二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第一章「夜明けの決闘」エピローグ ( No.29 )
- 日時: 2015/12/07 00:54
- 名前: 鳳凰 (ID: 5yPWEfIJ)
大きな城門が開き、兵士達がゆっくりと前進をする。
現在、日が暮れているころである。
半日近くも移動がかかったせいか。兵士は既に疲れと悲しみでいっぱいである。
軍隊長マルセンの死。
これほど、彼らを傷つけさせるものはなかった。
そんな中、してほしくもない祝福と歓喜の声。話し声が聞こえ始めてきた。
「おおっ。勝利して帰ってきたぞ。」
「ん…マルセン殿がいないじゃないか」
「きっと、集落の人を守るためにまだ警備やってるんだよ。」
「あはははははは」
何が無事だ。
何が勝利だ。
こんな「ストーリー」のはじまりは酷いじゃないか。
あの伝説のアリティア王子マルスだって
その後の伝説のイーリス王国の王子クロムだって
また、異国の王から聞いた話だが蒼炎の勇者アイクだって
みんな幸先の良いスタートをした「ストーリー」の主人公である。
なのに……なのに……
そんなことを思うアルス。
ある日、彼が名の由来を聞くと、それは複数の意味があるらしいが大きい意味は
力強い剛剣を振るう勇者アイクときめ細かい剣技と速さが特徴の王子マルスのようになってほしかったからという親の願いによるものである。
「……………。僕なんてまだまだじゃないか。」
アルスは一回、仲間を解散させて城にこっそりと戻った。
隠し階段をいつもなら元気にかけ上るはずが今日はゆっくりと上る。
「…………。」
部屋への扉を開けるとそこには皆、軽装状態の……ミクシラ……リン。 マシラ。エージュ。がいた。
「……なんだ…ミクシラさん達か……………」
アルスが軽装になろうと鎧に手をかけた途端、いつもと違う違和感に今、やっと気づいた。
「って…えええっ!?なんで、ここにいるんですか!?」
「アルス様のことが気になって来たんですよ。私たち。」
と言うのは彼女の髪と同じ碧色の麻素材の服を着ているミクシラ。
「俺も同じくそう思ったから来たのだ。」
薄い茶色の麻素材の服を着ているのはマシラ。
「お、俺も……うん。」
照れながら言うこの青年はエージュ。
赤のセーターを着ている。
「私もそう思ってきました。」
修道服を外した彼女は黄色の麻素材の服を着ている。
先の戦いで軽い怪我をしたリンだ。
「………皆さん…ありがとうございます」
アルスは心配してきてくれた皆の気持ちが嬉しくてつい涙が出てしまった。
「実はね。アルス様。伝えたいことが二つあるんです。」
ミクシラが代表して言う。
ナバリアス王が何者かの襲撃により殺されたことがアルスが到着する前、速報で全国民に知れ渡ったこと。
そして、アルスの正体が隠されていた王子であることが一部の国民にバレてしまったこと。
そんな話をミクシラから聞いたアルス。
「そんな……父上まで…」
「だが、アルス様に対してこれで俺達の使命が増えた。」
マシラが言った後、エージュが言う。
「アルス様の正体をこれ以上知られないこと。」
最後にリン。
「そして、アルス様の事を絶対にお守りすること」
「アルス様。私たちをうまく使ってください。お願いします。」
ミクシラに続いてみんなが頭を下げお願いする。
「まさか…!使うだなんてそんな…ひどいことしません…!こちらこそ頼りない王子ですし……色んな意味で迷惑かけるかもしれません。使うという言葉ではなくむしろ、お願いしたいです。これから、改めてよろしくお願いします。」
皆が顔を上げると自然と彼らとアルスは笑顔になっていた。
一方、別の地にて。
どこかの城では何者か達が謎の会話をしていた。
「神剣ファルシオン。何か秘密があると思うんです。何があるのでしょう」
「フム。確かに秘密がありそうだな。」
「でしょ!?俺も思った。だからさ。どうしようかって。思ってて。」
「……はぁ…少し、うるさいので黙ってください。」
「いいじゃないかよ。スーラ。」
「よくありません。だいたい、貴方は何もしないじゃないですか。ザリク」
「うるさいんだよぉ。仕事してくれば良いんでしょ?だったら『寝る』からさ。もう、まったく……」
ザリクと呼ばれる者は城内のどこかの部屋へと入っていった。
「私も少しファルシオンについて調べてみます」
スーラも消え、残ったもう一人は窓の奥に見える夕焼けを楽しんでいた。
話は戻り、王都にて……
国では亡骸はないイルネフ王の追悼の儀が行われる準備が始まっていた。
今晩はもう遅いのでミクシラ達四人を城内で泊めることにした。
ミクシラは厨房にて得意な調理術を披露。
エージュは資料庫にて資料や文献を見ている。
マシラは中庭にて訓練。
そして、リンは……。
風呂にて疲れを癒していた。
風呂は混浴であるが使用人達が入る場合、時間割りが定められている。
今は男性の使用時間だ。
リンはそれに気づかず出ようとしていない。
と、その時アルスが浴室内に入ってきた。
「(あれ……使用人でもいるのかな?いつもなら皆、深夜の時間帯の割り当ての時に入るのに……)」
恐る恐る湯に浸かり、湯気で先が見えないので影に近づいてみると……うっかり影とぶつかってしまった。
しかし、男らしい固い感触ではなく丸みを帯びた弾力のある感触………。
なんてことだ。
女性だ。間違いなく女性である。
申し訳なくなって顔が赤くなったアルスは慌てた。
「どなたかは存じないですが………ご、ごめんなさい!!今、出ますね!!!」
「待ってくださいっ!アルス様……ですよね…?声で分かりました。」
「…!リンさん……ですか。」
「ええ。私ですっ。リンです。」
影の正体はリンだ。先程ぶつかったのは双丘ではなく肩だったので良かったもののぶつかる場所を間違えていたら王子でも殺されかけていたことだろう。
「リンさん。ごめんなさい……。説明してませんでしたよね。この浴場の時間割りについて…………」
「いえいえ。私こそ水浴びの時間が好きなものなので……それよりも…ありがとうございます」
「え。いやいや、そんな、僕はなにもしてませんよ。」
「いいえ。アルス様は私たちを守ってくれてアルス様のための調合薬を渡して私を回復させてくれたりと色々と頑張ってらっしゃいます。だから、アルス様のほんの少しの優しさだけでも私たちにとっては嬉しいものなんです。」
「そうなんだ……」
「だから、元気だしてくださいよっ。貴方は一人じゃありませんっ。」
そう言った彼女は帰りがけにアルスのおでこにキスをしていくと脱衣所に向かっていった。
アルスは本当のキスではないが急なキスに驚き顔が更に赤く染まって………
…のぼせて倒れた。
この後、すぐに使用人が駆けつけて運ばれた、この話は後々語り継がれることになる。
続く