二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 乗り込め!審神者さん ( No.3 )
- 日時: 2015/09/09 22:43
- 名前: 柊 (ID: U9CqFAX7)
1:絶望の中より
ああ、どうしてこうなってしまったのか。この本丸の初期刀、蜂須賀虎徹は言葉に出さず嘆いていた。
周りには自分と同じく傷だらけの刀剣男士。短刀たちはそれがよく目立ち、薬研藤四郎以外はうめき声をあげている。
この悪夢のような現実が始まったのは些細な出来事だった。最初は優しかった審神者がある演練の時、三日月宗近に心奪われたのが始まり。
彼を欲した審神者は今までの優しさが嘘のように消え去り、鍛刀、出陣を繰り返した。出陣では途中で誰が重傷になろうが進ませ、手に入りにくいと言われる刀剣にはお守りを渡したが短刀はまるで使い捨てだと言わんばかりにこき使い、ここにいる短刀たちは今何振めかも分からない。手入れも滅多にされず何人かは二振めだったはずだ。
そんな中、蜂須賀が一度も折れずにいたのは奇跡に近い。しかし……蜂須賀にとってそれはもはや地獄でしかなかった。
いつ誰が折れてもおかしくない状況。もしかすると隣でぐったりと横になっている加州清光が、次に折れるかもしれない。いや、向かいに座り込む山伏国広かもしれない。……自分、かもしれない。
「……こんな、ことなら……」
いっそ、消えてしまえたら。
言葉にならないその呟きは
「俺、参上!」
という訳の分からないセリフと、スパーンという気持ちいいくらい勢いよく襖の空いた音によって消えた。
- Re: 乗り込め!審神者さん ( No.4 )
- 日時: 2015/09/10 00:51
- 名前: 柊 (ID: a1/fn14p)
「……あれ? 大変だ、むっちゃん。おてぎー。
ここ、刀剣男士様の部屋だ」
ど真ん中で何だか分からないポーズを取っていた男は両脇で襖を開けたであろう陸奥守吉行と御手杵にポーズをそのままにそう言う。それを聞いた二人は「な、なんだってー!?」「な、なんじゃってー!?」と口にした。
そしてすぐに三人で固まった。
「どうしよう、パパ……じゃなかった。石切丸にここの淀みも酷いって言われてきたのに。騙された」
「はっ! 待て、石切丸は“ここの淀みも酷い”って言っただけで“ここに審神者がいる”なんて一言も言ってない!」
「くぅ、上手く乗せられたぜよ!」
悔しそうに顔を歪める三人。しかし次の瞬間にはまあいいか、と声を揃えていた。
「はい、ではお手入れタイムといきませう」
「主君!」
どこからともなく打ち粉を取り出した男に、誰かが声をかけた。男はそちらを見て、ああ、と笑いかける。
「前田くん、平野くん。どうだった?」
「ここの審神者を発見し、捕縛しました」
「あとは政府の方に引き渡すだけです」
「うん、お疲れ様。見張りは切国くんときよみっちゃんかな?
四人にはあとでご褒美だね。さてと……お手入れタイムですよ!」
二回目の手入れ宣言をし、勢いよく一歩を踏み出す。
が、足元には筒が転がっていてそれを思い切り踏んでしまい、畳に顔面をぶつけた。その際、とても痛そうな音がしたのは恐らく気のせいではないだろう。
- Re: 乗り込め!審神者さん ( No.5 )
- 日時: 2015/09/10 22:56
- 名前: 柊 (ID: 22LHFLcQ)
男が痛みからか小刻みに震えてゆっくり立ち上がる。顔が下に向いているため表情は分からない。近くにいた小夜左文字がおろおろしながら大丈夫?と声をかけた。
「……どーする、アイ〇ルー……」
呟いた言葉に四人がはっとして目を塞いだ。何が起こるのか、と身構えると男が顔を上げ、四人を見た。
その目が若干潤み、鼻は赤くなっていたことにはつっこむ必要はないだろう。
「うるうるチワワビー……あっ、目を塞ぐのズルい!!」
「おんしの手は読めちょる!」
「これでオレたちの勝ちだ!」
「やっと勝てました!」
「その攻撃はもう効きませんよ!」
「なら手を剥がしてやるー!」
わー、とふざけ出す四人。微笑ましいが、突然のことの連続で全員が呆然としている。
特に粟田口と槍が呆然としていた。
「主、そちらは……おや、ここは刀剣たちの部屋のようだね」
次に姿を現したのは石切丸。穏やかな笑みを浮かべていた彼は刀剣たちの姿を見てその笑みを消した。
それに反応したのは鼻を赤くした男。……先ほどから主、や主君、と呼ばれていることから、審神者なのだろう。男は確かに政府から支給されるという水干を着ている。その審神者は鼻と違って顔は青くなっていた。
- Re: 乗り込め!審神者さん ( No.6 )
- 日時: 2015/09/11 01:25
- 名前: 柊 (ID: 22LHFLcQ)
「あ、あのね石切丸」
「主、少しそこに座ってもらえるかな?」
「はい」
石切丸の言うことに反論することなく、審神者はその場に正座した。今気が付いたがまだ小刻みに震えている。
しかし蜂須賀はこの震えは先ほどの痛みとは違うと確信していた。そして、その震えは恐怖から来ているのだとも。
審神者の目の前にはにっこりと、そう、にっこりと笑みを浮かべた石切丸。だがその笑みと彼の背後に何とは言い切れないが黒いものがあるように感じる。
「確か、主の役目は何だったかな?」
「刀剣男士様の手入れです」
「そうだね。何せこんなに痛々しい姿なんだ。すぐにでも手入れしなくてはいけないだろうね。
では、遊んでいる暇はあるのかな?」
「はいぃぃっ! ごめんなさい、ごめんなさいっ!
今すぐ手入れしますっ、今すぐ!」
石切丸と自分たちに同時に謝る審神者の勢いに圧され、小夜が本体を手渡す。その本体を鞘から抜き、そっと優しい手つきで手入れを始める。
拭い紙で刀身を拭った後、ぽん、ぽんと打粉で手入れをすれば小夜の体の傷も服も治っていく。そんな中、御手杵と陸奥守は彼の背後で石切丸に叱られていた。(平野と前田はすぐに解放されているが)
「あ、あの、貴方たちは?」
小夜の問いに、んー?と気が抜けそうな声で答える。
「ぼくは紅。他の本丸の審神者だよ。ブラック本丸及び本丸乗っ取りの取り締まりやってます」
そう言って微笑む紅は、自分の後ろで御手杵と陸奥守が小さくなっていくのを知らない。
1:絶望の中より-END-
1終わらすだけでどんだけ時間かかってるんだ…。
よろしかったらコメントお願いします|ω・)