二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ポケモン 風変わりな旅道中 ( No.7 )
- 日時: 2016/08/08 12:57
- 名前: アーリア ◆IYbi.dCFgs (ID: 3qG9h5d1)
吹っ飛ばされた悪党はポチエナと共に尻尾を巻いて森の方へ逃げていった。
すぐさま後を追う事もできたのだが、「白衣の男」に止められる。
「邪魔すんなオッサン! あの野郎逃がしちまうぞ!」
やや殺気立った声でカインは白衣の男を怒鳴りつける。
その勢いに押されそうになったが、彼はそれ以上にオッサン扱いされた事にショックを受けたようだ。
「お、オッサン……!? あ、いや、そうじゃなくて」
しかし、要点がそこでない事にすぐさま気づき、咳払いをして言葉を改める。
「駄目だよ君! あの森には野生のポケモンがたくさんいるんだ、危険だよ!」
「あ? 心配ねぇよ。こいつら戦えるみたいだしな」
そう言い切るカインの視線の先には、例のポケモン三体。
スーツケースの持ち主、ひいては彼ら三体の持ち主である白衣の男は首を振った。
「駄目だよ!その子たちは君のポケモンじゃないでしょ!?」
あ、言われてみればそうだったな。
カインはすっかり忘れていたと後ろ頭をかいたのだった。
「それにしても、さっきはありがとう。大切な資料を奪われるところだったよ」
資料をすべて拾い終えると、スーツケースにまとめたそれをしまいながら白衣の男は言った。
三匹のポケモンを交互に撫でていたカインは、そちらに顔を向けたままぶっきらぼうに返事をする。
「別に礼なんかいらねえよ。戦ったのはオッサンのポケモン(こいつら)だし、結局犯人には逃げられちまったしな」
そうしてため息。なんだかバトルをしていた時と違って、今は意気消沈、といったテンションだ。
カインは自分の中で踏ん切りをつけると、背伸びをしながら立ち上がった。
「盗られてたもん取り返せてよかったな。いい時間つぶしになったぜ」
「時間つぶし?」
白衣の男が首を傾げたちょうどその時、フレンドリィショップの方から誰かが現れた。
「やぁ、お待たせ。注文通りポケモンフード四袋ね」
先ほどの店長だ。ポケモンフードを四袋ほど積んだ台車を押しながら、カインの傍までやってきた。
カインは「どうも」と短く言葉を返すと、さらに母から預かっていた封筒を渡した。
店長は中身を確認すると、愛想良くカインに微笑みかける。
「はい、間違いなくちょうど貰ったよ」
店長はカインに領収書を手渡すと、台車を置いてフレンドリィショップの中へと消えていった。
カインは彼を見送ると、やれやれと言わんばかりに再びため息。そして白衣の男の方に向き直った。
「んじゃーな、オッサン。俺は家に帰る」
そう言ってカインは三匹分のボールを渡す。白衣の男が確かに受け取った事を確認すると、カインは台車に手をかけてカナギタウンへ引き返そうと……するのだが。
「ウキッ」
一歩足を出したところで、あの”赤いポケモン”が足にまとわりつきカインの動きを封じてしまった。
カインがそちらに視線を向けると、寂しそうな顔をする赤いポケモン。
その様子を見て、白衣の男が困ったように口を開く。
「どうしたんだい、”ヒコザル”?」
「ヒコザル?」
そうか、こいつヒコザルって言うのか。
カインは足にくっついている赤いポケモン——ヒコザルをジッと見つめる。
そしてふと思いついたように口を開いた。
「お前、俺と一緒に来るか?」
「えっ!?」
驚きの声を上げたのは白衣の男だったが、目を丸くしたのはヒコザルも同じだった。
ヒコザルもそれを聞くや否や、カインの周りを嬉しそうに飛び回ったのである。
白衣の男はあっけにとられていたが、それでもカインの言葉を否定しようとはしなかった。
カインはてっきり「駄目だよ!」と注意されるものと思っていたので、男の反応が少々意外だった。
「止めねえのか?おっさん。マジで連れて帰るぜ?」
「えぇ……うーん、でも……う〜ん?」
カインの言葉は嘘ではないし、決して軽い気持ちで言った言葉ではなかった。
あの悪党と戦った時、カインはヒコザルを見て思ったのだ。「コイツだ」と。
人との出会いでも同じだ、初めてあった人でも運命的なものを感じる時はある。それと同じだ。
白衣の男はというとヒコザルの様子を見て本気で悩んでいるようだった。
少々の時間ブツブツ独り言を呟いていたが、白衣の男はついにため息をついた。
「僕的にはね、好きな人と一緒にいられるのがポケモンにとって一番の幸せだと思うんだ」
「はぁ」
「で、この子(ヒコザル)はどうやら君の事が気に入ったらしくてね。君には恩があるし、ヒコザルを譲ってあげてもいいんだ。ただ……」
ただ? カインが男に聞き返すと、男は長い長いため息をついて頭を抱えたまま蹲ってしまった。
そして、愚痴を吐き出すような勢いで男は話し出す。
「今日ね、知り合いの息子さんにポケモンを譲るつもりだったんだ。もちろん三匹ともじゃないよ? 三匹の中から一匹選ばせてあげようと思ってたんだよ、息子さん自分のポケモンを持ってないみたいだしさ。それに、ポケモンにも人にもお互い相性があるからね。どうせなら、一番相性のいいポケモンをプレゼントしたいんだ。でも、君に一匹譲っちゃうとなると……あぁ、どうしよう。でも、ポケモンの幸せを考えれば……ああぁ、リーフちゃんになんて言えばいいんだろう!? 僕はどうするべきなんだああああぁッ!」
そんな感じで一人苦悶する男。カインとポケモン達はその様子を遠巻きに見ていた。
と、カインがあるとこに気付く。
「オッサン今、”リーフ”っつったか?」
「? う、うん」
「ブリーダーの”リーフ”なら俺の母さんだ」
えっ?
その言葉を聞いて、白衣の男は顔を上げた。
そして、ここ一番の衝撃といった様子で驚きの表情を浮かべたのだった。
>>011
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カインのお母さんの名前はリーフです。