二次創作小説(映像)※倉庫ログ

東方宇宙録 プロローグ ( No.1 )
日時: 2016/12/17 20:11
名前: 葉桜 來夢 (ID: q9MLk5x4)


ミーンミンミンミンミンミーン……

そのわざとらしい蝉の音から全ては始まった。

「あー何で今年はこんなに暑いのかしら、もう溶けそうよ……」
ここは幻想郷。
幻想郷には人間、妖怪等様々な生き物が暮らしている。
今年は、原因不明の猛暑によって、真夏日が続いていた。
「我慢しろよ霊夢。氷の妖精じゃあるまいし、これぐらいの暑さでへばっててどうするんだよ?」
「そんなこと言っても暑いもんは暑いのよ!あー冬が恋しいわ……」

彼女は博麗神社の巫女をやっている、霊夢。
そして今霊夢と話しているのが普通の魔法使い、霧雨魔理沙だ。
「それに、異変がもし起きたときにこれじゃあ、なぁ?」
「私にはこの暑さが異変みたいなものよ……あぁ〜もうホンット暑いわ〜」
「何を言ってるんだ?夏は暑くて当たり前なんだ、もっと楽しまなきゃな」
「そんな厚着でよくその台詞が言えるわね……まったく、見ているこっちが暑苦しいったら無いわ」

霊夢がそう言うのも頷ける。
魔理沙はよく日の光を取り入れる真っ黒の服を着ているのだ。
顔には汗だって見える。
「まぁ、これが一番薄着なんだ、仕方ないだろ……ってあれ?」
何かに気付いたのだろうか。魔理沙は外の方を指差した。
「どうしたのいきなり?」
「いや、人間の里の方で何かが光っていたような気がしてな……」

そうだ。
後から考えると、霊夢達は自ら異変に首を突っ込んでいたのだろうか。
魔理沙が放った一言を、気のせいじゃない、とでも返せば、こんな悪夢のような異変には巻き込まれなかったのかもしれない。

—それとも、これは運命だったのだろうか……

東方宇宙録 第1話 ( No.2 )
日時: 2016/12/17 20:15
名前: 葉桜 來夢 (ID: q9MLk5x4)

「確かここら辺だったよな……」

霊夢達は、魔理沙が見たという謎の光の行き先を調べるため、人間の里の上空を飛んでいた。
といっても、形跡は何処にもなく最早空を飛んでいるだけになっていた。

「本当に見たの?そんな光」
「ああ、凄い光を纏って地上へ落ちていったぜ?」

……本当だろうか。
大体隕石でもあるまいし、そんな非現実的な現象があってたまるか。
勿論周りにはクレーターなど一つもなかった。

「なんだか時間を無駄にした気分ね……」
「何だよその言い方、それでも巫女か?」
「こんなんじゃ埒があかないわ、さっさと帰るわよ。そして煎餅を……」
「う、そうだな……少し後味が悪いがな」

魔理沙の様子がおかしい、霊夢はそう感じた。
心なしか顔色も悪く見える。
霊夢はそんな魔理沙の横顔を見て首をかしげた。

「どうしたのよ、アンタ今日様子が変よ?」
「い、いや。大丈夫だ。ただ放っておいたらマズイ気がしただけだ」
「何よそれ。気になるじゃない」
「あの光は隕石なんかじゃない。もっと……」
「もっと……?何よ」
「もっと禍々しいもの。そんな気がするぜ」
「禍々しい……ね」
「あぁ、そうだ」

そういう魔理沙の顔は真剣そのものだった。
こんな魔理沙を見るのは霊夢にとっては久し振りである。

「仕方がないわね、里で目撃者がいないか聞いてみるわよ」
「ほ、本当か!?」
「アンタのそんな顔見たら胸騒ぎが止まらなくなるの。今回は特別よ?」
「やっぱり持つべきものは友だな。恩にきるぜ」
「……まだ何もしてないけどね」


そう言って二人は人間の里に向けて急降下を始めた。

東方宇宙録 第2話 ( No.3 )
日時: 2016/12/17 20:19
名前: 葉桜 來夢 (ID: q9MLk5x4)

何か変な気分だな、と魔理沙は思った。
言葉で上手く言い表すことがてきない、そんな感じだ。

それは、一度読んだ物語を忘れた頃にもう一回読んでいるような……

「魔理沙?ねぇ聞いてるの?まーりーさー!」
「!!……ああ、悪い。ボーッとしてた」
「まったく。アンタが来たいって言ったから来たんだから、しっかりしなさいよ」
「すまんすまん」

何故あれが隕石じゃないと思ったのだろうか。
なんの根拠もなく、無意識に言っていたのだ。
それに幻想郷の外に隕石が落ちることだってある……

「はぁ……禍々しいもの、か。何か本で読んだのかもしれんな」
「何か言った?」
「いや、何でも無いぜ」

会話しながら人間の里をしばらく歩いていたら、声を掛けられた。

「あ、霊夢さんじゃないですか?それと魔理沙」

彼女は魂魄妖夢。
冥界にあるお屋敷、白玉楼に住む剣術指南役兼庭師である。

「あら、妖夢じゃない。買い出しかしら?」
「今なんで私をおまけみたいに言ったんだよ」
「ええ、幽々子様に頼まれて。今帰ろうとしてたところです」
「私のこと無視すんなよ……」
「あ、そうだ。聞きたいことがあるのよ」
「私にですか?」

霊夢は妖夢に今までのいきさつを話した。

「……と言うわけなのよ。何か知ってる?」
「なるほど、つまりそこの黒いのが言い張ってここにいるわけですね」
「おい、私の扱いが酷くないか」
「でも、その光なら見ましたよ」
妖夢がそう言うと、二人は身を乗り出した。
「え!?」
「そんなに驚かなくても……さっきふと空を見上げたら光があっちの方に」
「おい、あっちって妖怪の山じゃないか」
「そうね……あの光が何か分からないけれど、山に落ちたなら見に行くべきかも」
「あ、なら私も行きます」
「買い出しは良いのか?」
「早く済んだから大丈夫、ってことにしといて」
「何だよ、興味あるのか?」
「うるさい。目撃者がいた方が良いでしょ?」
「何してんのアンタ達、行くわよー」
「あ、はーい。今行きます!」
「妖夢が冷たいぜ……」

そうして妖夢も加わり、一同はそのまま妖怪の山に向かうことになった……


—一方、妖怪の山では。

「ここ、は……?」

周りを見渡してみた。木が鬱蒼と繁り、鳥達の鳴き声が聴こえてくる。

「やっと、着いた、のか……」

木に手をついて、ゆっくり立ち上がる。
まだ足はふるふる震えている。
「まったく、しっかりしてくれ」
そのまま山の中を慎重に歩き始めた。
近くにいた鳥達が一斉に飛びたっていった。


そして……後ろから吹いてきた風が、『彼女』のさらさらした黄緑色のツインテールを揺らした—


to be continued……