二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: ポケモン 風変わりな旅道中 ( No.33 )
日時: 2016/08/08 13:27
名前: アーリア ◆IYbi.dCFgs (ID: 3qG9h5d1)

(さて、どう出ますかね)

 砂嵐を挟んで向こう側。顎に手を当て、糸目の男は思考していた。
 砂嵐の影響で、ヒコザル・アメモース共に体力を消耗している。どこから攻撃が飛んでくるかわからない今、アメモースは手の届かない上空に逃げるだろう。そして、地上に残ればヒコザルが狙われる事くらいは容易に想定しているはずだ、となればヒコザルもアメモースと共に上空へ逃げるだろう。
 あいにくノクタスに上空へ逃げたポケモンへの攻撃手段は無いため手出しはできない。つまりは打つ手はなくなるという事だ、それは認めよう。

(まぁそうなればこちらとしても都合がいい)

 しかし、それはあくまでポケモンバトルでの話。こちらの目的はポケモンバトルではなく、博士の持っている資料を奪う事。そう、我々が今狙うべきは”本命”だ。
 男は怪しく口の端を釣り上げる。

「ノクタス、博士から資料を奪ってきなさい」

 男が命令すると、傍らに立っていたノクタスはコクリと頷き、弱まりつつある砂嵐の中に姿を消した。さて、あとはノクタスが資料を奪い、戻ってくるのを待つだけだ。
「貴方達。遊んでいないで引き上げる準備を——」
 男がそう部下に指示を出そうと振り返った直後。
「!」
 ”ブォン”、と何かエネルギーの刃が風をきり、男の顔のすぐ横を掠めた!
 振り返りかけた男は咄嗟に身構え、ノクタスが消えた方角へと向き直る。
 すると、男に背を向けたまま、ノクタスが砂嵐の中から飛び出すように後退してきた。
 先ほどまでとは違い、ノクタスは少々体に傷を負っている様子である。
「ノクタス!? 一体何があったのです!」
 ノクタスにそう言葉を投げかけるが、ノクタスは砂嵐の中をじっと睨みつけたままだった。そして次の瞬間、再び先ほどの”エネルギーの刃”が砂嵐の中からノクタスに向けて飛んでくる。それが避けきれないと判断したノクタスはすぐさま体を守り、攻撃を受けた。ノクタスは数歩後退すると、やや疲弊した表情を見せる。その様子を見た細目の男は驚愕した。

(馬鹿な! 砂嵐の中からこれほど正確に攻撃を当てるなど……!)

 それに、この技。ひこうタイプの技”エアカッター”という技に似ているが、自分のすぐ横を掠めた時に感じた、頭の中を揺さぶられる感覚。あれはひこうタイプの技ではない。
「は、班長。今の技って」
 糸目の男が頭をフル回転させていると、目を回したポチエナを抱きかかえた部下が顔を真っ青にして口を開く。糸目の彼が男の顔を見ると、男は間違いないと言わんばかりに頷く。
「今の技、シラカシ博士が持ってたフーディンです。アイツは厄介ですよ」
「フーディン?」
 糸目の男はなおさら謎だと首を傾げる。
 フーディン、エスパータイプのポケモンだ。そうなれば先ほどの技もエスパータイプの技に間違いない。しかし、そうなれば何故ノクタスに攻撃が? 悪タイプのノクタスにエスパータイプの技は効かないはずだ。それに、弱まってきたとはいえこの砂嵐だ、ここまで正確に攻撃を当てられるはずがない。

 男がそう考えている間にも、砂嵐からの攻撃は止まない。
 ノクタスは機敏な動きでそれを避け、動きが読まれぬよう動き続けている。しかし、次々飛んでくる攻撃はそれでも確実にノクタスをを狙っていた。
(攻撃が通るだけではない。ノクタスの位置を完全に把握している。これは厄介ですね)
 そこで初めて糸目の男の余裕が崩れる。
 しかし、それでも男は冷静だった。
(どういった細工をしたのかは分かりませんが……攻め過ぎましたね、おおよそ位置は把握できましたよ!)

「ノクタス!」
 男が呼ぶと、続く連撃で位置が掴めたのか、ノクタスもある一点の方向を見据えていた。
 それを察した男は口元を緩める。
「流石ですねッ、”ニードルガード”でそのまま突っ込みなさい!」
 ノクタスはその言葉を聞き、思い切り目を見開く。ノクタスの全身の棘が飛び出し、強靭な盾となる。次の攻撃を真っ向から受け砂煙が起こったが、それをもろともせず砂煙の中から飛び出す。すると、それを見ていたであろうシラカシ博士は慌てた様子で指示を出す。
「フーディン、”サイコキネシス”!」
「遅い! ”ふいうち”!」
 博士の指示を受け、フーディンは両手を突き出しノクタスを狙おうと構えるが、ノクタスは不意を突いて懐へと飛び込み、重い一撃を叩き込む! しかし、ノクタスの拳はフーディンの触れる直前で制止していた。
「! リフレクターですね」
 その様子を見て糸目の男は呟く。
 物理攻撃の威力を吸収する特殊な壁だ。攻撃を仕掛ける前から張っていたのだろう、攻撃を受けたリフレクターはやがて解けるように消えてゆく。
 しかし、ノクタスの一撃を半減させたはいいが、それでもフーディンにとっては重い攻撃だったらしく、フーディンは苦しそうな顔をして片膝をついた。
「勝負ありましたね!」
 糸目の男の言葉を肯定するように、ノクタスはとどめと言わんばかりに腕を振り上げる。
 しかし、その瞬間博士とフーディンは笑った。

「残念、僕たちはただの陽動!」

 その瞬間、弱まりつつあった砂嵐の効力が切れ、目に見える速さで砂嵐が晴れ、刺さるような日差しがあたりを照り付ける。そんな中、フーディンとノクタスの間にひのこが降り注ぎ、二匹の間を裂く。後退したノクタスは地面に浮かんでいる一つの影に気づき、それを追うように空を見上げた。糸目の男も同じように空を見上げるが、日差しに目がくらんだ様子だ。

「リーフちゃん、カイン君!」
「おう!」
「任せなさい!」

 博士が二人の名前を呼ぶと、二人は元気よくその声に応え、上空にいるアメモース——そして、アメモースにしがみ付いているヒコザルに向かって指示を出す。

「アメモースちゃん、”ぎんいろのかぜ”!」
「ヒコザル、”ひのこ”だ!」

 アメモースは鱗粉を乗せ、ノクタスに向けて風を起こした。
 銀色の鱗粉をのせた風は目をくらませていたノクタスに直撃し、ノクタスは堪らず腕で顔を覆う。そして、ノクタスに向け放たれたひのこは、大気中に浮遊した砂塵と鱗粉に引火し——爆発を起こす!!

 そして、その直後、熱と共にけたたましい爆発音が辺りに轟いた。


>>034
---------------------------

そういえば普通にポチエナにテレキネシスが効いていましたが、リアル指向な小説なので何でもかんでも悪タイプがエスパー技無効にしちゃうのも嫌だったので、そうなりました!…という事にしてくださいおねがいします(土下座