二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 遊戯王デュエルモンスターズEXS(イクス) ( No.191 )
日時: 2017/01/17 15:37
名前: ロード (ID: 6tDnREag)

(ダメかもしれねえ……クソッ、こうなるんだったら、才羽の忠告をちゃんと聞いておくんだったぜ!)

今になって後悔する菊姫。だが、後悔したところで、どうしようもできないと思っていた。

(チク……ショオ……これじゃあアイツらにも、アイツにも、申し訳が立たねえ……)

そう言って、遊太達のいる観客席を見る菊姫。その表情には、どこか曇りがあった。

(殆ど何もできず、こんなにも無様に負けるアタシ……ははっ、カッコ悪……)

菊姫は、思い出したくないことを思い出していた。脳裏には、カッコ悪い、ダサい、こんなものかという言葉が、頭の中で反芻されていた。向こうにいる、取り巻き二人と遊太を眺めながら。

その様子を見て、天羽は気づく。菊姫が、何に縛られ、それによって実力を発揮できていないことを、見抜いた。

(ああ、なるほど。それで実力を発揮できなかったのね)

感づいた天羽は、菊姫に語りかける。

「辛いわよね、誰かの期待に答えるのって。息苦しくて、嫌になるくらい」

「……?」

「でも、強いあなたを求められると、あなたは途端に実力を出せなくなる。だって、あなたは信用を失うのが怖いから」

「な、何の話だよ……」

「いわば、保険って奴よ。あなたは、無意識のうちに自分の全力を封印している。それは、全力を出して負けると、仲間に見限られてしまうって思ってるんじゃ? 手抜きなら、負けても言い訳が立つしね」

その一言に、菊姫はドキッとする。いかにも図星を突かれたという驚き方だ。

「……図星って奴ね。けれどね、もう一度よく考えてみて、あなたの隣にいる友達は、あなたの実力だけしか見てないのか、そうでないのか……」

その言葉に、少しばかり心揺さぶられる菊姫。

(そうだ……アタシは……)

あの日のことを、思い出す。

(アタシは昔、そりゃもう、多くの取り巻きがいた。皆、アタシを褒め称えてた)

(でも、何故か皆アタシとはデュエルしたがらず、よいしょするだけだった。けど、アタシはそれでも満足だった)

(けれど、あの日。アキラに全力を注いでデュエルして負けた時、皆はアタシに……)

「菊姫はこんな程度かよ!」

「俺達こんなに大したことない奴をよいしょしてたのかよ」

「あーやめたやめた! こんな奴にくっつくのはもうたくさんだ!」

そう言って、皆はアタシに罵声を浴びせて去って行った。そして、わかっちまった。皆が目当てにしていたのは、アタシの実力だけ。アタシなんて、はなから気にしてなかった。

そう思ってた。

「アネゴ……」

取り巻きの一部だった、岩ノ井と鏡山が、アタシの前に来ていた。

「なんだよ、お前ら……行くんだったら、さっさと行けよ……! それとも、アタシを笑いにでも来たのかい?」

「違うッス」

「俺達二人は昔、アネゴに助けてもらったことがあります」

「だから、その恩返しをしたいッス」

「いつも引っ張ってくれたアネゴを、今度は俺達が支える番ですから!」

「……!」

その言葉に、アタシはどんだけ救われたっけな。

その後、アタシ達は三人で活動するようになった。仲も良くなったし、デュエルだってした。

けれど、アタシの戦績はあまり良くなかった。

それでも良いって、思っていたけど……。

「アネゴー!」

観客席から、声が聞こえる。

「アネゴ、頑張ってくださーい!」

「逆転してくださーい!」

あの二人が、バカみたいにアタシの心配をする。

その横では、遊太達が必死で見守る。

ああ、そういうことか。アタシは、アイツらに全力で戦えなんて言いながら、ウソもついてたってことか。

アイツらの心からの信頼を、裏切るような。


11・菊姫のターン

「アタシのターン、ドロー!」(菊姫手札0→1)

「オイ、天羽」

「何?」

「ありがとよ。目ぇ覚まさせてくれて。けど、ここで勝つのはアタシだ! アイツらのためにも、アタシのためにも!」

「そう、わかったみたいね。けど、この状況を逆転できるのかしら? 私の場にはカードの発動を全て無効化する天使がいる。どうにかしなきゃ、逆転の糸口は見えないわよ?」

(確かにそうだ……アタシのカードの発動を許さない、絶対制圧のモンスター……どうにかして排除か無効化しなきゃ、アタシに勝利は訪れねえ!)

さっきドローしたカードを見ても、この状況では使えない『古代の機械歯車』。しかし、策がない訳ではなかった。

(今アタシの場には『メタモルポット』が裏守備表示でいる……コイツをリバースさせれば、手札を全て捨てて新たに5枚ドローできる……が、果たして奴が気安くドローさせてくれるかね?)

(カードの発動を無効化されるんじゃ、リバースしても意味無いよな……)

そう思い、『古代の機械歯車』を裏守備表示でセットしようとする菊姫。しかし、何かが菊姫の中に走る。

(いや待てよ……? カードの、発動……? 奴は確か、カードの発動を無効化、と言ってなかったか……?)

突然のひらめきが、菊姫の菊姫の頭の中を駆け巡った。そして。

(ある! この状況を打開出来そうなカードが、1枚だけある! それは……!)

菊姫が手を伸ばしたのは、手札でも、フィールドでもなかった。そこは。

「アタシは、墓地のカードの効果を発動する!」

「……気づいたみたいね」

「墓地より『ブレイクスルー・スキル』を除外し、効果発動! 自分のターン、このカードを除外することで、相手モンスター1体の効果を無効にする! コイツでどうだ!?」(菊姫墓地10→9)

墓地より出でた波状攻撃が、『神光の宣告者』を襲う! チェーンは組まれなかった。

「……ご名答よ、あくまで『神光の宣告者』が無効にするのは『カードの』発動。『効果は』流石に無効にできないわ」

「よっしゃ! あの忌々しい宣告者の効果を無効にしてやったぜ!」

これを見て、龍矢が疑問に思う。

「あれ? カードを発動したんだから、効果が無効にされるんじゃないのか?」

それを聞いて、真薄が口添えをする。

「えっと……これは確か……『カードを発動した』のではなく、『カードの効果を発動した』ということであって……」

真薄のいまいち反応に困る返答に、今度は遊太が答える。

「いわば、『効果そのもの』を発動したってことさ」

「どういうことだよ遊太?」

「『神光の宣告者』が無効にするのは、いわば『カードで発動する』効果。いわば、カードをそのまま発動するようなことで、伏せカードや手札誘発効果とかが、これに該当するね」

「『効果そのもの』の発動は、効果だけをそのまま使うということで、墓地にあった『ブレイクスルー・スキル』は、墓地にある時除外することで効果を発動できる。その条件で効果だけを発動したということなのさ」

「な、なるほど……!」

「本当にわかっているの? 龍矢。長いことやっているのに、私はわかっていたわよ」

「う、ひでえ……」

「さ、観戦に戻るわよ。ここから菊姫さんの大逆転が始まるかもしれないから……」

何気ない会話だったが、鏡山は何かがおかしいことに気づく。

(アネゴから直接教わった真薄ならまだしも、ほとんど独学だった遊太がなんでそんなことをちゃんとわかっているんだ?)

そしてデュエルリング。

「よっしゃ! このまま一気に行くぞ! アタシはモンスターを反転召喚! 『メタモルポット』! そしてリバース効果発動。互いのプレイヤーは、手札を全て捨てて新たに5枚ドローする! さあ、手札を捨ててカードを引けよ」(菊姫手札1→5)(菊姫墓地9→10)

「わかったわ」(天羽手札3→5)(天羽墓地11→14)

今の手札を精算し、新たに5枚引いた菊姫。すると、驚くべきカードが手札にあった。

(こ、これは『パワー・ボンド』!)

『パワー・ボンド』とは、機械族専用の融合魔法であり、極めてハイリスク・ハイリターンのカードである。

(そして、この手札……この手札なら、アタシのデッキの中でも最上級に強力な融合モンスターが呼べる!)

が、そのモンスターは、あの時アキラに負けた時に出してしまったカードであり、菊姫の苦い思い出となっているカードであった。が。

(ここで出さなきゃ、もうついてこいなんてあの二人に言う資格はねえ……だから!)

「天羽、ここで一つ宣言をするぜ」

「何?」

「今からアタシが出すモンスターは、アタシが持つモンスターの中で、トップクラスのモンスターだ!」