二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 私と俺とシンデレラ ( No.289 )
- 日時: 2017/09/21 20:12
- 名前: トクマ (ID: HBvApUx3)
トクマ「まさか……泣き疲れて眠るとはな……」
アシェンプテルがサンドリヨンの腕の中でスヤスヤと眠っているのを見て、知らずにため息をこぼすトクマ。
サンドリヨン「彼女は無意識で孤独に戦ってきたのです。緊張の糸が切れたのでしょう」
サンドリヨンの言葉に渋々納得し、ここから館にどう帰るか現実逃避も含めて考えようとする。
シュネー「そういえば、なんで二人はここにいるのですか?」
瞬間、トクマとサンドリヨンの寿命が少しだけ縮まった気がした。
何とか誤魔化そうとトクマはサンドリヨンにアイコンタクトを試みるも彼女も必死でバレないように焦っている。
トクマ&サンドリヨン「…………」
シュネー「……何で黙るんですか?」
身体から滝のように冷や汗を流す二人に疑惑の目を向けるシュネー。
……私が知らない私服……二人の様子……お姉さまから香る知らない香水……この男にしては珍しいおしゃれ……おしゃれ……!!
そこまで考えたシュネーはピースがぴったりとハマったかのような達成感と嫉妬が身体から溢れだし、槍を取り出した。
シュネー「……なるほど……そういう意味ですか……」
トクマ「……おい、なんでジリジリ寄ってくんの? 怖いわ!! 虚ろ目でゆらゆらと揺れながら近寄ってくんな!! て言うか、なんで槍を構えてんの? え? ちょっと洒落にならないんだけど! ちょ、おま、ヤメロォ!!」
いつもより恐ろしさを感じるシュネーの様子にビビるトクマ。避けようにも身体の疲労から素早く動けない。
シュネー「さぁ、お前の罪をカゾエロォォォォ!!」
その言葉とともにシュネーはトクマに槍を突き出した状態で突撃した。このままいけばトクマは串刺しになり、『復讐者串刺し殺人事件〜リンゴは死の香り〜』という謎の火サスが始まってしまう。
シュネー「ぶげら!?」
メロウ「邪魔しちゃダメよ」
しかし、シュネーの首に何かが巻き付かれ、メロウの手へとシュネーが高速で引きずられていく。半ば急ブレーキのような形だった為、シュネーは衝撃で意識を失う。
トクマ「さ、サンキュー……」
メロウ「良いわよ。アシェを止めてくれた事に比べれば軽い事よ……ボウヤ」
シュネーから助けてくれたメロウに感謝するトクマにメロウはどこか真剣な目で話しかける。
メロウ「言わなきゃわからない事もあるのよ」
トクマ「……そりゃ、あるだろ?」
メロウ「……ハァ……」
意図がわかっていない返事をするトクマにメロウはため息を吐いた。
トレ子「それでは、私達は先に戻りますね」
トクマ「あ、オレ達も運んでくれないか」
トレ子「すいません……どうしても二人余ってしまうのでサンドリヨンと二人で何とかして館に戻ってください」
トクマ「いや、誰か呼んでこいよ!」
トレ子「私は忘れっぽいので……では、シュネーさんと二人っきりに——」
トクマ「無理言って悪かった。サンドリヨンと二人で何とかしよう」
トレ子「ご理解ありがとうございます」
トレ子の言葉に反論するもある意味恐ろしい言葉に屈するトクマ。もしシュネーと二人になってしまったら、今度こそ事件が起きそうである。具体的には火サスのような事件が。
空飛ぶ絨毯や大聖の筋斗雲で館へと向かうメンバーを見送るトクマと座ったまま海を見つめるサンドリヨン。
トクマ「あいつ、何て言う脅しをかけてくんだよ……」
サンドリヨン「……」
トクマ「……サンドリヨン?」
ボー、とした様子のサンドリヨンを心配して声をかけるトクマ。その様子に気付いたサンドリヨンは慌てながらも答えた。
サンドリヨン「……いえ……その……終わったんだなと思ったら身体から力が抜けてしまって……」
トクマ「今日だけでも色々あったからな……」
よくよく考えれば、濃い一日だった……初めはマリオの『デートしろ』命令がきっかけだった。ラーメンとは言えないラーメンを食べたり、ナイトメアキッドと恋罵女の遭遇、ゲーセンや映画鑑賞、海でサンドリヨンが心の内を独白してアシェンプテルの奇襲、アシェンプテルと戦って、和解して、とにもかくにも色々あった事がよくわかった。
トクマ「……てか、お前は無茶しすぎだろ。アシェンプテルの斬撃を殴って相殺するなんて……あれ見た時はヒヤッとしたんだからな」
サンドリヨン「あれは魔力を腕に集中してダメージを軽減したんです……それに、無茶ならトクマさんの方ですよ」
お互いの言葉に納得いかないのか不満げな表情を見せる二人。
トクマ「いいや、サンドリヨンだ」
サンドリヨン「いえ、トクマさんです!」
トクマ「サンドリヨンだ!」
サンドリヨン「トクマさんです!」
トクマ「サンドリヨン!」
サンドリヨン「トクマさん!」
トクマ&サンドリヨン「…………プッ」
言いあう事が可笑しかったのか笑う二人。砂浜に二つの笑い声が響く。
サンドリヨン「……トクマさん」
トクマ「なんだ?」
サンドリヨン「貴方が……自身の過去を語ってくれる事を……待っていますからね」
トクマ「……オレの過去なんざおもしろくもないぞ」
サンドリヨン「それでもです……それに貴方は私の過去を知ったんです。私も貴方の過去を知らないと不公平です」
トクマ「どんな理由だよ……帰るぞ」
サンドリヨン「……あの……」
サンドリヨンの言葉に素っ気なくトクマが答えると、サンドリヨンは申し訳なさそうに返事をする。
サンドリヨン「……身体に力が入らなくて……立ち上がれません」
トクマ「……はぁ……」
その様子にトクマは仕方なさそうに息を軽く吐き、サンドリヨンを横抱きして持ち上げた。
トクマ「よっこいしょ」
サンドリヨン「……ふぁ!?」
お姫様だっこで。
お姫様だっこで(二回目)。
お姫様だっこで(三回目)。
サンドリヨン「え、あ、あの!?」
トクマ「近くにまだ使えるリアカーが落ちてた。あそこまで運ぶぞ」
サンドリヨン「……このまま館まで運ばないんですね」
トクマ「そこまで行けねぇよ」
まさかの行動に慌てるサンドリヨンだが、(出来る限り)冷静に答えるトクマに少しだけ残念そうに呟く。
しかし、館までお姫様だっこでするのは流石にキツいのでは……特に腕が持たない。
そのままリアカーの方まで歩いていくトクマとサンドリヨンは——
???「もういいかーい?」
トクマ&サンドリヨン「ファら!?」
——紫と緑の衣装が目立つ道化師のような格好をした男性に声をかけられて驚いた。その際にトクマはサンドリヨンを落とさないように必死に耐えた。
???「いやー、見てて愉快愉快……何回か『押し倒してしまえ!』と思ったか」
サンドリヨン「だ、誰ですきゃ!!」
トクマ「本当に誰だテメー! 仮面ライダーWのサイクロンジョーカーみたいな配色しやがって……半分こ怪人って呼ぶぞ!」
煽るように言う道化師に慌てて言ったため噛んだサンドリヨンとケンカ腰になるトクマ。その様子を見た道化師はニコニコと笑いながら自己紹介を始めた。
マグス「マグス・クラウン……その正体は道化か……それとも悪魔か……」
道化師——マグス・クラウンに固唾を飲むサンドリヨン。トクマはマグスに一言言った。
トクマ「……間を取って変態で」
マグス「却下だ」
即答で却下されるも気にしないトクマ。彼自身は冗談で言ったようだ……最も、変態だと答えた瞬間に全力で逃走しようと考えていた。
サンドリヨン「……何の用ですか」
マグス「そんなに威圧しても、お姫様だっこされてたらあんまり怖くないよ……戦闘はしないよ。様子見に来ただけだから」
トクマ「……様子見?」
マグスの様子に警戒するトクマとサンドリヨン。その様子にマグスはニヤリ、と怪しく笑った。
マグス「そう、何を隠そう……アシェンプテルにクリスタルを渡したのは他でもない、この私達さ!!」
サンドリヨン「……な!?」
まさかの言葉に驚愕するサンドリヨン。トクマも目を点にする。
マグス「彼女に渡し、どのような復讐劇が起こるのか焚き付け、それを観賞していたのさ!」
サンドリヨン「……貴方が……アシェを……!!」
マグス「誤解しないでくれよ。やったのは私ではなく、私の仲間だ……くれぐれも矛先を間違えな——」
トクマ「……おい」
サンドリヨンに注意するマグスだったが、トクマが横から声——しかし、いつものような声ではなく、感情を削ぎ落とした機械のような声で話しかけてきた。
トクマ「お前がどこの誰で、何しようが勝手にすればいい……モグラ・ブラウンだかマダム・クラムチャウダーだか知らねぇけど勝手に名乗っても構わねぇ……けどよ……“オレ”の琴線に触れるなら話は別だ……」
トクマ「テメェ等の息の根ごと“俺”が奪い尽くすぞ」
冷淡に、冷徹に、冷酷に言うトクマの言葉に固まるサンドリヨン。顔を見ようにも見えず、唯一顔が見えたのは相対してるマグスだけだった。トクマの様子にマグスは先程よりも怪しく、妖しく、不気味に笑った。
マグス「……こいつは怖い怖い。触らぬ神に……いや、邪神に祟りなしとはこの事か」
トクマ「素敵言葉どーも。お礼に末代まで祟ってやろうか?」
マグス「復讐者に……それもハスターの契約者にそれを言われると冗談に聞こえなくて困るな……さっさと去るか」
声の度合いから本気だと判断したマグスはトクマとサンドリヨンから離れ、まるで手品師の挨拶のように大振りに会釈した。
マグス「それではお二人さん。縁があったらまた会おう」
ボン、マグスの足元から濃い煙が現れ、マグスの姿を隠して煙が晴れると道化師の姿が影も形もなくなっていた。
トクマ「……マグス……か……」
サンドリヨン「油断できない人物でしたね」
トクマ「……今度こそ帰るとするか……あ、言い忘れる所だった」
リアカーの元へ歩こうとしたトクマが何かを思いだし、サンドリヨンに話しかける。
トクマ「おかえり、サンドリヨン」
サンドリヨン「はい、ただいま戻りました」
その様子に、月が笑っていた。
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