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Re: 【7/14更新】ポケモン 風変わりな旅道中 ( No.34 )
日時: 2016/08/08 13:28
名前: アーリア ◆IYbi.dCFgs (ID: 3qG9h5d1)

 衝撃のあまり腕で顔を守る一同。辺りに静けさが戻ったころで、各々が顔を上げる。爆発の直撃を受けたノクタスの体は、おおよそ半分ほど茶色く焦げ付いており、ボフ、と口から煙を吐いたかと思えば、ノクタスは間もなくその場に崩れ落ちた。恐る恐る様子を窺うと、ノクタスは「キュウ」と声を上げて気を失っているようだった。あれだけの爆風を受けてその程度で済むとはさすがポケモンである。

「粉じん爆発ならぬ鱗粉爆発、といったところかな。一定の濃度の粉塵が浮かんだ状態で火花が生じると、引火して爆発を起こすんだ。条件がそろえば小麦粉だって爆発しちゃうんだ」
 そして、とあるポケモンが覚える”ふんじん”はこの特性を利用しているのさ。
 博士が得意げにそう話すと、放心していた糸目の男は我に返った様子でモンスターボールを取り出し、すぐさまボールへとノクタスを戻す。そして博士の方に向き直ると、男は恨めしそうに博士を睨んだ。

「やってくれましたね」

 圧を感じさせるその低声には、はっきりとした怒気が含まれている。
 それがカイン達の勝利の喜びを一瞬にして殺した。
(こいつ……!?)
 背中に何か寒気を覚えたカインは反射的に身構える。
 しばし凍てついたような緊張が二組の間に流れた。
 そして糸目の男が二つ目のボールに手を伸ばしかけたちょうどその時、その沈黙はポチエナの男によって破られた。
「班長! これ以上は駄目です。騒ぎ過ぎです。やつらが来ます」
「……」
 それを耳にし、糸目の男はさらに沈黙する。
 どう出る。カイン達も負けじと男を睨む。
 しかし、次の瞬間男は突然息を吐きだした。そして、まるで何事も無かったかのように柔らかい表情へと戻し、二コリと微笑む。

「これは失礼、少々熱が入り過ぎました。まぁ何と言いますが、流石は博士と言ったところですね」
 男はそう言いながら踵を返すと、頭の横で手を倒した。その合図を見た他の団員達は慌ててバトルを中断する。男はなお言葉を続ける。
「次にご婦人、腕がいいですね。今度本気で手合わせ願いたいものです。そして——」
 男は再び振り返る。その瞳に移すのは、小さなトレーナー。

「……顔は覚えました。いずれまたまみえる時は、覚悟しておきなさい」

 男がその言葉を投げかけたのは、紛れもなくカインだった。
 カインはその言葉を鼻で笑ってみせる。
「テメーこそ覚悟しとけ。次こんな真似しやがったらただじゃおかねぇ」
 そう言ったカインの真剣で鋭い視線を受け、糸目の男は「おぉ怖い怖い」と、おどけた様子で肩をすくめる。

 そして、ちょうどその時、北の空から何やら大きな鳥ポケモンの群れが現れた。数にして5羽、真ん中で先頭を飛ぶポケモンとそのすぐ右のポケモンの背には人影が見える。
「おや、もう警察のお出ましですか」
 その姿をいち早く確認した糸目の男は、どこか他人事のように呟く。
 その声につられてカイン達がそちらの方へと向くと、ピジョットの群れが猛スピードでこちらへと向かっているところだった。
「恐ろしいほどの仕事の早さです。警察を侮ってはいけませんね」
「いえ、早くもないです班長。砂嵐を起こした時からすでに騒ぎになってましたよ」
「そうだったんですか。これは失敬」
 そして男は軽く咳ばらいをすると、再びカイン達の方に向き直った。

「それではまた会いましょう。それまで資料は大切に保管しておいてくださいね、博士」

 それを言い終えると、糸目の男は部下の一人に指示を出す。
 その指示を受けたであろう黒い帽子を深く被った男は、顔の前で両手を見せる。その指の間にはモンスターボール——片手に2個ずつ計4個のそれを投げると、帽子の男はニィ、と笑みを浮かべる。
「任せな班長殿。それじゃあ、ちょいと”濃いめの”をお見舞いしてやるぜ」
 そうしてボールの中から現れたのは、4匹のマタドガス。
 4匹は登場するや否や、一斉に黒い煙を噴き出す。
 
(奴ら逃げる気か!)
 待て、と言いかけてカインは言葉を飲み込む。
 逃げるように見せかけて、油断した隙に博士の資料を奪う算段なのかもしれない。その可能性を考え、カインは博士の腕を掴む。
「”えんまく”! 逃走の常とう手段ね……アメモースちゃん!」
 リーフはすぐさま上空のアメモースに指示を飛ばす。アメモースはコクリと頷き、4つの羽を勢いよく回転させる。しかし、アメモースの”かぜおこし”で煙幕が晴れた頃には、S.W団の姿はそこにはなかった。

>>053
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すいません…本日眠いので修正は朝以降にします。
誤字などあれば何なりとお申し付けください