二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: cross×world ( No.101 )
- 日時: 2016/11/28 07:02
- 名前: 柊 (ID: EYuxdBgO)
第15話
肩が上下に動く。息を荒くしながら、打刀に付いた血を振り払う。
部屋に飛び散る赤はゴンババの物。しかし、そのゴンババは未だに倒れることもなく。
いや、倒れるどころかピンピンしている。
「フェッフェッフェッ! それだけか!」
「マリオさん、どうなっているんでしょうか。俺は、結構斬りつけたはずですよ」
「これは……タブーによってパワーアップさせられてるとしか思えないね」
「そう、でしょうね」
竜太は忌々しそうにゴンババを睨みつける。ゴンババの体のあちこちにできた切り傷からは血が溢れ、マリオのファイアボールはファイア掌底などでできた火傷が目立つ。だと言うのにゴンババはまるで無傷のようだ。
ゴンババが首を上に上げる。それにハッとし、竜太とマリオはその場から大きく退いた。
首が下がると同時に先ほどまでいた場所に炎が吐かれる。その炎は容赦なく床を焦がしていった。こんな炎に飲まれたらひとたまりも無い。炎を吐く前にゴンババが首を上に上げるため、避けるのには充分な余裕があるのと避けたとしてもどこに避けたのかゴンババから見えないのが幸いだ。
炎を吐いているゴンババに竜太が駆け寄り、足を斬りつける。ゴンババの足から噴き出した血が竜太にかかった。
それでもゴンババは何もないように足を上げる。勢いよく下りてくる足を何とか避け、竜太はまたゴンババを見た。
「まるでゾンビだな……!!」
昔見た映画に重ねてそう毒付けばゴンババの笑い声が響いた。
「ゾンビ。まあそれも良かろうて。
しかし今のわらわはそのようなものよりもずっと気高く強い! それを忘れてもらっては困るのぅ!」
そう言い、ゴンババは羽を使って浮き上がる。そして、大きなしっぽを勢いよく竜太に振り下ろした。
避けるために走るも、しっぽが迫る速さの方が勝った。竜太の脇腹をしっぽが抉り、その勢いのまま、竜太は壁に叩きつけられた。
- Re: cross×world ( No.102 )
- 日時: 2016/11/28 07:07
- 名前: 柊 (ID: EYuxdBgO)
「があっ!!」
「竜太!」
「他人の心配など、ずいぶん余裕ではないか!」
竜太を吹き飛ばした勢いを保ったしっぽは今度はマリオを襲う。マリオは咄嗟に伏せてしっぽをやり過ごした。
「ちっ、避けられたか。が、チビ一人仕留められただけでもよしとしよう」
ゴンババがちらりと竜太を見る。竜太は床に落ち、激しく咳き込んでいる。壁に叩きつけられた際に口でも切ったのか少量の血が竜太の口から溢れていた。
……あれではこれから戦うのは難しい。いくら竜太が常人より回復が早いからと言ってすぐに今のダメージが抜けるはずもない。
「竜太、休んでいてくれ! ゴンババはボクに任せて!!」
「……はい、すみません」
「謝らないで。キミはよくやってくれたよ」
両親がほとんど人ではない。それだけで竜太は多少違うところはあるけれど人間、それも子どもだ。なのにゴンババ相手に果敢に斬りかかっていってくれた。責める人間など、どこに居ようか。
竜太が体を何とか引きずるように、戦いの邪魔にならない場所へと移動していく。彼にトドメを刺さんとゴンババが首を上に上げた。
マリオはゴンババのその無防備な首の下に潜り込み、下される瞬間にゴンババの顎とされる場所にアッパーを見舞う。アッパーによって開かれるはずの口は無理やり閉じられ、吐いた炎がゴンババの口内を焼いていく。
ゴンババの悲鳴が上がった。
「これ以上、彼を傷つけさせない。ボクが相手だ、ゴンババ!!」
「くっ、忌々しい……忌々しいぞマリオォオ!!」
- Re: cross×world ( No.103 )
- 日時: 2016/11/28 07:12
- 名前: 柊 (ID: EYuxdBgO)
マリオは拳を握って飛び上がる。ゴンババがマリオを追い、首をそちらに向けた。
「バカめ!」
ゴンババが口を開き、炎を吐いた。すぐにマリオは目の前で手をクロスさせ、赤い壁を作り出す。
壁は炎を弾き、マリオを守っていた。それに炎は効かないとすぐに判断したゴンババは炎を止め、身構える。
マリオは重力に逆らうことなく、むしろ重力を利用してゴンババの鼻に拳を落とした。ぐう、とゴンババが唸るがすぐにマリオを振り払う。
振り払われたマリオは床に叩きつけられまいと体勢を整えて床に着地した。だがその瞬間、目の前にあったのはゴンババのしっぽ。
これでは避けることは叶わない。瞬時にそれを理解したマリオは重傷覚悟でそのしっぽを受け止める。
「ぐぅうっ!!」
分かってはいたがものすごい衝撃がマリオを襲う。油断をすればマリオも竜太の二の舞になる。
マリオは一切力を緩めずにしっぽを掴む。だいぶ引き摺られたが、勢いが止まった。
「ほう、なかなかやりおる。それほどでなければ復讐のしがいがないというもの!」
「復讐、ね。自業自得だとは思ってないのか?」
「自業自得? バカなことを!」
ゴンババは笑いながら足を上げた。
「ハナハナ村を襲ったこと、ノコノコたちを飲み込んだことを覚えていないと?」
「はっ! そんなモノ、奴らが弱かったまでのことよ。この世界は弱肉強食。強い者が生き、弱い者は死ぬ!
どれだけ綺麗事を並べても結局はそれが現実なのだ!」
「……ああ、そうかもしれないね。だけど」
マリオは動かない。
足はマリオめがけて下される。
竜太がマリオの名前を叫んだ。
マリオが踏みつけられる瞬間、マリオは足を掴んでそれを止めた。
全体重が乗った一撃は重く、マリオは呻く。それでも。
マリオは叫んだ。
「綺麗事だろうが、あの村にはそんなものなかったよ」
あの村には弱肉強食なんてなかった。それをわざわざ襲って壊したのはゴンババだった。
ゴンババの足を、少しずつ押し返す。
- Re: cross×world ( No.104 )
- 日時: 2016/11/28 07:17
- 名前: 柊 (ID: EYuxdBgO)
「……!」
まずい。本能がゴンババに告げ、すぐに羽を使って浮き、距離を取る。
着地の際、少しだけ足が沈んだ気がした。
「本当にあった綺麗事を、お前が壊したんだ」
マリオの声が、重く響く。彼の手からファイアボールが放たれ、ゴンババはそれを受ける。
少しばかり熱いが、どうということはない。ゴンババはまたしっぽを叩きつけるために足に力を入れて飛び上がろうとするも、がくりと足が沈んだ。
「なっ!?」
「……どうやら、体はもう耐え切れなかったようだね」
「ど、どういうことだ!? わらわは、わらわは無敵のはず!」
困惑するゴンババの体は徐々に床へ沈み始めている。ゴンババの意思とは関係なく。
「なぜだ、なぜだぁあああ!!
あのチビとマリオの些細な攻撃などっ、効いていないはずっ!」
「その些細な攻撃が、ゴンババ、お前の体にトドメを刺したんだ」
「何!?」
「竜太が吹き飛ばされる前に、斬りつけた場所を覚えているか?」
そう言われてハッとした。……確か竜太は足を斬りつけたはず。
……最初に沈んだ足も、そこと同じだった。
「バカな」
ゴンババの声は震えていた。あり得ない。あの切り傷で自分の体が限界を迎えたなど、信じたくはなかった。
「それだけじゃなく、数多の切り傷と火傷。それらがいくらかダメージとして残ったんだろうね」
「バカな、バカな」
「いくらパワーアップしても、無敵なんていないよ。それに、気づくべきだったね」
「バカなぁああああああああ!!!!」
マリオが今一度飛び上がる。今までより大きく。
マリオの手に大きな炎が宿る。彼はまっすぐにゴンババの頭上に落ちていく。
ゴンババが頭を上げようとしても上手く動きやしない。
これで、おしまいだ。
そんなマリオの言葉が、イヤに響いた。
「あぁあああぁぁあぁああぁああああぁ!!」
「ファイア掌底!!!!」
ドォオン、という音とともに、アジトが震えた。
- Re: cross×world ( No.105 )
- 日時: 2016/11/28 07:22
- 名前: 柊 (ID: EYuxdBgO)
「テオ様、ご報告が」
「なんだ」
「ゴンババが、スマッシュブラザーズの手によって倒されました」
「……やはりか。しかし、もう少し善戦してくれると期待はしていたんだがな」
「それで……タブー様より、お呼び出しが」
「……そうか、ご苦労」
ーーーーーーーーーーーー
ブラックスカル号、デッキ。
「いてっ」
「大人しくするのです! 竜太は無茶ばかりして!」
「悪かったって言ってるだろ……」
「それ、過去に何度も何度も聞きました」
「うっ」
竜太は電から治療を受けていた。デッキはバタバタと忙しい。
というのも、あのアジトに閉じ込められていた人々(ほとんどが元々マリオの世界の住民だった)を解放し、保護したはいいが怪我をしている者も少なくなく、その人々の治療に動き回っていたのだ。
ちらりと竜太がある方向を見る。そちらでは夕立が白露型駆逐艦の艦娘たちに抱きつきながら涙を流していた。
「わぁあああん……! 良かった、みんな、無事でぇ……!」
「ごめんね、夕立。こんなことさせちゃって……」
「ううん、私こそごめんね! 私、忘れちゃったの、みんなのこと、忘れちゃって……ごめんね、ごめんねぇ……!」
「もう、夕立ってば泣きすぎよ」
「だって、だってぇ……!」
「ほら、もう大丈夫だから、泣き止んで?」
「ううう……!」
全員が優しく微笑みながら夕立を見たり、撫でたりしている。それを伊号潜水艦の艦娘たちが同じく優しく微笑みながら見ていたが……伊58が白露の頬に貼られた湿布に気が付いた。
「白露、そのほっぺの湿布どうしたでち!?」
「え? ああ、これ? テオさんって人が貼ってくれたの」
「テオ?」
「うん、真亜空軍の人」
「ええええ!?」
全員の声が重なる。まさか頬の湿布が敵からの施しなど、誰が予想するだろう。
それをすぐに察したのか、白露は慌てて口を開く。
「あの、テオさんは多分いい人だよ! だって何も言わずにこれ貼ってくれたの!」
「いや、でも……」
「本当に!」
白露が慌てながら弁解をする中、竜太はまた別の方向に視線を向けた。正直、その『テオ』とやらが気にならない訳でもないが見も知らぬ人間を気にしていても始まらない。
視線が向かった先には山伏、山姥切、堀川が。山伏が二人に温かな飲み物を渡している。聞いた話では二人は暴力と暴言によって洗脳されていたらしい。だから山伏はあまり無理はさせないつもりでやっているんだろうが……漁馬と一心が後ろから肩を掴んでいる。
正直山伏とて重傷。無理をしているのは山伏もだ。一心と漁馬が二人がかりで座らせ、山伏にも温かな飲み物と、毛布を渡していた。
そしてもう一つの方に視線を向けると、獅子王が友蔵らと乱の世話を焼いている。このはは蜂須賀と歌仙から軽めの説教を受けているが着いてきた(連れてきた?)メェークルに夢中でまったく聞いておらず、二人がついため息を吐き、ゲッコウガがちゃんと聞きなさい、と言わんばかりの顔をしている。
「……終わったのか」
「はい。竜太くんたちのおかげです」
「リュカ……さん」
「あはは、さん、なんて付けなくていいですよ」
穏やかに笑うリュカは、どこか申し訳なさそうだ。彼とてファイター。自分が着いていけば少しは負担を減らせたのでは、と考えているんだろう。
「すみません、ぼくも着いていけば……」
「構いませ……構わないさ。それに、リュカが船にいてくれたからオレたちも安心して戦えたんだ」
これは事実だった。いくら艦娘がいると言えど、彼女らは陸上では普通の少女と何ら変わりない。多少力は強いがそれだけだ。
対してリュカはPSIという力を使え、陸上での戦いを任せられる。だからこそ竜太たちは何の心配もなく戦いに赴くことができた。
竜太の言葉にリュカは少し顔を赤くして、笑う。ありがとう、と小さい声はしっかりと竜太に聞こえていた。
第15話-END-
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