の中でこのシステムを採用したのか、直斗にも謎だった。
歩きながら考える直斗の脚が、ピタリと止まる。

(…そういえば、今回までの通信…。何故、“風花さんと影君”しか通信してこなかったのでしょうか。これも謎ですね…。)

考えがまとまらないのに気になる事が、また一つ出てくる。
思い返せば、今の今まで通信は“影と風花”からしかしてこなかった。

「あの、影君。」
『ん? 何? 直斗。』
「MZDさんと昴さんが主催者であり、ゲームマスターとしているんですよね?」
『うん、そうだよ。』
「…何故、その“ゲームマスターからの通信が一度もないのですか?”」

ゲームスタートを宣言したのも影。水の用意を宣言したのも影。そして、捕まった逃走者の転送を話したのは風花。思えば一度も主催者兼ゲームマスターである二人からの通信がないのだ。

「仮に二人からの通信でなくとも、凪君達も補佐に回っているはずですよね? 何故、二人以外からの通信がないのですか?」
『うーん、簡単に言うと、昴達は“ここにはいないから”。』
「ここに、いない? 一体なぜですか?」
『今回はそういう取り決めなの。今、私達がいるのは、不死の塔最上階の運営“支部”。逃走者達の見張りや、牢獄への転送を任されているの。そして、ミッションとかの通知を出すのは、運営“本部”の役割なんだ。昴さんもMZDも、運営本部でミッションとかの通知を出しているはずだよ。』

何故、わざわざ”支部”と”本部”に分けたのか。その理由を問いたいところだが、それよりも、もっと大切なことがある。

「昴さんかMZDに繋いでもらえませんか? 無視できない疑問があるので。」
『残念だけど、それは無理な相談なんだ。』
「何故ですか? 何か不都合でもあるというのですか?」
『ううん、不都合はないはずなんだ。でも…直斗君にならわかると思う。』

風花がそう言うと、突然砂嵐のようなザーッ、という音がハロボットから響く。

「…なるほど。」
『直斗もわかったでしょ? ボクも風花も、さっきから何度も運営本部につなげようとしたんだけど、ずっとこれ。ミッションや確保情報の通知はちゃんと出してるみたいだから心配はしていないけど…。』

影はそこで言い淀む。彼なりに、何か感じ取っているのだろうか。

「…影君、風花さん。この逃走中を中止にしませんか?」
『ボクもそう考えてた。』
『私も。今、みんなに連絡を…あれ?』
「どうかしましたか?」

風花が何か腑に落ちないような声色を浮かべていたので、直斗は嫌な予感がしつつも訊ね返した。

『今、試したんだけど、メールが送れ』

言葉が言い終えないかぐらいの時に、突然通信が切れた。

「風花さん!? 風花さん! 影君! 応答してください!」

だが、ハロボットから何も聞こえる事はなかった。

「…確か、不死の塔にあると言っていましたね。」

こうなった理由は何となく想像ついた。そう、今、この逃走中で、何かが起こっている。と。
直斗は急ぎ、不死の塔へと向かおうとした。

『!』
「しまった、ハンター!」

だが、眼前にハンターの影を見つけて、直斗は逆方向に逃げようとしたが、ハンターにしっかりと見つかってしまった。

「くっ! ここで捕まるわけにはいかないんです!」

直斗は急いで逃げるも、ハンターの脚力には敵わない。

「あっ…!」

ハンターは無慈悲にも、直斗の肩に手を置いた。


81.57
白鐘直斗 確保
残り19人


「…やはり貴方はロボットですね。今の状況が何一つ解らないなんて。」

直斗はそう呟いた後、牢獄へと転送された…。











直斗の確保から一分も経たない時、エタルニア・エタルニアの病院前…。

「…。」

ホーリーは難しそうな顔をしていた。横にはそんなホーリーを見つめるクマとユウがいた。
そんな彼女達の前には、もう一人、誰かがいた。

「…成程ね。アンタの話はよーく分かった。」

誰かに向かい、ホーリーは答える。ユウとクマも、その誰かを見つめ、頷いた。

「“逃走中の悲劇”は…もう、起こってたんだね。」











とある地方。

「…ホーリー・ホワイト、ユウ・ゼネオルシア、クマがエタルニアの病院にいます。」

無慈悲に紡がれる言葉。逃走者を地獄へと引き落とすこの言葉。
裏切り者の真意は、果たして…。

コウドウ-black suspicion- ( No.69 )
日時: 2016/01/15 23:25
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0LEStScZ)

エイゼン・ハルトシルト…。

「! 確保情報か!?」

ハルト祭の人ごみに紛れて、烈は届けられたメッセージを見た。

「『白鐘直斗確保。裏切り者の通報によりホーリー・ホワイト、ユウ・ゼネオルシア、クマ確保。残り16人。』直斗まで捕まっちまったし、クマ達が通報された!?」

烈は、メッセージの内容を見て驚いていた。推理力の高い直斗が、ここで終わってしまったのだ。
これでは裏切り者を突き止めるための探偵がいない状態で、裏切り者に怯えながら逃げ回るしかない。そう、烈の頭によぎったが、ふるふると首を振り、その考えを打ち消した。

「…違う。そうじゃない。俺も考え行動しなきゃダメだ。」

烈は、頭を使うことは不得手であるが故に、推察も洞察も得意な者に任せてきた。しかし、その頼れる者の身動きが封じられた以上、自分でなんとかしなければならない。他力本願ではいられないのだ。

「俺も、動かなきゃ。動かないと、何も始まらねぇしな。」

自分が動かねば、何も事態は動かない。仮に自分が動いても何も変わらないのであっても、動かなかった事で後悔はしたくない。
烈は、隠れていた場所から動き出した。途端、ふと、熱気を感じた。

「…!? 何だ…!?」

突如感じた熱気に、烈は戸惑う。
まるで、ここ一帯の気温が一気に上昇したかのような突然の変化に、嫌な予感を感じてやまない。











その異変は、エイゼンだけで起こったものではなかった。

「…?」

ナダラケス・ラクリーカにいた風雅は、ふと、風が止むのを感じた。

「どうした? 風雅。」
「フランシス、感じない?」

ラクリーカでショッピングしていたところを偶然見かけて一緒に行動しているフランシスに、何か感じないかを訊ねる風雅。

「…そういえば、何だか風がおかしいな。」
「うん、風が、止んでる。」
「絡繰り時計を動かすための風車も止まった…。一体何が起こってるんだ?」

嫌な予感を感じずにはいられないフランシスと風雅は、風の止まった空を見上げた。











フロウエル・サジッタ…。

「…。」

この地に残っていたエインフェリアは、海を見た。

「エインフェリアさん? どうかしたの?」

合流した氷海と、彼女と一緒にいるセシルがエインフェリアに声をかけた。

「…海の様子が変だ。」
「海が、ですか? なんの変哲もないようですが…!?」

エインフェリアが語る異変の意図が分からず、氷海は首を傾げながら海を見たその時、彼女の語る異変を理解した。
海が、酷く淀んでいくのだ。まるで、果物が腐っていくように、黒く、淀んだ。

「な、何なの、これ!?」
「同じだ…。」
「え?」

驚く氷海を他所に、エインフェリアは語る。

「二年前、ルクセンダルクに存在する4つのクリスタルが、突然闇に覆われた事があってな。その時に風は止まり、海は腐り、エイゼンの火山が活発化した。恐らく大地も異変が起きていたのだろう。」
「二年前って、丁度アニエスさんがティズさん達と出会って旅したっていう…。」
「ああ。当時の風の巫女だったアニエスは、クリスタル解放の旅に出た。そのおかげでまた元には戻ったのだが…。」

そこまで語った後、エインフェリアは首を緩く振った。

「当時の事は、アニエスやイデアのような当事者に聞くといい。私はただ、聞き及んだに過ぎないからな。だが、これだけはわかる。」
「…二年前同様、クリスタルに何かが起こった…ですか。」
「この場所が再現だというのならば、クリスタルも再現していてもおかしくはない。…む?」

端末が鳴り響く。エインフェリアと氷海は届いていたメールを開いた。

「…クリスタルの解放、それをやってのけろというのか…!」


『ミッション2:ハンター放出を阻止せよ
 今、クリスタルは闇に覆われ、その闇が新たなハンターを作り出そうとしている。残り50分になるとハンターが未開放のクリスタルの人数分放出されてしまう。
 クリスタルの巫女に選ばれたジョーカー一味に祈りを捧げてもらい、クリスタルを開放し、ハンター放出を阻止せよ。』


「条件がジョーカー一味…! セシル!」
「ええ、わたくしはこのために呼ばれたのですね。行きましょう、氷海。」

氷海とセシルは早速、水のクリスタルがある水の神殿に向かおうとしたが、考え込むエインフェリアを見て、足を止めた。

「…。」
「どうかしたのですか?」
「ああ、いや、セシルはミッションに関わるはずなのに、何も知らされていないのだな、と思ってな。」
「…わたくしは、ただ、このフロウエルから出ないでくれとMZDさんから頼まれただけで、特に何も聞かされてないのです。恐らく他の三人も同様でしょう。」
「打ち合わせもなしに呼んだのか。想定外の動きをされれば、ミッションが滞るリスクもあるのだが。MZDとやらは、そこまでいい加減なのか?」

呆れるエインフェリアがそう語ると、氷海とセシルは大きく首を縦に振った。そして二人とも同時に出た言葉が…。

「いつも通りです。」

だったとか…。











確保者の言葉


八人目:直斗

直斗
「早く、このことをみんなに知らせないと…!」

コウドウ-black suspicion- ( No.70 )
日時: 2016/01/19 23:07
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: Uj9lR0Ik)

二年前にルクセンダルクで起こった事件。その再現とでも言うかのような異常な自然現象。

「まるで、あの時の再現だと思った。」

本当に、そう思った。でも、本当は再現なんてものじゃあなかった。
旅先で得た知識を使って喩えるならば、悪意は演奏家であり、この異常事態は無数の曲目の内の一つに過ぎない。そして、それはアレンジされた楽曲だ。

「そして、この時よりも以前から既に決まっていたのかもしれない。この逃走劇が、のちに“悲劇の逃走劇”と僕自身が呼ぶことになる事が。」

もう少し前にこの逃走劇を中止にしていれば、いや、そもそもこの逃走劇をやらないという選択肢を取っていれば、恐らく彼女は…あの世界は死を迎えなかっただろう。

「…さぁ、そろそろ次なる悲劇が幕を開けるよ。心の準備はいいかい?」

僕が問いかけると、君は頷いた。
そして僕は、またページを開いた…。