二次創作小説(映像)※倉庫ログ

エピソードナナ19 ( No.134 )
日時: 2016/10/25 11:08
名前: 敷島クルル ◆vhkHu4l20g (ID: G.nGjsd9)

「にーさん!ごめんなさい!!」

ベルナ村郊外。
祝賓ムードに包まれているベルナ村の死角、といった具合か。

普段は木こりや森へ薬草を取りに行く人間がちらほらと居るくらいで、今は人の気配が他に全くない。

森の手前、カイム、シュートと対する形でナナが申しわけなさそうにうつむいていた。


「…3日間何をしていた。」
「えと、その…。」

「いいじゃない、こんな強面と今までずっと一緒だったんだから、家出くらいしたくなるわよねぇ?ナナちゃん。」


「そんなことは無いけど…。」


ナナは困惑していた。
本当の事を言うと、リュウ達の『オトモアイルーのみでの古代林探索成功』というレッテルが剥がれてしまう。

しかし自分が誤魔化すべき相手に対して今まで一度も嘘をついたことがない。


人生で初めての嘘にナナは何を言ったら良いか判断がつきかねていた。


「…言えないか?」
「あぅ…その…。」
「…お前が居ない間、俺はもちろんシュートさん、そして今、牧場での祭りを仕切っているルカさんもお前を探したんだぞ。」
「うん…。」
「…それでも言えないか?」



———窮地。


迷惑をかけたのは重々分かっている。
カイムになら本当の事を言っても分かってもらえるのではないか?と疑問が遮る。


が、もしも自分が真実を言ったことが原因で、カイムがリュウ達へ何らかの形で釘を刺したらどうしよう、とも思う。



「……。」

「…あぅ。」


見た事も無い顔。
普段から表情が読みづらいこともあり、今カイムが何を考えているか見当が付かない。




「にーさん…ごめんなさ————






「「ニャーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!ごめんなさいニャーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」」




「「!?!?!?」」




ナナが口を開きかけたその時、彼方から猛スピードで3匹のアイルーが2人の間に入る。







「ナナさんは悪くないニャ!!」

「!?」

「ごめんなさいニャ〜!ホントはオレ達だけでモンニャン隊には行ってないのニャ〜!」

「!?!?!?」

「だからナナを怒らないで欲しいニャ!!俺様達はナナに助けられたんだニャ!!」


「!?!?!?!?!?」



脳が状況を理解する前に3匹がカイムの足や腰にまとわりつく。



「皆!どうして来たの!」

「ナナさんが居なかったら僕たちは今回の遠征、成功することは絶対できなかったニャ!」
「だからオレ達、ナナさんに何か恩返しが出来ないか考えたんだニャ!」
「そして今駆けつけたんだニャ!!」



くるり、と3匹がカイムの方へと向く。



「「どうかナナ/さん/を許してやってほしいニャ!悪いのは僕/俺/俺様達だニャ!!」」



沈黙。

昏い目が3匹をじろり、と見下ろす。


———やがて。



「…ウチのナナが迷惑をかけました。」



深々と謝罪、目の前のアイルーに対して頭を下げた。


「「ニャ!?」」



「…黙って出て行ったのは驚きましたが、皆さんのお力にナナがなれたのならとても喜ばしいことです。」

「「……。」」

「…勘違いしないで欲しいのですが、私は怒っているわけではありません。」


「「ニャ!?」」


突然の男からの謝罪に三匹が困惑する。


「事情は明かせませんがナナは普段自由が効かない身です、今回貴方方と共に過ごすことが出来たなら、それはナナにとっても良い経験だったはずです。」


「にーさん…。」

「今後とも、ナナと関わる機会がもしあれば、その時も是非仲良くしてやってください。」



微笑んだ、のだろうか。

後姿からはカイムの顔は見えないが、声は聴いたことがない、穏やかな声音だった。






「…だがナナ。」


「ほぇ?」


「皆に心配と迷惑をかけたのは事実だ。」


「…はい。」


圧力のある歩きでナナに迫る。
何かされるのではないかと、この場の全員が思わず息を飲んだ。


「罰として、今から牧場の手伝いをしてこい、無論、そちらの方々からの了解を得られればだがな。」



想像に反しての言葉。
ナナの目から拳骨を予感して出た涙が少し溢れる。



「ね、願ったりも叶ったりだニャ!!ほらナナ!付いてくるニャ!!」


「え!?えぇ!?なんの準備もしてない!!にーーーさーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!」





嵐のような怒涛の勢いで3匹に担ぎ込まれてナナが彼方へと消える。
…森には再び静寂が戻る。




「あんたも意地が悪いわね、全部知ってたくせに。」
「…シュートさん。」



今までだんまりを決め込んでいたシュートが笑みを浮かべながら語りかける。



「…自分達がベルナ村の方達と友好的な関係を築くのは今後の任務にも好都合です、それだけです。」

「ふぅ〜〜ん。」





視線を無視して昏い目が空を仰ぐ。
それはどこか余計な力が抜けた、他の大切な誰かを見ているような目だった