二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ポケモン 風変わりな旅道中 ( No.29 )
- 日時: 2016/08/08 13:26
- 名前: アーリア ◆IYbi.dCFgs (ID: 3qG9h5d1)
「やるわねえ、あのトレーナー!」
そう言ってひゅう、と口笛を吹いたのはリーフだ。猛然と吹きすさぶ砂嵐を前にしても、彼女は果てしなく暢気だった。そんなリーフにカインは叫ぶ。
「母さん! どーすんだこれ、悠長に構えてる場合じゃねえぞ!?」
あいにくカインはポケモンバトルは初心者なので、”砂嵐”という技が果たしてどれほどの威力で、どれほどの範囲で繰り出される技なのかは知らなかった。しかし、それでもこの砂嵐が通常以上に激しいものである事だけは分かる!! そして、おそらくその原因はアメモースの風起こしだろう、風起こしによって砂嵐が激しくかき乱されたと推測できる。流石にリーフもこの展開は予測していなかったようで、やや困惑した様子で笑っていた。
さて、ここからどうしたものか。
カインは思考する。ヒコザルはどうやらこの「砂嵐」が苦手なようだ、長い間この砂嵐の中に晒し続けるのは避けた方がいいだろう。早急にケリをつける必要があるのだが——
(? おかしい)
先ほどから、ノクタスの姿が見えない。砂嵐の中を必死に探すが、どこにも……
と、その時だ!
「……」
カインがキョロキョロとあたりを見渡していると、突然目の前に人影が現れた!
ぬらりと現れた人影は砂嵐の向こうから腕を伸ばし、カインの喉を捉える!
「がッ!?」
緑の腕、黒い空洞からこちらを見据える黄色の瞳。ノクタスだ!
(なん……だと、目の前にいたのに気づかなかった!?)
カインは突然の出来事に混乱する。それゆえ抵抗もできずに、首根っこを掴んだままノクタスに体ごと持ち上げられてしまった。喉は締め上げられ、まるで声が出ない。助けを求めようにも、口からこぼれるのは声にならない嗚咽。
「ウキャーッ!!」
そんなカインを救ったのはヒコザルだった。ヒコザルはカインの喉を絞めるノクタスの腕に掴みかかると、ノクタスの顔面に思い切り蹴りを繰り出す。ヒコザルの攻撃にノクタスはたまらず手を放した。ヒコザルは追い打ちと言わんばかりに炎を吐き出すと、ノクタスは再び砂嵐の中に姿を隠し、カイン達の視界から完全に消えてしまった。
ノクタスから解放されたカインはその場に手をつき激しく咳込む。
「カイン!? 大丈夫?」
そこに駆け寄るリーフ、先ほどのヒコザルの声でノクタスの奇襲に気付いたようだ。
蹲るカインの背中を心配そうに擦りながら、少々バトルばかりに気を取られていたと頭を下げる。しかし、カインは「今のは相手に気付けなかった自分の落ち度だ」と頭を横に振った。そして、息を整えながら言葉を続ける。
「野郎、いきなり目の前に現れやがった。首を掴まれるまで気付かなかった」
リーフに支えられつつ立ち上がったカインは、忌々しそうにそう呟き砂嵐の中を睨んだ。
すると突然、背後から声。
「砂嵐にノクタスの組み合わせは厄介だね。ノクタスは砂に隠れるのが得意なんだ」
「うおっ!? 博士、いたのかよ!」
今まで気配を消していた博士に驚きの声を上げるカイン。
博士はカインに「ずっといたよ!?」と言葉を返しつつ咳払いをした。
「ノクタスは”砂隠れ”と呼ばれる特性を持つんだ。砂嵐の中を自由に動き、身を隠す。そうやって獲物が弱るのを待つのさ」
「洒落にならねえ……」
カインは博士の恐ろしい説明に表情を歪める。
まぁつまりだ、状況的にも相手に分があるという事だ。厄介この上ない。
強い上に、この砂嵐の中にノクタスの姿を捉える事すら困難となると……
「どうしようもねえな」
悔しそうにカインがポツリと呟く。
博士は首を振った。
「諦めるのは早いよ。相手が”砂嵐を呼び寄せる特性のポケモン”ならどうにもならない所だけど、ノクタスは砂嵐を完全に操れるわけじゃない。じきに砂嵐もやむだろうね。けど——」
「相手はそれを待たせてくれねえだろうな」
「うん、まぁそうなんだけどね」
博士はウーンと唸る。そんな博士の姿を見て、カインははたと思いだす。
「つーか博士、アンタの例のポケモンでどうにかならねーのかよ。四の五の言ってる状況じゃなくなったろ」
そうだ、そもそも博士はS.W団を刺激したくない、という理由ポケモンを出し渋っていたのだ。流石にこの状況で同じことは言えないだろう。カインはそう言ってポケモンを出すよう促すが、それでも博士は首を縦には振らなかった。
「フーディンの事だよね? いや、出したいのは山々なんだけど、無理なんだ」
「なんでだよ」
「ポケモンの”タイプ”は知っているね? 水タイプが炎タイプに強く、草タイプが水タイプに強く、炎タイプが草タイプに強いように、タイプによって様々な相性がある」
そのタイプ相性の中でも最悪なのが”攻撃が一切通用しない相性がある”という点だ。例えば地面タイプに電気タイプ、鋼タイプに毒タイプの攻撃は通用しないし、ノーマルタイプとゴーストタイプに至ってはお互いに一切の攻撃が通用しない。
博士は少し困った様にそう説明した。
その話を聞き、カインは察する。
「つまりあのノクタス?とフーディンは相性が悪いのか?」
「その通り。フーディンはエスパータイプで、ノクタスは草・悪タイプ。悪タイプにはエスパータイプの攻撃が一切通用しないんだ」
「まじかよ」
「その上、エスパータイプの弱点はまさに悪タイプの攻撃なんだ。フーディンは攻撃を受けるのは得意じゃないし……」
分が悪すぎるよ。博士はそう言うと、悔しそうに俯く。
流石のカインも、それを聞いた後にポケモンを出せとは言える筈もなかった。
本格的に打つ手なし、か。カインは困った様に後ろ頭をかく。
リーフも顎に手を当て考えている様子だが、口から出るのはため息だった。
「せめてフーディンの攻撃が当たればねぇ……」
「……リーフちゃん今なんて?」
「え? いえ、フーディンの攻撃が当たればまだ打つ手はあると思ったのだけれど——」
リーフが遠慮がちに言葉を繰り返す。すると、博士は突然リーフの手を取った。突然の事でリーフとカインはギョッとしたが、博士はその手を風を切る音が聞こえそうなほど大きく振りながら、どこか興奮気味に言う。
「そう、それだよ! そっか、その手があった! 攻撃が当たらないなら当たるようにすればいいんだ!」
「「……」」
しかし、リーフとカインは博士の言っている言葉の意味が分からず、完全に置いてけぼりなのであった。
>>033
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余談ですがアメモースの目っぽいアレ、触覚だったんですね(驚愕)
今日調べて知りました。