二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【ポケモン】風変わりな旅道中 ( No.54 )
- 日時: 2016/08/05 14:58
- 名前: アーリア ◆IYbi.dCFgs (ID: MHTXF2/b)
博士の言い分は解る。
S.W団——それも、あの糸目の男。班長と呼ばれていた彼は、博士、リーフ、カインの三人でようやく抑え込むことができた相手だ、次に出会った時は今日のようにうまくはいかないだろう。ああいう危険な連中には関わらないのが一番だ。
「博士の言いたいことは解った。約束はしかねるけどな」
しかし、だからと言って悪人を野放しにできないのも事実である。
例えばポケモンハンター。保護区域のポケモンや保護対象となっている珍しいポケモンや稀少なポケモンを密猟して、高額で売り捌く犯罪者だ。ポケモンを傷つけ、利用した挙句、自分は大金を手にする……仮に目の前にそんな輩がいたとして、見てみぬふりなどできないだろう。ポケモンハンターだけではない、(不発には終わったものの)ポケモンを盾に博士やリーフを脅したS.W団だってそうだ。ポケモンブリーダーの母を通してポケモンと触れあってきたカインだからこそ、犯罪にポケモンを利用する事が許せないのだ。
「ちょ、ちょっとカイン君!?」
だが、博士も引けない所があるのだろう。
博士は慌てたようにカインの両肩を鷲掴みにする。
「ああいう連中は女性だろうと子供だろうと関係ないんだよ!? 何するかわかったものじゃないんだ!」
「そうだな。それは今回の件で学んだ」
「うっ。そ、それは本当に悪いと思ってるけど……」
即座に痛い所を突かれて博士は口ごもる。そして、助けを求めてポケモンたちの手当てをしているリーフへと視線を移そうとするがが、ハッと何かに気づいたように首を振った。
「いや、そっか。君はあのリーフちゃんの息子さんだもんね」
「そうですねー。流石私達の息子だわ〜」
すると、博士の独り言を聞いていたであろうリーフがこちらに背を向けたまま、なぜか嬉しそうに言う。
博士とカインは彼女へと顔を向ける。
「あっ、聞いてたのリーフちゃん」
「ええ、もちろん。フフ! 血は争えないわね」
そう言って、ようやくカイン達の方に振り返るリーフ。
リーフの腕の中にはポチエナ相手に勇敢にも立ち向かった『エモンガ』が三匹収まっており、しばらくリーフの腕や肩の上を元気そうに駆け回った後、地上へと降りて元気よく走り去っていった。
その様子を見守った後、我に返った博士は苦笑を浮かべてリーフに言う。
「いや、僕としては母親である君には説得を期待しているんだけど……」
「あら? 私は悪いとは思いませんよ。シルフカンパニーで博士と出会った時の私をお忘れですか?」
「それはそうかもしれないけど、今は色々と危ない時代だから——」
(……うん? 今”シルフカンパニー”って言ったか?)
先ほどから二人の会話を黙って聞いていたカインだったが、リーフの口から飛び出した名前を聞いて耳を疑った。
シルフカンパニー、おそらく皆が一度は聞いたことがあるであろう一大企業の名前だ。
カントー地方に本社を構え、モンスターボールをはじめ、きずぐすり、わざマシンなど、ポケモントレーナーにとっての必需品を開発・製造している、とにかくすごい会社だ。
勿論、ここアルト地方にも支部が存在している。
そんな有名な会社に博士が働いていたとは。それに、リーフはそこで博士と出会ったと言っているが……また、博士はその時リーフに助けられたと言っていたし、ますます二人がどういった経緯で出会ったのか謎である。
そんな二人はカインにお構いなしに会話を続ける。
「まぁ、そこまで心配なさらなくてもいいと思いますよ。今のカインには心強いパートナーがいるんですもの」
ねー? と、リーフは同意を求めるようにカインの頭の上にいるヒコザルに話しかけた。
その言葉の意味が分かってか分からずか、ヒコザルは元気よく返事をする。
それを見た博士は何か言おうとしばし口ごもり、そして肩を落とした。
「あぁ、何と言うか。あの時の少年と言い、リーフちゃんと言い、君と言い、ナナと言い、何でこんなにも怖いもの知らずなんだ」
「怖いものがあって旅ができるかよ」
「あーもー、僕が言いたいのはそういう事じゃあなくて——」
と、博士が困った様に後ろ頭をかきむしったその時。
「お父さんー!!」
博士の言葉を遮るようにして、空からソプラノの声が降ってきた。
何だ?と思って三人が空を見上げると、飛んできた『何か』に太陽の光が反射して目に刺さった。思わず目を瞑った後、あの時のノクタスもこんな気持ちだったのだろうかとふとカインは考える。
さて、飛んできたポケモンはと言えば、ギャアギャアと二度ほど鳴くと、間もなく三人の傍へと降り立った。鉄の鎧を纏った鳥ポケモン、『エアームド』だ。
そして、その背中から飛び降りる一人の少女。
カインと同い年くらいだろうか、まだ幼い顔立ちを残している。彼女のウェーブがかった栗色のショートヘアーが風に揺れた。
「もう! 一体何をやってるの!? 警察の人から電話がかかってきたから慌てて飛んできたよ!」
赤いスカートを手で払いながら、少女は鋭い視線で”博士”を見据えた。
博士は彼女の姿を見るな否や、心底驚いた様子で彼女に駆け寄る。
「な、ナナ!? 研究所のポケモンを勝手に連れてきて何やってるの!?」
「仕方ないじゃない! そっちこそ何やってるのよ、こんな騒ぎを起こして……!」
その様子を見て、首を傾げるリーフとカイン。
どうも確信は持てないが、どこか思い当たる節のあるリーフは探り探りな様子で口を開く。
「博士、もしかしてその子」
「あ、うん。……カイン君は覚えてるか分からないけど、リーフちゃんは覚えてるんじゃあないかな」
そう言われ、動いたのは少女だ。
少女は何か言いたげにジッと博士を見つめた後、カイン達の方へ向き直ってお辞儀をする。
「父がご迷惑をおかけしました。娘のナナです」
そう言って顔を上げるムスッとした表情の少女・ナナ。
(言ってはなんだが)だらしない風貌の博士とは似ても似つかない彼女に、カインとリーフは豆鉄砲を喰らったように目をパチクリさせるのであった。
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ようやくシラカシ博士の娘・ナナの登場。
あと一、二話で一章〆たい…
修正は後日!(;´Д`)