二次創作小説(映像)※倉庫ログ

エピソードナナ3 ( No.93 )
日時: 2016/01/25 21:47
名前: 敷島クルル ◆vhkHu4l20g (ID: QRmoI/Ul)

「ニャ!ルカ様!牧場へようこそニャ!」
「うん!ウドンも元気そうだね!」
「ニャニャニャ!…それはそうと、あの方はどなたですニャ?」
「…僕のハンター仲間。」

ナナを追いかけてはいたが徐々に距離を離され遂には姿を見失った少年は村人に聞き込み調査をして、目撃情報を頼りに牧場へと向かった。
少年が着いた頃には門番であるウドンと呼ばれるアイルーの制止を振り切り、牧場作業をしているアイルー達と遊んでいた。
…否、一方的に少女がアイルー達とじゃれている。

「肉球触らせろ肉球!うりうり〜!」
「ニャ〜!離れるニャ!…ていうか誰だニャ!新手の牧場へのテロリストかニャ!刺客かニャ!」
「あては殺し屋だぞ〜?殺されたくなかったら肉球を差し出せ〜!」
「ニャニャ!差し出す前にアンタが無理やり触ってるニャ!だ、誰かニャ〜!」

目の前で繰り広げられている新手の拷問か何かを見て見ぬ振りをし、近寄らないように他のアイルーは自分達の作業に勤しんでいる。
一通りアイルーを弄んだあとは他のアイルーに目を付けてじゃれている。

牧場は一種のパニックと化していた。

「ナナさん?え、ええと、良くここが分かったね。」
「ルカ遅いぞ!ここアイルー多いんだな!」
「あれ?僕の質問の答えは?」

少年には目をくれずトラ斑のアイルーの肉球弄りを再開する。
その行為を止めるのもなんだかはばかれる、と感じ、近くにいた馴染み深いアイルーへと笑顔で接する。

「ニャイトさんごめんねこんなことになって。」
「ふむ…多少驚きはしたニャ…奴がルカ殿の仲間かニャ?」
「うん、ナナさんって言って悪い人じゃないよ。」
「ニャ…貴方がそう言うのならそうなのでしょうニャ。」

蒼いマントをはためかせ、ニャイトと呼ばれたアイルーが騒ぎを遠巻きに見ていたアイルーへと腰に携えた剣を抜き指示を出す。
その様子を見て、ちらほらと作業をやめていたアイルー達の手が徐々に動き出す。

「それはそうとルカ殿、以前お話していたモンニャン隊設立についてなのですがニャ…。」
「あ!聞きたかった!どうなった?」
「この牧場でニャンター志望のアイルー達を集めて編隊を組ませ、今日丁度出発する予定ニャ。」
「おお!誰が志望したの!?」
「リュウ、ハクサイ、オスカーニャ、どいつもまだまだ未熟でヒヨッコだがニャ…この遠征で変わってくれればいいがニャ。」
「そうだね〜、モンニャン隊が出来れば地域の特産品も取れる上にニャンター志望のアイルーにもいい経験になるからね。」
「私も着いていきたいところですがニャ、任務がある故、お許しをニャ…。」
「あ!そういうつもりで言ったんじゃないよ!気にしないで!」

ふと、視界に入っていたはずの少女がいつの間にか消えていることに気付く。
良く知ったアイルーと話していても存在だけは確認していたはずなのに、と少年は不思議に思う。

数瞬して思考をやめる。

「ナナさんが戻るまでにミルクでもしぼってよっか。」

少年がムーファ、ベルナ地方特有種の草食動物が放たれている牧場へと向かう。





———これはとある昼下がり、少女と小さき勇者達の冒険譚の一端である。

エピソードナナ4 ( No.94 )
日時: 2016/10/12 13:27
名前: 敷島クルル ◆vhkHu4l20g (ID: G.nGjsd9)

「ど、どうしようニャ…」
「俺様に言われても困るニャ…、大体おミャーらが俺様が乗る前にちゃんとチェックしてなかったのが悪いニャ!」
「2人とも落ち着くニャー、こういう天気が良い日はお日様に当たりながら寝るのが一番ニャー。」
「ニャー!寝ないでオスカー!!」

ベルナから続く大河を小舟が一隻下っている。
見れば船には旗がたなびいており、真新しい字で書かれたギルドの紋様が船とは不釣り合いなほどの大きさで誇示しているかのようだ。

対して乗員の姿は見えない。

否、人間の目からは恐らく確認できないだろう。
船の縁よりも低い位置に乗員たちは座り、円を描いている。

「い、今から引き返すとか…?」
「バカを言うなニャ、今俺様達が引き返したらニャイト様に示しがつかないニャ、そもそも川の流れ的に無理ニャ。」
「ニャァ…、そうだよね。」
「zzz」

2匹の耳がへたっと力なく倒れる。
1匹は既に繁殖期が近い暖気にあてられ眠りにはいっているようだ、証拠にモンシロチョウがハクサイと呼ばれていたアイルーの耳に止まる。

「zzz」


そしてこの船のもう1人の乗員。
元々3アイルー分と持ち帰る品しか積めない小舟で人間1人増えたら船の操縦が危なくなるのだが、乗っていたのが小柄な少女だったのが幸いか。


「…どうするニャ。」
「だ〜か〜ら!俺様に聞くニャ!」
「…ぅ〜ん。」
「「!!」」

少女が僅かに寝返りを打つ。
些細な動作に対して、見守っていたアイルー達はひっくり返ったかのように僅かな物陰に一目散に隠れる。

「お、おいハクサイ!俺様はここで見守っているから安心して様子を見てくるニャ!」
「ぼ、僕がニャ!?嫌ニャ!いくなら一緒に行くニャ!リュウ!」
「…うぅ〜ん。」
「「ニャニャーッ!!」」

電撃を当てられたかのようにその場で震える二匹。
周囲の野鳥が驚きその場を飛び去り、その羽音を聞いてか聞かずか、少女が泡沫から目覚める。

「…。」
「……。」

リュウと目が合うナナ。
虎模様の猛々しい毛並もアイルーが縮こまっているせいかむしろ可愛らしく見える。
それでも威嚇だけはしているようで涙目になりながらも少女を睨む。

「…。」
「……ニャ。」
「………………。」
「…………………………ニャニャ。」
「…………………………………………誰?」
「こっちのセリフニャアアアァァァァアアアアア!!!!!」