二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: ポケモン 風変わりな旅道中 ( No.11 )
日時: 2016/08/08 12:59
名前: アーリア ◆IYbi.dCFgs (ID: 3qG9h5d1)

 遊歩道を渡り大きく森を迂回し、元来た道をほどなく歩けばカナギタウンだ。
 カインが家に戻った頃、カインの母・リーフはちょうどポケモンを放し飼いにしている巨大なゲージ内の手入れをしているところだった。どうやら花を植え替えている最中らしい。カインが「ただいま」と声を掛けると、しゃがみ込んでいたリーフはこちらを向き笑顔を浮かべる。そして、カインの肩の上にいるポケモン、ヒコザルを見てリーフは驚きの声を上げた。
「あら、おかえりなさい! 可愛いポケモンを連れてるのね、どうしたの——」
 と、言いかけて。”カインの後ろをついてきていた白衣の男”をその目に捉えると、リーフは「あぁなんだ」と一人納得したように頷き、スコップを持ったまま白衣の男にお辞儀をした。

「お久しぶりです、相変わらずお元気そうですね」

 リーフがそう言っているのを聞いて、カインは白衣の男の方を見た。
 痩せこけている上に血色が悪い……元気そう、か?カインは首を傾げる。
 そんなカインをよそに、リーフと白衣の男は談笑を始める。
「リーフちゃんも元気そうだね。ゴメンね、早めにお邪魔しちゃって」
「いいんですよ。息子がポケモンと一緒ということは、もうすでにポケモンは渡してあるんですね」
「えぇ。ヒコザルも彼の事が気に入ったみたいでして」
「あら、そうだったのね。フフ! それは良かったです。本当に」
 本当に嬉しそうに笑うリーフ。
 そして、彼女はカインの方に視線を向けると、白衣の男の前へやってくるように催促した。カインはそれに従う。カインを男の前に連れてくると、リーフは小さく咳ばらいをした。

「改めて紹介しますね、息子のカインです」

 そういえば自己紹介をしていなかった。
 カインは男にお辞儀をする。すると、今度はカインにリーフは言った。

「カイン、この方はシラカシ博士。ポケモンについて研究している方なのよ」
「へぇ、そりゃどー……シラカシ博士!?」

 シラカシ博士——アルト地方に研究所を構えるポケモン研究者だ、もちろんその名前はカインも知っている。アルト地方ではその名前を知らない人はそういないだろう、それほどの有名人がなぜこんなところにいるのか。そして、なぜ自分の母とこんなにも親しげなのか。カインはそれが不可解でならなかった。そんなカインの心境を察したのか、白衣の男、もといシラカシ博士は、どこか懐かしむように口を開く。

「僕が昔勤めていた会社がね、事件に巻き込まれた事があるんだ。その時——君と同じ年くらいだったかな?リーフちゃん達に助けられてね」
「えぇ、そうでしたね。懐かしいわねー、あの頃は”ハナちゃん”達が傍にいてくれたから身の危険なんてこれっぽっちも考えもしなかったわ。昔は私もポケモン達と各地を旅したものよ」

 ブリーダーの母が元々はポケモントレーナーだったとは。
 正直意外だ、温厚そうな母にもそんな時代があったのか。
 カインは目を丸くしてリーフの方を見た。その視線に気づいたのか、さらにシラカシ博士が「おやおや」と言葉を続ける。

「カイン君、知らないのかい?リーフちゃんはとても腕のいいトレーナーなんだよ!なんたって彼女は——」
「もうっ! シラカシ博士ったら、私を買いかぶり過ぎですよ!」

 フフフ、と笑いながら博士の背中をバシバシと叩くリーフ。どうやら照れているらしい。
 博士は「痛い痛い」と困ったように笑っていた。
 若干置いてけぼりなカインとヒコザル。





 コホン。と、リーフが咳ばらいをした。
 談笑もほどほどに、改まってリーフと博士がカインに向き直る。
 突然改まって何事かとカインが首を傾げると、リーフがカインにあるものを手渡した。
 手の中に納まる四角い薄型のタブレット端末だ。
「これは?」
「ポケモンマルチナビよ。ここを押すと電源がついて……ほら!」
 リーフが側面のスイッチを押すと、画面に明かりが灯る。それを覗き込むと、いくつかアイコンが表示されていた。リーフが慣れた手つきでその一つをタッチすると、アルト地方の地図が表示される。

「おぉ……すげえな」
「これだけじゃないのよ?ここを選べば通話もできるし、電話番号も登録できるの。あとラジオも聞けたんじゃないかしらね」
 感嘆の声を漏らすカインに、リーフは手際よく使い方を教える。
 一通りの説明を受けたのち、カインはきょとんとした表情を浮かべた。
「で、何で今俺にこんなもん渡すんだ?」
 すると今度はリーフがきょとんとした表情を浮かべる。


「何でって? 旅に出る子供を手ぶらで見送るわけにもいかないでしょ」
「あー、なるほど……えっ?”旅”?」


 今リーフはサラッと言ってみせたが、どう考えても聞き流せる話じゃなかった。
 突然のこと過ぎてカインがあっけにとられていると、リーフはうっとりした表情で語りだす。

「そう、旅よ旅。年頃の男の子がこんなところでくすぶってるのはもったいないと思って。それに、カインならきっといいトレーナーになれると思うのよ」

 それを聞いてウンウンと頷く博士。
 カインは博士とリーフの顔を交互に見(み)、次にヒコザルに視線を合わせてから、カインは目を輝かせながら再びリーフの方を向いた。
「マジでいいのかよ!?」
「えぇ、もちろん。行ってきなさい!」
 リーフの言葉を聞き、あっけにとられつつも、カインは感動に体を震わせる。
「あ……ありがとな、母さん。でも、本当にいいのか?」 
「いいのいいの。私はね、カインに自分のやりたい事をめいいっぱいやってほしいの」
 フフ、と笑うリーフ。
 どこか懐かしむような表情でカインを見つめると、リーフは「さてと」という言葉と共に手を叩いた。

>>012
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前回ほど見直しをしてないので誤字脱字あればすいませんです。
次の話でたぶん序章の終わりです。そのあと短期でオリキャラの募集をしたいと思います(`・ω・´)シャキーン