二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 神父が幻想入り(仮題) ( No.132 )
- 日時: 2017/02/12 16:07
- 名前: ゼラチン ◆SvRsgTHFT2 (ID: Z3U646dh)
「ん・・・」
ペガは見覚えのある場所で目覚める。
「貴方、前もここに運ばれて来たわよね」
永琳がペガの顔を見下ろす。
「うるさい・・・今回は麦じゃないからな、大丈夫だ」
「前より重傷になってどうするのよ、休みなさい」
曖昧な返事をしてペガは目を閉じる。
(ステイク・・・・・・)
拳に力が入る。悔しいのだ。自分の全力を封殺され一方的に敗北した事が。
(あいつの目的はなんだ?やっぱり湖に関係しているのか?)
あの湖のただならぬ雰囲気、もし水中に麦の目的に関する重要な事実があったなら・・・。
「・・・なあ、誰が俺を運んで来たんだ?」
「人里の人間と、前にも運んで来てくれた早苗よ」
「そうか」
そのまま二度目の睡眠に入ろうとしていた時だった。
「そういえばあの子、これは妖怪の仕業です!退治しないと!って言ってたわね」
その言葉を聞いた瞬間、ペガはベッドから跳ね起きる。
「出口は・・・あそこか」
扉に向かって走り出す。
「ちょっと!?どこ行くの?」
「知るか!」
(そんなの俺が・・・聞きてえよ・・・・・・顔も知らねえ他人だぞ)
考えるより先に体が動いた。一番困惑しているのはペガであろう。
彼は、昔から戦えれば良い、何よりも好奇心で動く男だった。
そんな彼が名前も知らない早苗という女性が"ステイク"と会おうとしているのを知った時、反射的に体が動いた。
(わざわざ完敗した相手に戦う目的じゃないのに会うなんて俺は何をしようとしてんだ?)
脳内で自問が繰り返される。
彼の歪んだ信念が、粉々に砕けようとしていた。
何故そんな事をするのか、何が目的でステイクのもとへ向かおうとしているのか、
(・・・・・・信じられるか)
何度理由を探しても『彼女を守ること』しか出てこない。
きっと、彼女以外の人間でも彼は動いたのだろう。
ただ、ほんの少しのきっかけが必要だっただけなのだ。
「・・・誰かを守る?それって、楽しいのか?」
きっとそれは、やってみれば分かる。
立ち止まり空を見上げ、ペガは笑う。そして彼は再び歩き始める。
この瞬間に、彼の今までの信念と存在意義は、完全に砕け散った。
ステイクはふらりとペガと戦った場所を訪れていた。
「どこに行ったのだろうか・・・」
こっそりと後ろに忍び寄る人影があった。
「犯人は現場に戻るっていいますよね!お縄頂戴です!」
緑色の髪の少女、東風谷早苗であった。
(間に合え・・・・・・)
そんな事も知らずにペガは走る。
14話 さよならへのカウントダウン
- Re: 神父が幻想入り(仮題) ( No.133 )
- 日時: 2017/02/14 18:01
- 名前: ゼラチン ◆SvRsgTHFT2 (ID: Z3U646dh)
博麗神社
プッチはどうしてもあの湖が忘れられずにいた。怪しく輝くというあの湖が。
「はぁ・・・」
「何ため息ついてるのよ」
プッチの後ろには霊夢が居た。出かけようと外に出ようとしている。
「どこに行くんだ?」
「人が森で倒れていたのよ、今犯人を探す所よ」
「人が森で・・・・・・」
(森?私が行ったあの森のことか?だとすれば・・・)
迎えに行くと言ったペガの姿が浮かぶ。その場を立ちプッチは霊夢に向き直る。
「どうしたの?」
「その犯人探し、私も向かおう」
もし倒れていた人物がペガなら、ペガが迎えに行った人物こそ犯人でありあの湖の謎、もしかしたら池について知っているかも知れない。
森。
ペガが倒れていた場所の周囲には人だかりができていた。
「なんでこんな場所に人がいるんだ?」
「知らないわよ、私だって予想してなかったし」
とりあえずその倒れていたらしい場所にプッチは歩く。
その場所は何もない、血さえも
「なあなあ、ちょっとここ見てみなよ」
中年男性がその場所を指差す。
「もう見てるが」
「もっと近くで!」
怪しいと思いながら顔を近づけてみる。
「・・・・・・何もない、これで満足か?」
「ああ、満足だよ。君が見てくれたんだ」
その声は中年男性の声ではなくなっていた。思わず顔を上げようとすると顔を地面に押し付けられる。
「プッチ!?貴方、何やってるの!」
「うるさいよ、僕はこのプッチ君と話してるんだ」
「お前は・・・?」
「はじめまして、麦だよ。君達がこんな場所に来るからろくに準備ができてないのに僕が足止めしないといけないじゃないか」
地面の土が動きはじめ人の形になっていく、さらにそれが数十体、プッチと霊夢を囲む。
「僕も暇じゃないんだ。早く終わらせよう」
- Re: 神父が幻想入り(仮題) ( No.134 )
- 日時: 2017/02/25 08:45
- 名前: ゼラチン ◆SvRsgTHFT2 (ID: Z3U646dh)
「ねえ、プッチ君がさっさとここから消えてくれれば僕は楽なんだけどね、どう?今逃げてくれれば何もしないよ」
霊夢は不安そうにプッチを見る。
「霊夢、頼みがある」
「え?頼み?」
「ああ、紅魔館から咲夜を連れてきてくれないか?」
「どうして?」
「咲夜の能力だと安全に本体を叩けるだろう」
霊夢は頷き逃げて行く。
「あっさり逃げさせてくれるんだな」
「逃げてくれれば僕はすごく助かるんだ。プッチ君が逃げてくれないのは残念だったけどね」
麦は押し付けていた手を離す。同時に土人形が崩れプッチと麦だけがその場に残った。
「プッチ君、あの湖はあと一人誰か実験台が必要なんだ。君がなってくれるかい?」
「その実験は興味深いな、代わりにお前が実験台となれば解決なんじゃないか?」
「面白い!やっぱりこの世界は面白いよプッチ君!!」
紅魔館
「はぁ・・・はぁ・・・咲夜は居る」
霊夢が呼ぶと咲夜はすぐさま駆けつける。
「なんでしょう・・・って霊夢?」
「プッチが・・・・・・大変なの・・・すぐ来て!」
「え!?・・・わかったわ、すぐ行く」
「待ちなさい」
二人の動きが静止する。この屋敷の主の声で、
「・・・お嬢様?」
「私が行くわ、準備しなさい」
立ち上がったのは、レミリアだった。
- Re: 神父が幻想入り(仮題) ( No.135 )
- 日時: 2017/03/20 20:14
- 名前: ゼラチン ◆SvRsgTHFT2 (ID: Z3U646dh)
早苗はステイクがただの人間ではないと思った。
だがここで見逃したらまたステイクが人を傷つけるかもしれない。
「なんだ小娘が、ここにいた男を知っているのか?」
「その人は私が運びました。重傷でしたので」
「ならば生きているか・・・」
ステイクは早苗に近づく。早苗の体がわずかに震える。
「どこに運んだ。答えろ」
「え、あ・・・あの・・・・・・」
ステイクは拳を握る。早苗は思わず後ずさる。
「おいおい、何もしていない女をお前は殴るのか?」
笑いながらペガは早苗の後ろから現れ、早苗の前に立つ。
「生きていたのだな、不運な男よ」
「俺を殺したいなら神様でも連れて来るんだな」
「神・・・・・・か」
ステイクの拳はそのまま真っ直ぐペガの顔面に当たる。
同時にペガの蹴りもステイクの顔面をとらえる。
「いいパンチしてるな、ステイク!」
「その余裕が続けばいいがな・・・」
麦とプッチはお互い決定的な攻撃を与えられないまま気付けば湖まで移動していた。
「プッチ君、この湖こそ僕の求めた力だよ!」
「・・・この湖はどのような力を持っている」
「それは君が入ってからのお楽しみ!」
麦は土人形でプッチを湖へ落とそうとする。
が、無数の弾幕によって土人形が全て崩れる。
「その湖、入るのは貴方がいいんじゃない?ねえプッチ」
「そうだな・・・レミリア」
レミリアが得意気に鼻を鳴らす。
「え?君は・・・」
麦の背後からレミリアとは別の弾幕が麦を直撃する。
「レミリア!私と咲夜を置いて先に行かないでよ」
霊夢と咲夜も到着する。
「が・・・君達・・・・・・僕の計画を邪魔するんじゃあ・・・ない!」
麦はボロボロになりながらプッチ達を睨み付ける。
麦は、隠し持っていたナイフを静かに握りしめる。
- 神父が幻想入り(仮題)2000突破ありがとうございます! ( No.136 )
- 日時: 2017/04/16 10:56
- 名前: ゼラチン ◆SvRsgTHFT2 (ID: Z3U646dh)
ゆっくりと何か不安が押し寄せて来る。
レミリアはその「何か」を確かに感じ取っていた。
「とりあえずこいつに対し聞きたいことがある・・・・・・」
プッチが振り向いた瞬間。
麦はナイフを持ち飛びかかっていた。
ペガとステイクの攻防を早苗はただ見ていることしかできなかった。
ステイクが拳を握った時、怖かった。どうしようもない恐怖が体全体を伝わっていた。
「ホラホラ!どうしたステイク!」
ステイクの攻撃が空振る。それはペガも同様でステイクの体に攻撃を当てることはできなかった。
ステイクがペガに見せたのは、余裕の表情。
ペガを嘲笑うかのような表情。
「ッ!!何笑ってる!」
大振りのペガの拳を避け、ステイクはお返しと言わんばかりに顔面に拳を叩き込んだ。
「・・・ガッ!」
ペガは早苗の足元へと転がり込んでいく。
「ふむ、そろそろ麦の所へ戻らねば」
「待て・・・この野郎・・・・・・」
ペガはステイクの背に向けて手を伸ばす。
「ちくしょう・・・」
その手が届かぬまま、意識が闇に堕ちて行った。
- Re: 神父が幻想入り(仮題) ( No.137 )
- 日時: 2017/04/30 10:53
- 名前: ゼラチン ◆SvRsgTHFT2 (ID: Z3U646dh)
一瞬、だがその一瞬が永遠に感じられた。
麦のナイフは、プッチの心臓に到達しその命を奪う。
・・・はずだった。
「・・・ッ!」
プッチは自分の身に何が起きているのか分からなかった。
すぐに確認できたのはレミリアが自分を突き飛ばした事だけだ。
すぐに後ろを見ると、
「ぐッ・・・、弾幕を使えば、良かったのにね・・・・・・私らしくもない」
レミリアが、麦の前に立っていた。胸からナイフを生やし、口から赤い液体を出しながら。
「お嬢様ッ!!」
咲夜が麦を取り押さえると同時に麦はレミリアを突き飛ばしレミリアは抵抗もなく湖に沈んでいく。
「レミリア!」
霊夢と咲夜が湖に飛び込もうとするのをプッチは止める。
「この湖には何があるか分からないんだ!勝手に飛び込もうとするな!」
「でも!レミリアが!」
プッチは麦を見る。麦は笑っていた。かつての友に似た邪悪な笑みを浮かべた。
「・・・・・・霊夢、咲夜、麦を見ててくれ」
プッチは湖の方へ向き直る。
「レミリアは・・・私を庇った。その借りは返さなければいけない」
深く、深く、底が見えない湖へ、プッチは迷わず飛び込んだ。
- 眠り姫 ( No.138 )
- 日時: 2017/05/05 10:58
- 名前: ゼラチン ◆SvRsgTHFT2 (ID: Z3U646dh)
プッチが飛び込むと、わがままな吸血鬼のお嬢様が確かに見えた。
プッチは必死に手を伸ばす。
レミリアはその姿を見て優しい笑顔を浮かべるだけ、抵抗も動きさえしない。
「この手を掴めレミリア!」
沈んでいくレミリアの腕をプッチは掴めた。そのまま引き上げようとする、が。
「・・・!?」
まるで湖の底から引っ張られるかのように彼女の体は全く動かない。
「・・・・・・くそっ!」
次第に息も苦しくなる。何とかしてレミリアを引き上げようとしても、動かない。
ふとレミリアを見ると彼女は笑ったままでプッチに語りかける。
水の中では声など聞こえないはずなのに、しっかりとプッチの耳が、脳がその言葉を感じ取っていた。
「・・・もういいわ、私もなんであんなことしたか分からない。どうせこのまま生きても・・・・・・まあ、貴方がこれからどうするか見てみたかったけど・・・仕方ないわ」
レミリアはプッチの手を振り払う。
「私はいいけど・・・貴方は死んでは駄目。貴方が生きることで、きっと意味があるはずだから」
そのまま二人の体が離れ、レミリアは暗闇に沈む・・・・・・・・・・・・
はずだった。
「えっ?」
それでもプッチはレミリアを助けようとする。
(馬鹿ね・・・本当に・・・・・・馬鹿・・・・・・・・・)
そのままついにレミリアの体が引き上がろうとした、
その時。
レミリアの〝体”だけが、プッチに抱きかかえられながら引き上がっていく。
だが〝心”はその場に取り残されたままだった。
それでも彼女は笑っている。自分の体だけが助けられようともその光景を笑ってみていた。
(ありがとう・・・プッチ、私は・・・・・・しばらく眠っているわ・・・)
そして彼女は沈んでいく。
今日。紅き月が、眠り姫となった
14話 END