二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【リメイク】東方悠暝創 〜もう一人の閻魔と愉快な仲間〜 ( No.2 )
日時: 2015/12/09 16:10
名前: 河童 (ID: DxRBq1FF)

第一話 「仕事をしない死神」

 道行く人に、『三途の河といえば?』と聞いたら、どんな返事が帰ってくるだろうか。死人が行くところ、死神がいる所等、物騒な返事が帰ってくるだろう。しかし実際の所、幻想郷で物騒なところはそんなに無いのだ。死神はいるけれど、その死神も、

「最近、墓が無縁塚にポンポン来るんだよねえ」
「ふうん、親不孝者もいたものね、外の世界も」
「あたいはそんな奴だけにはなりたくないね」
「あんたはその前に仕事をしなよ」
「あんたもだろう?」
「はっはっはっはっはっは!」

 なんて、木陰に座り込みながら談笑している。死神なんてこんなもんだ。しかも船頭である。人魂と話しながら魂を彼岸に運ぶだけの仕事。まあ、その仕事すらやらない死神が二人いるのだけれど。
 すると、1人の赤い髪をした死神——ちなみに名を、小野塚小町という——が、何かの気配を感知したようで、顔を一緒に話していた青髪の死神——こちらは鈴城侑李——から逸らし、気配の方向を向いた。侑李はそれに気づかず、ペラペラと、何かを話している。
 気配の発生源が枝を踏んだのか、パキリ、という音が鳴り、そこで初めて侑李は気付く。
 目の前にいかにも怒っていますよという顔をした少女がいたということに。

「うわっ! 芽衣! なんで此処に!?」
「なんで此処に!? じゃ、ないでしょ! 仕事ほっぽって何やってるかと思ったら小町とお喋りしてるし!」

芽衣と呼ばれた黄色の髪をした死神は今にも殴りかかりそうな勢いで歩み寄る。

「いやいや、私が誘ったんだよ。休憩中だったからさあ」
「そうそう! 小町が誘ったせいだよ!」

 小町が擁護する。しかし芽衣は表情を崩さず、

「誘いを断らなかった時点でダメ! 結局サボりたかったからサボったんでしょう?」
「うっ」

 図星だったようで、侑李の顔に汗が浮かぶ。これはもう何を言ってもダメだね、と小町がつぶやき、侑李の肩を掴む。

「ま、頑張れよ」
「裏切り者ー!」
「そうそう、小町。貴方も洋罪様に呼ばれてるから」
「えっ?」
「最近サボりすぎだって。シバくそうよ」

 芽衣がそう言った瞬間、侑李の顔がパァっと輝く。がっくりと肩を落とす小町に、ニコニコと笑いながら言った。

「ま、頑張れよ」
「うわ、やな奴だなあんた!」

 煩い二人を眺めながら、はあと溜息をつく。
 ——別に怒られるわけじゃないけど。小町は知らないが。
 侑李と小町が喧嘩を始めた辺りでそれを止める。サボらなければ良い友人だが、サボり魔が治るわけでもなく。
 ふと目を移すと、人影が見えた。死者だろうか。いや、それにしては生き生きしている。迷ったのか? ここに? 三途の川に用事があるのだろうか。変な奴。

「侑李、小町。あんたたち先に言ってて」
「はいよ、なんか用事でもあるのかい?」
「まあちょっとね」

 なんだ、ふたりとも気づいていないのか。勘が鋭いところがあったけれど、今回ばかりは気づかなかったようで、芽衣の返事に不信がる様子もなく、そのまま彼岸に向かっていった。
 芽衣は人影の方へ小走りで向かう。やはり生きている。さて、此処に来るのはどんな変人なのだろうか。

「お前……死人じゃあ無いよな?」
「ああ」
「どうやって此処に? 名前は?」
「過化華。まあ少し道を作りにね」
「はあ? まあいい、とっとと帰れ。ここは人が来るとこじゃないよ」
「私は人じゃないわ。神よ」
「神ぃ? 疑わしいわね。ちょっとこっちに来なさい」
「誘拐されるー」
「違うわよ!」

 ぎゃあぎゃあと騒ぎながら、早く保護者が来ることを願う。一体誰がこんなの連れてきたんだろう。迷惑だからとっとと連れ帰ってくれよ。
 その保護者はこれから此処に来るなんて、芽衣は思いもしなかった。