二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: cross×world【閲覧1000突破!】 ( No.120 )
- 日時: 2017/01/19 12:28
- 名前: 柊 (ID: /IDVKD3r)
第18話
廊下には多くの足音。それに混じって聞こえる嗚咽。五虎退はぎゅっと本体を握った。
五虎退は今後ろにいる人々と共に、人の体を持たされたまま閉じ込められていた。本体である短刀では、とてもではないが鉄格子を破壊することもできず、人々とただ怯え、絶望するだけの日を送っていた。
それが、今日突然終わった。ここを管理しているらしき赤髪の青年が鉄格子の鍵を開けて一言言ったのだ。
ーーお前らにもう用はない。去れ。
と。その言葉に警戒していた時に、青年の後ろから鳴狐、骨喰、長曽祢が現れたのだ。
彼曰く、護衛は必要だろう、と。
何故かは分からなかったが今なら分かる。……ここの敵は皆、自分たちをただで逃す気はないと。
そのために彼はわざわざ彼らを連れてきたのだろう。
三日月は逃げている途中で合流した。彼は別のところに閉じ込められていたが、ここまで来たのだと言っていて、マイペースな彼がずんずん進んでいくものだからそれを追いかけたらぐったりとした少年、サトシも助けた。
「大丈夫?」
ふと背後からかけられた声にはっとする。そちらを見れば心配そうな顔をした鳴狐がいて。
「はい、すみません」
「いえいえ、鳴狐は心配なのですよぅ! 鳴狐にとっては五虎退たちは人間にしてみれば甥のような存在ですから!」
鳴狐の肩に乗った小さな狐ーー通称お供はそう言う。鳴狐が空いた手でお供の頭を撫でた。
お供のふんわりとした毛並みは思わず手を伸ばしたくなる。
「……撫でる?」
「えっ!? あ……その……ここを、出てから撫でます。いいでしょうか?」
「構いませんとも! 五虎退の手つきは鳴狐に次いで心地よいですからなぁ!」
お供の言葉に五虎退は照れたように笑う。彼の足元では五匹の白い虎が鳴いていた。
お供が五匹に「そうでしょうそうでしょう! いやはやあの手つきはついつい眠りに誘われてしまいます!」と言っているから多分、五匹も五虎退の撫でる時の手つきが良いと褒めているのだろう。
微笑ましくてくすりと笑うと後ろから強い視線を感じた。何だろうと振り向けば、白い髪をオールバックにした色黒の男が五匹を見ていた。男の顔や体にはいくつもの痣がある。
この男はずっと閉じ込められていた時、見張りに噛み付かんばかりの反抗をして殴られていた。……そのためか、他の者が殴られることは一切なかった。
そういえば、この男は閉じ込められていた時にもじぃ、と五匹を見ていたような気がする。
「あの……もしよろしかったら、この子たち撫でますか?」
「! ええんか!」
「はい。この子たち、撫でられたり構われたりするのが好きなので」
「それなら、ここ出てから撫でさせてもらうわ。おおきにな」
「いえ」
風貌は少し怖いが、完全に悪い人間ではないようだ。今は少年のように笑みを浮かべている。
「……何か来る」
骨喰の言葉に人々は悲鳴を上げ、刀剣男士は本体を構える。鳴狐はサトシをそっと下ろし、本体を抜いた。
廊下は狭く、太刀は三日月のみ。それを分かっていたのか三日月は後ろに、代わりに五虎退が前線に立つ。
「…………ぁああ…………」
少し離れたところから声が聞こえる。それを耳にした全員が一層警戒心を強くしたが、五虎退はつい「あれ?」と口にした。
「どうした、五虎退」
「あ、長曽祢さん……この声、聞いたことあります」
「何だって?」
「はっきりとは分からないけど……ちょっと待ってください」
五虎退が耳を澄ます。それを邪魔しないように全員が何とか静かにした。
遠くから聞こえるのは悲鳴のようだ。一人は成人男性、一人は子どもか。残り二人の声は……。
「え、りゅ、竜太くんの声!?」
「竜太だと?」
「薬研兄さんの声もします!」
その声とほぼ同時に、四人の姿が見える。と、また同時に竜太と薬研、一人の男と一人の子どもがこちらへ放り投げられた。
「うわぁあっ!?」
「ひぃいいっ!!」
「おっと」
「おおー」
竜太を骨喰が、男ーールイージを長曽祢が受け止める。薬研は自ら体制を立て直して着地し、子どもーーしんのすけを受け止めた。
「ひぃいいい……!」
「大丈夫か?」
「え、あ、皆さん!?」
「ど、どうして、竜太くんたちが!?」
「あ、説明させていただくと」
「こここ、怖かったぁあああああ!!」
「……すみません、ルイージさんが落ち着くまで待っていただけますか……」
「……は、はい」
- Re: cross×world【閲覧1000突破!】 ( No.121 )
- 日時: 2017/01/19 12:27
- 名前: 柊 (ID: /IDVKD3r)
機械のアームがファイアとヨッシー、トネールを廊下に投げる。ファイアは尻餅をついたがヨッシーとトネールはあっさりと着地した。
「いたた……」
「ファイアくん大丈夫ですか〜?」
「何とか……ゼニガメとフシギソウは……よし、大丈夫そう」
「トネールは大丈夫ですか〜?」
ヨッシーの問いにトネールは頷く。見た目にそぐわない冷静さにヨッシーは「すごいです〜」とのんびり口にしながら周りを見渡した。
薄暗い廊下は冷たい鉄でできている。一歩歩けば足音が響いた。敵が近づいてきてもまず気付けるがこちらの足音で敵にバレてしまう可能性も充分にある。移動には気を付けたいところだ。
「それにしても、さっきの機械は何がしたかったんでしょう〜?」
「そうですね……敵の前に放り出されるかと思ったんですけど、そうじゃないみたいだし」
敵の足音どころか、気配すらしない。それについ首を傾げると、奥の方から何かの鳴き声がした。それは苦しんでいるようにも聞こえる。
「な、何だろう……」
「今の鳴き声は、ポケモンでしょうか〜?」
「ポケモン!? あっ、トネール!?」
ヨッシーの言葉が終わるとほぼ同時にトネールがそちらの方へ駆け出した。あまりに突然だったためにファイアとヨッシーがトネールを止めることは叶わない。
それでもすぐにファイアとヨッシーはトネールを追いかけた。
- Re: cross×world【閲覧1000突破!】 ( No.122 )
- 日時: 2017/01/19 12:32
- 名前: 柊 (ID: /IDVKD3r)
長い廊下を走り、しばらく。ファイアたちの視界に入ってきたのはぐったりとした鳥ポケモン、ピジョットとそのピジョットの前で膝をつきながらもピジョットを守るカイリキー、そしてカイリキーらを攻撃するドガースとマタドガスの軍団だった。
カイリキーとピジョットの周りには毒ガスが撒かれていて、不用意に近付けば自分たちも瞬く間にその毒ガスの餌食になることは目に見えて分かった。それらを吹き飛ばせそうな翼を持つリザードンは中央館に置いてきている。
ならば、近付かなければいい。
「フシギソウ、ゼニガメ!」
繰り出したフシギソウとゼニガメは、やる気満々だと言わんばかりの目をしている。
「フシギソウはつるのむちでピジョットとカイリキーをこっちに! ゼニガメはみずでっぽうでドガースとマタドガスを追い払うんだ!」
ファイアの指示を聞き終わると同時に二匹は動く。大きな蕾と葉の間から蔓が伸び、その蔓はあっという間にカイリキーとピジョットを捕まえてファイアたちの方へと引き寄せた。
ゼニガメは口から勢いのある水を噴射し、ドガースとマタドガスたちを攻撃する。その攻撃は的確にドガースらに当たり、威力に恐れをなしたドガースらはそそくさと逃げていった。
それでもこちらへ突進してくるマタドガスに対してはトネールが十万ボルトを放ち、倒していく。
「大丈夫ですか〜?」
「ちょっと待ってて、今毒消しを使うから!」
ファイアがリュックから毒消しを取り出し、カイリキーとピジョットに向けて噴射した。毒が消えていくのか二匹の顔色はゆっくりとではあるが良くなっていく。しかし、傷もあってか動くことはままならないようだった。
ふと、ファイアはあることに気が付く。この二匹はどうやらトレーナーがいるらしい、と。
ポケモンは人間が作った道具を自分で使うことができない。仮にトレーナーが今ファイアが使った毒消しを持たせても何の意味もないのだ。だから野生のポケモンに初めて毒消しなどを見せると警戒され、ひどい時には攻撃までされる。
だがこの二匹は警戒するどころかそれを分かっているようでおとなしかった。攻撃する体力がなかったのかもしれないがそれでもカイリキーならば多少の身じろぎくらいはするはずだ。
もしかすると、トレーナーはここに囚われているのかもしれない。この二匹は協力してここに乗り込んだが、あのドガースたちにやられていたのかもしれない。
そう考えたファイアはまず外に連れ出そうと考える。全員、ではないかもしれないがあのニュースに映っていた人たちの中にこの二匹のトレーナーがいるかもしれないのだ。
「あの……」
「このポケモンたちを連れ出したいんですね〜、了解です〜」
ヨッシーの言葉にファイアはほ、と息を吐いた。次にトネールを見ればトネールも頷く。
カイリキーもピジョットもこの中で運べるのはフシギソウくらいだ。フシギソウに頼めるか? とファイアが聞けばフシギソウは頷いて二匹を蔓で持ち上げる。
それを見届けたファイアは行こう、と声をかける。途中で脱走しているらしき集団と会えればいいのだが。
- Re: cross×world【閲覧1000突破!】 ( No.123 )
- 日時: 2017/01/19 12:37
- 名前: 柊 (ID: /IDVKD3r)
カイト、ナガレ、熱斗が廊下に放り出される。突然のことで受け身を取れなかった三人はそのまま床に落とされた。
「いってぇー!! ケツ割れたー!!」
「いや、カイト。それはむしろ普通だよ……」
「にしても、ここどこだ?」
熱斗の言葉に二人は辺りを見渡す。冷たいほど無機質な廊下は彼らの前後に伸びている。
戻り道を見ればその先が見えない。逆に奥に進める道を見ればほんのりとではあるが光が見えた。
それを認識した時、ザザッというノイズ音が聞こえ、その直後に男の声が響く。
『この先に貴様らの敵がいる。行くがいい』
それだけ告げて、後は何も聞こえなくなった。
「敵……ってことは、真亜空軍のやつらだな!?」
「それなら、倒しに行こうぜ! ついでに、後残ってるやつらがいるか確認しないとな!」
『そうだね、熱斗くん』
カイト、熱斗が言い、ロックマンもそれに同意する。明らかに罠、それくらいは分かっているのだろう。けれど、彼らの足は前に進んでいった。
さほど歩かずに光の所まで着く。そこは予想以上に広い部屋。しかし中は照明器具以外何もなくひどく殺風景だ。前後左右全ては白一色に染められたその部屋の中心に、彼はいた。右手には、大きな剣が握られている。
くるりと振り向いた彼は、口を開く。
「来たか。思っていたよりも早かった」
「お前は……?」
「真亜空軍幹部、この要塞を治めるテオだ」
真亜空軍。それを聞いて全員が身構える。
「まさか、ここまで馬鹿正直に正面から来るとな」
「どういうことだ!?」
「……おかしいと思わないのか? 突如として、平穏な街の外れにここまで大きな建物ができるなんて。それも一晩で。
その上、そんなに都合良くお前らの仲間の道具一つで扉が開けると思うのか?」
「何が言いたい……」
ナガレは薄々感付いていた。テオが、何を言いたいのか。
「お前たちはここに誘き出されたんだ。タブー様がこのために造り出したここへな」
「……じゃあ、あの人たちも、ぼくたちを誘き出すために!?」
「……さあ、な」
「あのアームもお前の仕業か!!」
熱斗がそう怒鳴るように言う。
しかし、テオはいきなり何を言っているのか、と言わんばかりの顔をした。
「アーム? 何の話だ?」
「……知らないのか?」
「知らないも何も、ここにはそんなものはない。……大方、訳の分からんことを言って混乱させるつもりだったんだろうが、そうはいかないぞ」
ナガレはテオを注意深く観察する。だが、彼は本当に知らないらしく、嘘を吐いているとは思えない。
テオは自分を幹部だと言っていた。ここを治める、とも。……その幹部が、知らないと言っている。おそらく嘘ではない。だとすると。
あれは、勝手に付けられた?
だとしたら一体何のためにあれは付けられた?
そういえば先ほど、男の声がした。……もしかするとその男はテオを引きずり落としたいが故にあれを勝手に取り付け、自分たちと対峙させたのかもしれない。
「お前らは確か、戦うために身に纏う物があったな。そっちのはクロスフュージョン、だったか。
生身のお前らじゃあ、俺の相手にならない」
テオの言葉に罠かとも思ったが、生身では確かにまだ不安が多い。
カイトはヒーロー着、「エンター・ザ・プライズ」を、ナガレは「ジャスティス・ダラー」を身に付ける。熱斗はあるチップを使い、クロスフュージョンをすると、熱斗の姿がロックマンのものへと変化した。
「行くぞ」
テオは大きな剣を持ち、こちらへと走る。一気に距離を詰めたテオが剣を振り上げた……。
第18話-END-
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