二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第一章「夜明けの決闘」戦闘編-2 ( No.26 )
- 日時: 2015/12/06 20:04
- 名前: 鳳凰 (ID: 5yPWEfIJ)
…………。
…………………。
……………………………。
ミクシラがここでリンを救出したと言うらしいが、蛮族が見つからない。
辺りを更に見ても森林と建物に囲まれているだけだ。
アルス達以外の仲間が全員仕留めたか。
あるいは考えもしたくないが、すでに殉職している可能性もなくはない。
そんな焦りと恐怖を壊してくれるような希望はあるのか。
「ミクシラさん。……来ませんね。」
「ですね…でも、私がアルス様を守りますからねっ。」
「そう言ってくれると非常にありがたいです。」
「そういえば、アルス様。アルス様のご職業って何ですか?マルセン殿を率いているぐらいだから………最高指揮官とか!?」
ここで王子だなんて言ってしまうと気まずくなるのでやめる。
「……あー。え………うん……とですね………そうではないんですけれども……マルセンさんが勝手に言っているだけかなって………あはは………」
「そうなんですか………」
その時だった……。
近くの茂みがガサガサと揺れた。
「………戦闘準備した方がいいですね。」
「ええ。一応、準備した方が良いです。リンの仇は私が討つ…」
「…………あれ…?……ここは…………どこ……………でしょうか?」
「気がつきましたかな。」
「きゃっ!?」
調合薬を飲んで寝ていたリンは目覚めると目の前に見覚えのある老騎士がいたので思わず声を出してしまった。
マルセンはゆっくりと離れると、リンは慌ててあたふたしながら、修道服の上のフードのような部分を外してから軽いねぐせを直す。直した後、彼女はほっと安心した。
「ふぅ………びっくりさせないでくださいよー。マルセン殿。」
「すまなかったですな。しかし、これもアルス様に頼まれ…」
「アルス様とミクシラさんはどこに!?」
リンはアルスとミクシラのことがあまりに気になって、マルセンの言葉を途中で停止させた。
「む、むぅ………。アルス様とミクシラならあなたの仇を討つといってしまいました……。」
「そんな……。私なんかのために危険をおかしてまでですか!?」
リンは自分が情けないと思ったのか、ミクシラに運んできてもらった道を引き返して走っていった。
「…………(なんで………私なんかのために…)」
マシラとエージュはあの後、二人の蛮族を撃破。
これで残りは3人となった。
「…………マシラさん。」
「なんだ………?用件がないなら話はするな。」
「あなたはどうしてそんなに強くいられるんですか?」
「……」
マシラが急に歩くのをやめ、立ち止まった。
普段、口数の少ないエージュはどうしてこんなことを聞いてしまったんだ。
と言わんばかりに言った。
「あ……なんでもないで……」
「………せめていうならば使命があるのだ。」
「………使命……。」
「俺はカギロヒ村出身だ。だから、代々、村の名前の通りの『炎』の男でなければならなくなった。熱く燃えたぎるように体を鍛え、心を鍛えなくてはならないのだ。でも、まだまだ俺は強くない。」
「………強くなれると思います。頑張ってください。」
「…お前もな。」
普段、笑うことが少ないマシラだったがこの時だけは笑うことが出来た。
頼りがいのある若き後輩に向かって……。
話は戻ってマルセンの視点である。
あの後、リンを無理に追うと自分の身まで危険にさらすことになる。
と、判断したマルセンは増援を阻止すべく見張っていた。しかし、後に健在なマルセンの姿を見たものはいなかった。
「何!?私たちの王が貴様に殺されるなど………信じられん。剣を抜いて私にその証拠を見せてみろっ!!」
相棒に乗ると銀の槍を握りしめ突撃を開始する。
マルセンの職業はパラディンである。
パラディンはソシアルナイトの上級職だ。
彼は本来、25歳でパラディンになれるところを23歳の時、王国史上最年少で昇格した。あまりの実力ゆえに他の国のパラディンの中でも一二を争うぐらいまでに成長は早かった。35歳の時、これまた史上最速で軍隊長にまで登り詰めた。
………そんな彼の攻撃を「本来」ならかわすことができない。
「遅い……」
「何っ…!?」
隕石の落下にも等しい速さの刺突を軽々しくかわす謎の者。
「では、証明をしてみせよう。」
神速をも越えた速さで老騎士の横に移動し、剣で槍を弾き飛ばす。
「!?……ここまでの速さを持つ人間がいるとは……」
「これでも信用しないと?」
「くぅ………ん………!……その剣は!!」
「ああ。『神剣ファルシオン』だ。あの王が持っていたんですよ。この剣には露となって王が死んだことが分かるんですよ。」
謎の者はファルシオンの剣先を舌でなめる。
「………っ……」
「さてと……炎の紋章はどこにあるんです?」
「知らないが………教えないとどうなる?」
「死……あるのみです。」
「…………教えないぞ。貴様だけには。」
「分かりました。では、最後に冥土の土産を差し上げましょう。」
謎の人物は黒装束を着ていたが、その装束を脱ぎ捨てるとマルセンの目は更に見開き……
「アルス様っ……………」
…………………………。
「呆気ない人生でしたねぇ。マルセンよぉ。」
老騎士マルセン。
出生してから74年という人生の流れをここで止める。
マルセンは背中をファルシオンで数ヵ所貫かれ紅い液が止まらない。
「炎の紋章はどこにあるのでしょうね。みなにとっては………『忘れ去られし紋章』ですけどね………あっはははは……」
そう言って英雄の一人の死を笑いながら謎の者は血で染まったファルシオンを片手にどこかへと消えていった。
アルスはこの事件が起きていたとき既に、蛮族の頭との決着はついていた。
その結果は一体…!?
続く
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