二次創作小説(映像)※倉庫ログ

prologue ( No.10 )
日時: 2016/02/14 22:52
名前: バタフライ ◆T0qJfISYm6 (ID: cWF1aDDB)

大食堂にやってきた。
「……」
「……」
確かに全員が、暗く沈んだ顔をしている。
「あぁ、ツバサさん。もう大丈夫?」
と、谷崎。
「あぁ。ごめん。心配かけたよね」
「全くだ、せっかく汝に渡すはずの身を焦がした魂も、このように砕けてしまった」
「いや、いい。クッキーは責任を持って食べるから。ありがとう」
全員が席に座る……いや、1人だけいない。
「島津は?」
「意外にも一番ショックを受けていた様子であってな……少し落ち着いてから来るそうだ」
そう喋っていた秋吉の隣に座る。
「……うん?」
と、私の首元を見た秋吉が……
「……どうした?」
「ツバサ殿のへっどほん……」
「?」
外して眺める。特に変わったところはないはずだが……
「す、すまぬ、俺の見間違えだったのかも知れん」
私は首の後ろにヘッドホンを戻した。
……でも、このヘッドホンは結局なんなのだろう。
私の趣味?
誰かの形見?
「じゃあ、ツバサのために、さっき起こったことを話すわね」
寺本の言葉で、私は我に返る。
「あれはあたしが、ツバサを部屋に送り届けてからなんだけど……」




「一体どうしたんだろう……ツバサ……」
「……」
その時だ。
ピンポンパンポーン……
「あ〜あ〜、マイクテスッ!マイクテスッ!オマエラ!この{地下都市ジェネシス}の住み心地はどうかな?
 気に入ってくれたのなら、とっても嬉しいね!
 さて、これからオマエラに、ボクからスペシャルなプレゼントがあります!
 黒の街から跳ね橋が降りているので、中央広場に集まってください!
 あ!ちなみに寺本さん!島津クン!今寝ている子はそのまま眠らせておけばいいからね〜!」
声は聞こえなくなった。
「……なんだ?」
「今の声……もしかして」
部屋の中を見回す寺本、そして……
「多分、この声の奴が監視カメラから覗いてるんだわ。きっと」
「そうだな。でないとさっきのような言葉が出る説明がつかない」

「あ!ちなみに寺本さん!島津クン!今寝ている子はそのまま眠らせておけばいいからね〜!」

「どうする?行くの?罠かもしれないけど……」
少しだけ考えて……
「行かずに何か面倒なことにならないのなら行かないが」
「……」

結局、二人共跳ね橋を渡り、中央広場と呼ばれる場所にやってきた。
「あ、はるはる。レンレンも一緒?」
「レンレンって、俺のことか……?あぁ。一緒だ」
どうやら、ツバサ以外全員がここに集まっているらしい。
「ふっふっふ、闇の玉座より、ついに忌々しき万魔の王が降り立つのであろうか?」
「ワオ!ミス千葉からベリークレバーな香りがします!」
ベリークレイジーの間違いではないだろうか。
「……」
寺本は銅像を見た。
あの銅像に描かれている少女を見て、ツバサは失神した。
「あれれぇ〜?どうしたのぉ寺本ぉ〜?」
「え?……いや、なんにも?」
「考え込む姿も素敵だなぁ寺本ちゃん。その悩み、俺が晴らしてあげようか?」
油断も隙もない高城。
「でも、あの声……なんだかかわいらしい声でしたね」
「黒峰も思った?俺もそう思ったんだけど、だからこそ怖いんだよなぁ」
「ふむ……普通なら推測もできるでありますが……」
様々な言葉が飛び交う。
「あっきーはどう思う?」
「……」
そんな中でも、弓形は小説を読んでいるし、
「大丈夫?不安じゃない?俺が抱きしめてあげようか?」
「では洗面器をお願いします」
「や、やっぱ取り付く島もないなぁ」
早川と高城は相変わらず。
「と、ととと、ところで……」
「ん?どうしたの?北条」
「な、ななな、何か、気配を……感じない?」
「気配?」
見渡す寺本。
「よくある気のせいっちゅうやつちゃうやろな?」
「失礼な!ボクはさっきから、ず〜っとずっと、ず〜〜〜っとここにいるよ!」
「ほら、なんか変な声も聞こえる……し……」
「な、何者!?」
構える秋吉。
「見て!」
寺本が指差すと、そこに教壇のようなものがあった。
「……さっきツバサと一緒に来た時はなかったな」
「そう!鋭いね!寺本さん!島津クン!」
そしてその教壇から……
ボヨヨヨヨ〜〜〜ン!
白と黒の、クマのぬいぐるみが現れた。
「……」
場が凍りついた。
目の前に現れたクマが、声を発した。
「あ〜。あ〜。久しぶりだなぁこの感じ。オマエラ、おはようございます!」
「「おはようございます!」」
フォル、御手洗が二人して頭を下げる。
「いちいちやらなくていいでしょ……」
「うん!いい挨拶だね!挨拶は大事だよね!
 (ピー)先生の漢字テストツアーズの最終問題でもあったもんね!」
わかりづらい例えが出たところで、
「ま、まず自己紹介してよ……てかまずここはどこ?あたしは誰!?
 ……って、あたしは杜若 泉か」
「も〜欲しがりだなぁ杜若さんは!じゃあまずボクの自己紹介から。
 ボクはモノクマ!この希望ヶ峰学園の学園長なのデース!」
「ががが、学園長殿!?そ、それは失礼した!」
こうべを垂れる秋吉。
「いやいや、ボクはフレンドリィな感じでいきたいからね!そんな土下座なんてしなくていいよ!
 特別にボクの足を舐めることで許してあげるよ!」
悪化している気が……
「で、ですが、学園長殿が、どうしてこんなところに……」
御手洗が聞くと……
「さてと、茶番はここまでにして……」
モノクマがクラッカーを取り出し、
パン!
鳴らす。
「オマエラ!この{地下都市ジェネシス}の永住権取得、おめでとうございます!」
……

何を言っているのか、理解するのに時間がかかった。

prologue ( No.11 )
日時: 2016/02/22 20:19
名前: バタフライ ◆T0qJfISYm6 (ID: cWF1aDDB)

「……は?」
呆気にとられる寺本たち。
「そ、それ、どういう意味?学園長?」
「どういう意味って、そのままの意味だよ杜若さん!
 オマエラは、これからこの地下都市ジェネシスで、一生何不自由なく暮らせるんだよ?
 もっと喜んでいいんだよ?{やったー}とか{ハラショー!}とか、
 {ヴェアアアアアア!ココデクラセルー!}とか」
モノクマと名乗ったそのぬいぐるみは、息をするように非現実的なことを口走る。
「えぇ!?つつ、つまり、もうここから出られないのぉ!?」
「ジャパニーズジョーク!?ジャパニーズジョークですよね!?」
「いい加減にしてください!わたくしは、お嬢様のもとへ帰らねばならぬのです!」
「せやせや!こんな場所で一生とか、ふざけたこと言うたらいてこますぞ!」
北条、フォル、黒峰、千堂が矢継ぎ早に話すが……
「も〜うるさいなぁ。オマエラ、本当に{希望の象徴}として希望ヶ峰学園に入学したの?
 もっとどっしり構えないと!アストロン唱えた時みたいに」
まるで聞いていない……のだろうか。
「オマエラのような{希望の象徴}は、保護されてしかるべき存在なんだよ!
 こんなどんな絶望がはびこってるかわかんない外に行くより、よっぽど良心的だと思わない?
 だってオマエラが生活に困らないレベルの施設は揃えてあるんだよ!
 ボクは、オマエラを愛しているからね!
 少なくとも、メガネをかけた古文の先生ばりにはね!」
わかりにくいネタを口走るモノクマ
「も、もう……ライブでドラムをたたけない……!?」
「そんなぁ……太陽の光を浴びたいよぉ……」
「俺を待っている女は……まだ無数にいるのに……!」
その言葉が入ってこない寺本たち。
「まぁでも、ボクも鬼じゃないよ?」
「え?」
「オマエラが、この街を出ることが出来る方法を、ここでご用意しました〜!」
ゲラゲラと下劣な笑いをあげながら言った言葉に……
「それは、どういう方法だ?」
真っ先に食いついたのは、今まで何も喋らなかった島津だった。
「いよっさすが島津クンお目が高い!それはね。と〜っても簡単で、と〜ってもやりやすいことだよ!」
「真か!?」
「そうだよ!多分、今からでも出来るんじゃないかな!」
そしてモノクマは、とんでもないことを口に出した。
「その方法はね……」




「……あたしたちの誰かを殺すこと」
「!?」
寺本の言葉に、私は口をつぐんだ。
「……そう、モノクマは言ったわ。ここか脱出するためには、あたしたちの誰かを殺せって」
「ま、待て!無茶苦茶な話じゃないか!私たちが見ず知らずの人を……どうして殺せるんだ!」
「嫌だなぁツバサさん。見ず知らずだから殺せるんじゃないか〜」
そこへモノクマが現れた。
「ひぃ!?モノクマ!いきなり出てくるでない!」
秋吉は体と違って小心者なのか……?
「うぷぷ、期待通りのリアクションありがとう秋吉クン!」
「……どういう意味だ」
私はあえて、冷静に言った。
本当は血液が沸騰しそうなくらい、怒りがこみ上げていた。
「どういう意味って?簡単だよ。見ず知らずで何にも知らない方が、簡単に殺せるってわけだよ。
 オッケー○ーグル?」
「……そういう意味じゃない。お前は何がやりたいんだ」
「……ほへ?簡単だよ?」
モノクマの目が妖しく光る……
「オマエラ希望の象徴が、絶望に染まるのが見たいだけだよ」
「!?」
驚く私に……
「だってツバサさん。本当は知っているはずだよ?」
「何を……」
「ツバサさん……」

「キミは、自分の両親を遠まわしに殺したんだもんね?」

……固まった。
まるで体が石になったかのように、その場からびくりとも動かなくなった。
「……な、ななっ何を……言ってるの……?ツバサが……そんな事するわけ……ないじゃない……」
「ボクが嘘をつく時は、やさしい嘘しかつかないよ?例えば、城崎温泉に出張したとか」
「こ、こんなかわいいツバサちゃんが……人殺しなんてするわけないだろう!?」
……私が……両親を殺す……?
そもそも、私の両親は誰なのか?
それすらままならないのに……
モノクマから告げられたその言葉は、私を震え上がらせるのに十分だった。
「ま!ボク的にはどうでもいい事実だったね!さてと、オマエラ、既に見た人もいるかも知れないけどさ。
 電子生徒手帳に校則が載ってあるから、それには目を通しておくようにね。
 もし校則の違反をおかしたら……」
「おっ……おかしたら……?」
早川が恐る恐る聞くと……
「もちろん、月に代わって、ぶっ殺しちゃうよ!」
「ぶっ殺すぅ〜!?」
驚く君塚。
「め、滅茶苦茶だろうが!なんでそうなるんだよ!」
「やだなぁ谷崎クン。そんなの校則を守ればいいんだよ。簡単でしょ?」
「か、簡単でしょ?って……よく言えるね……」
「と、いうことで。オマエラ、しっかり電子生徒手帳には目を通しておくようにね!」
それだけを言うと、モノクマはいなくなってしまった。
「……」
再び重い空気が食堂を支配する。
「……どうするのだ?」
千葉が声を出した。
「とりあえず、モノクマが言っていた、電子生徒手帳を読みましょう。
 わたしは……モノクマに殺されるだけはいやです」
「そ、そうだね……つ、ツバサさん。行ける?」
「……あ、あぁ」
……御手洗の言うとおりだ。
あの顔は、本気だ。
モノクマに殺されないためにも……
「ん?」
「……あ、ごめん。持ってきてって言うの忘れてたわ。取りに行こうか?」
「あ、いい。大丈夫だ。自分で取りに行く。ついでに島津も呼んでこないとな」
「うん。おねがい」
私は重い足のまま、食堂を出た。
……

「キミは、自分の両親を遠まわしに殺したんだもんね?

「……」
意味がわからなかった。
遠まわしに……両親を殺した……?
そもそもなんで、モノクマがそんなことを知っている……?
……つい言葉がこぼれた。

「私は……誰だ……」