二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: cross×world ( No.12 )
- 日時: 2015/11/02 12:34
- 名前: 柊 (ID: iP.8TRIr)
第2話
ふぅ、と竜太はため息を吐いた。電が落ち着いた後、竜太は周りに自己紹介をして戦いに挑む、という意志を話した……のは良かった。
だがどうも他の異世界から来た人々の意見がバラけていて戦う意志がある者がその意志がない者を説得しようとし、それを冷静に、あるいは感情的に反論されてしまいまた感情的に反論して、と繰り返した結果ケンカになってしまっていた。
「(とは言え、子どもだけなら無理もない)」
その異世界から来た、というのはみな竜太と同じかそれより少し下の子どもだった。そんな子どもが戦う、と意志を固めたのは到底できることではない。だからと言って竜太は戦わないと言う者の気持ちがよく分かり、無理に戦わせようとは思わない。
おそらく全員、命をかけた戦いを経験したことがないはず。未知の恐怖に恐れる者もいれば冷静にそうするべきではない、と判断した者もいるだろう。
竜太は目だけを動かして先ほど取ったメモを見る。それは異世界から来た人々の特徴と名前を簡易的にまとめたものだ。それに戦う側の名前を赤い丸で囲み、戦わない側を青い丸で囲んだ。
戦う意志あり
・野比のび太
・ドラえもん
・木ノ宮タカオ
・水原マックス
・皇大地
・光熱斗(及びロックマンEXE)
・豪勝カイト
・天野ナガレ
・海鳴一心
・新世界大河
・野原しんのすけ
戦わない側
・剛田武(アダ名、ジャイアン)
・骨川スネ夫
・源しずか
・火渡カイ
・金・李
・才媛マナブ(アダ名、キョウジュ)
・桜井メイル(及び、ロール)
・財前ミツオ
・兼丸フクタ
・秋内ハナ
・永行カナ
・指原井モナ
・維新漁馬
・風間トオル
・桜井ネネ
・佐藤マサオ
・ボーちゃん(名前がよく聞き取れない)
まあ、やはりというか。戦わない、という意思を持つ者の方が多い。何にせよ、このままでは埒が明かない。竜太は手を一回叩いて全員の注目を自分に集めた。
- Re: cross×world ( No.13 )
- 日時: 2015/11/02 12:39
- 名前: 柊 (ID: XHLJtWbQ)
「落ち着いてくれ。オレは戦うがお前たちはどちらだって構わない。
戦力が多いに越したことはないが、嫌々戦ってもらったところで負け戦だ。戦うと言ってくれた者も、一度冷静になって考え直してみてくれないか?
オレたちがこれから戦うのはどんな奴らなのかを思い出してくれ。思い出した上でじっくり考えてほしいんだ。
本当に戦えるのか、戦うとしたら自分にその覚悟があるのかを」
「だ、だけど、僕らが戦わなかったら竜太だけになっちゃうよ!」
冴えないメガネの少年——のび太がそう叫ぶと竜太は目を丸くして、少しだけ笑った。
「はは、そうか。優しいんだな。
でも大丈夫だ。少なくとも、電と、あと五人は戦力として協力してくれるはずだからな」
そう言って竜太は電を見る。電は笑顔で頷いてくれた。
次に、マリオを見た。だがマリオは何が何だか分からずに首を傾げる。
「オレを見つけた時、近くに刀がありませんでしたか? 五振ほど」
「刀……ああ、確かにあったよ! ちょっと待ってて!」
マリオは走ってどこかへ行った。刀を取りに行ったのだろう。
竜太、電、このははそのまま待つが周りはみんな首を傾げている。当たり前と言えば当たり前だ。先ほどまで戦いに協力してくれる人の話をしていたのに、急に刀の話になったのだから。
「なあ、刀があるから何だってんだ?」
近くにいた赤い髪の少年——皇大地は竜太に声をかけた。彼をちらりと見て竜太は口を開く。
見た方が早い、と言って。
- Re: cross×world ( No.14 )
- 日時: 2015/11/02 12:44
- 名前: 柊 (ID: iP.8TRIr)
少ししてマリオが五振の刀を持ってきた。短いものが三振と長いもの一振、その中間くらいが一振。
「これでいいのかい?」
「はい。ありがとうございます」
竜太がマリオから一振一振丁寧に受け取り、そっと刀を抜く。キラリと銀色に光るその刀身はどれもヒビが入っていた。すぐに折れる、とまでは行かなくともまず使うには躊躇われるほどに。
それを見て竜太は眉間にシワを寄せる。
「ここまで傷が入っていたか……」
「りゅーにぃに、どうするの?」
「せめて打粉があればな……」
「ウチコ? もしかして、これのことかな?」
マリオが取り出したのは、黒漆の箱だ。その蓋を開けると、そこにはこの刀たちの手入れに必要な道具が一式入っている。
「な、何でそれが!?」
「この刀の隣に置いてあったんだ。多分、クレイジーが用意してくれたんだろうね」
マリオが竜太に手入れ道具の一式を渡す。竜太はそれを受け取り、念のために道具をすべて見て確かめる。
……どれも不備はない。これならば大丈夫と判断した竜太がこのはを呼んだ。このははとてとてと竜太に近付く。
「このは、じい様がいつもやっている手入れは分かるか?」
「ポンポン!」
「そうだ。刀身を拭うのはオレがやるから、このははこれを頼むぞ」
「ん!」
「やる時は優しく、自分の力を少しずつ渡すようにな」
「ん!」
元気よく頷くこのはの頭を撫でてから拭い紙を手に取る。それを刀身に沿い、手を切らないように注意して刀身を拭っていく。
それが終わるとこのはが打ち粉で刀身を軽く叩く。壊れないように、優しく。
すると信じられないようなことが起きた。ヒビが塞がっていくのだ。打ち粉で叩かれたところから順に。
不思議な現象で刀身が元の形を取り戻すと竜太がまた紙で刀身を拭った。粉が拭い取られた刀身は先ほどよりも眩く輝いている。
それを見て竜太が頷き、そっと鞘に戻した。
「……よし。次は祈るんだ。
彼らに、おいでって、帰ってきてって」
「ん!」
このはに鞘にしまわれた刀が渡される。このはがそれを大事そうに、それでも力強く抱き締めた。
「かえってきて、やげんにぃにー……」
- Re: cross×world ( No.15 )
- 日時: 2015/11/02 12:49
- 名前: 柊 (ID: XHLJtWbQ)
ふわり。
「……桜?」
一つの桜が落ちる。それが床に触れる直前に光を放った。
あまりに眩しいその光に全員が目を覆う。故に、その瞬間が見られた者はいなかった。
光の中にぼんやりと人影があり、光がひくとともに人影がはっきり見えるようになっていく。
竜太と同い年くらいの少年。彼が人影の正体だ。陶器のように白く艶やかな肌。人形のように整った顔立ちは繊細な印象を植え付ける。彼が床に足を付けると同時に開かれた目は藤色をしていた。
あまりに美しく繊細な見た目に誰かが感嘆の息を吐いた。
「……ここ、は」
薄く開かれた口から聞こえたのは、見た目を裏切る低い声。だがそれは聞き心地が良いとさえ思える低音だった。
少年は数回瞬きをしてようやく竜太とこのは、電をさっかりと見る。
「お加減は如何ですか、薬研さん」
「ああ、悪くはない……むしろ良いくらいだ。
気分は、そうでもないが」
「……そう、ですか」
会話が途切れ、二人が黙ってしまう。
ほんの数秒、沈黙が流れた。その沈黙を破ったのは
「か、刀が人に!?」
キョウジュとミツオの驚愕に染まり切った声だった。
その声に驚いた薬研がそちらを見る。そして声の主を見て、歩み寄っていく。
「いっ、いったいどうなって……」
「自己紹介が遅れたな。俺は薬研藤四郎。
よろしく頼むぜ」
ふ、と薬研は口元に笑みを浮かべ、片手を差し出す。思わず、なのかどうかは分からないがまずはキョウジュがその手を握り、次にミツオが手を握った。
- Re: cross×world ( No.16 )
- 日時: 2015/11/02 12:54
- 名前: 柊 (ID: XHLJtWbQ)
「ってぇ! ボクはまず何で刀が人になったのかを聞きたいんですよ!」
「あ、ああ、それはワタシも!」
「それは、薬研さんはその短刀、“薬研藤四郎”の付喪神なんだ」
その短刀、と言われ、薬研の腰を見ればそこにはあの刀がある。が、にわかには信じがたい単語も捨て置けなかった。
「つ、付喪神!?」
「ああ。……そういえば、オレたちの世界の話をしていなかったな」
「竜太らしくないな」
「ええ、余裕がなかったので」
薬研にそう返して竜太は話し出す。
竜太の世界、2205年では時を越える技術が確立された。しかしその技術を悪用し、過去を、ひいては歴史を改変しようとする集団が現れた。
その集団は歴史修正主義者と呼ばれ、時の政府は歴史の修正を阻止するために物に宿った想いや心を目覚めさせる力を持つ者“審神者”を集め、様々な名刀たちに宿った思いを顕現し、過去に送り出した。竜太とこのはの祖父がその審神者に当たる。
そして過去に行き、歴史修正主義者と戦うのが刀剣男士と呼ばれる刀の付喪神だった。
同時に、ずいぶんと長い間海を掌握する深海棲艦、という正体不明の者がいた。その深海棲艦と戦うのはかつての艦の記憶を持った特殊な少女たち、艦娘。その艦娘の一人が、電なのだという。
「な、何だか信じがたい話ばかりですね……」
「世界が違うからな……仕方ないことだろう」
ミツオたちの戸惑いに竜太は想定内だ、と言わんばかりに一つ頷く。提督は常に宣伝され、世間にも認知されているが審神者は別だ。審神者はまるでゲームのような話。実際、自分も身内に審神者がいなければそんなバカな、と笑い飛ばしていたことだろう。
- Re: cross×world ( No.17 )
- 日時: 2016/01/07 01:31
- 名前: 柊 (ID: P/XU6MHR)
しかし、そんな竜太の想定とはまったく別の反応もあった。
「すげえ!」
「じゃあその残りの刀にもツクモガミってのがいるのか!?」
「見てみたいネ!」
タカオ、大地、マックス。他にものび太やジャイアン、熱斗、カイト、しんのすけと言った面々が目を輝かせている。
その勢いと目の輝きに思わず一歩引いて、ちらりとこのはを見た。このははまだまだやれるようで、むしろ彼らの反応を見てやる気を見せている。
「……辛くなったらすぐ言えよ」
「わかったー!」
元気よく手を挙げて返事をするこのはにこっそりため息を吐いてまた一枚拭い紙を取る。
次に取ったのは少し刃に厚みのある短刀だった。それを拭い紙で丁寧に拭う。それが終われば、このはが打ち粉で優しく刀身を叩いた。
ヒビは薬研の時と同じように塞がり、こちらもまた本来の姿を取り戻す。もう一度拭い紙で拭い、竜太がヒビがないかを見てから鞘に戻した。
短刀をこのはに渡し、このはがそれをぎゅう、と抱きしめる。
「あつしにぃに、もどってきて!」
そう言うとまたふわり、と桜が落ちた。それが輝きを放ち、光の中から人影が現れる。
次に現れたのは短めの黒髪をした少年だった。薬研よりは男らしい顔付きで、背も少しばかり高い。少年が床に足を付くとすっと目を開いた。
「な、なんだここは?」
「よぉ、厚。体調は悪くなさそうだな」
「薬研! ここは……それに、大将は?」
「……大将は、敵に捕まった」
「なっ……!?」
「すまん、ギリギリまで粘ったんだが……」
「……いや、責めるつもりはねえよ。それに大将のことだ。捕まってもきっと生きてるさ!」
厚、と呼ばれた少年は乱暴に薬研の髪を撫で回す。薬研はそれにおい、やめろ、と抵抗せずに抗議していた。
「厚さん、ご無事で何よりです」
「お、竜太か! このはと電も無事だったんだな!
……ところで」
厚がマリオたちに目を向けると、竜太は苦笑いしながら説明は皆様を顕現してから、と言った。
- Re: cross×world ( No.18 )
- 日時: 2015/11/02 15:07
- 名前: 柊 (ID: 5prxPZ/h)
次に手にしたのは最後の短刀。ヒビだらけのそれを見て、マリオがふともし人の姿だったらどうなっていたのだろう、と考えた。
が、すぐその考えを振り払う。どうしたって、薬研と厚ほどの少年がひどくぼろぼろになった姿しか想像できなかった。
一連の作業を終わらせた竜太が短刀をこのはに渡し、このははそれをまた抱きしめる。
「おきて、みだれねぇねっ」
ふわり、また降りる桜。
三度目の光の中から現れた姿に……全員が目を見開く。
そこにいたのは可憐な少女? だった。ふっくらとした淡い桃色の唇。白くきめ細やかな肌。金糸のような美しい金髪。開かれた目は宝石のように美しい青。
薬研も人形を思わせるほどに繊細で美しい姿だったが、この少女? もまた人形を思わせる美しい姿だった。
「あ、あれ、ここは?
ボク、あの変な生き物に……重傷にされたはず……」
「乱さん、どこか痛む場所はありますか?」
「あっ、竜太! ううん、どこも痛くないよ。
あ、このはも電ちゃんも薬研も厚も! そっか、ボクを直してくれたのはこのはなんだね。
ありがとうこのは!」
乱、と呼ばれた少女? がこのはを抱きしめるとこのはもぎゅー、と言って抱きしめ返す。
誰もが癒されるような光景だが、マリオは心中穏やかではない。
あの可憐で華奢な少女がどれだけひどい目に遭わされたのだろう。そう考えるだけで身体中にマグマが巡っているかのように怒りで熱くなった。
それに気付いたのは、乱だった。
「そこのおじさん、どうしたの?」
「あ……ご、ごめんね、怖がらせたかな?」
「ううん。もしかして、ボクの心配してくれたの?
嬉しいなぁ。でも安心して。
これでもボク、オ・ト・コ・ノ・コだからっ」
語尾にハートでも付きそうな甘い声。容姿も相まってとても可愛らしいが、衝撃の事実に竜太たち以外が固まった。
そして、驚きの悲鳴が響いたのは言うまでもないだろう。
- Re: cross×world ( No.19 )
- 日時: 2015/11/02 15:13
- 名前: 柊 (ID: sIzfjV5v)
「本当に乱ちゃんは可愛いわ〜。男の子だとは思えないくらいよ」
「肌も綺麗ですし……羨ましいです」
「髪もさらさらしているわね」
「えへへ、ありがとうっ。お姉さんたちも可愛いし綺麗だよ!」
……一通りの騒ぎのあと、女性陣を中心にあっさり溶け込んだ乱はピーチやゼルダ(あの時、電と一緒にいた女性だ)、凛とした美人のサムスと話している。
少し心配していたが、どうやらそれは無用のようだ。
次にこのはを見る。このはの小さな体では負担が大きい、とは思っていたが息が粗く、顔色も悪い。汗も少しかいていてあとの二振を顕現させるのはまず不可能だ。よくてあと一振。
「……このは、もうキツいだろ? 今日はここまでにしておこう」
「や! する!」
「だが一振が顕現できるかどうかだぞ」
「いっしょにやる!」
「は!?」
やるー! と言ってこのははそのまま二振を抱きしめた。竜太が止める暇もなく、力が込められる。
「うらしまにぃに、ぶしにぃにもどってきて!!」
「このはっ」
桜が二つ降って、また光を放つ。その中から二つの人影が現れ、光が引いていく。
一人は修行僧を思わせる格好をしており、足は高下駄を履いている。顔立ちも整っており、左目の下には小さく十字の傷があった。もう一人はその男よりだいぶ幼い、だが薬研たちよりは年上の背丈でふわりとした金髪を軽く頭頂部で纏めていた。
その二人が床に足が着いたと思った次の瞬間には膝を着いてしまっていた。二人は薬研たちとは違い、傷だらけだ。
「山伏さん、浦島さん!」
「ぐぅっ……竜太、か……」
「うぅ、主さん、主さん……!」
山伏、と呼ばれた男は苦しげに顔をしかめてはいるがしっかりと竜太を見ている。一方で浦島、と呼ばれた少年はぼろぼろと大粒の涙を溢していた。主さん、主さん、と呟きながら。
竜太がすぐに駆け寄ろうとするが、このはの体がぐらりと傾く。それを咄嗟に電が抱き抱えた。
「このはちゃん、このはちゃんっ!」
「っ、このは……!」
「え、あ……この、は?
このは、このはっ、大丈夫!?」
ようやくこのはたちの存在に気付いた浦島が、また涙を溢しながらこのはに駆け寄る。傷による痛みなど、まったく気にしていなかった。
その場は騒然となり、しばらく誰もが、落ち着くことなどできなかった。
第2話-END-
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