二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: cross×world ( No.2 )
日時: 2015/09/19 23:33
名前: 柊 (ID: YrPoXloI)

プロローグ
木々がざわめく森。その森を駆ける、1人の少年の姿があった。

少年は白い軍服に身を包み、足元は黒いミリタリーブーツで覆っている。ベルトには数振の刀が刺さり、背中には布の塊と一緒に一振の太刀が縛り付けてあった。成長すれば男前と称されるほどになるであろう整った顔だけでなく身体中に複数の切り傷があり、どれも血が滲んでいた。中には一筋の赤い線を描くものもある。

少年の背の小さな布の塊の隙間から見えるのは少年よりずっと幼い子どもの顔だった。すやすやと穏やかに眠る顔は愛らしいものだが、よく見れば先ほどまで泣いていたのか目元が赤く腫れている。

少し振り向けば、少年の後ろからは異形の者どもが彼を追っていた。一見すれば愛らしいと思えなくもない姿をした者がいれば恐ろしい、不気味としか表現できないような者もいる。中には武器を持つ者までいた。

傷だらけで子どもを背負った少年に、勝機など万に一つもない。今にも動かなくなりそうな足を無理やり前に出して少年は走った。そうしなければ自分どころか眠る子どもや、刀までもが危なかった。

必死で走る少年の目の前の木々が徐々になくなっていく。そして、立ち止まってしまった。目の前には、崖。その下は岩がいくつも生えた海。完全な行き止まりだった。

振り向けば奴らは遊ぶかのようにじり、じり、と距離を詰めている。少年の口が無意識か、くそ、と毒づいた。少年は少しだけ躊躇ちゅうちょした仕草を見せ、太刀とともに子どもを正面で抱き抱えると崖へ向かって走り出す。人間が宙を歩けるはずもなく、少年は崖から先へと踏み出した瞬間落ちていった。

少年は慌てることなく、海を見つめる。水面との距離が近くなり、太刀と子どもを抱える手に力を込めた。目の前に広がるのは、青だけのはずだった。

突然、少年たちを呑み込むかのように黒い穴が広がった。少年にとっては予想外だったのだろう、慌てる表情を見せるが空中で取れる行動などたかが知れている。

彼らはなす術もなく、穴に呑み込まれた。
プロローグ-END-
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