二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 遊戯王デュエルモンスターズEXS(イクス) ( No.157 )
- 日時: 2016/11/07 21:28
- 名前: ロード (ID: qRt8qnz/)
第二十八話「飛翔せよネオス! コンタクト融合!」
デッキを無くした真薄のために、ひた走っていた遊太達。
しかし、その捜索も虚しく、真薄のデッキは見つからなかった。
遊太と菊姫と岩ノ井が、観客席で落ち合う。
「どうだ遊太? 見つかったか?」
「結果は……全然ダメ! 1枚も見つからなかったよ」
「こっちもッス〜……」
そして無情にも、アナウンスが流れる。
「次の試合の用意ができました。石崎洋太選手と、広野真薄選手は、デュエルリングに来てください」
「チクショウ! 真薄が折角シード相手に勝って、ベスト8をかけるデュエルに出場できるって言うのに、これじゃあ……」
「でも、さっき会った才羽さんの話じゃ、デッキを持って何処かへ行く対戦相手の石崎の姿を見たって言うけど……」
「あんだと!? じゃあ犯人はその石崎の奴だな! あの野郎……アキラに負けて卑怯な手を使うようになりやがって……! 行くぞ岩ノ井!」
「あ、アネゴ、どこへ……?」
「石崎の所だよ! 行って色々聞き出してやる!」
「待ってよ菊姫。今のままじゃ、どうせ知らないってしらを切られるだけだよ。才羽さんが目撃者を探してるって言うけど……」
「そんなもん待ってられるかよ! 試合は目前なんだぞ! 行かなきゃ真薄が危ないんだぞ! アタシは行くね!」
そう言って、菊姫はデュエルリングに向かって走って行った。それを、遊太と岩ノ井は追いかけて行った。
そして、デュエルリング。審判と石崎が対戦相手である真薄を待って、既に5分が経過していた。
「うーむ……広野真薄選手がまだ来ませんね……このままでは、真薄選手を失格にせざるをえませんが……何をしているのでしょうか?」
「さあね、何か探し物でもしているんじゃないの?」
わざとらしく知らないような口振りで言う石崎。心の中では、こう思っていた。
(ククク……今頃はデッキを探して慌てているはずさ。例え見つけたとしても、カードは使えなくて結局はデュエルには出れない。最初からこうすればよかったんじゃないか。わざわざお上品にデュエルしてやる必要なんて無かったのさ。アキラと戦うまで、僕は負ける訳にはいかないのさ)
と、メガネをいじくりながらそy思っている所に。
「やいテメエ! そんなことしてまで勝ちてえのか!」
審判と石崎が振り向くと、そこには殺気立っている菊姫と、それを抑えている遊太と岩ノ井がいた。
「三人方、何か……?」
「審判! コイツは次の対戦相手の真薄のデッキをどこかに捨てやがった不届き者だ! 即刻退場を宣告してくれ!」
「な、なんですって?」
「何の言いがかりだよ、お前。僕が何をしたって言うのさ?」
「とぼけんじゃねえ! 調べはちゃんとついてんだよ! この卑怯者!」
「あーあ、良いのかな〜そんなこと言って……暴言で失格になるかもしれないよ? ね? 審判さん」
「あ、ああ確かに……菊姫さん。言うのは勝手ですけど、度が過ぎるとそれなりのことを考えますよ?」
「んぐぐ……」
審判に言われて、押し黙る菊姫。
「だから言ったじゃん、今行ってもしらを切られるだけって!」
「ここはひとまず、落ち着いて……」
岩ノ井と遊太が菊姫をなだめる。が、菊姫はなんとも腑に落ちない怒りの表情を浮かべてそのまま二人に押さえられている。
すると、デュエルリングの向こうから誰か二人が来た。
「待ってください! その三人の話を聞いてください!」
「あなたは……才羽亮さん!」
「それに、シードの女性デュエリスト、天羽天子さんもいるッス!」
才羽亮と、長い黒髪をたなびかせながら来た天羽天子。石崎は不満げな顔をする。
「なんだよ君達は、この言いがかり野郎の肩を持つのかい?」
「馬鹿を言うな、失格になるのはお前だ石崎!」
「な、なんでそうなるのさ……君達も僕に言いがかりをつけるのかい?」
「勘違いしないでちょうだい、私達は見つけたのよ。真薄君のデッキを」
「えっ!? 見つけてくれたッスかあ!?」
「やった! で、どこにあったんですか?」
「女子トイレの便器の中に、『E・HERO』デッキが浸かっていたわ。本人に探させない所に隠すなんて、あなたも相当陰湿ね」
真相がわかったと同時に、菊姫は石崎に噛みつく。
「どこまでも汚い真似しやがって! そうまでして勝ちたいのか!」
「そうだそうだ!」
ついでに岩ノ井も便乗して。が、石崎はというと。
「うるさいよお前達! 例え捨ててあったとしても、それがアイツのとは限らないだろ! それとも、カードに名前でも書いてあったのかい!?」
と、逆ギレした石崎。すかさず、審判が止めにかかる。
「お待ちください。ひとまずは真薄君が到着しなければ、何も始まらない訳でして……これ以上待っていると他の皆様にも影響が出ますので、後5分以内に真薄選手が来なければ、真薄選手を失格にします!」
「そ、そんな!」
「遊太君、審判の言うとおりッスよ。これ以上長引かせたら、アネゴや鏡山の試合まで……」
「う……」
ひとまず、真薄の到着を待つ一同。遊太と岩ノ井達は不安そうな顔を、菊姫は怒った顔を、石崎は勝ち誇った顔をしていた。
一方真薄はというと、自分のデッキを探すためにひた走っていたが、廊下で立ち尽くしていた。
「そんな……これだけ探しても見つからないなんて……折角、折角一生懸命頑張って作ったデッキで、シード相手にも勝てたのに……こんなことで、不意になってしまうなんて……」
真薄は床に膝まづく。その顔には、涙が浮かんでいた。
それはそうだろう。真薄は、ついこの間デュエルを始めた初心者。だが、遊太達と出会ったことで、見違える程の成長を遂げた。
その証拠として、見事シードの才羽を破る活躍を見せた。
だが、今はこんな状況で、何もできない状況になっていた。
「ううっ……僕はなんてバカなんだ……あの時デッキをちゃんと持っていけば、こんなことにはならなかったのに……」
今はただ、泣くことしかできない真薄。すると、彼の耳に、声が聞こえてきた。
(お前は、このまま諦めると言うのか?)
(えっ……だ、誰ですか?)
(今はそんなことを聞いている場合ではないだろう? もう一度聞く、このまま諦めるのか?)
(それは……諦めたくないですよ……けど、デッキが無いんじゃ……)
(デッキなら、そこにあるだろう?)
(デッキ……あっ、これ……)
真薄が懐から取り出したのは、お守り代わりに持ってきた『コンタクト融合ネオス』デッキである。遊戯王を始めるきっかけとなった、上代勇気のデッキ。
(けど、このデッキは未完成で、構築も甘いデッキで……)
(それがどうしたって言うんだ? お前の憧れていたデュエリストは、内容もわからないデッキを使って勝っていた奴だぞ? 未完成だからなんだ! 困難に立ち向かってこそ、HEROになれるんじゃないか!?)
(HERO……)
誰かわからない声とはいえ、心を打たれた真薄。困難に立ち向かう。そうすればHEROになれる。それは、アニメで勇気が言った、 名言だった。
心打たれた真薄は、涙を拭い、立ち上がる。
(ありがとう。なんか、スッキリしました。……どこの誰だか知らないですけど、ありがとうございました。あ……あなたは誰ですか?)
(……私はお前をいつでも見守っている者とだけ言っておこう。さあ、行くんだ!)
(は、はいっ!)
そう言って、真薄はデュエルリングに向かって行った。
一方デュエルリング。審判がタイム計測をしてから、まもなく5分になろうとしていた。
「クソッ、真薄の奴……」
「まだ……来ないね」
「審判さ〜ん、もう来ないから、失格でいいんじゃ無いですか?」
「ふざけるな! 真薄は来る! 絶対にな!」
「ふ〜ん……まあ僕はどうでもいいけどね」
(真薄君……早く来て!)
「残り、1分です」
後1分。そう宣言されて、遊太達の顔が青ざめる。ここまできたら、もう間に合わないかも……という思いが頭を過ったからだ。
その時だった。
「待ってくださいっ!」
声が聞こえた。遊太達の良く知る、あの声が。
「真薄君!」
「やっと来たか!」
「すいません……大分遅くなってしまいました……」
やっとこさ到着した真薄に、安堵の表情を浮かべる遊太達。石崎は、苦々しい顔をしていたが。
「てっきり逃げたのかと思ったけどなあ」
「僕は逃げも隠れもしません!」
「真薄君、君のデッキが見つかったってさ。才羽さん、そのデッキを……」
「……悪いが、それはできない。長時間水に浸かっていたらしく、デュエルでは使えなくなってしまっている」
「そ、そんな!」
「ここまで来たって言うのに!」
「ゴメンね、探した時にはこのままで……」
やっと戦えると思ったのに、ここでどん底へ落とされた遊太達。それを見て、石崎は。
「デッキがないんだったら、デュエルはできませんね。じゃあこの試合は僕の不戦勝ということで……」
「待ってください!」
石崎の言葉を、真薄が遮る。そして、懐からデッキを取り出して言う。
「デッキならあります。だから、デュエルをさせてください!」
そのデッキを見て、遊太達は驚き、石崎は唖然とする。まるで信じられないといった具合に。
「……了解しました。デュエルを認めます!」
「やった!」
「いえええい!」
「良かった! 良かったッス!」
審判からデュエルの許可が降りて、喜ぶ遊太達。才羽や天羽も、微笑む。
石崎は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。それに、真薄は堂々と言う。
「さあ、デュエルです!」
「ぐぐぐ……なら、叩き潰すまでだ!」
「それでは、デッキを交換してシャッフルし、じゃんけんをしてください!」
お互いにシャッフルし、じゃんけんを行う二人。石崎が先攻を取った。
そして、お互いにリングに登る。
(あの時潰しておいたのに、もう一つデッキを持っているとは……クソッ)
(このデュエル、絶対に負けない。僕のもう1つのデッキのために。そして、僕のために!)
「それでは、これより石崎洋太選手と広野真薄選手のデュエルを始めます!」
「「ルールはマスタールール3! ライフは8000!」」
「「デュエル!」」