二次創作小説(映像)※倉庫ログ

セントウ-encounter- ( No.96 )
日時: 2016/01/24 22:33
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: UpVfKr/1)

ミッション3が発動された時、エタルニア・不死の塔にある土のクリスタルが安置されている場所…。
閉じ込められた鈴花とローズは、扉を前に考えていた。

「むー、今度のミッションは凄くヤバいのに、何で扉が開かないのー!」

ぶーたれながらも扉を蹴って破壊しようとしているのか、先程からずっと、扉を蹴る音が止まない。

「鈴花、ローズ!」

そんな時、扉の外から何者かの声が聞こえた。

「え、その声、メフィリアさん?」

声の主は、メフィリア。丁度不死の塔へ来ていたので様子を見に来てみたら、閉じ込められている事に驚いたようだ。

「ねぇ、メフィリア! 扉が開かないの! そっちから鍵かかってない?」
「…ええ、かかってるわ。それもとてつもない、強力な魔法結界みたいなのがね。」
「ええっ!?」

どうやら、先程から蹴ったりしても音沙汰なしだったのは、メフィリアによると、魔術で結界が張られていたようだ。これでは物理での攻撃は一切無駄だろう。

「私がこっちで召喚を使って壊してみるわ。鈴花達は離れてて。」
「う、うん、お願い、メフィリアさん!」

召喚士であるメフィリアに任せておけば、この魔法結界もすぐに破れるだろう、そう考えた鈴花は、彼女に任せる事にした。
その間に、鈴花は他のメンバーと話をするために、台座に戻った。

『どうだ、鈴花。そっちは。』
「うん、メフィリアさん曰く、強力な魔法結界が張られてるみたい。こっちは今、メフィリアさんが壊してくれる事になってるけど。」
『うーん、でも、何で昴さん達は僕達を閉じ込める真似なんか…。』

風雅が腕を組んでそう呟くと、氷海は一つ頷き、語りだした。

『それなんだけれど…この逃走中、本当に全てが“昴さんやMZDの意思”で動いているのかしら。』
「え? どういう事、氷海ちゃん。」
『やっぱ氷海もそう思ってたか。』

鈴花が首を傾げながら氷海に訊ね、その横では烈が納得していたように頷いていた。

『烈も感じていたのね。…本当は、この逃走中は既に誰かに乗っ取られていて、昴さん達が関与できない状態にあるのではないかと思ったの。みんな、思わなかった? あの二人が“裏切り者システムなんか採用するなんておかしい”。って。』
「そ、それは思ったけど…。」
『確かに、言われてみればおかしい話だよね。裏切りに関して嫌な思いしか抱かないから、あの二人が普通に許すとは思えない。』
『俺がおかしいと思ったのは、それに加えて、さっきのミッションと、今のミッションなんだ。』

風雅が納得を示したところで、烈も切り出す。

「えっと、何かあるの?」
『まず、このミッションはクリスタルを暴走させるまで祈祷するのはおかしいって点。四つあるクリスタルが暴走すると、ホーリーピラーっつーのができるんだ。』
「ホーリーピラー?」
『このホーリーピラーは、平行世界の境界を破壊し、別の世界に何かをもたらすんだ。…その、何をもたらすかは多分、影が言ってたもう一つの隠された島に由来するものだったはず。今は思い出せないけど、後で思い出したら話すよ。』
「境界を破壊って…!」
『恐らく、そこまでは再現してないだろうと思う。だけど、強い力を秘めた柱がおっ建っちまったわけだし、嫌な予感しかしねぇよ。加えて次が…ディアマンテだ。』

烈は少し悲しそうに切り出すと、鈴花達は真剣な顔を浮かべた。

『魔王って言ってたわね。一体何なの? その、ディアマンテって。ヴェネチア出身のあの人ではないことは確かだけど。』
『あいつは、昔マグノリアさんの故郷である月を滅ぼし、ユウ達と戦いの末に、デニーさんと一緒にルクセンダルクの遠い未来へと飛んで行ったはずの、恐ろしい魔王だ。』
『じゃあ、マグノリアさんにとっては、仇…!? 僕も氷海と同じくポップンのディアマンテさんを思い浮かべたけど…。』
『あんなの、可愛い赤子。このディアマンテは、違う。』

烈と一緒にゲームをやっていたリリィは、話に割り込む。

『奴は、倒せない。不死の能力を持つ、多分最強の、魔王。』
「ふ、不死って…! じゃあ、ユウ君が戦ったその時はどうしたの!?」
『だから、さっきちらっと言ったが、デニーさんが時空の羅針盤を使って一緒に遥か未来に飛んだんだ。そうするしか、方法がなかったんだよ。何でまたデニーさんがここにいるかは分かんねぇけど、昴さんとMZDが何とかしたんだろうよ。MZDなら未来に行けるしな。多分連れ戻したんじゃねぇの? まぁいい、話を戻すと、どう考えても昴さんはこいつを喚ぶはずはない。マグノリアさんの仇であるあの野郎を喚んだらどうなるか、知ってるだろうし。人の嫌がるようなドSでエグイミッションはあれど、他人を傷つけたり、疑心暗鬼に陥らせたり、トラウマを思い出させるようなことはしねぇだろうよ。』

その烈の証言を聞いていると、ますます疑問に思えてくる。
この逃走中は今、“誰が動かしているんだ?”と。

「…ねぇ、これ、昴さん達に接触した方がいいよね…?」
『それどころか、この逃走中をやめないといけないと思う。もし、今、昴さん達がその何者かに襲われていたとしたら…!』

風雅は話している途中に何かを感じたのか、いきなり背後を向いた。

セントウ-encounter- ( No.97 )
日時: 2016/01/24 22:39
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: UpVfKr/1)

『全員、後ろだ!』

烈も同様の事を感じ取っていたのか、そう言い残して離れた。鈴花もその時になってようやく、何かを感じたのかローズを抱えて離れた。
同時に、鈴花のいた場所に拳のようなものがめり込む。

「な、なに、これ…!?」

先程まで自分がいた場所は、粉々に砕かれている。もしあのままとどまっていたら、殺されていただろう。
そして、鈴花は見上げてその姿を確認する。まるで巨人のゾンビだ。

「な、なんなのあれ!?」
「どうしたの、鈴花!」

扉越しに、メフィリアが訊ねてくる。何かあったと悟ったのだろう。

「み、見た事ない変なバケモノが!」
「バケモノ!? まさか、ギガースリッチ!?」
「ギガースリッチ!? な、なにそれ!」
「クリスタル正教の文献に登場する、えっと確か…災厄を蔓延せし者…だそうよ!」

うろ覚えなのか、自信なさ気に答えるメフィリア。まぁ、今は歩み寄ったとはいえ、クリスタル正教を邪教とされていた公国ではそう言った勉学はしてこなかったのだろう。

「そ、そのギガースリッチが何でここに!?」
「そこはわからないわ! でも、さっさとぶち壊した方がよさそうね!」

何故今頃バケモノ…ギガースリッチが現れたのかはわからない。だが、わかるのは一つ。このままこうしていては、そのうち鈴花とローズが殺されることだけだ。











同じ頃、フロウエル・水の神殿にある水のクリスタルが安置された場所…。
氷海は目の前に現れた液体に、臨戦態勢を取った。
先程まで自分がいた場所は、何かの粘液で埋め尽くされている。あの場にとどまっていたら、窒息していたかもしれない。

「氷海、大丈夫ですか!?」
「平気よ、セシル。貴方こそ体力が戻ってないんだから、私のポケットに隠れてなさい。」
「は、はい…。氷海、あれはいったい…。」

氷海は、セシルの問いに考えた。心当たりがあるようだ。

「アニエスさんから前に伺った事があるわ。災厄を浸透せし者、ルサルカ。クリスタル正教の伝承に登場する存在よ。」
「災厄を、浸透せし者…。氷海、気を引き締めてかからないとなりませんわね。」
「ええ。昴さん達に何があったかを聞かないといけないし、それに、個人的にも嫌な予感がするのよね。」

そう言って氷海は、葉月からもらったエルヴンボウを取り出し、氷で生み出した矢をつがえた。

(戦闘の許可が出ているかはわからない。だけど、ここでやらなければ、私とセシルが死ぬ。)

このミッションは戦闘ミッションではないが、予想外の邪魔者が現れたのだ。仮に昴達の権限がまだ生きているとしたら、彼女達もお咎めはしないだろう。

「悪いけど、貴方はここで…粛清させてもらうわ!」

セントウ-encounter- ( No.98 )
日時: 2016/01/24 22:45
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: UpVfKr/1)

更に同じ頃、ナダラケス・風の神殿にある風のクリスタルが安置された場所…。

「…。」

風雅とフランシスは、各々武器を取り、目の前に現れた双頭の犬を睨みつけた。

「昴さん達が危険な目に遭ってないか確認しなきゃいけない時に…!」
「だが、扉も開かないし、この状態は…そんなことを言っている暇なんてなさそうだぞ。」

確かに、今ではあの目の前にいる犬に食われてもおかしくはない。

「おい、風雅!」
「風雅殿!」

後ろの扉から、声がした。その声に聞き覚えがあった風雅達は、反応する。

「ニコライさんにジャッカルさん!」

そう、この付近を警備していたニコライとジャッカルだ。

「な、何ですかこの禍々しい結界は!」
「どうやら、その結界で僕達閉じ込められちゃったの! ニコライさん、何とかできる!?」
「私一人では厳しいかもしれませんが、何とかしてみます!」
「オレも、ひとっ走り行ってセンセイ呼んでくる! あと金具のおっさんも!」

ジャッカルの言うセンセイとは、魔法剣士であるナジットの事で、金具のおっさんは時魔道士の元ラクリーカ国王だろう。魔法の使い手が一人増えるだけでもありがたい。それに、シーフであるジャッカルならすぐに帰ってこられるだろう。

「それから、誰か今目の前にいるバケモノの事知ってる人いる!?」
「バケモノ、ですかな? 特徴を教えていただければ、恐らくは…。」

ニコライが答えると、風雅はすぐに目の前のバケモノについて特徴を掻い摘んで話した。

「分かりました。奴の名はオルトロス。クリスタル正教の伝承に登場する、災厄を引き寄せし者です! ですが、何故ここまで再現を…!」
「わからん! だが、昴達は既に敵の手によって権限をはく奪されてるかもしれない。ニコライ、急げ!」
「(ジャンの感じた通り、やはり何かが起こっているようですね。)…時間の猶予はなさそうですね。」

今はニコライと、ジャッカルを信じ、風雅はフランシスを見た。

「フランシス、無理はしないでね。」
「愚問だな。」

こんな危険な中でも、二人はそんな会話をしていたとか。











一方、エイゼン・源泉洞奥地の火のクリスタルが安置された場所…。

「ひゅー、あぶねぇな!」

間一髪、烈はリリィを抱えて背後に飛んだ。
先程までいた場所には、無数の武器。今頃串刺しになっていただろう。

「で、それを飛ばした犯人は、あいつか。」

烈は目の前にいた、一つ目をした雲のような無数の武器を刺したバケモノを見た。
一瞬、カービィの雷鳴轟かせる一つ目雲・クラッコの事を思い出しかけたが、すぐに記憶から消した。

「確かアイツは、チャウグナル。クリスタル正教のなんかに登場する、災厄を刻印せし者、だっけ。」
「そう。でも、何でまた、暴走後に出したんだろう。」

そう、今までのギガースリッチ、ルサルカ、オルトロス、そして、雲のバケモノ…チャウグナルは、闇に覆われたクリスタルに取り憑き、アニエス達に襲い掛かり、解放の儀式を邪魔した奴だ。だが今は、クリスタルが暴走状態にある。ここで襲ってくるのはおかしいと感じた。

「それは黒幕さんに聞いてくれ。まぁ、何となくここで俺達を潰すっていう予測はつくけどな。…この逃走劇が昴さんのシナリオじゃないとすると、昴さん達から見ればこいつらは予定になかった邪魔者なのは確実だ。」
「招かれざる客。お帰り願いたい。」
「まっ、そんな様子だし、俺がここでぶっ倒しても問題ないだろうな。」

烈は由梨からもらった剣、フランヴェルジュを抜いた。もしもの時の為に、持ってきたのだ。

「リリィ、下がってろ。あの儀式の後だ。まだ体力戻ってないだろ?」
「うん、お願い、お兄ちゃん。」

リリィを気遣い、下げさせる烈。

「ティズさん達が四人で戦って勝てた敵…二人で何とかなんのかな。」

烈はぽつりと、そんな弱気な事を呟いてしまった。

セントウ-encounter- ( No.99 )
日時: 2016/01/24 22:50
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: UpVfKr/1)

現実世界…。

「ふんふふーん。」

休暇だったため、いつものように暇潰しの外出を終え、スバルは自宅に戻った。

(さてと。確かあの馬鹿神が考えた逃走中って今日よね。どうなってるかなー。)

そしていつものように、創世ノートを開く。
今日は待ちに待った、自分も関わった(つもりもなかったが関わらざるを得なかった)逃走中の日。
だから、今日は道草も食わずにまっすぐ自宅に帰ってきたのだ。

(第一ミッション前にー…。うわー、葉月ちゃんの捕まり方可哀想…。後であの赤いおっさん死ぬわね。次に捕まったのは完二君か。って、うわぁお。ローズ君抱えて逃げちゃった! やばい、面白いけど後で鈴花ちゃんに説教食らうわ。)

どうやら、最初から事の成り行きを見ているようだ。そして葉月と完二の捕まり方には、同情しか覚えなかったそうな。

「…え?」

だが、ある部分まで来ると同時に、首を傾げた。

(裏切り者なんてプランに入ってなかったはずだけど。)

そう、あの裏切り者を募集する通達。そんな話は全くもってでなかった。急にMZDがアドリブで取り入れるはずもない。そう考えたスバルは、裏切り者である理乃の視点を呼び出した。

(…! まさか、これ…!)

プランにはないものを取り入れたことを知った瞬間に感じた、嫌な予感。それが当たりそうだと分かった時、スバルは創世ノートを手にとって、ベッドに横になった。

(この逃走中はもう…あの馬鹿神が考えたのじゃない!)

勝手に書き換えられた、逃走中の全貌。
そして自分の中に過った、“逃走中の悲劇”という言葉。

(許さない…! 勝手に人のプランを書き換えた上にこの逃走中を玩具にしてくれた黒幕…! 首を洗って待ってなさい!)

ゆっくりと、意識を深いところに落としていくスバル。
その心に、黒幕への恨みを乗せて。

セントウ-encounter- ( No.100 )
日時: 2016/01/31 22:49
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 6701oeAw)

不死の塔・運営支部…。

「風花、通信はどう?」

影は、ずっとパソコンに向かい合っている風花に声をかけた。

「駄目みたい…。通信権限が奪われちゃってる。今なんとかハッキングして奪い返してみるけど…。」
「ハッキングとかもうスルーしとく。いや、今はその力が必要だけど。」
「不正にアクセスして先に奪ったのはどこかの誰かだよ。」

風花、自分の行いをかなり正当化してます。いや、確かに風花がこうしているのも、何者かが様々な権限を奪ってしまったからなのだが。

「ねぇ、風花。これ、どう思う?」
「どうもこうもないよ、影君。…もしかしたら、運営に何かあったのかも。…裏切り者を作るのだって予想外だし。」

流石の風花達も、異変は感じていた。ざっくりとしたプランはMZDから聞いていたが、流石にここまでの大幅変更は予想外だ。加えてこの謎の権限剥奪。何かが起こっていると考えるには十分すぎるほどだ。

「うーん、ボク、昴達に会ってくる。何か嫌な予感がする。」
「影君、ごめん。会えないの。」
「え?」

影が運営本部に行こうと提案したら、風花が首を緩く振った。

「ミッション1付近から、隠しているだけのはずだったカルディス地方の反応がロストしているの。」
「カルディスラがロスト!? 聞いてないよ!」
「演出かな、って思ったけど…今思えば、変だと思った。ごめん、伝えてなくて…。」
「いや、風花は悪くないよ。確かにあの馬鹿神やりかねないし、あっちにはこの創世島のモード変更の権限を持つ昴もいる。そう思うのも無理はないけど、もう少し早く気づくべきだったね…。」

カルディス地方。それが隠された六つ目の島の名であり、その首都カルディスラに運営本部があるはずだった。風花によると、そのカルディス地方がミッション1付近で島ごと消失しているようだ。
本部がロストしている以上、この逃走中を中止し、消えたカルディス地方を探さなければならない。だが、メールの権限、通信の権限を奪われているので、どうにもならない。

「…!」

その時、影は廊下に不吉な気配を感じた。

「! 廊下に、敵の反応! これは…!?」
「風花、そのままパソコンでハッキングしてて!」

影が風花を庇うように立ちふさがる。同時に、扉をぶち壊して何かが入ってくる。
背から黒いマリモのようなものを溢れさせた、人形のような何か。影はこれに、見覚えがあった。ありすぎた。

「な、何で亜空軍のプリムがここに!?」

そう、スマブラ世界を襲った亜空軍の下級兵、プリムが大量に襲いかかってきたのだ。

「(考えてる場合じゃない…!)風花には指一本触れさせないよ!」

戦闘向きではない風花を庇いながらどこまでやれるかわからない。影は少し不安を覚えながらも、プリムの群れに立ち向かった。