二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ヒトウ-miracle spa- ( No.79 )
- 日時: 2016/01/20 11:23
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: xV3zxjLd)
重いペットボトル…いやいや、リリィを抱えて、烈は何とかして源泉洞まで辿り着いた。ここを抜ければ、火のクリスタルがある神殿まで目と鼻の先だ。
「源泉洞か…。嫌なんだよな、ここ…。」
「何で? 面白そうだと思ったけど…。」
こてんと首を傾げるリリィ。ここは様々な源泉が沸き立つ場所で、その源泉の効能は強く、湯煙を吸っただけでもその効能が現れるという凄い場所である。
「ここの湯も、その効能も再現されてるんだろ? めんどくさい効能の所を通る時とか、嫌だなぁって。それにさ、確実に服がびしょ濡れになるじゃん。」
「お兄ちゃんも浮けばいい。」
「浮けるか! 浮けても湯煙で水分が蓄積されるだろ!」
無理難題を押し付ける義妹に、兄はきっちりとツッコミを入れた。
■
烈達が奮闘している頃と時を同じくして、エイゼン・グラープ砦前…。
「…。」
アルテミアは、獲物を睨みつけるかのように、遠くを見ていた。
(あいつ、邪魔。アルテミア、狩る。)
その視界の先には、ハンター。どうやらアルテミアは、あろう事かハンターを狩り取ろうとしているようだ。
そしてアルテミアは、得物である弓矢を取り出し、ハンターに狙いを定め…。
「何してるんだお前は。」
ようとしたところで、誰かに後ろからポンと手を置かれた。アルテミアは反射的に背後に振り向き、弓を引いた。
「ハンターに攻撃したら強制失格とお前の姉達からさんざん言われていただろう、アルテミア。」
「あいつ、いなくなる。お姉様達、捕まらなくなる。ガイスト、邪魔するな。」
「いや、やめておけ。あいつ一人射抜いた所で、昴がまた新しいハンターを投入するだろう。」
「むぅ…。」
手を置いた者…。ガイストの言葉に、アルテミアは不満そうに得物を下した。
「ガイスト、何故ここにいる?」
「…同じ戦闘狂でもできれば由梨と会いたかったが、仕方ない。アルテミア、少し話を聞いてくれ。」
- ヒトウ-miracle spa- ( No.80 )
- 日時: 2016/01/19 22:15
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: zTrrcKzh)
一方、エタルニア・総司令部…。
「よーっし! ここを抜ければ不死の塔だよ!」
地元のイデアが、鈴花とローズを案内しながら、土のクリスタルが安置されている不死の塔に急いでいた。
「確か、不死の塔一階に土のクリスタルが安置されてる祭壇があるんだっけ?」
「うん! さっきちょろっと中を見たけど、まっすぐ行けるようになってるみたいだからそのまままっすぐ祭壇まで進んじゃえばいいよ!」
イデアは嬉々と語るが、鈴花は少しだけ俯いていた。
「ん? どしたの? 鈴花。」
「…さっきの、ブレイブさんの言葉が、ちょっと…。」
「あ、鈴花も…?」
鈴花とローズは顔を見合わせて頷いているが、イデアはあっけらかんとしていた。
「へ? お父様の言葉がどうしたの?」
「うん、私もね、何か起ころうとしてるんじゃないかっていうのに同意するの。なんか、こう、昴さん達って場を盛り上げるためとはいえ、ここまでするかなって。」
「ボクもおんなじ。昴もMZDも、こんな大掛かりな事するかなーって。海を腐らせたり、風を止めたりとか。それに…裏切り者だって、昴達はやりそうにないし…。」
昴達がやりそうにない事が沢山出てきて、彼女達を知る鈴花とローズはこの逃走中自体に疑問を持ち始めてきた。
「…確かにそうだよね。裏切りがどんなに酷いかっていうのは、昴も知ってるはずだよね。あたし達の体験を通じて。」
イデア達も、この二年前の災厄の際に酷い裏切りを経験した。昴もそれを知っていてもおかしくない。だが、このように裏切り者が募られ、出てきてしまった。
「あー、もうっ! 考えても仕方ない! とりあえず今はミッショ…鈴花、隠れて!」
「え? きゃあっ!」
話し込んでいると突然、イデアが鈴花とローズを柱の影目掛けて突き飛ばした。と同時に、黒い影が前方から現れる。ハンターだ。
「ほらほら、ハンターさん、こっちだよー!」
『!』
イデアは来た道を戻り、ハンターを誘いながら逃げる。
(イデアさん、ごめん!)
鈴花はイデアに心の中でお礼を言うと、ローズを抱えて不死の塔へと向かった。
その頃、イデアはハンターを引きつけながら、必死で逃げていた。
「は、速すぎだってハンター!」
いくら体力馬鹿のイデアでも、あの脚力には敵わず、いつしか接近を許し、そして…。
65.18
イデア・リー 確保
残り14人
「あー、疲れたー! もーちょっと逃げたかったなー。」
肩に手を置かれ、すぐに転送された…。
- ヒトウ-miracle spa- ( No.81 )
- 日時: 2016/01/19 23:22
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: Uj9lR0Ik)
一方、少し時を遡り、エイゼン・源泉洞…。
「はー、あっちー…。」
「サウナ…。スマート…。ハッテン場」
「最後のは言うな。忘れろ。」
恐らく完二、正確に言えば完二のシャドウとダンジョンのせいで得た知識だろう、烈はすぐに忘れるよう言い放った。
「さて、最初は確か…って、おいなんだこれ!」
烈は効能が書かれた看板を見て、驚いた。本来ならば最初の湯は“知恵の湯”であるはずだ。それは、物理防御と魔法攻撃の威力を高めてくれるが、物理攻撃力と魔法防御力が減少してしまうお湯なのだが…。
「ママの湯…?」
「中は色々改造されてんのかよ! できれば再現して…あ、いいや。おこの湯が色々面倒そう。」
“おこの湯”は次の場所のお湯であり、怒りで我を忘れるバーサク状態になるのだ。
話を戻そう。立て看板によれば、これは“ママの湯”らしい。
「ママ…母親?」
「母親にはいい思い出がないからさっさと通り抜けたい。」
母親と言う物に恐怖の念しか抱いていない烈は、どんな効能かはわからないがさっさと通り抜けるに限ると思い、足早に抜けようとした。
「そういや、何か甘い匂いすんな。」
「うん、どこかで食べた事ある。…あ。」
リリィは、その匂いで何かを思い出したようだ。
「何か思いついたのか?」
「うん、ママの湯。別名、ミ○キーの湯。」
「ミ○キーはママの味って事でママの湯かよ。つか伏字の位置が色々と危ない。」
どうやらここのお湯はミ○キーを溶かしたかのようなお湯のようで、恐らく味もミ○キーだろう。
「お兄ちゃん、お湯、飲んできていい?」
「んな暇あるか! つかお前ラーメン二十四杯も食ってまだ何か入れるつもりかよ! これ以上重くなると俺運びたくないんだけど!」
「がんばれー。」
「他人事かよ!」
リリィはどこから取り出したかわからない旗をパタパタと振った。
■
さて、そうこうしながらも次の湯の場所までやってきた烈達は、再び看板を見た。本来ならば先程説明したとおり、バーサク状態になる“おこの湯”だが…。
「サケの湯…。」
「これ、フランシスだったら、アウト。普通の、お酒みたい。」
「確かに、フランシスだったら完全にアウトだし、葉月先輩は入れさせらんないし、それ以外でも酒の匂いに当てられて酔っぱらう奴が出てきてもおかしくないだろうな。」
「私達で、よかったかも。」
湯気の中に混じるお酒の匂いに、嗅ぎ慣れたリリィが反応する。烈もこの匂いは幼い頃から嗅いでいるので、この湯の理由ははっきりと分かった。確かに、酒屋の息子と義娘である二人ならば適任だろう。
「つっても、酔っぱらうのは避けたいし、さっさと通り抜けようぜ。」
「うん。」
二人は匂いに当てられて酔っぱらわないとも限らないので、すぐにここを抜けようと走り出した。
途中、どうしてもお湯に浸からなければならない所が出てきて、烈はげんなりしながらも酒のお湯に足を踏み入れた。
「うへー、ビショビショ…。」
「お酒臭くなるね。」
「ばーちゃんや黒なら喜び勇んで飛び込んで泳ぎ回るだろうなぁ…。」
酒好きの人達にならば嬉しいこのお湯だが、酒が嫌いな人、苦手な人、未成年には流石にまずいだろうと思った烈だったが、その点も昴達は考えているだろうと思い直し、安心した。
「…ん?」
次の湯までもう少し、と言うところで、何かビチビチ跳ねるような音が聞こえる。
「何だ? 何が跳ねてんだ?」
烈はそっとその音の方角に振り向く。リリィも続く。
「」
「…美味しそう。」
そこにあった、いや、いたものを見て、烈は硬直し、リリィは出てきていた涎を拭った。
「サケの湯は、酒だけじゃなかった。鮭もいた。」
そう、音の正体は、大量の酒ではなく、鮭。しかも大物で脂のノリがよさそうなのがビッチビッチと跳ねている。
リリィはどこからかフォークとナイフを取り出し、そして…。
「鮭、いただきまーすっ!」
「おいちょっと待てこらあぁぁぁぁっ!!」
ビチビチ跳ねる鮭目掛けて突っ込んでいき、烈はそれを止めに猛ダッシュしていったとか…。
- ヒトウ-miracle spa- ( No.82 )
- 日時: 2016/01/22 22:43
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: ASXV1Vux)
「つ、次は本来だったらクリティカ湯か。」
早くも息が切れている烈と、そんな彼の頭の上で、満足そうに大きく膨れたお腹をポンポンとさすって可愛いゲップをするリリィは看板を見た。
本来ならば、急所攻撃…クリティカル率がアップするお湯、“クリティカ湯”であるが、また例のごとく変わっていた。
「ピカの湯…。」
「まぁ、んな名前だろうと思ったよ。」
烈はちらりと、お湯の方を見た。
そこには、見た事のある黄色がびっちりと敷き詰められていた。
「ピカー!」
「ピカピカー!」
「ピカチュウ!」
鳴き声でもうお分かりだろう。そう、ギザギザ尻尾と黄色いボディ、まんまる赤い頬っぺたでおなじみのポケモン、ピカチュウだ。皆、気持ちよさそうに温泉に浸かっている。
まったり浸かるピカチュウ。湯を掛け合うピカチュウ。温泉卵を作るピカチュウ。見ているだけで疲れが取れそうだ。
「しっかし、進みにくいなおい。今からあのピカチュウの群れに突っ込んで行けって話だろ? 平和な時間を邪魔したくねえな…。強行突破するにしても、ポケモンなんて持ってねぇぞ。」
「サイコキネシス、使えます。」
「お前をポケモンにしろってのかよ。」
「ヤミカラスも、呼んでこれると思う。」
「黒までポケモンにすんなし。」
そんな下らない話題はさておき、ここを通り抜けなければ話にならないので、烈は足を踏み入れようとしたが、
「待った、烈。」
「ん? あ、リンクさんとマリオさん。」
後ろから声をかけてきたリンクにより、止まった。
「二人も警備を頼まれた口?」
「うん、そうだよ。まぁ、何事もなさそうでよかったけどねー。」
「何も起こんないのが一番だって。」
本当ならば何かが起こり始めているのだが、彼らは一切、何も知らないようだ。
「でも、何で進んじゃいけないんだ?」
「あれを見ればわかるだろう。」
「あれ?」
リンクは今まさに烈が飛び込もうとしたピカチュウの群れに指さした。
「」
「…毟られてる…。」
彼が止めた理由を理解した瞬間、烈は固まり、リリィはのんびりと眺めていた。
そこにいたのは、
「ぎゃあぁぁぁっ! オレ様の髪の毛毟るんじゃねえぇぇぇぇっ!」
「ぐっ、貴様、髪に触れ、ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」
今まさにピカチュウ達に髪の毛を毟り取られているワリオと、毟られぬようガードするものの電撃を喰らったガノンドロフだった。
「ピカの湯の説明はちゃんと読んだか?」
「ピカチュウの敷き詰められた湯っていうので理解しちまったから読んでない。が、なんとなくわかる。ピカの湯はピカチュウの事だけじゃなくて、そのピカチュウ達が頭をツルツルピカピカにさせる…つまり、禿げさせる湯なんだな。」
烈が自分の解釈を告げると、リンクは頷いた。
「その通りだ。で、俺も半信半疑だったから、近くにいたガノンドロフを光の矢で射って落として検証してみた。そしたらマリオとワリオが来て、俺の話を聞いた途端、マリオが面白がってワリオを投げ込んだ。で、今に至る。」
どうやら、今、髪の毛を毟られている二人は、今、こうして眺めている二人により面白半分で投げ込まれたようだ。そして投げ込んだ本人達は助ける気もないようで、こうしていまだに眺めているだけのようだ。
「…。」
リリィはそんな毟られている光景を見て、ぽつりと一言。
「…つっるつーるにしーてあげるー。」
「ブフォッ!」
なんと、いきなりみっくみくの替え歌で、“つっるつるにしてあげる”を歌い始めた。これには烈も、リンクも吹き出した。
一方のマリオとは言うと、
「つっるつーるにしーてやんよー。」
「マリオ、乗るな! 乗らないで、ブハァッ!」
「や、やめ、もう、お腹が…!」
毟られているのを眺め、マリオとリリィが歌を歌っている間、烈とリンクは腹を抱えて笑っていた。ハンターが近くにいなくてよかった…。
「笑ってないで助けろおぉぉぉぉぉぉっ!!」
■
気の済むまで笑った烈は、リンクにピカチュウの群れを通らない抜け道を教えてもらい、今だに歌っているマリオとリンクに別れを告げ、リリィと共に先に進んだ。え? 毟られていた二人? まだ毟られてるよ。
「さて、最後はフルブレイ湯だっけ。」
本来ならばブレイブリーシリーズの代名詞である行動値を貯めておけるブレイブポイントが満タンの状態で戦闘を開始する“フルブレイ湯”だが、前の三つが変わっているのでここも変わっているだろうと、烈は踏んでいた。
「えっと…アマの湯。だって。」
「アマって…女!? 女湯ぅっ!?」
どうやら今度のお湯は、“アマの湯”というらしい。
アマ=女だと思った烈は、急いでその場を離れようとした。
「あら、烈さん。」
「ふひゃっ! ぜっ、ゼゼゼゼルダさん!」
が、背後からゼルダに声をかけられ、緊張したのかすぐに慌てて固まった。
「ご、ごめんなさい! すぐに出ていきますからっ!!」
「え? 出ていく?」
何が何だかわからないゼルダは、首を傾げて考え込むが、すぐに何かわかったのか、微笑んだ。
「あぁ、ふふっ、ここ、アマの湯ですからね。でも、アマとはいっても、女性のお湯ではありませんので安心してください。」
「ふ、ふぇ? そ、そなの?」
説明をしっかり読まなかった烈は、女性のゼルダが現れて驚いたが、そんな必要はなかったようだ。
それに、現在ゼルダはいつものドレスである。覗きなどの心配もない。
「ここ、アマの湯は…。」
「ぷはっ、ゼルダー! サザエ採れたわよー!」
「あら、ピーチ。ありがとう。」
バシャンッ、と音を鳴らして、誰かが出てきた。今度はピーチだ。
どうやら温泉の中でサザエを採っていたようだ。
「なんで温泉にサザエがいるんだよ!」
「このアマの湯の特徴です。海女さんのように採取できる海なので、アマの湯と言うらしいです。」
「アマはアマでも、女じゃなくて海女かよ!?」
どうやらこのアマの湯は、女と言う意味でのアマではなく、海女さんのアマらしい。
そんなツッコミをしているうちに、ピーチが上がってきた。しかもいつものドレス姿だ。え、それで潜ってたの貴方。
「あら、烈君にリリィちゃん。採れたてサザエ食べる?」
「食べる!」
「さっき鮭食ってその前にラーメン二十四杯食ってどんだけの腹してんだよ!」
「別腹。無数。」
「鮭もサザエも甘くねぇよ! 別腹レベルじゃねぇだろ! デザート感覚で食うな!」
きっぱりと言うリリィに、烈はツッコミを入れた。かなり激しく。
「あらあら、でも、そんなお腹いっぱい食べたのなら、後で食べた方がいいわ。あまりお腹に突っ込んじゃうと、苦しくなって動けなくなっちゃうわよ?」
「ピーチさん、現時点でこいつ動けない。」
「あらあら。」
呆れる烈に、ピーチはフフフと小さく笑った。話題の中心であるリリィは素知らぬ顔で烈の頭の上でのんびりとくつろいでいた。
「待っていてね。もっといっぱい採って、後でつぼ焼きにしてあげるわ。」
「つぼ焼き!? 楽しみ!」
「ウフフ、じゃあ、この逃走中が終わったら作ってあげるわね。それまで、いっぱい採ってあげる。ケーキも焼いてあげちゃうわね。」
「うん! ありがと、ピーチさん!」
わくわくするリリィと、そんなリリィにほほえましさを感じるピーチ。どうやら、本当にピーチの料理を楽しみにしているようだ。
「サザエと一緒にケーキって、新しい味覚だな…。」
「た、確かに新しい感覚ですが、普通に別々での提供をするかと思います。サザエを楽しんでから、デザートとしてケーキを提供するでしょう。流石にピーチもそこまで馬鹿ではないでしょうし。」
「私だってサザエとケーキを混ぜたりしないわ。」
烈とゼルダの会話を聞いたのか、ピーチは苦笑しながら答えた。
「ケーキ、サザエ、楽しみ。お兄ちゃん、早くミッション終わらせよ。」
「だな。んじゃ、また後でな、ピーチさん、ゼルダさん!」
早く逃走中を終わらせて、打ち上げをしたいのか、リリィは烈を急かし、烈もそれに応え、二人と別れて去っていった。
「頑張ってねー!」
ピーチとゼルダは、手を振りながら、二人を見送った。
■
確保者の言葉
十三人目:イデア
イデア
「あー、悔しかったなー。でも、鈴花に後を繋げられたし、満足! …でも、ホントは満足してる場合じゃないんだよね。」