二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: ポケモン 風変わりな旅道中 ( No.28 )
日時: 2016/08/08 13:25
名前: アーリア ◆IYbi.dCFgs (ID: 3qG9h5d1)

「何だ!?」
 つんざく轟音に誰かが驚きの声を上げた。カインたちが音の方へ視線を向けると……何と、囲まれていたはずのポケモン達が連携して男たちのポケモンと戦っているるではないか。とても先ほどまで震えていたとは思えない勇ましい姿に、リーフを除くその場にいた全員が衝撃を受けて立ち尽くしていた。一番最初に我に戻ったのは糸目の男で、彼は鋭く声を上げる。
「何事です!?」
「そ、それが、コイツ等が突然攻撃を!」
 男の言葉に応える例の黒い男、もといポチエナの男。そう言っている間にも、彼のポチエナは3匹のエモンガの攻撃を受けていた。エモンガたちは列を成し、先頭がポチエナに攻撃すると列の後ろへ飛ぶ。目にも止まらぬ速さでその一連の動作を繰り返すと、とどめと言わんばかりにポチエナを宙へかっさらう。そして数秒後、そのままポチエナを地面に叩きつけてしまった! ポチエナは地面に倒れた状態で完全にのびていた。
「ポッ、ポチエナアアア!?」
 ポチエナの男は悲鳴を上げると、慌ててポチエナをボールに戻す。
 エモンガたちは『やったね!』と言わんばかりに互いにハイタッチしていた。

 どうやら、カインが見る限りでは他の団員も突然襲い掛かってきたポケモン達に苦戦を強いられているようだった。その光景を目の当たりにした糸目の男は頭を抱えて首を振る。
「貴女……ただのブリーダーじゃありませんね」
「えぇ。腕にはそこそこ自信があるわ」
 ふふん、と強気な笑みを浮かべて見せるリーフ。
 その笑みにはどこかカインに共通したものがあった。


 ゲージのポケモン達が無事であることを確認したカイン、そして博士は胸をなで下ろす。
 そして、カインは明らかな敵意を含んだ刺々しい目つきで糸目の男を睨みつけた。
「へっ。テメェ等みてえな野郎に資料は渡さねえ」
 どこか楽しそうな口調に、確かに紛れた怒気。
 そんなカインにリーフは耳打ちをする。

「カイン、あのポケモンはサボネアっていうポケモンが進化した姿なの」
「”進化”……」
 リーフの言葉を繰り返すカイン。トレーナーでなかったカインでもポケモンの”進化”については知っている。
 ポケモンは一定の条件を満たすことで変態し、新しい種類のポケモンとなる。一般的には、そのポケモンの能力が限界まで達すると、体がポケモンの能力に合わせて変態されるとされる。この事をポケモンの”進化”というのだ。中には特殊な”進化”をするポケモンもいるが、ポケモンにとって進化とは強さの証だ。

 このノクタスがサボネアというポケモンの進化した姿となれば、悔しいが先ほど男が「ヒコザルでは相手にならない」と言っていたのにも頷ける。
 しかし、だからといってそう簡単には諦めらめるわけにもいかない。
 S.W団は博士の研究資料を狙っているのだ、それを奪わせるわけにはいかない。そう言いたげにリーフの方をじっと見つめると、彼女は「分かってるわよ」とやや乱暴にカインの肩を叩く。

「カインは好きなように戦わせてみて? で、ヒコザルがどんな戦い方ができるのか見極めるの」

 ポケモンはトレーナーの指示に従って戦う。ゆえに、トレーナーがポケモンの能力を見極め、状況に応じて的確な指示を出す必要があるのだと言う。
 成程、とカインが頷くと、二人は対峙する糸目の男を睨んだ。男はと言えば余裕しゃくしゃく、といった雰囲気で待ち構えていた。男は二人の様子を見て取ると、口を緩める。
「話は済みましたか?」
「あら、態々待っててくださるなんて親切なのね」
 男の言葉に、ニコリと笑って皮肉に返すリーフ。その言葉に男は首を振った。
「なんのなんの、こちらも都合が良かったまでです。——さて」
 ニコニコ笑いながら頷く男。そしてカインの方に顔を向けると、フッと絶対零度に凍てついた表情に変えた。


「どうも嫌な予感がするので、貴方達はここで潰しておきましょうか」


 そして、その言葉を起点に、今まで案山子のように立ち尽くしていたノクタスが突然動き出した!
 


 ノクタスが腕を前に突き出すと、体から生えていた棘が一斉に発射された。それは四方八方へはじけ飛び、アメモースやヒコザル、そしてカイン達に襲いかかる! カインは一瞬ギョッとしたが、慌てて声を上げた。
「ヒコザル! 燃やせ!」
「ウキャッ!」
 任せろ! そう言わんばかりにヒコザルは返事をすると、思い切り息を吸い込んだ。
 しかし、ヒコザルの”ひのこ”では棘を落とし切れない! そこでリーフは指示を出す。
「アメモース! ”風起こし”!」
 リーフの言葉でアメモースは4本の翼を勢いよく回転させた。
 すると猛烈な風が起こり、ヒコザルがたった今吐き出した炎を巻き込んだ風は、強大な炎の渦へと変貌する!
 それは放たれた棘をすべて巻き込み燃やし尽くし、勢いを保ったままノクタスへと直進した。

 ノクタスは炎の渦を見つめたままその場を動かなかった。代わりに背後の男の方にチラリと視線を移す。男も同じく炎の渦をじっくりと観察し、そしてノクタスの直前まで迫った時に声を張り上げた。
「”砂嵐”!」
 男の言葉に、ノクタスは目を見開いて体を屈めた。そしてノクタスが薙ぎ払うように腕を振るうと、突如ノクタスを起点に砂の渦が巻き起こる! 砂嵐は炎の渦とぶつかり炎を打ち消してゆく。風は砂嵐をかき乱し、猛烈な勢いとなった砂嵐がポケモン達の視界を奪った!
「うわっ!? 大丈夫かヒコザル!?」
 カインはとっさに顔を覆い難を逃れていた。
「ウキャ〜……」
 ヒコザルは目をゴシゴシと擦ると、目をつむったままカインの方に顔を向け、困ったように鳴き声を上げた。

>>029
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糸目「モブでもやるときはやりますよ」
ポチエナの男「さすが俺たちの班長だぜ!」